この記事は「Software Design 2023年8月号」に掲載された記事を許諾を受けて転載しています。
Web3の新時代を拓くココネのエンジニアリング力を探る
世界に愛されるデジタルワールドでトップレベルの実績
第3回 人気の着せかえアプリ『ポケコロ』誕生秘話
今回はアバターの着せかえを楽しむ『ポケコロ』アプリの歴史を探る。2011年9月にリリースされ、ココネを代表するアプリへと成長した。どのような経緯で誕生し、初期版ではどのような課題があり、どう克服してきたのか。立ち上げ当時を知る趙龍植氏と、現在開発チームリーダーを務める洪銀美氏が誕生当時を振り返る。
━━自己紹介をお願いします。
趙龍植(以下、趙) ココネ サービス基盤開発室 趙龍植(チョウ ヨンシク)です。前職からクライアントエンジニア、とくにアバターを使うサービスに長く従事しています。
洪銀美(以下、洪) ポケコロ開発のチームリーダー 洪銀美(ホン ウンミ)です。Cocone M(旧cocone Korea)に入社し、『ポケコロ』の開発のために日本に移籍し、10年が過ぎました。
デザイナーの熱意が『ポケコロ』を生んだ
━━『ポケコロ』の発想はいつ、どこから?
趙 2011年に入るころから、ココネはスマホ向けサービス進出に向けて動き出しました。当時ココネはWebベースの語学サービスを提供しており、アバターを使ったいろいろな会話のシチュエーションの動画を教材として作成していました。それで社内から「スマホ向けアプリを出すなら、アバターをメインとしたものを開発したい」という声が上がったのです。とくにデザイナーさんがすごく強い意欲を持っていました。
洪 趙さんは『ポケコロ』の立ち上げメンバーで歴史を知っていますし、面倒見がいいので、みんなから「お父さん」って呼ばれています(笑)。当時はスマホでアバターやキャラクターを楽しむという感覚はまだ馴染みがなかったと思います。
趙 どうしたら楽しんでもらえるだろうかと検討を重ねました。途中で東日本大震災に伴って開発を一時中断することもありましたが、2011年9月には着せかえ機能とドナ(アプリ内通貨)を盛り込んでリリースしました。今はなくなりましたが、初期版ではミニゲームもいくつか搭載していました。
━━最初はiOSからだったとか。Androidは?
趙 iPhoneが普及し始めたころでしたので、まずはiOS版をリリースしました。iPhoneのスペックはまだ低く、どれだけパフォーマンスを出せるのか手探りでした。
洪 iOS版の次にAndroid版を出すことになり、日本でのリリースのために韓国のココネにいた私が日本の開発に加わりました。韓国ではスマホの約9割がAndroidでしたので、韓国で『ポケコロ』をリリースするにはAndroid版から開発しなくてはなりません。まずは韓国でAndroid版を開発して、日本向けに移植する形にしました。Android版は当初Javaで開発していたのですが、すごく重くてリリース前に断念しました。結果的には、C++で作ったものをサーバから呼び出すようにしました。
趙 iOSはiPhoneしかないのでデザイナーさんの思いどおりの色が出せるのですが、Androidは機種がたくさんあるので苦労したんですよね。
洪 同じアイテムなのに、ある機種では「なんでこんな赤いの?」とか、色の表現に違いが出ることがありました。
━━技術的にはどんな課題がありましたか?
趙 デザイナーさんのこだわりを実現できるように開発を進めてきました。私や男性エンジニアの多くは「かわいい」がわからないのですが(苦笑)。
洪 たとえばワンピースの上にアウターを着せたい、マフラーを重ねたい、髪色を抽出して別のアイテムの色を変えたい、アバターやキラキラの動きを繊細になめらかにしたいなど、リクエストは多岐にわたります。
趙 デザイナーさんのリクエストに応えるために、レイヤをどんどん増やしていきました。今では表のレイヤが12層あり、さらに入れ子構造でその中に数十個のレイヤを持っています。初期のころはスマホのスペックが低く、レイヤを増やすと動きが重くなるので苦戦しました。また、通信回線も3Gで遅かったので、データ量を抑える必要がありました。しかしアイテムのデータサイズを下げると、表現のクオリティを落としてしまいかねません。
洪 『ポケコロ』の魅力に直結するのがアイテムの豊富さとリッチな表現なので、データは増えてしまいがちです。膨大なアイテムを全部ダウンロードすると数GBにもなります。最初はアプリの起動に必要なアイテムだけダウンロードしておいて、残りはあとから徐々にダウンロードするように工夫しています。
趙 動きの軽快さを保つためにデータ量は抑えたいので、画像をベクターイメージにしました。ポケコロ用に独自フォーマットも開発しました。
人気に火がついたのはガチャを導入してから
━━ビジネス面ではどうでしたか?
趙 デザイナーさんのこだわりを技術で実現できると、デザイナーさんがすごく喜んでくれるので、開発側もうれしくなり、励みになっていました。ほかの部署からも「ポケコロチームは楽しそうだな」とうらやましがられるくらい(笑)。しかし、ビジネスとしては伸び悩んでいました。サービス終了が頭にちらついたときもあります。
洪 勢いがつき始めたのがガチャを導入してからですね。
趙 1日の売上が100万を超えたタイミングで、展望が明るく開けてきた気がします。まだ黒字ではありませんでしたけど。
立ち上げ当時のポケコロチームは全体でエンジニア12人だけでした。しかも、デザイナーさんのほとんどはアルバイトで、正社員ではありませんでした。今では約100名のメンバーで『ポケコロ』を開発しています。多くがデザイナーさんで、『ポケコロ』の「かわいい」を支えてくれています。
洪 『ポケコロ』は自分のアバターのコーディネートをかわいいと愛でるだけではなく、友だちと見せ合うことも楽しみになります。友だちに「これかわいいね」と言ってもらえるとうれしいですよね。ときにはアイテムを交換して、コミュニケーションを楽しめるのが魅力となっています。私から見ると、女性だけではなく男性も楽しめるアプリです。
続きは後編で
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