Facebookでこちらの記事がシェアされて読んで見ました。
シリコンバレーで日本企業は嫌われている話も最近良く記事で見かけますが、その一因として何事も時間がかかりすぎる「決められない病」にかかっている話がここでも語られているます。
そして、そこには「PDCAサイクル」へのこだわり過ぎではないかとの指摘がなされています。
PDCAを回してもイノベーションは起こらない系の話題もお馴染みですが、コンプラ重視でスピード、意思決定が遅くなっていることも多くの人が認めるところではないかと思います。
ロジカルシンキングにも限界があるよねという展開とともに、「デザイン思考」の話になるのですが、
この「PDCAサイクル思考」と対極にあるのが、「デザイン思考」だ。端的に言えば、デザイナーの発想である。シリコンバレーや深センでは、この「デザイン思考」をビジネスマンが重視しているように思えた。
中略
デザイナーの才能は先天的なものと思われがちだが、米国では後天的才能と見なされる傾向が強い。教育によって「デザイン思考」は身に付くと考えられているのだ。一例を挙げると、米アップルとのつながりが深いコンサルティング企業が、アップルのデザイナーの才能は後天的なものと感じ取り、その育成のメカニズムを体系化し、クリエイティブ人材を育てるためのツールとして活用している。
「古くて重い変化を嫌う」日本企業の中にも、「デザイン思考」への関心が高まりつつある。変化せずとも過去の蓄積によって何とかやってこれた企業も、人工知能(AI)の進化に代表される技術革新によって変革を余儀なくされているからだ。
なんだそうです。皆さん納得できますかね?
わたし自身もトレンドを押さえておかないと、と思い、デザイン思考に関する書籍2~3冊は手にとってみたのですが、
何やら上から目線な感じと、デザイナ(クリエイティブ系)の素養をそんなに簡単に取り込めるものなの?というモヤモヤ感があり最後まで読めるものがありませんでした。
いくらわたしがモヤモヤしても世間のトレンドは進む訳ですが、こんな記事を見かけたので紹介させてください。
こちらの記事では、
- 単純明快な5ステップで、すべて問題を解決できるのか
- デザインのツールは付箋だけ?
- これが本当のデザインシンキングの成果なのか?
このような指摘と共に、日本にデザインシンキングは必要か?とも問いかけています。
そして今回一番共感したのはこの記述です、
「こんな短期間に容易に学べるメソッドで、参加者は本当にすべての問題を解決できるのでしょうか? そもそも、こんなに容易にデザイナーになれるのでしょうか? わたしにはまるでトレーニングはしたくないけれど、オリンピック選手になりたいと言っているように聞こえます。この容易さこそ、教育者としてひじょうに危険な考え方だと思わざる得ないのです」。
わたしは、音楽という現実に触ったりすることが出来ないものを成果物として納めて報酬をいただく仕事をしてきました。
ウェブのデザインや映像は形になれば、素人の方でも「ここの色を青にして」とか「このボタンを大きくして」などのやり取りが可能ですが、音楽だけは最終最後まで行っても具体的に触ったりすることができない領域があったりします。
このような音楽を、「こんな感じ」に始まる抽象的なところから、「そうこれこれ!」というところまで落とし込むには、素養と訓練がやはり必要であり、こういった事をそれなりの年数経験してきた自分としてはナターシャ・ジェンという方が投げかける疑問に同意するところが多いです。
日本企業は高い技術力を誇っていて、その技術は表面的な事ではなく、積み重ねであったり一朝一夕に真似できないものだろうと理解しています。だからこそ何かモヤモヤした感じがしている自分がいます。
最初に紹介した記事にこんな記述があります。
米国では後天的才能と見なされる傾向が強い。教育によって「デザイン思考」は身に付くと考えられているのだ。
ここについても意見が分かれるところかと思います。
努力して新しい能力を開発したいと自分自身も思って努力もしていますが、物事にはこういう一面があることも忘れてはいけないのではないでしょうか。
プラトンの「パイドン 魂の不死について」3 霊魂不滅の証明(P142)に出てくるこの一節がどうしても頭から離れません。
すなわち、ただ単に、先に論じたかの反対そのものだけが明らかに相互を受け入れないだけではなくて、相互に反対ではないのに常に反対の性格をもつものもまた、そうなのだ。これらのものもまた、自分自身のうちにある性格(イデア、形相)と反対の性格を受け入れないらしい。
むしろ反対の性格が近づいてくると、それらは滅びるか退却するかなのである。
そして最後にこの言葉にまとめられいます。
三はなお三でありながら偶数になることを耐えるよりは。その前に、滅びるなり他のどんな目にでもあうだろう
PDCA、ロジカルシンキング、デザイン思考などなど、その他の分野においても世間の流行はいろいろ変化があるけれど、自分自身が何者なのかを見極める力と、自身の能力が必要とされるところで生きて行く努力が必要だと思います。