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「学習し成長する組織」となるための取り組みを、会社として積極的に行っているCaSy。この1年で新しく始めた施策を、CHRO(人事最高責任者)の白坂ゆき(しらさか・ゆき)が語ります。組織の成長スピードに停滞感を感じていたり、ナレッジが蓄積していかないと悩んでいる組織人事の方、必見です!
白坂ゆき
リンクアンドモチベーションで、経営理念・ビジョンの策定・浸透や、M&Aに伴う意識統合プロジェクト、女性社員の活躍推進プロジェクト等を手掛ける。その後、参議院議員公設秘書、授乳服専門店のモーハウス、リクルートホールディングスを経て、2018年株式会社CaSyにジョイン。
こんにちは、白坂です。今日は、CaSyが行っている「組織が学びを得て、高次に活かすための知恵の共有」についてお話します。
どんな会社においてもナレッジが属人化せず、組織内で共有され活かされることは大切です。ですが、私たちCaSyには「学びを次に活かす組織づくり」をしなければいけない強い理由があります。今回の施策を語るなら、私たちCaSyが存在する家事代行業界についてまず語る必要があるでしょう。家事代行サービスは、「市場の8割が認知しているのに、使ったことのある人はまだ3.5%しかいない」。敢えて振って言うならば、日本では「こうすれば家事代行サービスをあらゆる方がお役立てくださる」という勝ち筋を、業界のまだ誰も見出せていない、そんなサービスです。心理的スイッチングコストの高いサービスであることも鑑みると、先に「勝ち筋」を見つけた会社が業界で圧倒的No. 1になれる。
そんな世界において、CaSyに所属するメンバーに求められるのは、
「これをやれば勝てる」というHow to が確立した中でその行動を愚直にやり続けこと ではなく、
自ら課題を捉え、こうすれば超えられるかと仮説を設定し、やってみて検証し、そこから学ぶ高速回転です。
スピード・仮説確度(確らしさ)が求められますし、試行錯誤の中で得られた結果に、鋭く学びを得て次に活かす力が必要です。
加えて、組織には、社員一人ひとりのそのような試行錯誤から得られた学び・ナレッジを、組織の経験・組織のナレッジにすることが大切です。ナレッジを属人化させてしまうことなく、組織内で共有され活かされるようにすることが組織として市場に向き合い、いち早く勝ち筋を見つけるための方法だと思うからです。
会社一体となって学びを次に活かす「知恵の共有」の仕組みが、いかにCaSyにとって重要であるかお分かりいただけたでしょうか。
仕組みづくりは、行動のデザイン
道をつくれば、人が行き交う。
市場をつくれば、人が賑わう。
港をひらけば、交易がはじまる。
どうすれば都度手を加えなくても、望む行動がおのずから得られるか。
仕組づくりをする時には、「自然にそうなるように」デザインすることが大切だと思います。
そして1年前から、新たに始めた施策が「Findings & Progress CaSy」です。
事業戦略の推進において、得られたFindings(「事前に想定していた仮説や認識を深める、または異なる新たな気づき」と「FIndingsを標準化・抽象化させ再現性あるものとしたナレッジ」を共有しあうことでProgressにつなげる施策です。
発表機会は月に2回。全社集会における重要コンテンツとしてこの「Findings & Progress CaSy」の時間を設けています。
「学びを次に活かす組織づくり」のための肝いりの施策でして(笑)。個人の「学び」を、再現性と実効性をもって組織で活かせるレベルにナレッジ化し、皆で活かしていくために工夫を凝らしています。
発表は、エントリー制にしており、予め人事が内容とレベル感を精査しています。プロジェクトの進捗共有に終始しているようだとやり直しやブラッシュアップをお願いしたり、発表の機会を提供しないエントリーも。
それでもなお、皆、自分のプロジェクトや業務の節目に積極的にエントリーしてくれます。
それには訳があります。
提出フォーマットの一部
ふたつの動機に着目する
メンバーが積極的にエントリーしてくる理由。それは、Findings & Progess CaSyでの学びの共有を成果として、人事制度で評価対象に含めたから。
