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大企業の「安定感」漂う同級生、かたや私は...。文系新卒、AIベンチャーに入ってみた【営業編】

転んで学べ!

「お前は伝書バトか!お客さんから言われたことをそのまま持ち帰って報告すればいいってもんじゃないんだよ!」
「意思がないのか!」

先輩から厳しい口調で問い詰められた。

2016年4月、ABEJAに入社して配属されたのは、Insight for Retailの事業部。小売店舗にカメラを設置し、顧客の属性や動きを可視化するサービスだ。

いまでこそ、ABEJAを支える事業の一つだが、当時はサービスが立ち上がって半年足らずで、顧客回りのビジネス担当はわたしも入れて4,5人だけ。ほとんどが20代だった。

サービスのノウハウは、それぞれのメンバーの頭の中にある状態で、誰かが辞めてしまえば、引継ぎもないまま誰かがゼロでまた積み上げていくしかなかった。

当然、新人研修なんてものはなく、案件をとって、転びまくる中で学んでいけ!という環境だった。

企業のブランド事業部やIT担当の責任者に電話し、営業先を開拓していった。「AIを使った店舗解析サービスを提供しているABEJAです」といっても、社名を二度聞きされることもしばしばだった。

知られてないのだから仕方がない。

ようやく面会にこぎつけても、最初のうちは説明やヒアリングの仕方がグダグダだった。「大丈夫かな、この人」という、けげんな雰囲気が漂ったこともあった。

大手企業が顧客になると、一つのサービスを導入するために説明すべき窓口が複数部署にわたる。それぞれ提案にいくのだが、システムに関する質問や要望など、細かなものにも即答できない。

うやむやのままにしていると、受注直前になって、顧客のニーズと自分の理解に齟齬が生じていることに気づくこともしばしばだった。


「カンバン」も「スキル」もないところからのスタート

入社して1年目の夏、大学の同期と飲み会で久々に集まった。大半は名の知れた企業に入っている。

入社から3ヵ月たっているのに、まだ新人研修が続いていたり、すでに営業に入っていても、古くからのつきあいのある顧客を担当させてもらい、そこで営業の手順を覚えていたり。

話の節々に「安定感」がにじんでいて、正直うらやましかった。

会社の「カンバン」もなく、個人としての「スキル」もない。
私は本当に何も持っていなかったのだ。

大学までレールに乗っていた自分は、下駄を履かせてもらっていたことに気づく。

そんな時期、会社の先輩と個別面談をした。

「仕事は質、スピードで評価される。新卒でもすぐにできるのはスピードだろう」と教えてもらった。

そこから意識して、相手の負担を減らすやり取りや即レスなどを心がけるようになった。

営業トークや仕事の進め方も、先輩たちの動きを見たり、どうやっているかを聞いたりしながら、いいなと思うことをとにかく真似していった。

そのうち、受注までのプロセスがよりスムーズになってきた。

受注したお客さんが「A社の○○さんも似たサービスを探していたから、紹介するよ」と、新しいお客さんを繋いでくれることもあった。

システムに大きい障害が起き、謝罪と今後の対応の説明にお客さん先まで行ったときは、「起きたことは勘弁してほしいけど、いつも誠実に対応してくれるから信じられる」と言ってくれるお客さんもいた。

事態が改善したわけでもなく、許されたわけでもないけれど、その一言に救われた。

たしかに「カンバン」や「スキル」は信頼されるための大事な要素だ。

でも、そうした要素がなくたって、丁寧にお客さんと向き合っていると、
信頼関係を築くことはできるのだ、と実感した。

言葉にするとあたり前だけど、どこか囚われて生きていたなとつくづく思う。


「情弱」な私がテックの理解を深められたワケ

社内の業務知識の棚卸し作業を通じて、年の近いエンジニアたちとつながったのもこのころだ。

つらいことがあると飲みに行き、「この機能ってどんな仕組みでできてるの?」「みんながよく言ってる〇〇って、何?」とか、技術やシステムの仕組み全般のことを、気軽に相談できる仲にもなった。

