クライアントの本質的な課題に向き合い、高いサービスクオリティを保つオーリーズ。その支援品質を高めているのが、メンバーの思考力とコミュニケーション力です。
オーリーズでは、どのような研修でメンバーの能力を伸ばしているのでしょうか。今回はポータブルスキル研修(以下、PS研修)を設計した藤井さんと中野さんにお話を伺いました。
藤井 貴志(写真左):株式会社リクルートキャリアに入社し、WEBサービスの開発ディレクターとして従事。現在はオーリーズのCHROとして「あなたを、叶える。」を体現する組織設計を担う傍ら、アドオペレーションチームのマネージャーも務める。PS研修の全体設計と進行管理、社内連携を担当。
中野 亮(写真右):新卒でマーケティングDX支援サービスを提供する企業に入社。広告主・広告代理店向けに広告効果測定プラットフォームの営業を担当する。 業務を通してデジタルマーケティングの世界に強い興味を持ち転職。オーリーズ入社1年でアシスタント・マネージャーに就任し、チームのマネジメントに尽力している。オーリーズの人に関わることに挑戦したいと考え、PS研修のカリキュラム作成に挑戦。
*ポータブルスキル:課題設定力やコミュニケーション力など、業種や職種が変わっても活かすことのできる、持ち運び可能な汎用性の高いスキルのこと
「50人の壁」で感じた“ポータブルスキル”の重要性
ー 本日はよろしくお願いします!まずは、PS研修の概要を教えてください。
藤井:PS研修は、その名の通り「ポータブルスキル」を身につけてもらうための研修です。入社1〜3ヶ月目のストラテジストを対象に、必ず受講してもらっています。
全部でDAY4まであり、「思考術」と「コミュニケーション術」を学べるプログラムとなっています。
ー PS研修を実施することになった背景はなんだったのでしょうか?
藤井:「支援クオリティや現場フィードバック」についてマネージャー会議で議論されたことがきっかけでした。
それまではマネージャーや役員が暗黙知な部分も含めて濃いフィードバックを出来ていたのですが、当時は組織規模が50名になったばかり。かつリモートワークの導入期で社内コミュニケーションの頻度も低くなっていたタイミングでしたので、組織的なサポートが必要になってきたフェーズでした。
中野:急激に新入社員が増える中で、もう少し詰め切った方が良いのではないかと思うことが多くなっていましたよね。それは広告運用のスキルというよりもテレワーク下における仕事の進め方であったり、基本的な報連相の仕方であったり……。
当時、私はマネージャーではありませんでしたが、後輩が増えていく中で「このままいくと、支援品質が一定にならないのではないか」という危機感を覚えていました。
藤井:社内のヒアリングでも、中野の話と同じような声が聞こえてきました。広告運用のスキルよりももっと根本的な部分で認識を合わせる必要があるなと。それであれば、ビジネスパーソンとしてのポータブルスキルを型化して“共通言語”を作ろうと、PS研修がスタートしました。
研修後の行動を変えるコンテンツ作りを意識
ー PS研修はどのように作っていったのでしょうか?
藤井:まずは、PS研修で扱うべきテーマを検討しました。書籍等で紹介されるフレームワークを活用する「理論」面と、メンバーからのヒアリングで得られる「現場の声」、両方向に目を向けながら策定していきました。結果、思考術とコミュニケーション術を養ってもらえるような枠組みとなりました。
中野:私は藤井が作り上げた枠組みに「中身」を詰めていく作業を担当しました。書籍を参考にしつつ、藤井がどのような意図を持ってテーマ設定をしたのかを正しく理解するところからスタートしましたね。
苦労したのは「ロジカルシンキングを分析に活かす」というコンテンツを作る際に「MECEやピラミッド構造などのフレームワークは、どんな分析をする時に使っているんだっけ」と考えながら、中身を作らないといけなかったところ。兎にも角にも「実務に活かせる」ということを意識していました。
何度も藤井に相談させてもらって、その度に微調整して……。トライアンドエラーの繰り返しでしたね。
ー PS研修を作る中では「実務に活かせる」ということをこだわっていたのでしょうか?