CaSyではこれまでも、「前例のない取組への挑戦を奨励する。そのため失敗してもその経験から学びを得てPDCAにつなげていれば成果とみなす。」としてきました。それでも、学びが全社レベルで共有されている状態とは言い難かった。
なので、2023年に人事制度を改訂したタイミングで、更に「学び」とはどういう状態なのかを定義し、その定義を基準に評価対象とすることに変更しました。そして「Findings & Progess CaSy」でのナレッジ化と発表も評価に含めるようにしたのです。
人事制度も組織施策も、すべては行動のデザイン。
「ありたい姿」へのエスコートシステムだと、私は考えます。
どうすれば都度手を加えなくても、望む行動がおのずから得られるか。
そこで言えば「評価対象とする」のは強烈な効き目を生みます。でも外発的動機だけだと持続しないんです。常に外発的・内発的動機、セットで考えるようにしています。
共有の場を「全社集会」としているのは内発的動機のため。全社メンバーの前での発表はメンバーにとって「誉れ」です。すこしの優越感、貢献感が、彼らの「内発的動機」になる。
貢献実感を強く感じられるように、発表を聞いているメンバーにはZoomチャットでリアルタイムに気づきを入れてもらったり、自分の業務への活かし方を発言してもらったりしています。「この場でまた発表したい」という内発的動機につながるよう、意図をもって「チャット」「発言」も仕掛けとして組織人事側で流れをつくります。もっと言えば、聞いているメンバーには他者のナレッジを自身に活かすという学習の習慣をつくるように、との意図もあります。
組織の状態や課題に応じて、最適化する・段階を踏む
どんな組織づくりをするべきかは事業特性や戦略とともにある。そして組織の状態は変化するものです。
とある仕組みや取組みを考案した当初から、戦略方針が転換したり、当時の課題は解決しまた新たな課題が発生していたり…はよくあることです。仕組みや取組みは、組織状態の変化や課題に応じて、最適化させつづけるものだと思っていますし、CaSyではそうしてきました。
実は、Findings & Progess CaSyには、前段となる取り組みがあります。それが、過去1年程取り組んできたCaSy Best Picks。言わずもがな「News Picks」のオマージュであり、外部(セミナーや本など)からの学び(Picks)を部署内で共有し、1番良い気づき(Best Picks)に選ばれたものを全社集会で発表するというもの。まだCaSyが「やってみて得られた個人のナレッジを属人化させてしまうことなく、組織内で共有され活かされるようにする」を課題化できるようになる前、成果創出のために日頃から自発的に学びを得るという習慣がメンバーに定着していなかった時期に、「外から学びを得て、課題を捉え、こうすれば超えられるかと仮説を設定」できるように、まず学習習慣をつけようと始めた施策です。
1年程続けたら、学習習慣がある程度定着し、Picksのレベルが目に見えて上がりました。
なので、設定する課題を次の段階に引き上げても大丈夫だと判断し、Findings & Progress CaSyへと進化させた。Best Picksが現在の、高次な知恵を共有のための土台となりました。(Best Picksは今も、取り組みとして残しています^^)
今CaSyという組織は、「Findings」が何であるのかにビビットです。メンバー同士で、やったことにおける発見は何か/何を学びとして得たか、互いに問いかけ合う様子も見られます。ただ、Findings & Progress CaSyで求められるレベルでナレッジ化するには、コツが必要です。自身の体験した個別具体を適切なレベルで抽象化し、再現可能なパターンやフレームに落とし込む。今は、皆、そこに苦労をしている感じです。
仕組みや取組みは、「ありたい姿」へのエスコートシステム。組織状態の変化や課題に応じて変化させていくことが大切だと思います。一足飛びには行けなくても、段階を踏んで、行けばいい。
「高らかに自慢する」という表出化
そしてもう1つ。
