アクセンチュアとマイクロソフトの戦略的合弁会社として2000年に米国で生まれたアバナード。「戦略×テクノロジー」の支援により、これまで多くのお客様のイノベーション創出を支えてきました。
AIを業務に取り入れる企業は増えています。一方で、実証実験(PoC)にとどまり、個人の生産性向上が会社全体の業績につながりきっていないケースも少なくありません。 この「分断」をどう越えるのか。システム導入の会社から、企業変革を支援する会社へ。アバナードはAIを「ツール」ではなく「仕事を変える手段」として捉えています。今回は、代表取締役社長の鈴木淳一に、AI時代の企業変革と、その担い手に求められる姿勢を伺いました。
▼プロフィール
氏名:鈴木淳一(Junichi Suzuki)
役職:代表取締役社長
個人の生産性が上がっても会社の業績が変わらない理由
── AIの活用が広がる一方で、現場では手応えの薄さも聞かれます。鈴木さんはいまの状況をどう見ていますか。
AIの活用によって、個人レベルでは生産性向上の手応えを得る企業が増えています。一方、それを会社全体の業績や利益に結び付けるところまで進められていないケースもあります。ここに大きな「分断」があると感じています。
なぜかというと、AIを導入するときに、そもそも「何をもって成功とするか」が定義されていないからです。 「業績を上げるために入れる」という出発点が抜けたまま、ツールとして配ってしまう。だから、目の前の生産性は上がっても、その先にある会社全体の業績が変わらないんです。
これは、RPAが広がったときにも見られた構図です。個別業務の効率化には成功しても、そこで生まれた余力をどこへ振り向けるかまで設計しなければ、会社全体の成果にはつながりにくいからです。
今後、人とAIは当たり前のように協働していきます 。今まで10人でやっていた仕事を、AIを活用して5人で回せるようになったとする。そうすると、5人の人は別の仕事ができるわけです。コストカットの発想なら「5人は別の仕事へ」で終わりですが、業績を上げる視点に立つと、その後の選択は変わります。
多くの企業には、成長を牽引している事業や、より大きな需要に応えられる可能性を持つ領域があります。 そこはたいてい忙しくて人が足りず、本当はもっと受注できる仕事を取りきれずにいるケースが多いです。
だったら、その5人を成長領域へ動かせばいいという発想です。その部門はもっと伸びるし、元の仕事も、AIと人が協働することで、5人で担えるようになります。こうした部分まで踏み込んで組織を再設計できるか、そしてAIを使って組織をどう再定義するかが、いま経営者に問われていると思います。
── それは「本当の意味でのAI投資」だと思うのですが、できる企業とできない企業の違いは、どこにあるのでしょう。
PoCで止まるプロジェクトと、その先へ進むプロジェクトの違いだと思っています。PoCで止まるものは、あくまで「技術を導入するプロジェクト」なんですね。一方で、AIが「投資」になっているものは、「仕事と責任のあり方そのものを再設計するプロジェクト」になっている点が決定的に違います。技術を入れることがゴールではなく、仕事の形を変えることがゴールなんです。
「AIの会社ではなく、仕事を変える会社」というアバナードの立ち位置
── アバナードでは、自分たちの仕事をどのように定義していますか。
私たちの仕事は、「お客様のビジネスを変えること」だと考えています。「システムを導入すること」ではありません。
もちろんこれまでも、システムを入れることでお客様の業務は変わってきました。ただ、これからのAI時代は、問いそのものが変わります。「AIをどう使うか」ではなく、「AIに何を任せ、どこで人が判断するか」が重要。つまり、人とAIの役割をどう再設計するか、という問いです。ここに向き合うのが、これからの私たちの仕事だと思っています。
言い換えれば、アバナードは「システムを導入する会社」から「企業変革を支援する会社」へと変わっていきます。だから私は、「この会社はAIの会社ではなく、仕事を変える会社なんだ」とよく話しています。
── そうした変化に対応するため、社内ではどのような取り組みをされているのでしょうか。
私たちは「クライアントゼロ」という言い方をしています。まず自分たち自身が新しいテクノロジーを先行して活用し、その効果や課題を自ら確かめたうえで、本当に価値のある知見をお客様に届ける、という考え方です。 自分たちで使っていないものを薦めるのではなく、自社で確かめたことを届ける。この順番を大事にしています。
業務・システム・定着まで、アバナードが最後まで伴走する理由
── 「業績につながるAI」を実現するには、何が必要になりますか。
組織の再設計まで踏み込むことです。先ほども申し上げましたが、これまで10人でこなしていた仕事を、AIを活用して5人でこなせるようにし、浮いた5人の労力を、会社の成長領域へ再配置するといった選択を取ることです。
単なるコストカットではなく、人をより価値の高い場所に動かして業績を上げる。ここまでやって、はじめてAIが業績に効いてきます。逆に言えば、そこまでやらないと生産性は上がったのに業績は変わらない、という状態になります。
ただ、ここに到達するには、2つの壁があります。ひとつは現場の「不安」で、もうひとつがガバナンスやセキュリティの問題です。大企業では既存の統制や関係者との調整に時間を要することがあり、一方、企業によっては投資対効果や導入負荷が大きな判断材料になります。この現実を無視して大きな絵だけ描いても、組織が動くことはありません。ワークショップで業務を描き直しても、AIが部分的に登場するだけでプロセスは根本的に変わらないのです。
