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アパレル業界に潜んでいるDXの壁。Branditが描く業界変革のストーリーとは。

アパレル業界のDXを推進するために、生産・EC・在庫管理・マーケティング/分析・ロジスティクスを一気通貫させたサービスを展開しているBrandit。今回は、アパレルECの分野で数々の実績をあげてきた代表取締役・鍛治良紀にインタビューを実施することに。ファッション業界が抱える課題やファッションテックの領域に秘められた大きな可能性など、話を聞きました。


鍛治 良紀

2004年に同志社大学卒業。株式会社サイバーエージェントに入社。退社と同時に株式会社カルクリエーションを設立、代表取締役に就任。退任後はSansan株式会社にて西日本統括、MARK STYLER株式会社にてEコマース,WEBセクションRunway Channelのグループ長を経て、MARK STYLER株式会社の広告ならびにメディア部門の事業部が分社化・独立したTimes Transit株式会社の代表取締役に就任。2015年より株式会社Candeeに参画し、上席執行役員としてライブコマース及びブランドビジネスを担当。2019年9月、Candeeからブランド事業を継承し株式会社Branditを設立し、同社代表取締役 CEOに就任。


デジタル業界の「論理」と、アパレル業界の「感性」を両立させた無二のキャリア

――まずは、経歴について教えてください。

大学卒業後、新卒でサイバーエージェントに入社。そこで、広告営業としてアパレルも扱う大手通販会社を担当することになったのが、僕がECに出会ったきっかけですね。退職後は、起業をしたり、クラウド名刺管理サービスを運営しているSansanで大阪支社の立ち上げを経験したり、事業運営のノウハウを学んでいました。その後、アパレル企業のマークスタイラーにスカウティングされてEC事業の責任者として参画。そこから僕のアパレル業界でのキャリアがスタートしました。その後、2社の経営を経て、2019年に株式会社Branditを創業しています。



――サイバーエージェントの広告営業からSansanのようなSaaS事業、さらにはアパレルECまで……かなり幅広い経験をしているんですね。

サイバーエージェントやSansanなどデジタルの領域で必要とされたのは、論理。一方、マークスタイラーなどのアパレル業界で求められてきたのは感性。この論理と感性のバランスを両立させられることが、僕のキャリアの唯一無二の特徴だと思っています。

デジタル領域とアパレル業界ってお互いに相容れない部分があるような気がして。デジタル領域の人間からすると、アパレル業界は感覚ベースで業務を行っていて無駄が多いように見えがちです。一方アパレル業界の人間からすると、デジタル領域の人たちは理屈っぽいし堅苦しい印象でセンスを感じられない。両方の世界を経験してきた僕としては、お互いの言っていることはよく理解できるんです。ただ、そこをつなぐ人材って、これまでいなかったんですよね。有象無象にいるデジタル人材の中で、アパレル業界の感覚を理解してDXを推進できるポジションになれば、僕自身が世に与えられる価値も高まると思ったんです。


「BRANDIT system」が、アパレル業界の意識を変える?

――現在、アパレル業界にはどんな課題があるのでしょうか?

アパレル業界は、他の業界と比べると利益率に対する意識が低いと思っています。「いくつ売ったか、どれだけ売ったか」という売上げや消化率に関する数字が重要なKPIになっていて、そこにかかっている原価や手数料はなかなか考慮されません。例えば、同じECでも、自社ECではなく、いくつものショップが出店しているモール型ECに出店した方が、自社でマーケティングを頑張らなくても商品が売れるし、楽じゃないかと考えられがちです。でも、実際には手数料として30~40%近く引かれてしまうこともありますし、顧客データという資産も残りません。明らかにリターンが低いビジネスモデルなのに、「いくつ売ったか、どれだけ売ったか」という意識が強いと、その構造からなかなか抜け出せないんです。だからこそ、マーケティング視点でPDCAを回して自社のEC化率を上げていくことは、アパレル企業にとって健全な経営体質を構築するために重要なポイントだと考えています。

ただ、自社ECを運用する上での障壁もあって。というのも、アパレル業界は、サプライチェーンが長く、受注情報はECシステム、商品に関する情報は在庫管理システム、といったように個別最適化されたシステムが乱立してしまいがち。複数のシステムをAPIで繋ぎ込んでカスタマイズし続けた結果、複雑な構造になってしまっているケースが大半です。そのため、利益を計算したくても必要となるデータをすぐに取り出せないという課題があるんです。具体的に言うと、「いつ、どの商品が、どれだけ売れたか」はすぐにわかるけれど、「その時点で、その商品は、残り在庫いくつで、あとどれだけ売れば損益分岐点を超えるか」といったデータは、すぐには取り出せません。必要な場合は、別々のシステムからデータをそれぞれダウンロードしてExcelで加工して、抽出して……と、データ作成作業に多くの労力を割いているのが現状だと思います。本来、データは次の一手を打つために活用するもの。データを作成すること自体は、本質的な仕事ではないんですよね。



――そんな課題がある中、Branditはどんなソリューションを提示しているんですか?

