▼「個の集合体としての”まち”に働きかけを行っている」
FoundingBaseが行っていることは、これまでの社会のあり方を問い直し、魅力的なまちや社会を作るために、課題を抱えている自治体において、若者に対して「首長付(市長、町長直属のポスト)」というポジションを用意し、地域課題を解決する事業を地元の住民と共に立ち上げるというミッション持って働くキーマン(現場で働くメンバー)が起点になって地域に変化を起こしていく事業に取り組んでいます。これはひとえに、「当事者意識をもつ主体的な住民による住民総出のまちづくり」を実現するために行っている事業であり、地域側の「地域の余白を若者に明け渡す」という覚悟、メンバーとして参画する若者側の「自らの役割を果たし切る」という覚悟、株式会社FoundingBaseの「地域とメンバーとに向き合い続ける」という覚悟、三者の覚悟のもと成り立っている事業です。
外部からまちにやってきた若者のみで地域課題を解決するのではなく、事業を立ち上げていく中で地域住民を巻き込み、「自分の身の回り半径5メートル」に対して当事者としての意識を向けることが大事だという思想を伝播し、住民が自分たちの手で「欲しい未来」を作っていく。そのように、個人に対して働きかけをしていき、そうした個人を増やしていくことで、個人の集合体としての”まち”そのものを変えていくという考え方を持って、まちづくりに取り組んでいます。
▼勇気をもって「らしさ」を作っていく個人を育む
「FoundingBaseは地域に関わり、まちづくりを行っている会社だ」というのは、FoundingBaseに対しての一面的な理解でしかありません。FoundingBaseがこのような事業に取り組むのは、「まちづくり」を行うという理由の他に、「人を育成したい」という思いがあるからです。FoundingBaseが活動する地域のほとんどは人口が1万人を切っている過疎化が進む自治体です。こうした規模感の社会の中で、自分自身の好きなこと、興味のあること、打ち込みたいことをベースに社会に存在する課題を解決する事業を創り上げていく過程では、自分自身の一挙手一投足に対するフィードバックが「顔の見える距離感」にいる人から投げてもらえます。つまり、自分自身の仕事や、自分自身が創り上げた事業が社会からダイレクトに評価されるということです。このような社会からの直接的なフィードバックを受け取る中で、自らが生きていく中で大事にしたい価値観や、どのように生きていくかというあり方を体現するという個人の欲求と、社会から求められることとを前向きに折り合いをつけ、勇気をもって「らしさ」を追求する個人が育まれることを目的に事業設計をしています。
▼現実を前向きに捻じ曲げていく事業
2012年から始まったこのFoundingBaseの「期間限定首長付就任プログラム」は、全国6市町村へと広がり、今年で6年目を迎える島根県津和野町においては、外部人材が高校の中に席を置き「受験一辺倒」ではない公教育のあり方づくりに取り組み、廃校寸前だった高校を改革し生徒数を回復させたり、公立公営の塾を核とした地域と学校教育機関との連動といった公共事業や、イノシシ肉の卸売り事業、旅館の空室を活用した高校生向けの下宿運営など、地域資源を活用した起業家が生まれ始め、積み重ねてきた活動が少しずつ具体的な変化を起こしています。
教育、観光、農業、交通インフラ、防災、林業、エネルギー。多面的に構成されている”まち”そのものと対峙するために、あらゆる分野で課題を解決するための事業を創り上げていますが、分野は違えどそれぞれの事業に共通するものがあります。それは、「無理だ」「できない」と言って「やらない理由」を見つけて諦めるのではなく、現実を前向きに捻じ曲げていくスタンスです。入学者数をV字回復させメディアにも取り上げられた津和野高校魅力化事業は「そんなことをやっても意味がない」と言われながら産声をあげた事業でした。「今までやってきても一人も移住していないんだから無理だ」と批判されながら始まった新規就農者を募集する事業も、5年間で20組を超える家族を呼び込む事業に成長しています。