── だからこそ、進め方に工夫が要るんですね。
はい。だから私たちは、いきなり大きな変革を掲げるのではなく、スモールスタートを勧めています。まず1つか2つの業務に絞る。そして効果を「生産性」ではなく、売上・利益率・ROIといったビジネスの言葉で定義します。小さくても、業績に効く形で始めることが大切です。
そして、AIを導入して終わりにはしません。AIも組織も変わり続けます。だからこそ、導入したあとも一緒に改善し続けることが大事で、継続的に伴走する関係でありたいと思っています。業務の再設計からシステムの実装、現場への定着まで伴走するのは、そこまで取り組まなければ、本当の意味で「仕事が変わる」ところには届かないからです。
── そうした変革を担う人には、どんな力が求められますか。
情報を探索し、整理し、一定の形で提示するスピードでは、AIはすでに人を上回る場面が増えています。一方、その答えが正しいか、目的に照らして適切かを判断するのは人です。だからこそ、人には「AIの答えを疑い、検証する力」が必要だと考えています。そして、AIの答えを鵜呑みにせず検証するには、土台となる専門性が必要です。その専門性があって初めて、技術的に正しいか、ビジネスとして意味があるかを判断できます。この点は、AIの時代になっても変わりません。
そのうえで、これからはもう一つ、「ビジネスとして評価する力」が上乗せで求められます。技術的に正しいかだけでなく、それが事業として意味があるのかを見極められること。この二つを併せ持つ人が、これから強くなります。
異なる人との対話が生む「ノイズ」を、変化の起点にする
── マインドの面では、どういった素養が求められるでしょうか。
「グロースマインドセット」「好奇心」そして「オーナーシップ」ですね。具体的には、AIの活用に距離を置くのではなく、AIがある前提で自分の仕事をどう変えるかを考えられる人です。また、専門性という軸を持ちながら、既存の知識の枠を飛び越えられるかも大事な観点です。
日常に置き換えると、たとえば、ERPのエンジニアが、CRMのコンサルタントやクラウドインフラの担当者と、専門領域を越えて議論できる。そういう人が変化を起こせると思います。
もう一つ大事にしているのが、人と人の会話に宿る「ノイズ」や「違和感」の価値に気づける人です。AIと話していると、常に"それっぽい正解"が返ってきます。これって、いつも正論なんですよね。でも、人と人の会話には、ちょっとした違和感やノイズがあります。これを拾い上げ、「その発想、自分にはなかったな」という気づきにつなげることが大事なんです。
── 違和感やノイズを普段から拾い上げるためにできることは、どういったことでしょう。
できるだけ自分と違う人と話してほしいと思っています。専門性が近い人との会話は心地いいのですが、まったく違う専門性の人、育った文化が違う人との会話こそが、実は大事なインプットになります。
ChatGPTと話し、Claudeと話し、Geminiと話し、それをまた別のAIに伝える…といったやり取りをしても、これはただAIと会話しているだけにすぎません。結果として、それらしい資料はできても、人の心に届きにくいことがあります。 AIとの対話だけで考えを深めようとすると、一定の完成度には到達しても、自分の前提を揺さぶるような発見が生まれにくい場合があります。だからこそ、普段あまり話さない人とも積極的に対話し、自分とは異なる経験や視点に触れることが大切だと考えています。
会議以外の何気ない会話が、実は大事なインプットの役割を果し、「ノイズ」や「違和感」というものに気づくと思います。
会議室からは「会議室の会話」しか出てこないと感じています。年次や役割の異なるメンバーとフラットに話す場でこそ、大事な気づきがあると感じています。
変化のオーナーとして、アバナードの未来を共につくる
── 最後に、アバナードでは、どのような人と一緒に働きたいと考えていますか。
自分の専門性を大事にしながら、「仕事を変えたい」「社会を変えたい」という意思を、自分の言葉で持っている人と働きたいです。知を囲い込まず共有し、国内外の違う経験を持つ仲間の世界に、自分から飛び込んでいける人。そういう人となら、面白い変化を起こせます。
私がいつも言っているのは、「私が将来をつくるのではない。皆さんがつくるんだ」ということ。一人ひとりが、変化のオーナーであってほしいんです。
また、選択肢の広さも、この会社の魅力だと思います。ビジネスコンサルティングとテクノロジー、双方の視点を身に付けながら、キャリアの幅を広げていくことができます。もちろん、一つの専門を極める道も選べます。世界各地の仲間と協働する機会があり、国内だけに閉じず、異なる市場や文化、専門性に触れながら挑戦できます。
私たちも変化の途中にいます。アバナードをるのは私ではなく、アバナードで働く一人ひとりです。 そういう意識を持って、メンバー自身に変化のオーナーになってほしいと思います。
※本記事は連載企画として発信しています。アバナードが目指す企業変革を支える「アドバイザリー」の役割については、こちらの記事もぜひご覧ください。
→ コンサルとシステムの分断をなくす。業務と技術の両面から価値を生み出す、アバナードのアドバイザリー | アバナード株式会社