1|共同印刷様がワークショップに至った理由
今回、共同印刷株式会社様 本社にて、
約3時間・参加者59名という大規模なワークショップを実施しました。
共同印刷株式会社様は、従業員数1,900名以上、100年以上の歴史を持ち、印刷にとどまらず情報加工サービスや各種包装資材など、幅広い事業分野において社会に貢献してきた企業です。
本ワークショップのテーマは、
「クリエイティブマインドを起点に、印刷業界の本質的な価値(コア)を見つめ直すこと」。
私たちを含め、クリエイティブに関わる多くの企業では、
日々の業務のなかで「何をつくるか」「どう進めるか」を考える場面が多くあります。
それは印刷業界も例外ではありません。
その一方で、
「なぜこの仕事をしているのか」
「印刷物やこの業界が、社会やクライアントにどのような価値をもたらしているのか」
といった根本的な問いを、立ち止まって言葉にする機会は、
日常業務のなかでは決して多くないのではないでしょうか。
また、同じ組織のなかであっても、
同僚や上司・部下がどのような想いで仕事に向き合っているのかを知る機会は、意外と限られています。
こうした背景のもと、
あらためて対話の場を設け、日常業務のなかでは表に出にくい価値観や考えを持ち寄り、言葉にする機会として、ワークショップを実施しました。
現場で働く方々は、日々の業務を通して、
手応えや違和感、ちょっとした気づきを自然と積み重ねています。
そうした感覚を言語化し、互いに共有することが、
これからの事業や組織のあり方を考えるヒントになるのではないか。
そのような問題意識を共同印刷様と共有するなかで、今回の取り組みが実現しました。
2|実施目的 :印刷業界の「コア」を言語化する
本ワークショップの目的は、
クリエイティブマインドを起点に、
印刷業界のコアとなる価値を、参加者それぞれの視点から言葉にしていくことでした。
デジタル化や社会環境の変化が進むなかで、
自分たちの仕事がどのような価値を担ってきたのか、
そして、これからどんな役割を果たしていくのか。
立場や部門の違いを越えて視点を持ち寄りながら、
そうした問いに向き合うきっかけをつくることを目指しました。
3|議論のなかで立ち上がった「愛」とプロフェッショナルな熱量
印刷業界を語る際、デジタル化や市場環境の変化といった課題が語られることも少なくありません。
しかし、実際にワークショップの場で交わされた言葉からは、
そうした状況のなかでもなお、自らの仕事と真摯に向き合い続ける姿勢が強く感じられました。
ワークショップでは次のような問いを起点に
まずは一人ひとりが考える時間を設け、その内容をチーム内で共有していきました。
個人ワークを通じて、
印刷業界で働く人たちならではの視点が、次々と言葉になっていきました。
たとえば──
- 印刷物の一番の特異性は「触れられる」ことだと思う。
“触れる”ことは、ある種の愛の証でもある。推し活グッズが流行しているのも、
触れられるという物理的な体験があるからではないか。
また、“重さ”を感じられることも印刷物ならではの価値だと思う。 - 紙は「なくなる」「衰退する」存在でもある。
一見ネガティブに見えるが、なくせることはセキュリティや環境配慮の観点では意味を持つ。
紙が土に還るという性質も、その一つだと思う。 - 物理的な存在があることは、「信頼」を可視化しているとも言える。
デジタル上のリスクを、紙という物理領域に転換することも、一つの方法ではないか。 - 人が存在する限り、紙や印刷物が完全になくなることはないのではないか。
印刷は、どこかで社会インフラに近い役割を担い続けると思う。
考えを言葉にし、共有していくプロセスのなかで、
印刷という仕事への誇りや愛着が、少しずつ輪郭を帯びていく瞬間がいくつも生まれました。
こうした思考と共有の時間は、
単なる意見交換にとどまらず、
参加者一人ひとりが、自身の仕事や業界との向き合い方を見つめ直す機会にもなっていきました。
4|参加者の声(一部抜粋)
ワークショップ後のアンケートでは、
思考のプロセスそのものに価値を感じた声が多く寄せられました。
- はじめて話す人とチームで考えを共有できた
- 年齢や業務内容の異なるメンバーと話せて刺激になった
- 具体と抽象を行き来する思考が印象に残った
- 「解像度を上げる」という考え方を意識するようになった
- 日頃の仕事にもつながりそうだと感じた
- 純粋に楽しく、考える時間になった
こうした声からは、
対話を通して、自分自身の仕事や業界の見え方が少し変わった、という実感がうかがえます。
5|ファシリテーター総括
印刷物や紙というのは、物理としての存在感そのものが特徴なんだと思います。
今回のワークショップを通じて、そのことをあらためて実感しました。
当たり前のように扱っている紙や印刷物ですが、実はそこには、さまざまな“体験”が含まれています。
たとえば、私はAmazonでも本屋でも本を買います。
でも、本屋に行くと、圧倒的に迷ってしまうんです。
なぜかというと、そこには偶発的に目に入ってくる情報量があるから。
Amazonやウェブでも本を見ることはできます。
けれど、物質の強みはやっぱり「存在感」だと思っています。
空間を占有する本の存在は、限られた画面の中で見る情報とは、印象の強さがまったく違う。
物質として目の前に置かれたときの説得力は圧倒的で、
わざわざ本屋に足を運ぶ理由は、この“物質性”にあるのだと、あらためて腑に落ちました。
そして今回のワークショップを通じて、
この「存在感」こそが、印刷物の説得力そのものなんだと、より深く理解しました。
ファシリテーターはあくまでも進行役に過ぎません。
むしろ強く印象に残ったのは、共同印刷様の従業員一人ひとりから感じられた、印刷という仕事への愛情でした。
印刷業界は、斜陽産業と言われることもあり、
時代性や市場環境の変化にさらされている業界の一つです。
そんな状況のなかでも、これだけの熱量で向き合う人たちが集まっている組織なのだと、強く感じました。
また、外からでは見えにくい印刷業界のリアルや、
印刷の現場で何が起きているのかを知ることができた点も、非常に興味深い体験でした。
そこには、まだ言語化されていないイノベーションの種が数多く存在しているように感じます。
参加者一人ひとりの言葉が、
印刷という仕事の価値を、あらためて浮かび上がらせる時間になっていたよう思います。
6|さいごに
本ワークショップでは、
クリエイティブマインドを起点に、多様な視点を持ち寄りながら、
印刷業界のコアとなる価値について考える時間を共有しました。
忙しい日常のなかで、少し立ち止まり、
自分たちの仕事の意味や価値を問い直してみる。
そのプロセス自体が、これからの事業や組織のあり方を考えるヒントになるのではないかと感じています。
本事例が、
業界や事業の価値について考える際の、ひとつの参考になれば幸いです。
また、こうした対話の場づくりを通じて、
組織や事業のこれからを見つめ直してみたいと感じている方にとって、
ワークショップという選択肢があることも、知っておいていただけるとうれしいです。
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