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雑誌 『装苑』 2023年11月号:インタビュー VOL.4 『リヴリーアイランド』を作るふたつの個性

この記事は「『装苑』 2023年11月号」に掲載された記事の一部を許諾を受けて転載しています。photographs : Jun Tsuchiya (B.P.B.)
hair & makeup : Kanna Hidaka

ココネさんと考える
仮想空間で活躍するファッションデザイナーになるには?

VOL.4 『リヴリーアイランド』を作るふたつの個性

仮想空間で過ごすための「アバター」への注目度がぐっと高まっている今。その中で、アバターを取り巻く仕事は、新時代の職業として熱視線を浴びています。ポケコロシリーズで有名なココネさんとともに、アバターデザイナーの仕事を知る連載。第4回は、錬金術から生まれた不思議なペット「リヴリー」を育成するスマホアプリを作る二人にフォーカス。

リヴリーアイランドとは?


2003年、「リヴリー」と呼ばれるペットを育成するPCゲームとして誕生。かわいらしく毒っけもあるキャラクターやアイテムのデザインが人気となり、’09年には登録者数が100万人を突破。’20年にココネが権利を取得し、’21年7月にスマホアプリとして新たに生まれ変わった。スマホ版では、プレイヤーの分身であるアバター「ホム」も加わり、ホムを通してリヴリーのお世話や着替えをしたり、島に生える木を育てて木の実を収穫したりとリヴリーとの暮らしを楽しむことができる。


右:内海直子さん
2014年、ココネ入社。「リヴリーアイランド」クリエイティブディレクター。
左:槇 明衣さん
2013年、ココネ入社。「リヴリーアイランド」商品デザインチームリーダー。

内海さん×槇さん対談

「リヴリーアイランド」の核

槇 「リヴリーアイランド」は「ポケコロ」や「ポケコロツイン」とはアバターアプリとしての楽しみ方が違うことが印象的でした。それはリヴリーのデザインにあると思います。

内海 「リヴリー」自体が錬金術から生まれたヘンテコな生き物なので、商品のデザインにも毒っぽさとユーモアがあるんですよね。あとは、モチーフの意味や作り手の意図を深く考察してくださるお客さまが多いので、デザイナーとして挑戦しがいがあります。

槇 クラシック版ではPCゲームだったのがスマホアプリになり、リヴリーの死の概念がなくなりました。クラシック版の頃と今とでは遊ぶ環境や時代背景が違うし、前提が大きく異なるんですよね。その中で、クラシック版でよかったところの根本にあるものをアプリ版に置き換えるならどうしたらいいのか、を考えられるようにチームの皆には思考停止しないでほしいと思っています。

内海 私も思考を止めないことは意識していますね。商品のテーマ考案でも一般的な行事がリヴリーの世界の中だとどういうふうに行われるだろうと考えることを常に大切にしています。例えば6月にリリースしたガチャ「Forgotten Wedding Hall」はリヴリーならではの反応がありました。

槇 リヴリーでウエディングテーマを作る場合、どういう幸せなの?誰と結婚するの?というところから考えます。告知の時にはあえて花嫁の姿しか出さず、さらに「リヴリーへの贈り物」という指輪アイテムを出したことで、結婚相手はリヴリーなの!?というざわつきがお客さまの間で生まれて。

内海 テーマの雰囲気も、ウエディングですがパッと見、暗いビジュアルにあえてしたことで、意外性から気になってくださったお客さまもいました。お題があると物語を積極的に作りたくなる心理ってあると思うのですが、皆さんが物語を想像したくなるきっかけを作ることにチャレンジしている感覚があります。

槇 ココネのお客さまはクリエイティブな方が多いんですよね。アイテムの説明文などには遊んでいただけるような余白を残したり、過去のテーマやアイテムとのつながりを持たせたりしています。

内海 それを発見した方が、熱量を持って人に伝えたくなるようなものを作りたいですね!


今年6月にリリースした「Forgotten Wedding Hall」のビジュアル。

内海さんが大切にすること

「リリース前に多くの“ワクワク”を届ける」

リヴリーアイランドは、アプリ版のリリースからまだ日が浅いこともあり、今は様々なことにチャレンジしている段階です。ただ変わらないのは、アイテムを受け取った時のお客さまの気持ちを考えること。だとすると、アイテムはその「届け方」から逆算して考えてもいいのではないか、と思っているんです。リリース前の告知の時や、販売ページのカタログにあたる部分に、商品説明を入れず絵本のようにイメージを見せたり、またはモノクロのスタイリッシュな雑誌のように作ったり。リリース前に一切ビジュアルを出さず、その代わりに小説を出したこともありました。告知は「ストーリー+商品紹介」であるという定石にとらわれないことーお洋服を買う時に、気持ちが上がっていると、どれも魅力的に見えませんか? そんなワクワクを、いかにリリースまでに生み出すのかに力を入れています。自分の中にいる「お客さま」と、「これなら楽しめるかな?」と対話するようなイメージで考えていますね。

My Interests

冬は雪山に行ってスキーやスノボを楽しむほどアクティブな内海さん。同時に読書も趣味で、仕事のインスピレーションになっている本も多いという。下左の『ゆめくい小人』は、怖い話が苦手だった内海さんが、その魅力に気がついたという絵本。そこから「今までしていなかったことや触れてこなかったものにチャレンジする」という最近の目標も生まれた。下右の『北欧の挿絵とおとぎ話の世界』はビジュアルを見ながらアイデアを膨らませる時に眺めるそう。


左 『ゆめくい小人』 ミヒャエル=エンデ 作、アンネゲルト=フックスフーバー 絵、さとうまりこ 訳 偕成社
右 『北欧の挿絵とおとぎ話の世界』 海野 弘 解説・監修 パイインターナショナル
本人私物

槇さんが大切にすること

「デザイナーが楽しんで創作する環境づくり」

現在、私はリヴリーアイランドの組織づくりを行っています。「ポケコロ」時代にデザイナーをしていた頃から、デザイナーが楽しんで作ったものにはお客さまから反応をいただけるんだなということを感じていました。「楽しんで創作できる環境をつくる」ことがとても大事なんです。そのため、チーム内でのコミュニケーションを重視しています。コロナ禍ではリモートで仕事をすることが多く、メンバー同士を理解する機会が少なくて。そこでチーム内を役割ごとに3グループに分けて密度を高めつつ、皆が意見を出しやすい環境をつくりました。特に気をつけているのは、アイデアを出して「損だった」と思われないようにすることです。意見を出してもらう時はこちらの温度感をしっかり伝え、アンケートをとったならそれをどのように使ったかを話し、出してもらったものにはフィードバックする。細かなことですが、皆が安心して楽しく働くためにはそうした信頼関係が大切なんです。

My Interests



趣味は「ガジェット集め」。特にASMRをきっかけにハマったキーボードは、タイピングの音と見た目重視で自作するほどに。「ネイルをしているとテンションが上がるように、お気に入りのキーボードを使うと仕事が楽しくなるんです」





絵本のようにテーマの世界観を見せたガチャ「Gold Ray」(上3点)と、「リヴリーと暮らす日常にあるスタイリッシュな雑誌をテーマ」にアイテム紹介ページを構成したガチャ「MODE」(下)。

今月のまとめ

健やかなチームの中で生まれる自由なクリエイティブが、特別な世界観をつくり出す!




『装苑』 2023年11月号

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