生き生きとしていて、誰にでも愛される人の背後にあるもの。
それは一見、自分が知っているその人とは相反するような「孤独を楽しむ心」「目の前のものに疑問を持つ心」。
それこそが、フラットに、そして自由に生きるということをさせてくれているのかもしれません。
今回、話を聞かせてもらったのは鹿取 牧子(かとり まきこ)さん。
私とほぼ同期入社ですが、アルバイト時代を含めると、10か月くらい先輩で、すでにさしみーというあだ名を持っていた、ブックマークス初の“新卒採用”の社員です。(※以下さしみー)
実は影武者でもいるのではないかと思うほどのスピードと行動力を持ち合わせているさしみー。
そんな彼女がなにを大切にして働いているのかを聞いてみました。
堀川:勉強カフェでアルバイトを始めたときと、ブックマークスに社員としてジョインしようと思ったときのことを聞かせてください。
さしみー:教育系のイベントで知り合った方が、当時いた社員と知り合いで、Twitterのリツイートでアルバイト求人を知りました。名前とコンセプトを見て「勉強カフェ」ってどういうところだろう?面白そうだなと思いました。
ちょうど授業がほぼ無くなって、定期のアルバイトができるなと思いはじめたころで。
堀川:どんな印象でした?
さしみー:チャラいマネジャーだなと。面接もカフェでやるし、新鮮でした。
私の入った青山スタジオは、当時ブース席もなく、普通のカフェの感覚でアルバイトを始めました。
研修を通して理念やコンセプトを理解して、本格的に面白いと思うようになりました。
社員としてジョインしたいと思ったのは、自分のやりたいことに近いと気づいたからです。
教育系に進みたいと思い就活していたのですが、教育実習で学校教師は無理だと思ったんです。
塾を運営する会社の内定が出ていたんですけど、成績のためだけに勉強するのは違うなと思っていて。
決定打は内定者会で「やっぱりこの人達と一緒に働くのはムリー!!」と思ってしまい、その場で「すみません」と内定辞退しました。
そこから自分がやりたいことを整理してみました。
教育には関わりたいけど、それは単に成績を上げるためだけじゃない勉強場所を作ることだと気づいた時、そういえば勉強カフェはそれだなと。
「中高生のための」という思いがあったので、「ずっといるつもりではない」ことも意思表示した上で、社員として働きたいと伝えました。
堀川:一昨年、大学時代に携わっていたNPOで中高生向け学習支援のボランティアをしてましたよね。その話を聞いて、学生向けサポートをブックマークスで事業化するなら協力したいと思ったのだけど、今は考えていない?
さしみー:関心はあります。
私が携わっていたのは貧困世帯やネグレクトのような、家庭に問題を抱える子どもへの学習支援でした。そういう層へのアプローチなので、ビジネスとして成立させるのは難しいかとは思っています。
多感な年齢の子たちの居場所になるので「そこに行けば知っている人に会える」安心感が大事だと思うんです。そうなると必ず場所と人に割く財源が必要になる。
でもシステムさえできれば、地方自治体や行政にアプローチできるかもしれないですね。
本当は世帯収入や親の職業などの垣根もない、みんなが多様な価値観に触れることができる場所になるといいんですけど、助成金をもらうとなると条件を絞る必要があるかな。
堀川:大学に行くとまた違うんですけどね。その垣根はあまりなくなって、いろいろな考えや事情があるんだなと、実感した気がする。
さしみー:そうですよね。全額奨学金で通っていたり、学校行きながらバイトで学費を稼ぐ人もいたり。
勉強カフェとの掛け合わせができたらおもしろいと思います。
そういう意味では“人”も“場所”も資源がないわけじゃないですね。大学生の会員さまから会費を払う大変さを伺ったりもするので、学生ボランティアは学割で勉強カフェが利用できる仕組みとかは現実的かも。
社会人の会員さまにも協力いただけると面白い化学反応がありそうです。もっといろいろな人と話しがしたい方、誰かに貢献したいと思っている方のエネルギーを分けてもらって。
堀川:そこに来る子たちは家族と学校の先生以外の大人をほとんど知らないから、仕事といえば親の職業か教師くらいしか思いつかない、というさしみーの話がすごく印象的。
さしみー:保護者が夜に家を空ける仕事だったり、仕事自体が不安定だったり、様々な理由で仕事をしていなかったり、そういう家庭が多いんです。
「自分たちも行かなかった」から、大学どころか高校も「必要ない」という考えで育っていたりする。親族や周囲の大人も同じような環境だったするので、他に知っている大人といえば中学までの学校の先生くらいで、身近な大人のバリエーションが少ないんです。
だから大学生ボランティアとの接点も、子どもにとってはけっこうな刺激なんですけど、参加する大学生は教員志望の人が多いし、社会人経験があるわけではないので、勉強カフェにいらっしゃるような、○○士になりたい、起業したい、英語を勉強して海外で働きたい、という多様な価値観を持つの大人や、多様な職種の人と接する機会にはならないんです。
逆に普通の大人たちも、そういう問題を知らない。だから、お互いに接する機会は面白いと思います。
堀川:それやりたい!社内ベンチャーで。
堀川:さしみーはここで働いていて大変だったとか、辞めようとか思ったことはある?
