昨日から、僕たちの採用・組織支援について、改めて問い直しています。
会社が何を目指しているのか。そのために、どんな人と働きたいのか。迎えた人に何を任せ、どう支えるのか。
考えているうちに、「育成する」という言葉の中に、ずいぶん多くの未決定が隠れている気がしてきました。
研修を用意する。OJT担当者を決める。入社後90日の目標をつくる。
それぞれ必要なことです。でも、そこまで決めれば、本当に育成が始まるのでしょうか。
「教える人を決めた」と「教えられる」は違う
今回の問答では、こんな場面を想定しました。
研修で学んだ方法を、新しく入った人が現場で試そうとする。ところが、OJT担当者から「現場では今までのやり方でやって」と言われる。
ここで僕は、担当者を責めるより先に、その人が何を任されているのかを聞きたいと思いました。
会社から「新しいやり方を身につけてもらってほしい」と言われていたのか。それとも「まず既存の業務を、ミスなく回せるようにしてほしい」と言われていたのか。
何を達成するために、OJTを担当しているのか。
そこがつながっていなければ、採用、研修、現場が、それぞれ違う方向を向いていても不思議ではありません。
本人の理解不足や、担当者の教え方の問題にする前に、会社として何を託していたのかを確かめる必要があります。
学んだことを使えるかは、本人だけの問題ではない
研修の知識が実務に移る条件を整理した研究レビューでは、実際に使う機会、職場の支援、その後のフォローが重要な要因として挙げられています。Grossman・Salas(2011)
また、別のメタ分析では、上司・同僚・組織の支援と、学んだことの実務への移行や継続利用との間に、正の関連が報告されています。Hughesほか(2020)
今回は公開要旨を確認した範囲です。これだけで、特定の会社の育成がうまくいかない原因を決めつけることはできません。
ただ、僕たちの支援を考えるうえでは、大切な示唆があります。
「本人が理解できたか」と「現場で使える状態だったか」は、分けて見なければならない。
外部の研修が良いものであっても、会社の仕事につながるとは限りません。何のために学び、その知識をどの仕事で使うのか。その橋渡しは、実務を知っている会社側が担う必要があると思っています。
育成するなら、何の時間を空けるのか
さらに問答を進めると、OJT担当者がこう言った場合を考えることになりました。
「育成の目的は分かっています。でも、通常業務をこなしながら教える時間がありません」
めちゃくちゃありそうな場面だと思いました。
だからこそ、まず設計の段階で確かめたい。
誰が教えるのか。専属なのか、兼任なのか。教える時間は、どこから生まれるのか。今ある業務の何を減らし、誰に移すのか。
「育成をやる」という合意と、「育成に時間を使える」という状態は、別物です。
そこまで話し合って「やる」と決めたのであれば、時間がないからと、すぐに育成の約束を引っ込めたくはありません。
僕たちがまず代表に持ち帰るのは、「目標を下げましょう」ではなく、「この約束を実行するために、何を動かしますか」という問いだと思います。
支え続けることだけが、誠実ではない
必要な条件を整理し、改善の案を出しても、会社が動かない場合はどうするのか。
ここは、今回の問答で一つ、考えが明確になりました。
現場の疲弊によって穴埋めする状態が続くなら、僕たちは支援を止める。
会社への制裁をしたいわけではありません。本人やOJT担当者の頑張りでしか成立しない約束を、僕たちが関わり続けることで延命させたくないからです。
もちろん、約束を信じて挑戦していた本人には、真摯に事実を伝える必要があります。
何が実現しなかったのか。どんな調整を試みたのか。僕たちも、どこまで支えきれなかったのか。
会社を悪者にする説明にはしたくありません。でも、配慮のために事実を曖昧にして、本人が自分の能力不足だと受け取ってしまうことも避けたい。
この伝え方については、まだ考え続けています。
約束をつくるだけでなく、実行できる状態をつくる
育成は、最初の計画どおりに進むとは限りません。
90日後に目標へ届いていなくても、原因を理解し、次の60日や90日でどう取り戻すかを具体的に描けるなら、その道筋を本人と確かめ、経営者に説明する。
それでも届く見込みが立たなければ、目標や約束そのものを再定義する必要があります。
ただ、「もう少し様子を見ましょう」と期限だけを延ばすこととは、違うはずです。
採用で期待を伝えること。育成の目標を決めること。その約束を、日々の仕事の中で実行できるようにすること。
僕たちが担いたいのは、この間をつなぐ仕事です。
「育てます」と言うなら、育てる時間まで。
言葉を整えるだけではなく、その言葉に会社がどう応えるのか。そこまで向き合う支援をつくりたいと思っています。
これは、まだ設計の途中での考えです。実際の支援で確かめ、うまくいかなかったことも含めて、また書いていきます。
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ワキカワ アキヒサ
Helix Medica 代表