そんな中で学ぶことが増えたおかげで、どちらかといえば「情弱」カテゴリに入っていた私が、大学時代の友達に会うと、「前より技術に詳しくになったね」と驚かれたこともあった。(まだまだだけど。)

文系のわたしが、いろいろなシステムや機械学習のことを知識として身に着けられたのは、本だけでは分からない、実装のあれこれを彼らに気軽に聞けたからだ。本当に感謝している。


当時のメンバーたちとインターン生を送りだす様子(後列右端が筆者)=2016年夏ごろ


大企業に行った同級生たちに聞くと、エンジニアなどの技術職と、私と同じような文系の学生がつく職種が、仕事で日常的に交わることはあまりないという。

その点、エンジニアとビジネスの垣根がほとんどない職場にいるのは貴重かもしれない。

顧客に提供できる価値や売り方が固まって、事業が安定的に成長していく段階では、仕事を明確に分担する「分業」の方が効率的だと思う。

ただ、まだサービス自体も売り方も未完成なベンチャーでは、完全に仕事を分けず、お客さんの声をサービス開発にすぐ反映していくやり方が多い。

色んな役割を持ちながら、領域を狭めずにお互いサポートし合って、会社が回っていく。

会社が育つ中で変わったところもあるけれど、その過程を、身をもって体験できたのはおもしろかった。


誰でもできる仕組み作りの大切さに気づく

必死に動いているうちに1年がたった。

浅く広くかもしれないが、カバー範囲が増え、営業、受注、導入、運用のプロセス全体が見渡せるようになり、それぞれの段階のコツも分かってきた。

毎日数件のお客さん先を回って、提案書や見積りをまとめ、導入を手配する。セミナー開催や展示会の出展でリードを増やすまで、とにかくできることを何でもやっていた。

お客さんも増え、毎月決まって発生する売上(MRR)も少しずつ積み重なって、社内の賞を初めてもらえるまでになった。

そんな矢先の2017年6月、妊娠が分かった。
え、いまなの。
とにかく焦ったが、ただでさえ環境がカオスだったせいか、どこか冷静に事態を飲み込んで、産むことに決めた。

でも、ノウハウを文字などにまとめないまま産休に入れば、また誰かがゼロから積み上げていく、いつものパターンに戻ってしまう。

そこで2017年10月ごろから、頭をぶつけなら覚えてきた流れやコツを「初回訪問~受注プロセス」などにまとめて社内で共有した。

それまで口頭ベースで仕事を引き継ぐだけの文化の中で、文書として仕組みを明文化した社内初の営業マニュアルだったと言っていいと思う。

学生時代、自分にしかできない仕事へのあこがれがあった。
でもマニュアルをまとめている間、特定のだれかに頼らず、誰でもある程度のレベルまで仕事をこなせる仕組みを作っていくことは、組織や人の成長にとって大事なんだと実感した。

どんな仕事も最初はゴチャゴチャした状態から型を作っていく。

それがひと段落したら、最低限必要な仕事を仕組みに組み込み、ほかの人に渡していくことも大事だ。私はそういうのが得意なのかもしれないと気づけた。

「守・破・離」という言葉のように、個性を活かした「その人にしかできない仕事」は、そうした型の上にあるのだと考えるようになった。

「これで私がいない間も、他の人がやれる」

そして、2018年1月から産休に入った。


筆者:一ノ宮 朝子(いちのみや・あさこ)
1993年生まれ、東京都出身。ABEJA広報担当。2016年に一橋大学法学部を卒業後、学生時代よりインターンをしていたABEJAに参画。AIを活用した店舗解析サービスABEJA Insight for Retailの営業を担当。2018年8月より、現職。2歳児の子育てに奮闘中。趣味は、高校から続けてきたストリートダンス。


(2020年2月27日掲載の「テクプレたちの日常 by ABEJA」より転載)

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