さしみー:一昨年ですね。週4の短時間正社員でNPOとのダブルワーク。その勤務日数で吉祥寺のマネジャー、直営店舗の統括、マネジャー候補の研修、の3役はかなりきつかったです。ブックマークスを辞めようとは思わなかったですけど。
ここ最近は私自身も勤務形態をフルタイムに戻して、一昨年より動けるようになり余裕は出てきています。
それにやっぱり、店頭で色々な方とお話する、この仕事自体がおもしろいというのは大きいです。
でも、そうですね……「辞めたい」は何度かあります。具体的な理由は思い浮かばないので「漠然と」という感じですね。ずっと「辞めたい」が続いているわけでもないので、入社するときに伝えた「ここにずっといるつもりじゃない」という思いの延長かもしれないです。
強いて言えば「どこに向かってるのかな?」と思う時ですかね。
あとは、青山スタジオの閉店は一区切りという感じはありました。私にとっては北参道(※1)よりも青山の閉店のほうがインパクト大きかったですね。
私は吉祥寺の出店が決まっていたので、気持ちは切り替えられましたけど。
堀川:青山のマネジャーだったから。愛着ある店舗がなくなると悲しいですよね。
そういえば山村さんも、社員に「どこに向かってるんですか?」と聞かれてびっくりしたって書いてましたね。
さしみー:社員も増えてきて、方向についての考えが全体に伝わりきっていないと思うときはあります。
もちろん、ミッションやビジョンは伝わっていると思うんです。
でも、勉強カフェのことが「知らないところで決まっている」と感じることも増えてきていると感じます。それを不安を感じる人はいるんじゃないですかね。
双方の橋渡しとして統括マネジャーや地域マネジャーを配置したはずなんですけど、難しいですよね。
山村さんの考えを全体に伝える時間とブレインが必要な気がする。
堀川:足りないのは納得感?
さしみー:納得感という言い方もできるし、説明責任と質問責任じゃないですかね。
共有したことの背景を伝えたり、共有を受けてどう感じたかを話したりする時間が取れるといいと思います。
あとはカルチャーですね。
新しい社員に、配属先決定後は教育担当としかほとんど会わなくなり「他の社員のことはあまり分からないんですよね」と言われたことがありました。
社員も地方の店舗も増えて、集まる頻度が少なくなりましたよね。もちろん状況が違うので、それはいいんです。
でもそれなら、ブックマークスのカルチャーを伝える機会は必要だと思います。
入社記念日をお祝いするアニバーサリーはそれを担っていた気がするんですけど、頻度が減って、自分がどんな人と、どんな空気で働いているのかが伝わりにくいのかなって。
アニバーサリーはすごくよかったと思うけど、価値を感じにくくなくなったのかな?「それは仕事ですか?」みたいな。
堀川:強制と感じたら「いわゆるお勉強」と同じですよね。
Wantedlyで選択できる会社の価値観で「ワークアズライフ」を選んでいて、私にとってブックマークスの仕事はまさにそうなんだけど、世の中には「ワークライフバランス」を大切に思う人もいて、どちらがいい悪いでなく、その《価値観》が相違していると心地がよくないかもしれないですよね。
「学びを通じて幸せになる大人を増やす」を掲げているから、やっぱり職場が勉強したことをアウトプットできる場になると理想だなと思ってます。
2020年から年4回、みんなが(※2)リアルに集まる日を作ろうと思っているから、質問責任、説明責任を果たせる時間や、カルチャーを伝える時間にしたいですね。
※1:勉強カフェ1号店の渋谷北参道スタジオ
※2:新型コロナウイルス感染拡大によりリアルに集まる日は実現できなかったが、2020年4月に『オンライン合宿』を開催
堀川:話は変わるんですが、さしみーが人生で一番がんばった事ってなんですか?
