組織では、情報がさまざまな方向へ流れています。
経営から現場へ伝わる方針。
現場から上がってくる報告。
お客様からの声。
業務改善の提案。
トラブルの相談。
その間にいるのが、管理者です。
管理者には、現場の状況を把握し、必要なものを判断しながら仕事を進める役割があります。
しかし、ときどき管理者が「情報を止める人」になってしまうことがあります。
私は、管理者は組織の門番ではないと考えています。
「それ、社長に言っても無理だと思うよ」
例えば、現場の担当者から、
「この運用を変えた方がいいと思います。」
という提案があったとします。
担当者には決裁権がないため、管理者へ相談します。
すると、
「それは難しいと思うよ。」
「社長はたぶんやらないと思う。」
「前にも似たような話があったから。」
と言われ、その場で話が終わる。
社長には何も伝わりません。
もちろん、管理者がすべての話を社長へ上げる必要はありません。
既存のルールで判断できること。
自分の権限で決められること。
現場だけで解決できること。
それらを管理者が処理するのは、本来の役割です。
しかし、
会社全体に関わること。
ルールそのものを変更すること。
自分の権限を超える判断。
経営判断が必要な提案。
こうしたものまで管理者自身の判断で止めてしまうと、経営者には現場の情報が届かなくなります。
「私は反対」と「会社としてやらない」は違います
さらに注意したいのが、管理者自身がその提案に反対している場合です。
「私は必要ないと思う。」
「そこまでやる必要ある?」
「今までこの方法でやってきたから。」
管理者が意見を持つことは、もちろん悪いことではありません。
現場を知っているからこそ、見えるリスクもあります。
問題は、
管理者個人の意見が、そのまま会社の決定になってしまうことです。
自分に最終決定権がないのであれば、
「私はこういう理由で懸念しています。」
という意見とともに、必要な情報を決裁者へ上げる。
そして最終的な判断を受ける。
それが指揮系統です。
「自分は反対だから上げない。」
「たぶん社長も反対するから伝えない。」
では、管理ではなく情報の遮断になってしまいます。
指揮系統を守ることと、情報を止めることは違います
以前、指揮系統を飛ばすことで組織が混乱するという話を書きました。
社員が上司を飛ばして社長へ直接確認する。
支店の社員が管理者を通さず本社へ問い合わせる。
こうしたことが続けば、管理者が状況を把握できなくなります。
だから、指揮系統は必要です。
しかし、
「上司を通してください」ということと、「上司が情報を止めていい」ということは別です。
指揮系統を守る目的は、情報を止めることではありません。
必要な人へ、必要な情報が、適切な経路で届くようにすることです。
社員から管理者へ。
管理者から経営へ。
そして経営の判断が、また管理者を通して現場へ戻る。
この流れがあるから、組織として仕事が進みます。
管理者が「評論家」になると仕事が止まる
新しい取り組みを始めようとしたときにも、同じことが起こります。
「でも、それって意味ある?」
「〇〇の場合はどうするの?」
「失敗したらどうするの?」
「今までやってないよね。」
リスクを考えることは大切です。
むしろ管理者には、現場で起こりそうな問題を事前に見つける役割があります。
しかし、
リスクを見つけることと、仕事を止めることは違います。
「この方法だと、ここで問題が起きそうです。」
そこで終わるのではなく、
「だから、この部分を変更すれば進められると思います。」
まで考える。
できない理由を並べるだけなら、仕事は前へ進みません。
管理者に求められるのは、
「できない理由を説明すること」ではなく、「どうすれば進められるかを考えること」
だと私は思っています。
現場の声が経営者へ届かなくなる
管理者が情報を止める状態が続くと、もう一つ問題が起こります。
経営者から見ると、
「特に問題は起きていない。」
ように見えてしまうのです。
現場では、
この業務がやりにくい。
このルールを変えてほしい。
お客様からこんな声が出ている。
スタッフが困っている。
ということが起きている。
しかし、それが管理者のところで止まっていれば、経営者には見えません。
すると経営者は、
「現場は順調に回っている。」
と判断します。
一方、現場では、
「言っても上に届かない。」
という感覚が生まれます。
やがて提案そのものをしなくなるかもしれません。
これは、経営者にとっても大きな損失です。
現場でしか見えない問題が、会社の意思決定に反映されなくなるからです。
何を上げるかを決めておく
では、何でも社長へ報告すればいいのでしょうか。
もちろん、それも違います。
すべての情報が社長へ集まれば、今度は社長がボトルネックになります。
だから必要なのは、
どこまで管理者が判断し、何を上へ上げるのかを決めておくことです。
例えば、
一定金額以上の判断。
会社全体のルール変更。
重大なクレーム。
複数部署に影響する問題。
既存の判断基準では対応できないケース。
こうした基準を決めておけば、管理者も迷いにくくなります。
管理者の役割は、すべてを自分で決めることでも、すべてを社長へ投げることでもありません。
自分のところで判断するものと、上へ上げるものを整理することです。
管理者は、組織の門番ではありません
管理者は、上から来た指示を下へ伝えるだけの人ではありません。
下から来た提案を、自分の好みで選別する人でもありません。
現場の情報を整理して、必要なものを経営へ届ける。
経営の判断を、現場が動ける形にして届ける。
問題があれば、どうすれば進められるかを考える。
その役割があります。
私は、管理者とは、
組織の中で情報と仕事を流す中継地点
だと考えています。
だからこそ、その場所で情報が止まれば、組織全体も止まります。
指揮系統を飛ばさないことは大切です。
しかし同じくらい、
指揮系統の途中で、情報を止めないことも大切です。
現場と経営の間に管理者を置く目的は、壁をつくることではありません。
双方の情報を整理し、判断につなげ、仕事を前へ進めること。
管理者が「門番」ではなく「中継地点」として機能するとき、組織の情報は流れ始めるのだと思います。