ももクロ論 水着と棘のコントラディクション
ももいろクローバーZの魅力を読み解く評論集。カバーイラストは漫画界の鬼才・カネコアツシ。 3.11後の社会と激しくシンクロし、世代を超えた熱狂的なファン(モノノフ)を生み出したももいろクローバーZ。 念願の紅白出場後に、彼女たちは棘のマスクをかぶり禍々しい姿で変革への意思を表明した。 一方のアイドル界の覇者AKB48は、お約束の水着姿を披露し愛らしい笑顔を振りまく。 この好対照の二つのグループは、どんな社会的想像力に対応しているのであろうか。 本書第1部の「アイドル消費における鎮魂とカーニヴァル」は、ディストピア化が進む現代日本の 社会状況を検証し、ももクロとAKB48が慰撫するわれわれの「呪われた部分」に光を当てる。 そしてこの二つの人気グループが、大衆の欲望の処理については、全く正反対のベクトルを持つことを明らかにする。 第2部の「まばゆい笑いの発作」では、これまで言及されてこなかったパフォーマンスの特性を分析し、 ファンを魅了してやまないももクロの「全力」について徹底的に解明を図る。 エリントンにおける“スゥイング"やキース・リチャーズにとっての“ロール"同様、 記述化を拒むももクロの偶発的なノリの正体に鋭く迫る。 ももクロを語ることはすなわち、「遊びと笑い」「祝祭と運命」「死と再生」について、 現在を生きる者が何を求めようとしているのかを語ることにつながった。 【本書より抜粋】 「ももクロの『5TH DIMENSION』は、ディストピア化した現実のなかで もがき苦しむわれわれの“未成熟な意識からの脱出"を主題にしている。 〈妹の力〉に優れたももクロの言霊は、容易に変わらない社会的閉塞状況を何とか突破しようとしている。」(清家) 「ライブの終盤、高い負荷に耐えることで現前してくるリアルとしての ――荒い息遣いとともに浮かぶ――笑いのまばゆい発作を、私たちは全力の証左として、 一生懸命の証拠として認めるのではないか。」(桐原)