今期から、年間MVP受賞者に自身の成果が何によって創出されたのかを紐解いてもらい、それをナレッジとして発表してもらう機会をつくるようにしました。これも、内発的動機と外発的動機の両方を満たすものです。
CaSyでは四半期ごとにその期間のMVPを表彰しています。そして1年に1度、そのMVPの中から年間MVP受賞者を選抜し、表彰します。四半期ごとのMVP表彰式では、オリジナルの「表彰状」を読み上げています。受賞者の「どんな局面でのどんな考え方/行動がすばらしかったか」「どんな行動が成果を生み出したか」、成果創出の道のりをストーリーとして全社員の前で読み上げる。それには本人を称えることに加えて、「成果創出のためにどんな行動を取ればいいか」を他のメンバーが学ぶ機会とすることが意図されています。
そして満を持して、学びを次に活かす「知恵の共有」を強めるため、これまでの表彰に加えて、年間MVP受賞者によるナレッジ発表を始めたんです。
今回の年間MVP受賞者はエンジニアリーダー。
彼の表彰理由は、今期の目玉プロジェクトを3つも牽引し事業価値の創出に貢献したこと。
そして、もう1つはエンジニアチームの大きな成長です。
彼の優れた点は数えたらキリがありませんが、チームを育てることで目玉プロジェクトをやり切ったことに着目して、『有澤流 一人ひとりの力を引き出す 「がんばりたくなっちゃう」マネジメント』を彼のナレッジとして発表してもらうことにしました。
彼の発表の一部を紹介します。
全体の流れとしては彼がマネジメントで大切にしていることを、3つのSTEPに分解し、その具体を紹介し、それぞれのSTEPを名付けています。
私は、最後の「名付け」がミソだと思ってるんですね。
再現性と実効性は「名付け」がもたらします。いくら良いナレッジも、記憶に残り日常の業務の中で再現できなければ効力は出ません。
今回は、『一人ひとりの力を引き出す 「がんばりたくなっちゃう」マネジメント』のSTEPを「せやな」と名付けてくれました(笑)彼が割とこてこての関西人で彼の話し方からみんながそれを認識している、ということからも、この名づけは筋がいいです。
実はこの発表の後全社で、社員に求める行動指針「UNICO(ウニコ)」研修をしたのですが「オープンでアサーティブな対話」を求める『No Lie』をテーマにしたディスカッションの時、さっそく皆が「せやな」を活用していました。「Yeah!が大事だから…」などと彼のマネジメントスタイルをマネながら、ディスカッションしているメンバーの姿を見て心の中でがっつポーズしましたね。
組織内は実はナレッジの宝庫
CaSy社員って、一人ひとりがすごく優秀で一生懸命なので、日々の試行錯誤の中で「次にいかせる学び」を自問しながら業務にあたっています。でも本人にとっては無意識で自然すぎて、その学びを少し抽象化して共有すると実は「他者にも有益なナレッジ」になると思っていないことも多々あります。
例えば、たくさんの同時並行タスクを漏れなくミスなくやり切るメンバーがいます。彼女は多分、業務フローの中でどこまでをまとめてやると効率がよくミスが起こりにくいか「仕事のカセット化」をしているのだろうと思います。他にも、社内外にCaSyファンを生み出すのがとても上手なメンバーがいます。彼女は相手と自分の目的の合わさるポイントを見つけ出すのがとても上手で、それを「ラポール形成」にしているのだろうと思います。
組織全体で活用できるナレッジにしないと、もったいないですよね!
一人ひとりの学び、得意を客観視して抽出し、ナレッジに昇華させるようアプローチできれば、CaSyはもっとナレッジが循環する強い組織となっていく。学習し成長する組織へ、まだまだ伸びしろはありますね。
小さな変化が生まれはじめる
仕組みをつくってそれが組織に定着すると、こちらが都度手を加えなくても、あちこちで行動変化が生まれ始めるんですよ。
プロジェクト名もつけて、学びをアウトプットし始めるメンバー達。こういうビビットな反応はCaSy社員のすばらしいところ。
仕組みづくりは、行動のデザイン。
組織の成長スピードが遅い、ナレッジが蓄積していかない…そんな課題を感じているなら「自然にそうなるように」デザインすること を意識して組織学習の仕組みを考案してみることをおススメします!