僕たちが目指したのは、カート機能の提供に加えて、従来別々のシステムで管理していた項目を一元管理できるツールです。そして出来たのが、受注・原価・在庫管理・各チャネル別手数料・販売開始日・配送データ・出荷売上・顧客情報などを一元管理できる「BRANDIT system」です。ここには、サプライチェーン上のあらゆるマスタ情報が登録されているので、さまざまな情報を多角的に分析することができます。例えば、「1点ごとの粗利はいくらなのか」「どのチャネルが一番売れているのか」「販売開始から何日経過していて、在庫がどれだけ消化されているのか」など。このシステムはビジネス特許も申請中です。

そして、このツールの大きな特徴は、利益を可視化しやすい設計にしたことにあります。特にこだわったのが、勝ち負け表という機能。商品ごとに「あと何着売れたら損益分岐点を超えるか」「何着分損益分岐点を超えているか」を直感的にわかるように表示しています。こうすることで、従来意識されることの少なかった「利益」に対して自然と視線が向くようになると思っています。

もうひとつ、このツールで叶えたいのは、実店舗で発達した顧客管理の取り組みをオンラインのCRMでも再現すること。ショップスタッフって、どのお客さんが、いつ、どんな商品を買ったか、前回いつ来てくれたか、という情報をよく覚えているんですよね。その記憶があるからこそ、良い接客につながっているんです。でも、ECになると、よく実店舗を利用してくれているお客様も単なる「いちユーザー」に置き換わってしまう。そこってもったいないと思うんですよね。理想は、EC上で「いちユーザー」をロイヤリティの高いお客様に変えること。徹底的にお客様の利用状況をデータとして把握することで、EC上でも、実店舗のような“接客”が可能になると思っています。例えば「前回いつ訪問したのか」「何を買ったのか」「購入金額はいくらだったのか」といった情報はもちろん「初めて買った商品は何だったのか」「トップスやボトムスなど、どんなアイテムに興味があるのか」「毎月どのタイミングでサイトを訪れるのか」などの詳細な情報もBRANDIT systemで見える化しています。

――そのソリューションが浸透していくと、アパレル業界はどのように変わると思いますか?

モール型ECに依存せずに、自分の力で生き残っていけるブランドが増える可能性は高まると思いますね。また「なぜ売れたのか」という再現性の高い根拠が把握できるようになるので、バイヤーの属人的な感覚に依存することなく安定した経営を実現できるようになると思います。


オセロの面を一気にひっくり返す瞬間をつくり出すために

――次にBranditの組織の特徴について教えてください。

組織のバリューとして重視しているのは、“意思”と“意図”。「やりたい」という“意思”の中に、「こういう想いを叶えたいから」という“意図”がある人は強いんですよね。同じ行動を取っても、“意思”と“意図”を兼ね備えた人は、その結果を学びにしてどんどん自走していきますから。ただ「やりたい!」という意思一辺倒だったり、「なんでやるのか?」という意図を考え込んで行動しなかったりするのではなく、情熱と冷静さの両方をバランスよく兼ね備えていることが重要だと考えています。

Branditも、“意思”と“意図”を持った、バランス感覚に優れたメンバーが多いと思いますね。現状メンバーは全員30代以上で精神年齢の高い人間が揃っていると思います。



――どんな人だったらBranditで活躍できると思いますか?

前提として、やっぱりファッションが好きという要素は必要かな、と思います。もっと言うと、インフルエンサーやブランド事業者などファッションの世界で活躍している人たちをエンパワーメントしたい、ファッションの世界ならではのワクワク感をつくる側に立ちたいという想いを持っている人だと嬉しいですね。

僕たちは、D2Cブランドも運営しているんですが、そこで新たな取り組みをしてソリューション事業に活きるような知見を生みたい、という気概を持った人も歓迎です。例えば、実店舗をつくって、O2O(Online to Offline)のスキームを構築するのも面白いと思います。

――最後に、今後の展望と応募を検討している人にメッセージをお願いします!

アパレル業界は、国内市場が1.8兆円と言われている巨大市場にも関わらず、EC化率はわずか数%。まだまだレガシーが残っている、かなり伸び代の大きい市場だと思っています。

この市場で僕らが目指しているのは、アパレル業界のDXを推進して新しいスタンダードをつくること。かつて僕が所属していたSansanは、名刺管理システムで実績をつくった後、『ビジネスのインフラになる』というメッセージを掲げ、BtoB SaaS企業へというポジションを確立しました。この見事な転換は、「名刺管理は実現したかった世界観のひとつのピースでしかなかった」という驚きと納得を多くの人に与えたと思っています。Branditが世の中に与えたいのは、まさにこの驚きと納得。今は「営業支援システムの会社」として認識されていますが、近い将来「アパレル業界のDXを推進する企業」としてオセロの面を一気にひっくり返すような瞬間が訪れると思っています。その時を一緒に味わいたいと考える方は、ぜひ一度お話しましょう。

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