BAKE INC.(以下、「BAKE」)は2023年10月10日に新ブランド「架空のパティスリー しろいし洋菓子店」を発表し、10月12日より販売開始いたしました。
今回のTHE BAKE MAGAZINEでは、BAKEの新しい挑戦にもなった「しろいし洋菓子店」について、プロジェクトに関わったプロジェクトマネージャー 北村、クリエイティブ担当 山田、開発担当 植村の3名に話を聞きました。
前編では当ブランドの開発の背景、ストーリー設計についてお届けします。
お菓子を一番近くで見てきたのは誰か
― 「架空のパティスリー しろいし洋菓子店」を立ち上げたきっかけを教えてください。
北村:そもそものきっかけは市場環境の変化です。
BAKEは創業以来「1ブランド=1プロダクト」の専門店業態・工房一体型というビジネスモデルで拡大してきましたが、当社以外にも専門店スタイルの店舗が増えました。また、デジタルシフトが進んでいたところ、コロナウイルスが流行しそれを後押ししました。
BAKEでもコロナ以降、OMO(オンラインとオフラインの融合)施策を進めるなど、時代に沿った対応をしてきましたが、その中で「今の時代に合ったBAKEらしいブランドを出したい」という想いが強くなっていったんです。最初からオンラインで販売するブランドにしようという話は出ていましたが、D2Cブランドが乱立するなかお客様に選ばれるにはどうしたらよいか、さまざまなアイディアを出し合い、ブランドを作っていきました。
― 初めてのオンラインブランドとなりますが、”ブランドづくり” という点で見て、これまでと違うポイントはありましたか?
北村:BAKEでは新ブランドを作るとき、ブランド担当・開発担当・クリエイティブ担当が中心になって企画を進めるのですが、今回初めて北海道工場のパティシエが開発を担当しました。
出張で北海道工場を訪れたとき、植村さんが自主開発の試作で作っていたパウンドケーキを食べさせてもらう機会がありました。それを食べたときに衝撃を受けたのがきっかけです。もともと北海道に自社工場を持っているというのは会社の大きな強みだと思っていましたし、お菓子を一番近くで見てきたのは北海道工場のみんなだと感じ、次に作るのは自社工場の強みを活かしたブランドにしたいなと構想がスタートしました。
植村:工場の製造者がブランド開発に関わることは初めての試みで、『おいしさ』と『作りやすさ』のバランスにとても苦労しました。
『おいしさ』を追求するために工場での製造方法を模索し、話し合い、納得のいくものが出来上がりました。求めていた『おいしさ』を表現するため、工場ではあるもののパティシエの『手作り感』にこだわることにしたんです。一手間、二手間かけた商品となっています!
北村:もうひとつ、これまでと違ったポイントとしては、かかわるメンバーの多さですね。オンラインという特質もあって、これまでのブランドの中で一番多くの部署・多くのメンバーが携わったブランドになりました。
ブランドづくりの中心になるのはやはり開発とクリエイティブなのですが、今回のブランドはオンラインでの販売がメインとなることもあり、オンライン事業の担当もプロジェクトに入りました。また、後ほど詳しく説明しますが「しろいし洋菓子店」の魅力の一つはストーリー設計だと思っています。サイトやSNSでどう見せると効果的か、SNS担当者からもたくさんアイディアを出してもらいながら、ストーリーを作り上げていきました。
全員がブランドづくりの当事者としてかかわることで、ブランドの熱量が上がっていくし、ぶれがなくなっていくのを感じました。
目指したのは没入感。しろいし洋菓子店のストーリーとは
― ストーリー設計について詳しく教えてください。
北村:商品の美味しさにこだわるのは当たり前。でも美味しいだけじゃ選んでもらえないと思いました。オンライン起点のブランドにするということだけは決まっていたので、「商品力」「多数存在するD2Cブランドの中で選ばれるブランドになるには?」「サイトやSNSを何度も覗きたくなる仕掛け」「ブランドの拡張性」の4つを意識してブランドを設計していきました。
今、この時代にお客さまに選んでいただけるために何が必要か、みんなで話し合い、出てきたのが「Immersive(没入)」というキーワードでした。没入感覚を提供できるブランドについて議論を重ね、決まったブランドのコンセプトが「北海道の素材にこだわった、アートなお菓子作りにひとびとが「うつつをぬかす」洋菓子店」です。
山田:北海道のどこかの地に、紺碧の建物「マンション・インディゴ」が建っています。
このマンションの1階に入っているのが「しろいし洋菓子店」。上階には個性豊かな住人が住んでいて、その住人の物語をモチーフにしたお菓子を「しろいし洋菓子店」で展開しています。
北村:5階に住むのは「花屋とパティシエのフラワー姉妹」、性格も好きなものも正反対の2人ですが、土曜日の夜は姉妹そろってティータイムを楽しみます。2人の”推し”は「501号室 夜更かしのための4種のクッキー」です。
このように、住人の部屋番号とお菓子の楽しみ方が商品名になっているんです。
同様に4階には「403号室 水平線の先まで持っていきたいパウンドケーキ」が推しの「船乗りのブレッド」が、
3階には「302号室 絵描きとリスの窓辺でかじるフロランタン」が推しの「絵描きのアマンダ」が、
2階には「201号室 雪の降らない日のブールドネージュ」が推しの「楽器職人のスノー」が住んでいます。
そして、最上階に住むのは、少し謎に包まれたオーナー「マダム ブルー」
顔が広い彼女は来客があると必ず美味しい紅茶と「しろいし洋菓子店」のクッキー缶を振る舞います。このクッキー缶の中にはご紹介した住人たちの推しのお菓子が詰まっています。
「後々、新しい住人が増えるのかな。次の住人の推しのお菓子はなんだろう。」
今あるストーリーだけではなく、今後の展開についてもわくわくしていただけるようなブランドづくりを目指しました。