クルージングヨット教室物語30
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「レンタカーは、朝8時に港前に持って来てくれることになっているよ」
隆は、麻美子に伝えた。
「お昼は懐石だったら、朝は簡単でいいよね」
麻美子は、昨夜の残りもので簡単に朝食を作った。
「一晩経った後のくさやも、けっこうイケるね」
中村さんは、ラッコのメインサロンで朝食を食べながら、話していた。朝、起きると、アクエリアスのクルーたちも皆、ラッコのメインサロンにやって来て一緒に朝食をしていた。
アクエリアスのクルーたちが、ラッコのメインサロンで朝食を食べていたので、瑠璃子や陽子たちラッコのクルーたちは、パイロットハウス一段下のダイニングで朝食を食べていた。
「隆くんたちは、今日の予定はどうするの?」
「レンタカーを借りているので、皆で島内観光してこようと思っています」
隆は、中村さんに答えた。
「それじゃ、今日は1日じゅう、ラッコの船は出さないんだ」
「ええ」
「うちらは、明日の帰りが楽になるから、今日のうちに波浮を出て、大島北端の岡田港に移動しようと思ってるんだけど」
「確かに、その方が横浜に近づくから明日の帰りは楽ですね」
隆は、中村さんに返事した。
「それじゃ、うちらはアクエリアスが出航するの見送ってから、島内観光に出かけようか」
隆たちは、岡田港への移動で出航するアクエリアスを見送ってから、レンタカーで島内観光に出かけることになった。岸壁から出航するアクエリアスの舫いロープを外して、港からアクエリアスが見えなくなるまで見送ってから、レンタカーに乗車した。
「私、ナビゲーションするから助手席に座るね」
隆が運転席に座ると、反対側から麻美子が助手席に乗り込んだ。
「今日は、ナビはぜんぶ麻美子に任せてもいいのか」
「うん、任せて」
車は、サザエさんたちがよく乗車している日産セレナで、6シーターだった。真ん中には、香代と瑠璃子が座って、最後部に雪と陽子が座った。
「そこを右ね、その先を左折」
隆は、これからどのコースでどう島を周るのか知らなかったが、ぜんぶ行き先を麻美子が指示してくれるので、なにも心配せずに、ただ麻美子に言われるままに走らせていた。
「最初の目的地って三原山なの」
車は、海沿いからどんどん島の中央、内陸に向かってずっと登っていた。
「うん」
麻美子は、隆に頷いた。
「なんか真っ黒な岩ばかりね」
車が三原山の麓辺りまでたどり着くと、周りの景色が黒い溶岩だらけのところになった。
「噴火の後なんだ」
「まだ三原山は噴火しているじゃん」
隆が、車窓から見える三原山の頂上を指差すと、山の頂上からは、未だに煙が上がっていた。
「はい、その先の駐車場に車を停めて」
麻美子に言われて、隆は車を麓にある駐車場に停車した。
皆は、車を降りると、麓のところにできていた通路を歩いていた。
「すごい溶岩ね」
雪は、道の脇に落ちている溶岩を拾い上げて、眺めていた。
「隆、ヤッホー!」
皆が歩いている後ろから、麻美子の声がした。隆が後ろを振り向くと、麻美子と香代が観光用の馬の背中に乗って、歩いていた。
「あ、いいな」
隆は、馬に跨っている麻美子と香代を羨ましそうに眺めていた。
「隆、帰りは、ここで代わろうか」
麓の溶岩の隙間にできた道を突き当たりまで馬に乗って行くと、麻美子がそこで馬から降りて、隆と交代しようと言ってくれた。帰りは、駐車場まで隆と香代が馬に乗って帰った。