さしみー:小学3年生の時に親の転勤でまったく英語が分からないのにアメリカに飛んだことです。まるで宇宙人と話しているみたい。妹は1年生で、周りの子もアルファベットからのスタートだったけど、私はいきなりスペリングテストがあったり。
がんばったという意識は無いけど一番大変な経験でした。
人見知りだったし。
「人見知りではよくないよ」と気にかけてくれた先生がいて、3ヶ月後には英語でケンカしていたらしいですが。
堀川:さしみーが人見知り⁉
さしみー:北海道で生まれてそこから転々として、中学生の頃には人生で引っ越した回数と年齢が一緒ぐらいで、そんなこと言ってられなくなりましたけど。
堀川:じゃじゃじゃーん!お待ちかね!価値観カードです。
さしみー:難しい~これ。
(1人でブツブツと分類)
「正直」大事、「正義」は時と場合による。
「受け入れられること」は必ずしも大事ではない、「同情」は苦手。
「熟練」は大事だと思うが……
「誠実さ」は大事だけど「正直」を入れたからいいや。
「安定」はそんなに求めてない、「心の安らぎ」大事、「達成」は好き。
「ユーモア」「面白さ」大事!
「権力」いらない「富み」金持ちという意味ならいらない
堀川:「大切」に分類したものを「大切」と「とても大切」に分けてください。
さしみー:「貢献」「世話」「奉仕」「役立つこと」は似てるけど、「貢献」が一番しっくりくる。
堀川:似てる言葉の中から絞っていくやり方が私と似てる。
さしみー:「魅力」と 「美」 。魅力が“外見的に人を惹きつけること”なら「美」。
「現実主義」は大切というより、そうなんだよなって感じ。
「筋トレ」ってありましたっけ?
堀川:そんなのないよ……
さしみー:「健康」でしたね。
「ユーモア」より「面白さ」の方が好き。
「心の広さ」と「寛大」も似てる。
「柔軟性」は持ち合わせていたい。
堀川:もう一息。
さしみー:「柔軟性」は「変化」と近い気がする。
「美」は「創造性」に内包しよう。
「余暇」は欲しい。
ちょうど10枚です。
堀川:順番に並べてみてください。
さしみー:以前、会員さまに七夕の短冊を書いた頂いた時、「子供のためにお金が使えるようになりたい」と書いた方がいてかっこいいと思ったんです。それから、人の役に立つことをするときは「気前のよさ」が大切だと思うようになりました。
「創造性」という言葉は好きだけど“独創的なアイデア”と言われると少し違うな。作ることは好きだけど、それが独創的かどうかはこだわらないので。
堀川:「孤独」が大切なのが意外。
さしみー:上の5枚に入れてもいいくらい大事です。
シェアハウスに住んでいそうと言われるんですけど、絶対無理。一人の時間がないと駄目なんです。休日はほぼ予定を入れていますけど、一人の予定も結構あります。
堀川:でも他人と「協力」することも大事?
