DX(デジタルトランスフォーメーション)は一朝一夕で成らず。「RPAやペーパーレスの導入から半年程度は目的達成までかかった 」とお話いただいたのはand TRUNK株式会社の管理部部長である村上さん。リユース業を営む同社はどのようにDXによる業務効率化を実現したのでしょうか。
2つの業務で自動化を実現
-and TRUNKではどの業務フローをデジタル化していますか
最初にデジタル化したのはオークションサイトへの出品業務です。従来はスタッフが手動でデータ入力作業をしていましたが、RPAを活用し自動化しました。
もう一つは査定票のペーパーレス化です。従来は買取査定士がお客様のお宅で手書きで記入していましたが、タブレットで入力しデータを即送信することで紙からの入力作業がなくなり、作業効率が大幅に改善されました。
RPA導入当初は精度が課題だった
-まず出品業務のRPA導入に関して伺います。現在運用開始からどのくらい経ちますか?
2020年の2月から現場での運用を始めました。運用が安定するまで3ヶ月くらいかかり、導入に成功したと確信を得たのはようやくここ2〜3ヶ月です。最初の頃はエラーが山のように出たので、それを一つづつ潰していくのが大変でしたね。
-具体的にどのような業務フローを構築したのでしょう
オークションサイトに出品する際に、従来はスタッフが商品実物を見ながら出品フォームに情報を手入力していました。現在はOCR(光学文字認識システム)を使って商品実物に書いてある文字をスキャンし、読み取った文字データをRPAが認識しそれに応じて適切に出品フォームに自動入力するといった感じです。
-どのような苦労がありましたか
OCRが読み取った文字列が間違っていて、それによってRPAの動作にエラーが出ることは多かったですね。例えばオーディオなのにカメラ用の出品フォームを引っ張ってきてしまうとか。他にも非常に多くの細かいエラーがあり、微調整にかなりの時間がかかりました。
これらの各エラーに対してどの程度細かく対処していくかを決めなければなりませんでした。「重要性が低いから読み取り間違えてもスルーしてOK」なのか「重要度が高いからエラーが出たらその都度止める」なのか。現場の業務効率化の目的で導入するので、最終的に負担が増えるようなものになってはいけない。このバランスを取るのは苦労しました。
-その方針を決めるのが村上さんの役割だった?
はい。現場から無数のエラー報告や要望が上がってくるので、それを精査して改善する部分、見送る部分を決めていきました。流石に全部に対処するのは無理なので、どれがクリティカルな内容なのか注意深く判断しました。
3〜4人分の人件費削減に成功
-現場からの声はどうでしたか?
当初「何の意味があるのか」といった疑問に感じる雰囲気は現場からも出ていたので、導入目的をみんなに理解してもらうための説明はしっかり行いました。「業務効率が上がる」「残業が減る」「コストが減った分みんなの待遇に還元できる」など。
とはいえ、最初はエラーが出まくりで「やっぱり手でやったほうが早いんじゃ」とみんな感じていたはずです。僕も最初は当然そうで。ただ、一過性ではなく長期的な業務効率化を進める取り組みなので、そこは僕自身もスタッフも辛抱強くやりました。
-現在のRPA運用状況を教えてください
現在はエラーがほとんど出なくなり、導入前の3〜4人分の人件費を削減できた計算です。現場からも「もう手作業に戻ることは考えられない」という声をもらえています。半年かかりましたが、業務効率化という目的は達成できました。
査定票のペーパーレス化で買取からデータ化までのフローを改善
-査定票のペーパーレス化に関してはどのような流れでしたか
2020年の春先から導入に向けて動き出し、現在一部の店舗で運用が開始しています。これまで買取査定士が伺った客先で紙の査定票に記入していたメーカー、型番、製造年月などを、その場でタブレットに入力して送信するやり方に変えました。
これにより買取査定士が帰社してから査定票を回収し入力することによるタイムラグや、入力作業がなくなります。さらに、タブレットでデータを送信した際に、入力内容がスプレッドシートに自動入力されるようにしました。
査定票のペーパーレス化により、お客様の自宅に伺ってからデータ化されるまでのフローで、時間や作業などのコストが大幅に軽減されました。
自社でエンジニアを雇用して開発をスピードアップしていきたい
-ここまで、and TRUNKのデジタル化の流れで実現できたこと、今後実現したいことを教えてください
「お客様から買い取った品物の情報をデータ化すること」「品物をweb上で出品すること」いわば商品の入り口と出口について大幅な業務効率化が実現できたと思います。
次の取り組みとして考えているのは「品物の値付け作業の自動化」です。これが成功すれば買取から出品までの全ての業務フローの自動化を実現することになります。
-先ほど人件費で言うと3〜4人分は削減できたとお話がありましたが、浮いたリソースをどこに投入していきたいですか
自社でエンジニアを抱えて将来的にはシステムを内製したいと考えています。エンジニアを雇用することにリソースを投入したいですね。現在は外部パートナーと組んで開発を行っていますが、and TRUNKのことをよく理解した上で開発力もあるというエンジニアを増やしていきたいと思います。
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