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第5回:「住宅×メディア」で世界中の小さくて豊かな暮らしを5000件紹介。|僕らが見つけた「タイニーハウス」という新しい住まい方

 こんにちは。YADOKARI株式会社のさわだいっせいとウエスギセイタです。

第1回では「小さい」からこそ、クリエイティブになれる。住宅ローンに縛られない家について、第2回では「資産」よりも「時間」を大切にしているというお話、第3回では、自由に生きるために必要な「発想の転換」第4回では、僕らが作った250万円の家の詳細についてお話させていただきました。今回は、共感者を得るために「住宅×メディア」を立ち上げたお話です。

住宅業界の経験ゼロ! 異業種スキルで戦い始める

 年齢を重ねると新しいことにチャレンジしづらくなるといいますが、僕らは逆だと思います。年齢と経験を重ねているからこそ、新しいことを始めたときに、それまでに身につけたスキルが相乗効果を起こしてくれるはず。そう信じて、僕らは「家作り」のプロダクトに乗り込んだのです。僕らは YADOKARIとして活動するまで建築の知識は全くなく、家を作るための筋道も見えていなかった。普通ならここで立ちすくんでしまうところです。

 じゃあ僕らには何もないのだろうか。それは違うと思いました。実は僕らふたりは、もともとウェブサイトの製作会社で出会った仲。そこで昼夜問わず働いたことで、マーケティングやウェブ構築の技術がありました。言い換えればその技術しかない。だからごく自然に、今まで培ったスキルを活用しなければと思ったのです。建築畑に居る人と同じアプローチを取ったのでは時間もないし、勝ち目もない。そこで僕らは家を作るために、メディアの力を活用することにしました。

 まずは「YADOKARI」プロデュースのウェブメディアを作ろう! 『未来住まい方会議(現 YADOKARI)』と名付けたメディアを立ち上げ、僕たちが理想とする「小さな家に住む小さな暮らし」を発信することにしたのです。

 家を建てたいのに、まずメディアを始めるというステップを、突飛に思われるかもしれません。でも大企業でもなく、資本もない僕らは、ビジョンを広めて賛同者を増やすことが必要。僕らは小さな家に住み、生活をダウンサイジングする暮らしがきっと面白いと信じていましたし、これこそ、より良い未来に必要なのだという確信もありました。しかしまだまだ世の中は、大きなものがステータスシンボルだという考え方が主流。小さな家を開発し、それを広めるには、どうしたって共感者が必要です。

 僕らが働いていた会社では、インターネットを使ったビジネスコンサルタントもしていました。だから事業を起こすときには、ニーズの掘り起こしが必要だという鉄則を知っていました。同時に、そのためにウェブを使うノウハウも、体に染み込んでいます。だから、「未来住まい方会議」のメインコンテンツの案は、すぐに思いつきました。
 坂茂さんの建築にインスパイアされてから、小さな家について洋書が充実した青山ブックセンターやインターネットの海外サイトなどで調べていると、僕らが目指している住環境は、世界的なトレンドとも一致することがわかりました。北欧の夏の家、アメリカのスモールハウス・ムーブメント、ロシアのダーチャ、トレーラーハウス……小さな家で暮らすことや、多拠点で暮らすことをクールだとする文化が、先進国を中心に、既に広まっていました。
 そのムーブメントは理にかなった哲学があると同時にスタイリッシュで、僕らだけでなく、多くの人を魅了するだろうと確信したのですが、日本には情報がない。

「ならば僕らが発信すればいい」と、ウェブで「未来住まい方会議」を立ち上げ、海外の事例の紹介を中心に紹介することにしました。既に世界の先進国に広がっているムーブメントが、世界の中でも、特に住宅の確保に苦心している日本人に響かないはずがありません。皆が共感してくれてこのメディアが成功すれば、「YADOKARI」で家を作ることにも近づくはずだと、直感したのです。

 僕らが世界中からスタイリッシュな「小さな家」を探して、その写真や紹介文を「未来住まい方会議」にストックし、Facebookを通じて発信すると、みるみるうちに読者を獲得していきました。同時に多くの問い合わせも舞い込むようになったのです。「こういう家はどこで買えるの?」「小さな家を建てたいんだけれど、どうすればいいの?」などなど。実際に僕らのビジョンに共感して、小さな家に住みたいと言ってくれる人の存在がはっきり見えてきました。

背中を押してくれた、ある先駆者の声

「住環境を現実に見合ったスタイルに改革したい。そのためにはまず、金銭的な負担の少ない、小さな家を作らなくては」
 決心したのはいいけれど、当時の僕らには家を作って販売するノウハウはありません。そこで、「未来住まい方会議」を運営する傍ら、建築についてイチから勉強し、自分たちが気になる建築のプロに、教えを乞いに出かけました。

「素人がいきなり訪ねて来ても門前払いされるのでは?」
 そんな思いが頭をよぎり、正直、心配だったのですが、他に方法を知りません。愚かに見えてもいい、でも失礼にだけはならないように、教えを乞うときは、顔を合わせてきちんと思いを伝えるようにしていました。すると、どの方も僕らが恐縮するほど快く手を差し伸べてくださるのです。今「YADOKARI」が思いを実現して小さな家を作ることができているのは、そういった方々のお陰なのだと、心から感謝しています。