藤井:仰る通りです。常に意識していたのは研修の効果最大化、研修転移です。「研修で学んだものの、実務に活かされない」という負は、研修の界隈ではよく聞く話だと思います。
重要視したのは「研修後に行動がいかに変わるか」です。そして、行動を変えられるコンテンツであるためには、目の前の実務との関連性があるかが問われます。実務と研修内容が密接であるほど、行動も変わりやすくなるであろうということですね。
なので、研修はすべてワーク形式にしましたし、ワークの内容も実際の広告運用業務で使っているデータをカスタマイズして活用するなど、実務寄りになるよう完全にフルスクラッチで作成しました。
中野:研修内容にフィードバックをもらった時も「実務から離れているとピンとこないから修正しよう」という話をしていましたよね。かなりこだわった部分だと思います。
藤井:現場に戻ったときに活かせるように、研修直後に「この研修で学んだことを、どんな場面で活用できそうか?」という振り返りを言語化してもらう設計にしましたし、現場でフィードバックをする側であるマネージャーにもこの研修内容を別途インプットしています。
PS研修がメンバー間の“共通言語”になっている
ー PS研修を実施してみて「変化」を感じていますか?
中野:変わったと思います。マネージャーとしてメンバーにフィードバックをする場面があるのですが、その時に「PS研修でやりました」というフレーズが出てくるようになったんです。
また、マネージャーと研修受講メンバーの間で「矛盾のない状態」ができたので、私も「PS研修でもやったと思うけど」と、共通の例をもとにしてメンバーにフィードバックできるようになりました。
藤井:私も中野と同意見です。研修によってどのくらい変わるかは人それぞれですが、「報告内容がわかりやすくなった」という声をクライアントからいただくメンバーも出てきているので、そういった声を聞くと嬉しいですね。
一番大きな変化はやはりコミュニケーション面ですね。中野も言っている通り「PS研修で学んだ」という事実があるのとないのでは受け取り方は違います。研修内容がうまく共通言語になっているなと感じますね。
ー PS研修を受講したメンバーから受講の感想をもらっていますよね。みなさん、PS研修から学んだことは多そうです。
▲受講者の声(一部抜粋)
藤井:そうですね。「実務に紐づいていて現場での仕事に活用できそう」という反応が返ってきたので、狙い通りの結果を得られていると思っています。
また、意外な反応もありました。PS研修は入社3ヶ月以内のメンバーに向けてコンテンツを作りましたが、ミドル層のメンバーやプロジェクトマネージャーからも学びがあると声が上がったんです。
「フィードバックをするにしても、どうやって伝えれば良いのかと迷っていたけれど、要はPS研修でも伝えている ”事実と解釈の分離ができていない” ということ言いたかったんです」と。端的に言語化されたことでメンバーへのフィードバックがしやすくなったというのは、想定以上の成果でしたね。
PS研修でついた基礎能力をさらに伸ばしていきたい
ー 今後「育成」「研修」という観点で、お二人がやっていきたいことを教えてください。
中野:PS研修や実際の業務を通して、メンバーの基礎能力はかなりつき始めていると思っています。
オーリーズでは、ジュニア・ミドル・シニアとレイヤーが分かれていますが、これからはミドルになっていくメンバーを増やしていきたいです。
そのためには、応用力や課題抽出・解決力、さらにフィードバック力も必要になってきます。ジュニアからミドルの壁を越えていけるような取り組みはやっていきたいですね。
藤井:まさに準備中なのですが、PS研修の応用編となる「数値分析研修」をローンチしようと思っています。今回お話ししたPS研修は汎用性を重視したものでしたが、より具体的な広告運用、リスティングやディスプレイ広告の分析をするとなった時に「どのようなアウトプットを出すのか」を学べるコンテンツを作っているところです。
引き続き、オーリーズ全体のレベルを底上げになるような施策は打っていきたいと考えています。
ー 研修へのこだわりと成果を感じました。お話しいただき、ありがとうございました!
[取材構成編集・文] 神谷 愛美子