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「つくるプロセス」を変える。 車の知能化を考えるコンサル出身者の挑戦

最先端技術が集結する「HondaイノベーションラボTokyo」をはじめ、六本木、赤坂、栃木など、各地で自動車に関する様々な研究開発を行うHonda(本田技研工業株式会社、株式会社本田技術研究所)。 これまで技術者が中心となり歴史に名を残してきたHondaだが、技術職以外のビジネス系人材は、一体どのように活躍しているのだろうか。「コンサルや事業の立ち上げ経験のある人材は貴重だ」と2018年に中途入社した、技術戦略を担う木野貴史に話を聞いてきた。

「車の知能化」を考える。多部署と連携する技術戦略の仕事とは

車の変革期を迎えている今、これまでハードウェアと人との接点だった車は、ソフトウェアと人との接点へと変わっていく。 例えば、車の運転者が車内の温度を下げたいとき、助手席の人に話しかけるように「暑いから温度を下げて欲しい」と言うだけで車内が快適になる「音声インターフェイス」もその一つだ。 木野はそんな「車の知能化」における技術戦略をたてる人材として、2018年10月にHondaに中途入社。前職までのコンサルティングファームでの経験を生かし、知能化サービスをどのように搭載しお客様に価値を提供するかの構想を日々練っている。

「今Hondaは、AIなどを使用してお客様の思考や特性を理解し、お客様好みの情報をほしいタイミングで提供する技術を作っています。 その中で、これからの世の中の進化を踏まえて『この技術をこのタイミングで開発できたらいいんじゃないか』と概要を整備して、5年〜10年先に向けた戦略を立てる。そこから関連する部署の研究者と『こっちの技術を使ったほうが理想的だ』などと議論を繰り返してすり合わせていくのが私の仕事です。」 “現状だとできないこと”をベースに未来を考え、技術で解決できるシーンを想定する。さらには、音声インターフェイスで実現できる機能も多岐にわたるため、コミュニケーションを取る部署の数が多いのも彼の仕事の特徴だ。 「ナビ、エアコン、照明、窓……。いろんな機能が車の中にあって、どのような機能であれば安全・快適に音声で操作ができるのか、それぞれを開発している人と話す必要があります。これからは自動運転などの安全装備との連携も必要になってきますし、AIのキャラクター化や物理的なボタンだけでない表現や機能といったデザインに関するところまで、活動範囲はかなり広いですね。新しい車と人を繋ぐ役目もそうですが、今まで知らなかった車の秘密を知ることもできるので、すごく面白い仕事です。」

一つのことを長年突き詰めるよりも、色々なことを知り視野を広げた上で振り返りをする。「虫の目、鳥の目を経て全体を良くすることが自分の仕事だ」と木野は言う。この彼が持つ柔軟な視点は、経営者のサポートや事業推進を行う前職のコンサルティング業で養われたのだろう。

Hondaの「つくるプロセス」を変えていく。コンサル出身者の組織変革への想い

外資系のコンサルティング会社から日本の自動車メーカーであるHondaに転職した木野。業務内容はもちろんだが、Hondaの社風や仕組みにも前職との違いを感じているはずだ。そこで、入社後の「現場の印象」と「前職とのギャップ」について話を聞いてみた。 「入社してから思うのは、Hondaはやはり研究者のみなさんが熱心だということ。『こういう事象を解決したいんだ』と強い意志を持っている方が多く、ボトムアップ型の組織だと思います。 個々の思いがしっかりあるので、戦略を決めてもその通りに進まないこともありますが、私は色んなアイディアがあっていいと思いますし、研究者側と戦略側がお互いに合わせていけばいいと思っています。ハードルを一つずつ越えながらやっていくためにも、技術的な部分を研究者の方から教えてもらい、うまく連携していく。この泥臭さを楽しんでいます。」 木野は、前職で日本の大企業が抱える課題の解決に向けて多くの取り組みに携わってきた。その中で大企業は「意思決定のスピード感」が外資系企業やベンチャー企業に比べると劣っていると感じていたと言う。だからこそ木野は「前職の経験を活かして、社内の仕組みをより良い方向へ変えていきたい」と語った。 「前職を経験しているからこそ、Hondaだけでなく日本企業のボトルネックが見えたりもします。ただ与えられた技術戦略の仕事をこなすというよりは、『どうHondaを変えていけるか』と考えながら組織を変える部分も推進していきたい。 技術戦略を立てる上で『つくるプロセスを変える』ことができれば、お客様に新しい価値を提供しながら、組織も良い方向に変えられる。いろんな願いが叶えられそうです。」

世の中の流れが「モノ価値」から「コト価値」に変わっている今。100点の技術の積み上げでサービスを作るのではなく、ユーザーが車で何をしたいのか、車で提供できるユーザーへの新しい価値は何なのかを意識する。こういった考え方ができるのがビジネス系人材の価値だ。

最高の研究者が揃った今、Hondaはビジネスサイドの人材を求めている。

最先端の技術が集結する「HondaイノベーションラボTokyo」には今、日本の未来を担う研究者たちが大集結している。この中にいる木野は、自動車業界未経験で知能化の専門知識を持つわけではないが「戦略のプロフェッショナル」として入社した、Hondaの中では少し特異な人材である。 「自動車業界特有のスキルや経験がなくても、研究員の方たちに『戦略的な考えも武器になるんだ』と思ってもらえるような動きを意識しています。大きな変革期にいるので、コンサルや事業の立ち上げ経験のある私たちの腕の見せどころなんです。」 Hondaは、やはり今でも技術者を主軸にした組織である。その一方で、技術者たちに力を発揮してもらうためにも、戦略のプロフェッショナルが強く求められているという。ある種の「貴重人材」として、部署や役職の垣根を越えてパフォーマンスを発揮できる環境なのである。

そんなタイミングで入社した木野は、戦略を考え遂行するためにもこれまで多くの部署とやりとりを重ねてきた。その努力が実ったのだろう、入社して1年も経たない中、先日とある研究者に「戦略を考えてくれる木野さんがいなかったら、今頃どうなっていたんだろう。」と思いがけない嬉しい言葉をもらったのだという。 「私自身、より良い社会を実現するための新しいサービスをつくっているという感覚が本当にあります。今、車関係の魅力的なベンチャー企業も数多くありますが、歴史あるHondaは車体の開発も兼ねているので業務の幅が広くて面白い。これまで多くのお客様に愛されてきた分の知見がありますし、だからこそつくれるものがHondaにはあるんです。」

他社との共創、技術者以外の人員強化――これからの車業界を盛り上げ、より豊かな車社会の実現に向けてHondaはこれからも変化し続けるだろう。その道のりには必ず、木野のように情熱を持って未来の車づくりや組織の変革に挑む人材の力が必要だ。

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