「技術の力で、経営を、そして事業をどうアップデートできるか」
いま、多くのエンジニアが「HOW(どう作るか)」の壁にぶつかり、その先の「WHY(なぜ作るか)」を模索しています。そんな中、株式会社ウエディングパークが2023年に新たに設置した役職が「BTO(Beyo-nd Technical Officer)」です。
単なる技術責任者(CTO)の枠を超え、経営と現場のエンジニアリングを「デザイン」という観点で繋ぎ合わせるこの役割。就任から1年を迎えた岩橋 聡吾氏に、BTOとして仕掛けてきた変革と、ウエディングパークが掲げる「デザイン経営」について聞きました。
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■プロフィール
株式会社ウエディングパーク
生成AI推進室 室長 / BTO /エンジニアマネージャー
岩橋 聡吾(いわはし そうご)
2016年、株式会社ウエディングパークに中途入社。社内のセキュリティ周りを中心にエンジニアとして活躍。 2017年にシステムマネージャーとなり、2019年「Wedding Park AI Lab」所長、2020年5月「DX推進室」室長を務める。 その後、デジタルマーケティング本部やバリューデベロプメント本部での開発責任者も担い、2025年BTO(※)に就任。「生成AI推進室」を発足し、現在に至る。
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「技術とデザインのウエディングパーク」を創るBTO
――2025年にBTO(Beyo-nd Technical Officer)に就任されて1年。改めて、この役職に込められたミッションをどう捉えていますか?
岩橋: BTOの「B」は、2023年4月~9月に掲げられていた半期スローガン「BEYO-ND!」が由来となっており、社内では、大きくレベルを上げるようなストレッチの効いた「挑戦」を表現する言葉となっています。従来のCTOという枠組みを良い意味で「超えていく」役割だと自負しています。
就任時に感じたのは、これからのエンジニア組織には、技術戦略を示すだけのリーダーではなく、組織マネジメントに特化したVPoE(Vice President of Engineering)的な役割も内包する必要があるということでした。
ただシステムを安定させ、新しい技術を導入するだけではない。エンジニアを含むクリエイター組織全体をいかに熱量高く盛り上げ、経営の意思決定に「クリエイティブの力」をどう介在させるか。そこまで踏み込むのがBTOのミッションです。
――「技術」と「経営」の距離を、より縮めていく役割ですね。
岩橋: そうですね。技術をビジネスの「道具」に留めず、事業成長を牽引する「原動力」へと昇華させる。そのための橋渡し役として、組織のカルチャーづくりから経営戦略への参画まで、ボーダレスに動いてきた1年でした。
「誰」を幸せにするか。エンジニアと経営を繋ぐ「一次情報」の力
――ウエディングパークが推進する「デザイン経営」において、岩橋さんが最もこだわっている「エンジニアと経営の接点」は何でしょうか。
岩橋: 非常にシンプルですが、「一次情報」を獲得すること、そして「誰」を幸せにするか。ということです。
エンジニアリングも経営も、本質的には「誰か(ユーザーや社員、ウエディング業界、社会)」を幸せにするための手段です。しかし、組織が大きくなり、構造が複雑になればなるほど、開発の向こう側にいる「人」の顔が見えなくなってしまいます。
――「誰のための開発か」が曖昧になってしまう、と。
岩橋: その通りです。だからこそ、私はメンバーに「一次情報の獲得」と「誰のためなのかの反芻」を繰り返し伝えています。
例えば、新しい機能を実装するとき、それはカップルの不安を解消するためなのか、あるいは結婚式場スタッフの方々の業務を楽にするためなのか。現場の声を直接聞き、その手触り感を持ったままコードを書く。この視点を持つことができれば、エンジニアの視座は自然と経営と同じ方向を向くようになります。
「技術のための技術」ではなく「人のための技術」へ。この一致こそが、私たちが目指すデザイン経営の核なんです。
BTOとして、経営を動かした3つの挑戦
――この1年、具体的にどのようなプロジェクトを推進されてきたのでしょうか。
岩橋: 象徴的なものが3つあります。
① 「生成AI推進室」の発足
ウエディング × AIの領域で、私たちのコアコンピタンス(競合優位性を持った組織力)を発揮するために、自ら経営に上申して発足させました。単にAIツールを導入するのではなく、AI活用を組織の「文化」に変えるための戦略や仕組みを日々アップデートしています。
② 「CROSSプロジェクト」の始動
クリエイターによる「非連続的な」事業成長を加速させるためのプロジェクトです。エンジニアやデザイナーの「共同体意識」を高め、部署の垣根を超えて切磋琢磨できる機会を創っています。あえてオフラインでの集まりを重視し、リアルな対話から生まれる化学反応を大切にしています。
CROSSプロジェクトの様子
③ サイバーエージェント(CA)グループとの連携強化
グループのリソースを最大限に活用し、セキュリティレベルの向上やコスト削減、さらには新卒エンジニアの合同研修など、多角的なシナジーを生み出しています。例えば、AI活用に関する共同研究論文の作成・採択や、脆弱性診断のフロー改善など、技術的な信頼性を一段引き上げる取り組みが進んでいます。
――どれも現場発信で、経営にインパクトを与える動きですね。
岩橋: 「こういう組織でありたい」という理想を形にするために、自ら枠組みを提案し、動かしていく。これができる環境こそが、ウエディングパークの面白さだと思います。
裁量とは「エンジニアの想いのどこに体重を乗せるか」を決めること
――「裁量が大きい」という言葉はよく聞きますが、岩橋さんにとっての「裁量」の定義とは何ですか?
