料理もデザインも、作ることで人に喜んでもらいたい
辻之内 孝信 | TAKANOBU TSUJINOUCHI 桃山学院大学経営学部経営学科卒業。デジタルハリウッド卒業。東京デザインプレックス研究所卒業。元パティシエ、料理人。その後webに転向し、web制作会社とCyberZでデザイン業務を経て、現在に至る。デザイン担当。デザイン部所属。
お客様に付加価値のある体験を提供するという考えは、料理もデザインも同じ
パティシエ時代の辻之内。当時は髪が少し長め。
─ まずは経歴について教えてください。辻之内さんはパティシエ、料理人を経てwebデザイナーへとキャリアをを歩まれていらっしゃいます。それぞれ、どのような背景でいまの仕事までたどり着かれたのでしょうか?。
もともとは高校時代。バレンタインのお返しでシュークリームを作ったところすごく喜んでもらえたことがきっかけで、パティシエを志しました。当時は人のためになにかを作り、喜んでもらえるということが新鮮な体験で、誰かを喜ばせる仕事をしたいという思いを強く持ったのことを覚えています。
そこから専門学校などを経て、いくつかのお店で経験を積ませてもらいました。当時学んだのは、料理やデザートを美しく美味しく作るだけでなく、いかにお客様に付加価値のある体験を提供できるかということ。たとえば、料理をお皿にではなく花瓶に綺麗に盛り付けたり、料理の説明をお客様の雰囲気や反応に合わせて変えていくといったところです。
お客様に付加価値のある体験を提供するという経験は、デザインの仕事にも活きてきています。
─ デザイナーへ転職したきっかけはどのようなことじからだったのでしょうか。
パティシエ・料理人として働いていた27歳の頃、改めて「自分は料理を作って何がしたいのか?」という疑問が湧いてきました。答えは結構本質的なことで、そもそも料理を作りたいのではなく、人に楽しんでもらえたり喜んでもらえることをしたい。同時に料理はひとつの手段で、他にも多くの選択肢があることに気がつきました。
その頃、アート系のイベントの手伝いに料理人として参加しており、アーティストやデザイナーの友人と関わる機会が増えました。彼らと話をしていくうちにデザインに興味を持ち、デジタルハリウッドに入学。その後web制作会社へ入社しました。 料理もデザインも表現がお皿の上なのかPCの中なのかの違いで、人に楽しんでもらえたり喜んでもらえることという本質は同じだと考えています。
圧倒的にデザインができる人になりたい
─ webデザイナーとして転職後は、どのようなキャリアを経験されたのでしょうか? 始めは美容系の制作会社で必死に経験を積みました。その後、スマートフォンのメディア事業をしている会社にジョイン。トレンドを取り入れながらやりたいことが実現できるので、仕事は楽しかったです。 ただ楽しく働けている一方、デザインができるかというとまだまだ足りない。圧倒的にデザインができる人は、訪れるユーザーの事をなによりも考え、最適なweb体験を提供できる。そのためには UI設計、UIデザイン、アートディレクション、フォトディレクションといった技術がまだまだ僕には足りていないと感じていました。この先もずっとデザイナーを続けるためには本当にできるデザイナーのもとで働き、技術を磨く必要があると考えたんです。 加えてUXや情報設計にも興味がありました。デザインを行う上でUXや情報設計を理解しておかないとデザインはただの作業となってしまう。デザイナーとして上流工程に関われるか否かは、成長する上での大きな分かれ目になると思い、上流工程にもしっかりと携われる経験も必要だと考えました。 これらのことから転職を決意。何社かの会社を受けたなかでA.C.O.へのジョインを決めました。A.C.O.では大企業を中心に多様なクライアントがいてターゲットもゴールも戦略も企業ごとに異なります。上流工程にコミットでき、デザインのスキルも磨けるのに加え、デザインの幅が広がることが最後の決め手になりました。 デザイナーであっても、UXや情報設計を理解できていないといけない
入社直後の辻之内
ー A.C.O.にジョインしてみてどうでしょうか。 A.C.O.の案件は直取引の大手企業が多く、クライアントと直接会える点は面白いですね。クライアントがさまざまなので毎日同じことの繰り返しにならないのもいい点だと思います。 また、席がフリーアドレス、かつオフィス外で作業している人も多いので、スタッフ全員が毎日いるわけじゃない環境も新鮮でした。リモートワークは僕自身も積極的に活用していて、特にリモートワークが推奨されている金曜日は、普段通勤している時間を利用して散歩したりしています。保育所へ息子のお迎えにも行けることもすごく助かってますね。 ─ 辻之内さんは生け花、盆栽、写真、料理と趣味も多いですよね。休日は趣味の時間という感じでしょうか? 結構趣味も仕事につながることが多いんです。たとえば僕が学んでいる生け花は小原流といいます。もともとは料理をきれいに盛りつけられるようになりたいと思い始めました。生け花は、構成の仕方や色の構成などがデザインと繋がっておりとても勉強になります。 盆栽はひとつひとつがそれぞれ世界を持っており、ひとつの自然を完成させることだと思っています。盆栽を観察すると葉のつき方、色の変化、花の開き方など多くの発見があり、新しい体験をすることができます。 写真は風景を撮るのが好きですね。ただ仕事でもフォトグラファーをアサインしての撮影案件があるので、趣味ではありつつもフォトディレクションの勉強という意味もあったりします。
現在も趣味で料理づくりをする
ー デザインをする上で心がけていることはありますか? ロジックを考えたデザインはつねに心がけています。なぜこのフォントなのか、カラーなのかはしっかりと説明できるようにしています。例を挙げると、ページに画像を配置するときもをページ内に使われているカラーを画像に足すことで、より違和感なく画像がマッチする。ただ画像にカラーを足すということではなく、このようなロジックがあってのことです。デザイナーにとって、なぜこういうデザインかを説明できることはとても大事だと思いますね。 ー これからのwebデザイン、デザイナーはどうあるべきだと思われますか? 中長期的には、単純にwebサイト作るだけの仕事は、機械に奪われる可能性が高いと思っています。すでにプロトタイプに少し設定を加えるだけである程度のwebサイトができてしまいます。加えてAIやIoTといった新しいテクノロジーとも付き合っていかないといけません。これからのデザイナーは、ユーザーをいままでにない新しい体験に導くなど、機械にはできない仕掛けを考えられなければいけないと思っています。そのためにはデザイナーであっても、UXや情報設計への理解が必要です。 また個人的には、最近マイクロデザインの考え方を注意して追っています。マイクロデザインとはその名の通りで、ひとつひとつのテキストの配置や、マウスを置いたときの動きなど、ディティールのデザインのことを言います。たとえばボタンの上にマウスを置いた挙動がスムーズで気持ちいいのでクリックしたくなる。入力フォームをクリックしたときにエラーを防ぐための注意文言が先に表示されるなどです。 とても些細なことですが、これらのちょっとした細かい気遣いなどができているととてもユーザーフレンドリーで、コンバージョンやKPIの達成にも影響する。ユーザーのために気遣いを常に心がける気持ちは料理を志した頃からいままで、ずっと変わりません。
※ A.C.O. Journal からの転載です