「できない」を「仕組み」で解決する。双極性障害の私がエンジニアを目指すためのセルフマネジメント術
Photo by Lenzil Gonsalves on Unsplash
「根性」ではなく「仕組み」で、看護現場の課題を解決したい。
私は今、双極性障害と向き合いながら、独学でエンジニアへの道を歩んでいます。
「病気があるから無理をしない」のではなく、「特性があるからこそ、誰よりも戦略的に動く」。それが私のスタイルです。
看護現場で見つけた「動線管理」の課題を解決するために、自らFigmaを触り、JavaScriptを学び、スマートウォッチで自分の体調をログ化する――。そんな、私のエンジニアとしての「生存戦略」と「開発への想い」を綴りました。
1. 根性を捨て、データを選ぶ。自分を助けるための「羅針盤」づくり
かつての私は、自分の体調を「気合」でコントロールしようとしていました。しかし、それだけでは自分を追い詰めてしまう限界も感じていました。
そんな時、琉球大学と「双極はたらくラボ」による共同研究の存在を知りました。「双極性障害と働くこと」をデータで解き明かそうとするそのアプローチに、私は深く共感しました。
「まだ研究の結論が出ているわけではないけれど、この考え方はきっと、私自身を助けるヒントになる」
そう直感した私は、それまでの「なんとなくの感覚」で自分を評価するのをやめ、客観的なデータを取り入れることにしました。それは自分を厳しく管理するためではなく、自分が心地よく、かつ最大限の力を発揮できる「リズム」を見つけるための羅針盤を作る作業でした。
具体的には、スマートウォッチで睡眠や活動量をログとして残し、自分の気分の変化と照らし合わせています。
- 「感覚」を「事実」で支える: 「今日はダメだ」と落ち込む前にデータを見る。すると「昨夜は睡眠が浅かったから、今は無理をしない方がいい」と、自分に対して客観的で優しい判断ができるようになりました。
- 自分に優しい「判断基準」を持つ: 情緒のログが不安定なときは、無理に学習を進めず、あえて「何もしない」という決断を下す。
- 自分に合った「攻め時」を知る: データが安定しているタイミングを見極め、そこにエネルギーを注ぐ。この方法を取り入れたことで、無理なく集中力を維持できるようになりました。
この「事実に基づいて自分を調整していく」プロセスは、現場の状況を冷静に判断してケアを行う看護師の視点、そして論理的にエラーを解決していくエンジニアの視点、その両方に通じていると感じています。
2.学習の「ガソリン」は現場への違和感
プログラミングの学習は、決して楽な道ではありません。それでも私が歩みを止めないのは、4年間の看護師経験の中で積み重なった「現場への違和感」という名のガソリンがあるからです。
看護師の仕事は、尊く、やりがいに満ちています。しかしその一方で、現場は常にアナログで非効率な作業に追われていました。
- 「動線」の非効率: 患者さんのケアをしたいのに、物品を取りに何度も往復する。情報の共有がうまくいかず、同じ確認を繰り返す。その「無駄な動き」が積み重なり、看護師の心身を削り、結果として患者さんと向き合う時間を奪っている。その光景を、私は何度も見てきました。
- 「タスク管理」の限界: 命を預かる現場で、タスクの優先順位は刻一刻と変わります。それを紙のメモや記憶だけに頼る危うさ。もっとスマートに、もっと直感的に、看護師の思考を支えるツールがあればいいのに——。
こうした「もっとこうなればいいのに」という現場での小さな気づきが、今の私の開発目標である「看護師のタスク・動線管理ツール」の原点になっています。
「作るもの」が見えているから、学びは加速する
私がFigmaを使って自ら画面設計(プロトタイプ)を行っているのも、paizaやテキストでJavaScriptを学んでいるのも、すべてはこの違和感を解決するためです。
「このコードを書けるようになれば、あの時の煩雑な画面をシンプルにできるかもしれない」 「このロジックを学べば、動線の無駄を可視化できるかもしれない」
ただ文法を覚えるのではなく、「現場の誰を、どう救うか」という具体的なイメージがあるからこそ、独学という孤独な作業も、ワクワクするクリエイティブな時間へと変わります。
私にとってエンジニアリングは、看護現場で感じた「違和感」を「確信」に変え、形にするための最強の手段なのです。
3.環境を「ハック」する技術。オンとオフの「完全な切り替え」でリズムを作る
現在、私は就労継続支援事業所に通っています。そこは私にとって、プロとして働くための「基礎体力」を養う大切な訓練の場です。私はこの環境を最大限に活用するために、自分なりのルールを課してハック(工夫)しています。
- 業務時間は「100%の集中」を捧げる: 事業所にいる時間は、与えられた業務訓練に全神経を注ぎます。HUAWEI Bandで自分の状態を確認しながらも、目の前のタスクを完遂すること。ここで「決められた時間、誠実にやり遂げる」という実績を積み重ねることが、エンジニアとして信頼を得るための第一歩だと考えているからです。
- 自宅での「編み物」による完全なリセット: 業務や学習でデジタルな世界に没頭した後は、自宅で「編み物」を楽しみます。一目一目を編むアナログなリズムは、高ぶった脳を落ち着かせ、情緒を安定させるための最高のリセットボタンです。
- 「動」と「静」のサイクルを回す: 「事業所での全力の業務」という動の刺激と、「自宅での編み物」という静の癒やし。このメリハリを徹底することで、双極性障害の波に飲み込まれることなく、安定して翌日の学習や業務に向かうエネルギーを蓄えています。
「ただ頑張る」のではなく、「どこで集中し、どこで休めるか」という仕組みを自分でコントロールすること。 この自己マネジメント能力を武器に、私はプロのエンジニアへの道を一歩ずつ着実に進んでいます。
4.この「自分を助ける戦略」が、誰かの現場を救うシステムに繋がる
私が日々取り組んでいるデータ管理や環境の最適化は、単に「自分が安定して働くため」だけのものではありません。
「自分という人間をシステムとして理解し、整えることができるなら、それは必ず『誰かの不便』を解決するシステムの構築に繋がる」ということです。
私が目指すのは、看護師が「気合」や「根性」で無理を重ねる現場ではなく、テクノロジーの力で自然と動線が整い、タスクが整理される世界です。 自分を助けるために磨いてきたこの「戦略」と「視点」を、今度は看護現場で戦う仲間たちのために使いたい。
現場の違和感を、確信に変えるその日まで。