 なかでも印象に残っているのは『PACO』という3メートル四方のセカンドハウスを作っていたリノベーション会社「ROOVICE」の福井信行さんです。

 福井さんは僕らが「YADOKARI」の活動を始める3年前には、もう『PACO』をカタチにしていました。その活動をリスペクトしていた僕らはまず最初に、福井さんをたずねました。

 「発売当時は小さな暮らしの認知度が低くて、『PACO』はあまり売れなかった」

 福井さんはざっくばらんに話してくださいました。そのうえで、僕らを励ましてくださったのです。
「思いがあるなら、お金はかかっても絶対にやった方がいい。僕は君たちの考えがすごく面白いと思うから、絶対に実現してくれ」
 そう言ってくれました。 

 「YADOKARI」が有名になってくると、「小さな家を安い価格で作るのは難しい」「そんなものを作っても儲からない」など、周囲からの雑音も増えてきます。でも僕らの思いを最初に受け止めてくれた福井さんの言葉を思い出すと、気持ちも新たに頑張ろうと思えるのです。

 もしも僕らが最初から建築業界に身を置いていたら、「あまり売れなかった」という福井さんの話を聞いて二の足を踏んでいたかもしれません。小さな家を作ることの法律的な難しさを知っていたら、コンテナで家を作るなんて発想さえしなかったでしょう。でも僕らはあくまで素人で、ユーザーとしての切実なニーズから小さな家を作ろうとしている。だから大胆になれるし、そこを面白がってくれる福井さんのようなプロフェッショナルもいるのです。

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◎YADOKARI株式会社について VISION「世界を変える、暮らしを創る」 MISSION「暮らしの美意識を体現し、新たなカルチャーを創造する」 ◎MISSION 2030「リビングコストゼロを実現し、人類の幸福度を向上させる」 YADOKARIは、日本のミニマルライフ、小屋、タイニーハウスムーブメントを牽引しています。住まいと暮らし、働き方、まちづくりの原点を問い直し、これからを考えるソーシャルデザインカンパニーです。 世界中の小さな家やミニマルライフを紹介する「YADOKARI.net」、全国の100均物件マッチングサイト「空き家ゲートウェイ」、ちいさな暮らしを実践する「TINYHOUSE ORCHESTRA」、新たな働き方を提案する「未来働き方会議」等々の提案型ライススタイルメディアの企画運営。 「Tinys Yokohama Hinodecho」(CL:京急電鉄)=グッドデザイン賞/ソトノバアワード/横浜・人・まち・デザイン賞受賞、「BETTARA STAND 日本橋」(CL:三井不動産)の企画運営。 オフグリッドタイニーハウス「Tinys.mobi」、250万円の移動式タイニーハウス「INSPIRATION」や小屋型タイニーハウス「THE SKELETON HUT」など自社で企画販売するタイニーハウス小屋も展開。また、名建築・黒川紀章設計「中銀カプセルタワービル」の保全・再生支援も行う。 「豊かさの再編集」をテーマにした著書・出版物に『ニッポンの新しい小屋暮らし』(光文社)、『アイム・ミニマリスト』(三栄書房)、『未来住まい方会議』(三輪舎)、リトルプレス『月極本1・2・3』を発行。 "仕掛けで賑わいを作り、新しい暮らしや住まい方のムーブメントを”創出しています。また、新空間プラットフォームを中心に、住まいや暮らし、まちづくりに関わる企画プロデュース、タイニーハウス小屋の開発、遊休地・暫定地の利活用・活性化支援を手掛けています。 <メディア> ・YADOKARI.net(https://yadokari.net/) ・空き家ゲートウェイ(https://akiya-gateway.com/) ・TINYHOUSE ORCHESTRA(http://yadokari.net/orchestra/) ・未来働き方会議(http://job.yadokari.net/) <施設> ・Tinys Yokohama Hinodecho(http://tinys.life/)=グッドデザイン賞/ソトノバアワード/横浜・人・まち・デザイン賞受賞 ・BETTARA STAND 日本橋(http://bettara.jp/)※暫定期間終了 <販売しているタイニーハウス> ・YADOKARIオフグリッドタイニーハウス「Tinys.mobi」 ・YADOKARIタイニーハウス「INSPIRATION」(http://inspiration.yadokari.net/) ・YADOKARIタイニーハウス「THE SKELETON HUT」(http://skeletonhut.yadokari.net/) <著書> ・「アイム・ミニマリスト」(三栄書房)(http://www.amazon.co.jp/gp/product/477962732X/) ・「未来住まい方会議」(三輪舎)(http://www.amazon.co.jp/dp/4990811623/) ・「ニッポンの新しい小屋暮らし」(光文社)(https://www.amazon.co.jp/dp/4334979408) ・「月極本1・2・3」(YADOKARI)(http://tsukigime.yadokari.net/) <主要取引先> 京浜急行電鉄株式会社 三井不動産株式会社 三菱地所株式会社 UR(独立行政法人都市再生機構) パナソニック株式会社 株式会社乃村工藝社 神奈川県住宅供給公社 株式会社MUJI HOUSE 株式会社タナベ経営 株式会社そごう・西武 町田市 横浜市 山梨県・小菅村 岐阜県 志摩市 <関連会社> 株式会社エヌ・シー・エヌ(JASDAQ上場・資本業務提携先) 株式会社はじまり商店街(完全子会社) <株主(一部)> 株式会社エヌ・シー・エヌ(JASDAQ上場・2019年12月資金調達) 日本ベンチャーキャピタル株式会社 / NVCC (2021年7月デッド含む1.5億円資金調達)
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