「うちの院長、カメラの前だと固まっちゃうんですよ」
YouTube の相談をいただくとき、かなりの確率でこの話になります。経営者や院長ご本人に出ていただくのが一番効きますとお伝えすると、たいてい返ってくるのがこの反応です。
気持ちはよく分かります。ただ、ここを避けると成果が出にくいことも、4年やってきてはっきりしています。
なぜ「本人」でないと届かないのか
3年以上ご一緒しているクライアントに共通しているのは、経営者や院長ご本人が演者として出ていることです。
視聴者が本当に知りたいのは、情報そのものより「この人は信頼できるか」だからだと思っています。同じ内容でも、決定権と責任を持っている人が話すと重みが変わります。代理の方が読み上げる動画は、どうしても熱量が乗りません。
とはいえ、いきなり上手に話せる人はほとんどいません。だから私の仕事は、話すのが得意な人を探すことではなく、話すのが得意でない人から引き出すことだと思っています。
台本は作るが、覚えてもらわない
台本は作ります。ただ、読み上げてもらうことも、暗記してもらうこともしません。
覚えた言葉を再生しようとすると、視線が上に泳ぎ、声が硬くなります。何より、本人の言葉ではなくなります。
なので私は、台本を「私が投げる質問のリスト」として使います。私が聞き、答えていただき、それを編集で組み立てる。医療機器の営業を18年やってきたので、相手の中にある言葉を引き出すのは慣れています。
「患者さんに説明するとき、どう言ってますか?」と聞く
一番伝わる言葉は、たいてい日常業務の中にあります。
カメラを向けられると、人は「ちゃんとしたこと」を言おうとして、急に難しい説明を始めます。そこで私は、診察室で患者さんに説明するときの言い方を聞きます。そちらの方が圧倒的に分かりやすいからです。
前職で医師と臨床レベルの話をしてきたので、専門的な内容も置いていかれずに聞けます。「今のところ、もう少し噛み砕けますか」と踏み込めるのは、この経験のおかげです。
最初の数本は「慣れる回」と割り切る
1本目から完璧を狙うと、演者も私も苦しくなります。最初のうちは、カメラの前に座ることに慣れていただく時間だと考えています。
面白いもので、3〜4本目くらいから急に自然になる方が多いです。ここを越えると、あとは楽になります。
「撮影のための特別な時間」を作らない
「時間ができたら撮りましょう」は、だいたい実現しません。経営者は忙しいからです。
なので撮影の形は、相手に合わせて2つに分けています。
ひとつは半内製化。歯科医院の採用チャンネルでは、診療後の空いた時間に先生ご自身で撮っていただく形にしました。私が毎回撮影に伺う前提だと、月10本のペースはどうやっても作れません。撮り方の型をお渡しして、あとは日常業務の合間に回していただく。この形にしてから10本/月が続いています。
もうひとつはまとめ撮り。撮影日を先に押さえて、4〜5本を3時間ほどで撮りきります。演者の集中力が保つのはこのあたりまでですし、こちらの移動も一度で済みます。
どちらにしても大事なのは、撮影を「わざわざやること」にしないことです。特別なイベントにした瞬間、続かなくなります。
上手に話せる必要はない
動画に出るのを渋る方の多くは、「自分は話が下手だから」とおっしゃいます。でも実際に成果が出ているチャンネルを見ると、話がうまい人が勝っているわけではありません。
伝えたいことがある人が、自分の言葉で話している。それだけです。
そこを引き出して形にするところまでが、私の仕事だと思っています。