鍵井 靖章 | Atmoph Window
水中写真家。自然のリズムに寄り添い、生き物に出来るだけストレスを与えないような撮影スタイルを心がける。オーストラリア、伊豆、モルディブなど拠点を移しながら水中撮影に励み、1998年からは国内を拠点に活動。
https://atmoph.com/ja/views/videographers/Yasuaki_Kagii
ハードウェアエンジニアの久保田です。僕は入社前からのAtmoph Window ユーザーで、初代機もAtmoph Window 2も所有しています。そんな一人のユーザーでもある僕も待望していた「アップロード機能」がシステムVersion3.2でリリースされました。自分の撮影した風景を Atmoph Window で楽しめるようになり、Atmoph Window の魅力がまた一つ増えました。ユーザーとしてうれしい限りです^^。
僕はこのアップロード機能を備えて、風景映像を撮り貯めてきていました。風景映像の撮影方法の王道は、カメラと三脚を使ったもの。ブログ「アトモフの風景を、撮りに行こう」で詳しく説明されていますが、三脚でカメラやスマホを固定して、風景を定点撮影します。僕も以前アトモフに所属していたカメラマンから譲り受けたカメラで撮影しています。慣れない定点撮影で失敗ばかりですが、時々うまく撮れると気持ちが良いです。
カメラと三脚で撮影したオリジナル風景(使用機材: SONY α7R II + 三脚)
ですがAtmoph Windowで観たいけれど三脚とカメラではどうにも撮影できない風景が存在します。そういったものを何とか撮影するために、これまで色々な工夫をしてきました。同じような問題を抱える方が今後出てくるかもしれませんので、参考になるかはわかりませんが、このブログでは僕が実践してきた2つの「ちょっと変わった風景撮影方法」を紹介します。
1. ドローン
僕はスキューバダイビングが好きで、海や島によく旅行に行きます。前出の「カメラと三脚で撮影したオリジナル風景」のように、三脚とカメラで海の風景を撮るのも良いものです。ただこの撮影方法では、地上のカメラから撮影しますので、水面とカメラの距離が近く、また撮影方向と水面が平行な撮影になりやすいです。この場合は光の反射や屈折の影響で、水中の様子は映像に映らないことがほとんどです。
海は高台から見下ろすと、水中の様子が見えて、水底の地形や珊瑚まで見えることもあります。また水底が砂地で浅い海を見下ろすと、色がエメラルドグリーンに見えたりします。そういった風景も綺麗ですので、ぜひ撮影したいなと思っていました。海の近くに高台があればカメラでも撮影できますが、島になるとそういった場所が無いことも多く、また島の外から島自体を見下ろすような高台は当然無い(海の上に飛んでいる天空の高台になってしまいます…)ので、カメラによる撮影は困難です。
これを撮るために練習したのが「ドローン」でした。高台が無くても上空から風景を撮影できますので、海や島を見下ろす撮影に適しています。
一見操縦が難しそうに見えますが、昔のラジコンヘリコプターと違い、ドローンはホバリング(空中での静止状態)を自立制御で行います。つまりコントローラから手を離すと、空中で静止した状態を維持します。そのためドローンを狙った位置に移動させて、撮りたい風景にドローンのカメラを向けて録画を開始した後は、コントローラを触らずに放置しておけば、風景の定点撮影が可能になります。放置後は自分の好きな方法で時間をつぶすことができますので、三脚とカメラによる撮影で「三脚とカメラを狙った位置に持っていって、撮りたい風景にカメラを向けて録画を開始した後は、カメラは触らずペンパズルや小説で暇つぶし(ブログ「アトモフの風景を、撮りに行こう」 より)」と同じですね。
ドローンで撮影したオリジナル風景 1
使用機材( DJI Mavic 2 Pro)
風が強かったりすると映像がぶれたりもしますが、最近のドローンは飛行精度やジンバル(ドローンが揺れてもカメラの向きを一定に保つ装置)の進化で、ある程度の風の中でもぶれの少ない定点映像が撮影できます。
ドローンで撮影したオリジナル風景 2(使用機材: DJI Mavic 2 Pro)
飛行物を操縦することになりますので衝突や落下のリスクもありますが、最近のドローンは障害物検知や回避の機能も進化しており、安心して飛ばすことができます。(以前は何台か落として痛い目も見ました…)
映像の品質も進化しており、前出の風景撮影に使ったドローンで 4K 30fpsの撮影が可能、すでに発売されていますその次世代機ですと、5K以上、60fps以上で撮影できます。
「高台は無いけれども見下ろすように風景風景を撮影したい」、「地面が無いところから風景を撮影したい」、といったケースがありましたら、ドローンも検討してみてください!
※ ドローンを利用する場合には、航空法を始めとするさまざまな法律を遵守する必要があります。
2. 360度カメラ
Atmoph Window では僕も大好きな海中の風景をいくつも見ることができます。
僕もオリジナルの海中風景として魚や珊瑚を撮影したいとトライしましたが、次の問題にぶつかりました。
僕の友人の宮崎県のエンジニア(Atmoph Window 2のユーザー)は、これを「360°カメラによる定点撮影」で解消して、素敵な風景映像を撮影していました。
360°カメラは、その名の通りカメラを中心として周囲360°の全方位の映像を一度に撮影できるカメラです。撮影した映像からは、その一部を切り出して2D映像にして、ディスプレイで再生できます。つまり「全方位の風景をまとめて撮影しておいて、後から良いところを風景映像として切り出す」、という撮影方法が可能になります。一つの映像からいくつもの風景映像を切り出すことも可能です。
全方位が常に映っていますので、「どこから出てくるか、どう動くかわからない」魚も撮り逃すことはありません。またカメラを設置後、そこから人が離れることで、「カメラの近くに人間がいると、魚が警戒してあまり動かない」も解決できます。
僕はこの友人に教えてもらいながら、水中360°カメラ定点撮影を練習中です。今回はこの方法で撮影した風景を紹介します。
この撮影方法の課題として、解像度の高い風景映像が得にくいというものがあります。360°カメラはホビー用製品の場合、映像は360度全体で5K~8K程度の解像度になります。よってその一部を風景として切り出すと、カメラやドローンで撮影した風景と比べて、解像度が低くなります。
また切り出した風景映像の歪みも課題です。ホビー用製品は基本的に片面180°を撮影する魚眼レンズを二つ使って360°を撮影しています。魚眼レンズはそもそも絵を歪ませて広範囲を映すものです。ここから2Dの風景映像を切り出す際、ソフトウェアで歪みの軽減処理は施されますが、それでも歪みが残ります。
こういった課題はあるものの、全方位を逃さず映像に残すことができるという価値は他の撮影方法には無いものです。
「どこから出てくるか、どこで起きるかわからないものを入れた風景を撮影したい」ケースがありましたら、360°カメラも検討してみてください!
※地上の風景でも、動物などを風景に入れたい場合はこの方法が役に立つケースはあります。次の写真は360°カメラで田んぼの風景を撮影した映像のスクリーンショットです。たまたま飛んできたトンボがカメラに留まり、映像に映っています。360°カメラの歪みもあってレンズに留まってしまうとさすがに変ですがw、このように動物や虫といった生き物も入れた風景映像も狙えます。