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アシェットデセールの魅力を伝えたい

DRAWING HOUSE OF HIBIYA(以下、DRAWING)には森井美紀というパティシエがいます。バルニバービの中ではめずらしい「アシェットデセール」を提供するパティシエ。「皿盛りデザート」という意味を持つアシェットデセールはテイクアウトできるデザートたちと違い、提供されたその瞬間しか味わえない五感を震わせるデザートです。彼女がアシェットデセールにかける想いとは?

アシェットデセールとの出会い

森井さんがアシェットデセールと出会ったのは専門学校を卒業してから3店舗目のお店でした。それまではホテルやカフェレストランでケーキやパフェなどのデザートを提供。アシェットデセールに出会うとその魅力にハマっていきます。そして、森井さんにとって大きな転機となるお店「JANICE WONG」と出会いました。世界的に注目を集めるパティシエ、ジャニス・ウォンが自らの名前を店名に冠した日本初の出店。特にデザイン性の高いことで有名なジャニスのお店で森井さんは先輩のシェフに誘われオープニングスタッフとして働くことになったのです。

森井: JANICE WONGでは枠に囚われないデザートを学びました。それまでは、プリンはこう!モンブランはこう!という、昔ながらの形から出れないでいた。でも、決まりはなくて、もっと崩していいし、食材でいえば、フルーツとか甘いものだけを使うのではなくて、スパイスを使ったり、お野菜を使ったり、ハーブを使ったり、お酒を使ったり…。なんでもありだと教えてくれたんです。結局それがデザートになればいい。


アシェットデセールはお客様の目の前で完成させることが多いデザートです。液体窒素を使ったり、香りをプラスしたり。たった今目の前でできあがるデザート。それがアシェットデセール。

森井: 記憶に残るデザートってなんだろうって考えるんです。そうすると、やっぱり新しい刺激だったり発見だったりがあって「楽しい」と思えるデザートが残るのかなって思う。だから、見てわかる味ではない面白い組み合わせ、美味しさは大前提として、その中でも「驚き」を提供したい。


バルニバービでアシェットデセールを提供する難しさ

その後、バルニバービと出会う森井さん。紹介でした。最初はDRAWING自体知らなかったそうです。

森井: アシェットデセールを出したことのないお店。バルニバービそのものもDRAWINGの規模も大きかったので正直入社するつもりはあまりなかったんです。でも、宮本シェフの「アシェットデセールをうちでも出したい」という想いと私のやりたいこと、目指すところが重なり意気投合したので入社を決めました。

森井さんの入社は丁度GW開け、オープンから1ヶ月ほど経ったときでした。お店は有難いことにとても忙しく、当時は1日中カフェメニューを出していたこともあり森井さんは仕込みやケーキ作りなどに追われていました。

森井: 今のままでアシェットデセールの魅力を本当に伝えられるのか、正直悩みました。JANICE WONG時代の先輩にも相談したりして…。無理かなと思った時もあったんですけど、このキャパのお店でもできることがあるだろうとアドバイスもいただいて自分の中で色々改革をすることに決めたんです。

森井さんはディナータイムでのカフェメニュー廃止を提案。パフェは残したものの現在では3種類のアシェットデセールのみにしました。また、予約限定でアシェットデセールのコースを始めました。

森井: 正直、ここまでやってお客様が注文してくれなかったどうしようって不安でした(笑)でも、今ではディナーのお客様の多くがデザートを注文してくださる。需要はちゃんとあるんだと確信しました。

バレンタインデーやホワイトデーにはアシェットデセールの特別コースを企画。多くの方に喜んでもらえたと森井さんは笑顔で話します。

森井: まさかここまで自分のやりたいことが実現できるとは思っていませんでした。でも、宮本シェフやスタッフの皆、今一緒にDRAWINGでやってくれているJANICE WONGの後輩、多くの人の力があって実現できた。本当に感謝だなと思います。



