My Social Issue 01 介護状態になっても可能な範囲で理想に近い暮らし方ができるよう、ひとりひとりにあったサービス選定が叶う世の中に
My Social Issue
ウェルモ社員それぞれが強烈に意識をしている社会課題について語るインタビュー企画です。
――伊藤さんにとっての "My Social Issue" とはなんでしょうか。
伊藤:介護サービスにおける利用者本位のケアマネジメントの実現です。体の自由が利かなくなった高齢の方々にとって、その後の人生を有意義に過ごせるかどうかは受ける介護サービスで大きく左右されます。介護状態になっても可能な範囲で理想に近い暮らし方ができるよう、ひとりひとりにあったサービス選定が叶う世の中になってほしいと思います。
――現状では、十二分に満足いくケアマネジメントは実現していないということですね。
伊藤:介護には、必要な時だけ介護サービスを受ける在宅介護と、入所をしそこで介護を受ける施設介護があります。介護保険上、ケアマネジャー(介護支援専門員)だけが作成を認められるケアプラン無しではサービスを受けることができません。要は、利用者やご家族の方が自分たちで理想とするサービスを探し出したり、契約したりすることはできないのです。もちろんケアプランは介護利用者の要望や健康状態を踏まえて作成するものですが、これはケアマネジャーのスキルやノウハウに依存するところが大きい。このボトルネックになっているのが、情報の非対称性の壁だと考えています。
――情報の非対称性とはどういうことでしょうか。
伊藤:全国には介護事業所が20万件以上存在します。コンビニの4倍以上といえばイメージがつきやすいでしょうか。この想像がつかないほど膨大にある事業所の中から最適な事業所を選べというのは到底無理な話です。というのもケアマネジャーの方々に向けて、情報がどのように提供されているかといえば電話やファックス、チラシなどアナログな媒体が主です。フォーマットもなく、記載される内容にもばらつきがあります。正確な比較や情報の整理は、容易なことではありません。利用者からの要望に対してどれだけ真摯に応えようとしても、これではケアマネジャーのタスクオーバーにもつながりますしその結果、利用者の方が一番不利益を被る構造になってしまいます。
――現場からは改善要望はあがらないのでしょうか。
伊藤:効率化できるのではと考える方もいらっしゃいますが、一方で現状に違和感をもたず環境に慣れ切っている方もいらっしゃいます。以前お邪魔した居宅介護支援事業所では、電話はひっきりなしに鳴り、ファックスも止まることがありませんでした。月並みな言い方ですけれどもIT化が全然進んでおらず「もうちょっと効率化できるのでは」と思う場面が散見されます。
――ITによる業務効率化が考えられる一方で、現場にとって新たなツールの導入がかえって負担になると考えられる方もいそうですが。
伊藤:現在、厚生労働省が提供するウェブサイト「介護サービス情報公表システム」があり、それを利用される方は多くいます。しかし非常に使い勝手がよくないというか、欲しい情報があまりに細かすぎるあるいは逆に足りない印象を受けます。こうしたユーザーフレンドリーではないシステムが蔓延れば、ITへのアレルギーはより強まるでしょう。「ミルモネット」では、ITに対して苦手意識をもっている方でも欲しい情報がすぐ見つかりやすい仕様を目指し、テキストベースではなく写真を多く掲載しキーワード検索を設けています。ここから利用者の方の趣味や嗜好、性格的なものを加味して納得感のある選択を提案しやすい設計を意識しました。こうした見やすいプラットフォームを提供することで、HPが存在しない事業所のために情報収集のためにケアマネジャーは自ら足を運ぶなど、今まで膨大に発生していたアナログで地道な負担が軽減されるはずです。
――客観的条件だけを網羅するのではなく、利用者が介護サービスを前向きに利用したくなる情報も手に入れやすくなるのですね。
伊藤:はい。「ミルモネット」では様々な独自の検索項目を持っています。例えば在宅介護の1つのサービスであるデイサービス。このサービスに抵抗感を示す方は思っている以上に多い。「人がいるところにわざわざ行きたくない」など理由は様々です。けれども趣味の囲碁や将棋を指す相手を探しているなど、趣味や関心事項を軸に興味の惹かれる項目があれば、ケアマネジャーにとっても介護サービスを提案しやすくなります。そのようなレクリエーションが行われているか判断できる独自検索項目があることによって、それが実現されます。
――利用者本位を実現する設計とは、ときにエンジニアの立場からすると技術的難易度の高い設計を求められることもあると思います。
伊藤:そうですね。部署を越えて「こんなのあったらいいけど、難しいよね?」と駄目元の相談はあります。ですが基本的になんでもできる前提でいます。大体のことはできると思っていますし、どうしたら実現できるかの方向に全部持っていくようにしています。もちろん時間はかかります。けれども現場の課題を拾ったり法律を変えることはできないエンジニアの私たちにできることは、社員の想いをかたちに変えることですから。そういったところで、自分たちなりに貢献できればと思いますね。