少人数で複数のプロジェクトを動かしていると聞くと、現場が限界まで無理をして回しているのではないでしょうか。
▍人を増やす前に、まず「捨てる」
私たちの設立は2022年3月です。現在の事業は、インフルエンサーのファンクラブ運営や撮影、動画編集、SNSを中心としたデジタルマーケティングまで多岐にわたります。
現在、私たちが運用しているSNSアカウントは300にのぼり、所属タレントの総フォロワーは1,000万人に達しました。これを1年間の動きに換算すると、年間の投稿数は13万本、年間のいいねは1,700万にのぼる計算です。
これらの運用を少人数で分担して進めているため、メンバー一人あたりの担当規模は100万人になります。
通常の会社であれば、管理するアカウントが増えたタイミングで人員を拡充して対応しようとするはずです。しかし私たちが選んだのは「人を増やす」ことではなく、「いかにやらないことを決めるか」でした。
人が増えれば、コミュニケーションのコストが跳ね上がります。確認事項が増え、承認フローが長くなり、組織全体の動きが鈍くなります。スピードと鮮度が命のSNS市場において、動きが遅くなることは致命傷です。
だからこそ私たちは、人を増やして力技で解決する前に、会議、資料作成、その都度の判断といった「無くても回るもの」を徹底的に捨てて、仕組みで解決する道を選びました。
▍増やさない会議と、作らない資料
私たちが最初に捨てたのは、時間を奪う会議と報告用の資料です。
社内の定例会議は、週1回、30分間の進捗確認だけに絞っています。日々のアカウント分析や企画のブレストに時間をかけたいのに、社内調整の会議が増えて作業時間が削られては本末転倒だからです。
どうしても話し合いが必要な場面では、事前にチャットで「解決したい課題」「現状の数字」「想定される3つの選択肢」を共有し、テキスト上で結論を出せるか試みます。それでも口頭で話す必要がある場合のみ、制限時間を15分に設定し、その場で決断を下すルールを徹底しています。「持ち帰って検討する」という保留は存在しません。
また、社内向けの報告資料や綺麗なスライドは一切作りません。計測できている一部アカウントの20日間の投稿数は759本、同じ20日間・同じ範囲のいいね合計は93,838にのぼります。これら膨大なデータは、全員がアクセスできるダッシュボードで常に最新の数字が見られる状態にし、手作業での集計作業を完全に無くしました。資料は「作るもの」ではなく、「システムを見るもの」に変えたのです。
▍毎回悩まないための「決めておく判断」
次に私たちが着手したのは、日々の業務における「判断のルール化」です。
私たちの事業には一部で成人をターゲットにしたコンテンツの制作も含まれるため、プラットフォームの規約変更やトレンドの移り変わりが早く、運用ルールの微調整が毎日のように発生します。
そのたびに「どう対応するか」をゼロから考えていると、時間がいくらあっても足りません。だからこそ、「こうなったら、こう動く」という基準をあらかじめ定めて、悩む時間をなくしています。
たとえば、毎朝のSNS運用においては、手動での指示出しを廃止しました。生成AIと自動化ツールを連携させることで、朝の投稿指示の締切である12時30分までに、過去のデータに基づいた最適な投稿案が各自のチャットへ自動的に届く仕組みを整えています。
人間がやるべき仕事は、その自動生成された内容に対して「文脈に違和感がないか」をチェックし、タレント本人の最近の出来事を加味した微調整を加えることだけです。白紙から企画を考える時間を捨て、精度の高いベースを編集する仕事へとシフトしました。
▍採用も「仕組み化」で運用する
この「判断をルール化する」という考え方は、採用活動においても全く同じです。感覚を捨て、設定した数字の基準で運用しています。
現在、私たちは9つの職種で40本以上の募集を出しています。これだけの数を少人数で管理するために、毎日巡回している同じ市場の競合は66社に設定し、手元に貯まっている競合募集の記録は1,071件に達しました。
募集記事の運用では、停止候補を判定する公開日数を24日に設定し、判定に必要な閲覧数の下限を60と決めています。応募率の基準を作るときの公開日数の区切りは15日とし、基準に使う上位の割合は35%としています。
数字がこの基準を下回った場合、立ち止まって悩むことはありません。機械的に修正のプロセスに入ります。
募集タイルの上限である37字の範囲内で、検索ボリュームの多いキーワードを入れ替えたり、クリック率の低いサムネイル画像を別の画像に差し替えたりします。直したあとに効果を測るまでの日数は21日。この期間が過ぎたら再び同じルールで判定を行うだけです。やるべき手順が決まっているため、迷わずに手を動かすことができます。
▍「仕組み」がもたらす本当の価値
こうした徹底した仕組み化の成果は、明確な数字として表れています。
1年前の会社フォロワー数はわずか19でしたが、現在の会社フォロワー数は310まで増えました。これまでの期間に私たちが受け取った応募の総数は、すでに240件を超えています。
もちろん、会社全体の応募総数が自社を上回る競合はまだ25社存在しており、私たちが目指すポジションには届いていません。さらに数字を伸ばしていくための試行錯誤は続きます。
私たちが資料作成や無駄な会議、繰り返しの判断を捨てたのは、単に楽をするためではありません。人間がやらなくてもいい作業を手放したことで、私たちには「本来人間がやるべき仕事」に全力で集中する時間が生まれました。
それは、タレントの熱量に本気で向き合い、ファンが喜ぶ新しい企画を考え、人の感情を動かすクリエイティブを作ることです。
少人数であっても、仕組みの力を使えば大きな数字を動かすことができる。作業を効率化した先にある、本当の「作る楽しさ」に時間を使いたい。そんな考え方に共感していただける方とお会いできるのを、心から楽しみにしています。
https://www.wantedly.com/companies/wave_ltd/projects