さしみー:孤独と協力は表裏一体で、インプットとスループットの時間とアウトプットの時間という感じですかね。
堀川:孤独でインプットしたことが創造性や協力の場面でアウトプットとしてつながってくるのか。
さしみー:新しいことを考えて創造して、作ったものを「貢献」につなげる。
人には「柔軟性」を持って接して、それを「面白」がる。
その資源を使って協力してまた何かを創造していくのが楽しいですね。
「健康」はその源で、もしかしたら一番大切かもしれない。(※3)「SRE」の“S”って感じですね!全ての土台。
堀川:上の5つはさしみーの生き方に感じる。
さしみー:気前のよさは現時点では目指すべき姿ですね。
貢献したいという想いが気前のよさにつながる。
化学反応を起こす人間でありたくて、その化学反応によって貢献できる仕組みを作りたいので、自分自身の創造性とは少し違うんです。
「余暇」は、これが「面白さ」や精神的な健康にもつながるし、健康だから余暇も楽しめる。 精神的な健康に「友情」も欠かせないです。
堀川:「冒険」「成長」「正義」が早めになくなったのも意外でした。
さしみー:「成長」はしてから分かると思っているので、成長のために何をするかとはあまり考えないんです。変化という言葉で巻き取っているかも。
堀川:孤独とか創造性とかすごく共感できるものもあります。直前になくなっちゃったけど「美」や「知識」も。
一番印象的だったのは「決まり事に従わない」が直前まで残っていたこと。ネガティブなイメージがあるのか、みんなけっこう早く捨てちゃうから。
さしみー:「美」も大事ですよね。「知識」も気前よく分け合いたいし。
「決まり事に従わない」私は大事です。なんでだろう?と疑う心は大切だと思ってます。
堀川:さしみーはそのバランスをナチュラルにとっていそう。
さしみー:たしかに「これじゃなきゃダメ」みたいにはならないですね。
余暇って、面白がれるものだと思うんですけど、それをいっぱい持っているからかも。それぞれの場所に知り合いがいるから多様な価値観を面白がれて、それがあるから極端にならないのかな。
堀川:1つのことを深くはどう?
さしみー:深くも好きなんですけどけっこう飽き性なんですよね。
仕事で深く長く関わっていきたいと思ったのが教育です。
習い事を始めても引っ越しが多くて長く続けられなかった背景もあるかも。だから「伝統」や「熟練」を早く手放したのかもしれない。柔軟さや決まり事に従わないに相反するような気もしました。
でも、熟練は自分の生きてきた中にはない価値観で憧れはある。そういう意味で残してもよかったかも。
堀川:野球はさしみーの中では深い?
さしみー:そうですね。もう15年ぐらい。趣味の中で長いものと言ったらスポーツ観戦とライブかな。
堀川:ライブもジャンルが幅広い印象。
さしみー:そうなんですよね。邦楽も洋楽も、ポップスもロックも。この前、会員さまに誘われて初めてモーニング娘のライブに行ったんです。面白かったぁ!プロのアイドルすごい!!
そうやって新しい分野に足を踏み入れて、なんでも面白がってみるのが好きです。
堀川:ブックマークスでは、どんな場面で価値観が満たされていると感じますか?
さしみー:いろいろな方と接するので柔軟性は間違いなく満たされています。
店内企画とか色々な事にチャレンジできて、そういう意味で創造性も満たされてる。その結果で来店した方たちに面白がってもらえるし、事業自体も社会に貢献していると感じて満たされてますね。
堀川:ありがとうございました。
※3:勉強カフェの行動基準。Safety(安心・安全)Respect(敬意をもって)Enjoy(楽しく笑顔で)の頭文字
堀川:最後に、さしみーがブックマークスを誰かに紹介するとしたらどう話しますか。
さしみー:いろいろな意味で「自由」です。
シフトも割と自由に組めるし、複業や限定正社員/短時間正社員があって働き方も自由。そこが特徴だし、推しポイント。
自由度が高い=フリーダムではなく、いかようにも「自分でコントロールできる」とう感じが、他の会社とは少し違うと感じています。
堀川:他の会社にも行ってみたいなと思うことは?
さしみー:普通の企業での会社員は向いてないという自覚があるんです。周りの人にも「就職するの?」「起業するかと思った」と言われることが多かったので。
堀川:意外!さすが“決まり事には従わない”人。 ブックマークスはそんな人が多いかもしれない。
さしみー:喧嘩するぐらいの勢いのときもありましたよね。「決まり事に従わない」というより「え?決まりあったの?とりあえずやってみた」みたいな。
堀川:大事な気がする。
さしみー:いたずら好きかどうかはここに通じる部分かも。ここまでやっちゃっていいの?というリミッターを外した方が面白いことができますね。
堀川:これから採用面接で聞いてみる!
「自由度が高い=フリーダムというわけではない」というの言葉が印象的だった。
組織になじめなかった経験がある人は、自分が不適合だったと思うこともあるかもしれない。でもそれは、組織のカルチャーと合わなかっただけということもある。
では、ブックマークスのカルチャーはなんなのか。それはクレドのCORE VALUEの中にある。
中でも《ENJOY:楽しむということ》《ON MY OWN:自分で決める》への共感は、ワークアズライフを体現する自由度の高い環境に迎え入れるうえで見落とせない、すり合わせの必要な価値観かもしれない。