何度も壁にぶつかる。それでも食べにきてくれる人のために

パティシエ人生は順風満帆なわけではなかったと森井さんは話します。

森井: 新卒で入ったホテルは4ヶ月くらいで「やめたい!」と思いました。それまでは有難いことに大きな失敗のない人生だったんです。でもホテルでは違った。先輩にすごい怒られるし、「自分ってこんなにできなかったんだ」って気づいて辛かった。必要とされていないと感じたんです。

それでも辞めずにパティエとして働き続けることを選んだのはお母様の言葉あったからだと話します。

森井: 私の母は、あまり聞いているだけで特に何か、アドバイスとかを言うタイプではなくて。逆に父は親身になって聞いてくれるタイプだったので色々話していました。ただホテルを「やめる!」と話したとき、母が「まだあんたの作ったケーキ食べてないんだけど」って言ったんです。それを言われたときに、もうちょっと頑張ってみようかなって。父にも「1年は頑張ってみなさい。もしそれでも気持ちが変わらなければやめていい」と言われたので続けてみました。結局、どんどん楽しくなって、任される仕事も増えた。本当にやめなくてよかったと思います。

バルニバービでも先述した通りアシェットデセールを本格的に出した前例はなく、試行錯誤しながら悩みながら進めてきた森井さん。森井さんが頑張ろうと思うのはお客様のためだと話します。

森井: この前、名古屋から19歳の女の子がアシェットデセールのコースを食べにきてくれました。名古屋から東京って、往復で1〜2万円くらい交通費がかかるじゃないですか。朝4時に出て、日帰りで食べ歩きにきたそうです。DRAWINGに来る前にも2件くらい食べて、うちで食べて、そしてすごい喜んでくれた。これだけの時間とお金をかけて、東京にあるたくさんのお店の中からDRAWINGを選んでくれた。それがすごく嬉しかったし、もっと頑張らないとなって改めて思いました。



アシェットデセールを知らない人に食べて欲しい

森井: アシェットデセールだけをカウンターでやりたい。

森井さんは最終的な目標をこう話しました。

森井: お客様につくっている工程も見て欲しいんです。何もないお皿から一つのデザートができあがる。そのライブ感を楽しんで欲しい。それがカウンターでアシェットデセールを提供したい1番の理由です。デザートを待っている時間も楽しいものにしたい。

アシェットデセールの魅力は「テイクアウトでは表現できない。その瞬間でしか味わえない、おいしさ、感動、体験を伝えられること」と森井さんは話します。

森井: アシェットデセールのコースを食べにくるお客様は同業者だったり、アンテナの高い方が多い。とても嬉しいのですが、私は「アシェットデセールって何?」っていうお客様にも魅力を伝えたい。広めたいんです。DRAWINGでもディナーのお客様は「アシェットデセール」という言葉知らなくても注文してくださいます。喜んでくれている姿をみると嬉しいし、需要があるなと感じているんです。だから、もっといろんな人に食べて楽しんで欲しい。

さらにお客様だけでなくパティシエにも伝えたいと話します。

森井: アシェットデセールはパティシエの基礎があれば、そのアレンジなので誰でもできるんです。ただ提供するパティシエが少ない。だから、同業者にもアシェットデセールの魅力を伝えたい。

つい先日もアシェットデセールを提供したいパティシエが森井さんのもとを訪ねたそう。やりたいと思っているならできる。もちろん、たくさん食べ歩きして学び続けることは必要だけれど、とも話します。

森井さんの存在はバルニバービでも大きく、京都菊水の大筆シェフも京都に呼び寄せてコースのデザートをお願いするほど。

森井: 私は好きでパティシエの道を選んで、今も続けている。デザートを通して、いろんな人に喜んでもらえたらいいなと思いますし、それが私の仕事の原点なのかなって思うんです。


DRAWING HOUSE OF HIBIYA
パティシエ 森井美紀

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