岩橋: 私は、「エンジニア組織が歩むべき方向性を決めること」だと考えています。
ただし、これは独りよがりに決めることではありません。現場のエンジニア一人ひとりと時間をかけて対話をし、そこから溢れ出してきた想いや視点を吸い上げていく。その膨大な声の中から、どの切り口を一つの方向性としてまとめ上げ、経営と擦り合わせるかを考えています。
――「どこに体重を乗せるか」を判断するのが、岩橋さんの仕事だと。
岩橋: その通りです。「みんながこう言っているから」と平均値をとるのではなく、対話を通じて見えた「熱量の源泉」に、私自身の考えを乗せて形にする。このプロセスにこそ、最大の責任と裁量があると感じています。エンジニアの想いを背負い、それを事業の推進力に変えていく感覚ですね。
組織施策で掴んだ「一枚岩」。技術で届けるサプライズ
――最近の取り組みで、特に「ウエディングパークらしい」と感じたエピソードはありますか?
岩橋: サイバーエージェントグループでおこなった、全事業部のAI活用度を見える化する「AI番付」への取り組みは象徴的でした。特にエンジニア組織では「開発工数40%削減」という、一見すると驚くような高い目標を掲げたんです。
普通の組織なら「そんなの無理だ」とネガティブな反応が出るかもしれませんが、メンバーはこれをポジティブな挑戦として受け止めてくれました。共通エディタ(Cursor)を一斉導入したことをきっかけに、「これ便利だよ!」「こう使うと効率的だよ」といった会話が自然発生的に増え、部署ごとに分散しがちだった30名のエンジニアが、一気に「一枚岩」になったんです。
――技術が組織のコミュニケーションを変えたんですね。
岩橋: そうなんです。LLMという強力な武器を得たことで、既存システムやデータと掛け合わせてできることが爆発的に広がりました。
自チームの生産性向上から、強固なセキュリティ、カップル向けサービスの品質向上まで、やりがいのあるテーマは至る所に転がっています。技術の力で、ユーザーやメンバーの想像を超えた「サプライズ(驚きと喜び)」を届ける。この手触り感のある開発体験こそが、今、私たちが最もワクワクしているポイントです。
「自分」という主語を卒業し、事業を牽引する存在へ
――これからのウエディングパークの技術組織を、どう進化させていきたいですか。
岩橋: さらなる「組織力」の強化です。そのためには、メンバー一人ひとりが「自分」という主語を卒業できるかが鍵になります。
「自分にとっての開発」から「エンジニア組織、ひいては事業全体にとっての開発」へ。主語が変われば、視座が上がり、組織が本当に欲しているサポートや技術を最適なタイミングで届けられるようになります。それができる強い個が集まることで、「技術とデザインのウエディングパーク」というブランドを確固たるものにしていきたいですね。
――最後に、未来の仲間へメッセージをお願いします。
岩橋: ウエディングパークには、単なる開発者を超え、事業成長を牽引するエンジニアへと変われる「視座の転換」が待っています。
「HOW」の先に踏み込み、「WHY」という事業の核心に向き合う。そこでは技術以外の「総合力」が求められますが、だからこそ自分でも気づかなかった「眠っていた強み」に出会えるはずです。共に、技術で経営をデザインしましょう。
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