2022年11月24日に開催したWaris主催ウェビナー「スタートアップ企業のための社外取締役&常勤監査役の探し方」の開催レポートをお届けします。
今回のウェビナーでは、人材多様性を踏まえた経営層獲得を実現した、フィットネス業界で圧倒的成長中の株式会社レバレッジ 只石様と、起業家の良きパートナーとしてIPO支援に取り組んでいらっしゃる、プロジェクト・オーシャン株式会社 早川様をゲストにお迎えして、どこにもマニュアルが存在しない、IPOを目指すスタートアップ企業のための経営層人材の「適切な探し方」を、事例を交えてお伺いしました。
株式会社レバレッジ様:https://www.lev.co.jp/
株式会社プロジェクト・オーシャン株式会社様:https://project-ocean.com/
只石様からの切れ味鋭い採用サイドの考え方や大切にしているポイントを随所に共有していただくとともに、早川様からは豊富な知見をもとに、只石様の事例の裏付けとなるような人材の探し方のコツを惜しげもなくお伝えいただく、とても熱く濃い時間になりました。
お話いただいた内容の一部を、
【経営層人材の探し方で間違いがちな4つのポイント】
にまとめてお伝えします。
▼経営層人材の探し方で間違いがちな4つのポイント
1. 経営層獲得の目的は【多様性】が最優先?~こだわるべきは【成長】
2. 社外取締役と常勤監査役の探し方は同じ?~求める人物像が異なるなら探し方も変わる
3. 経営層の採用は、従業員の中途採用のフローと同じ?~別ものとして考えよ
4. 経営層人材から「選ばれる」企業に不可欠なポイントは?
1. 経営層獲得の目的は【多様性】が最優先?~こだわるべきは【成長】
レバレッジ様の経営層メンバーは、社外取締役2名がともに女性、監査役2名中1名が女性で構成されています。
社外取締役のお一人(40代女性)は弊社Warisエグゼクティブから採用いただいたご縁から、まずはその際の人材獲得背景についてお話をお伺いしました。
「本音で話すと、まず私はダイバシティという言葉が好きではありません。この言葉自体が性を分けていますよね。私の根底にはダイバシティだから女性を獲るという考え方はなく、優秀な方だから獲ったんです。」(只石様)
そう切り出してくださったところから、お話は進みました。
では、人材の決め手はどこにあったのか?
只石様がこだわるのは【成長】でした。
社外取締役に彼女を選んだ最大の決め手は上場を経験していたからだそうです。「経験」をいただくことが大事なポイントだと言います。
そして社外取締役ジョイン後の成果についても、只石様より共有いただきました。
「取締役会などに参加してもらうようになって、女性視点が入って本当によかったと実感しています。弊社は顧客の8割が男性であり、男性視点だけでもいいやとなってしまいそうなところに対して、会社として持つ視点がより広くなりました。今後ターゲットを女性に広げていくとなったときにも非常に活きてくると思います。」(只石様)
女性の登用では、「女性」というキーワードに期待値が集まりがちになることも多く見受けられますが、只石様のお話からは「上場のご経験×マーケティングのバックグラウンド×女性視点」のそれぞれの力がかけ算になって、経営に活きている様子が強く伝わってきました。
2. 社外取締役と常勤監査役の探し方は同じ?~求める人物像が異なるなら探し方も変わる
次に、経営層人材を探すのが初めての上場準備企業様をご支援することも多い早川様に、社外取締役と常勤監査役に求められる人物像と探し方の傾向についてお伺いしました。
経営層人材といっても社外取締役と常勤監査役では求められることが全く違います。しっかり分けて捉えることが必要です。
①常勤監査役
常勤監査役の役割として、必ず必要になる条件が2つあります。
・上場準備企業については常勤が必要なことから、フルコミットできること
・上場審査の対象となるため、監査役自らが手を動かすことが求められる。そのためドキュメンテーション(Word、Excel等)ができること
これら条件を踏まえて、常勤監査役探しのポイントは以下になります。
・実務が行える人が必要になるため、年齢層は30代~50代前半くらいの方
・男性×30代~40代の場合、CFOなど前線で働きたいと希望する人が多く希望者が少ない。
・女性は男性に比べると働き方の多様性の幅が大きいことから、監査役にチャレンジする希望者は増えている傾向にある。ただ、常勤監査役はまだまだ希望者が少ないのが現状。
常勤というハードルから人材探しが難航しがちなポジションであるため、多くの企業様はエージェントを利用して探す傾向が強いといいます。
②社外取締役
誤解を恐れずにいうと、有名人枠と考えているような登用をされている企業も見受けられます。しかしながら、上場準備企業ならば気をつけたいポイントがあります。
・上場審査に耐えうる知見を持っているかを見極める必要がある。経営者としては一流の方だとしても、ガバナンス・コンプライアンスなど守りに関することに答えられないという事態が多々起こっている。
社外取締役は、社長の伝手などで探す企業が多いようですが、攻めと守りのバランスを持った方が探せるかが肝となります。
3. 経営層の採用は、従業員の中途採用のフローと同じ?~別ものとして考えよ
経営層人材の獲得に向けて、実際にどのような採用手法を実践してくのがよいのでしょうか。只石様、早川様からのお話にて、中途採用とは異なる4点が浮き彫りになりました。
①採用期間
早川様によると、特に常勤監査役の場合、株主総会のタイミングなどにも影響されるため、採用にかかる期間は平均3か月~6か月、長期になると1年がかりになることもあるそうです。
一般的な中途採用より長期戦を見込む必要があります。
②採用面接フロー
只石様が実際に経営層人材獲得時に行った採用面接は以下の合計4回。
初回:執行役員兼管理本部長(オンライン)
2回目:只石様、執行役員(オンライン)
3回目:只石様、執行役員(対面)
4回目:その他の社外取締役
これら以外にも会食機会も設けるなど、一般的な採用フローよりも濃密なコミュニケーションをとることによって、「カルチャーフィット」すなわち、特に経営層との価値観や相性を確認したというお話をしていただきました。
③候補者への対応
只石様のお話を聞いた早川様より、面接フローで陥りがちな失敗事例を共有してくださいました。
「経営層人材に対して、一般的な中途採用の選考をしてしまう企業は嫌われてしまうことがあります。例えば、人事担当者が1次面談に対応して志望動機から聞いてしまったり、適性試験を実施してしまったりする企業様がいると聞きます。これは控えたほうがよいと思います。リファレンスチェックも候補者の状況によっては実施しづらい場合もありますので、注意が必要です。」(早川様)
3つ目のポイントでもあがった、「カルチャーフィット」は、こうした選考段階での対応ひとつひとつにおいても価値観や相性を推し量る材料となります。自社では目的に沿った業務フローを敷くことができているか、ぜひ確認してみていただきたいところです。
④採用ツール
只石様が実践されている採用手法についてお伺いしました。
創業当時SNSコンサルティング事業を手がけておられたレバレッジ様は、その強みを活かして、一般の採用活動では広告や採用媒体に頼らずにSNS(主にTwitter)を主軸にされ、成果を上げていらっしゃるそうです。
しかし、経営層人材の獲得ではうまくいかないと気づいたといいます。
「経営人材層はSNSにはなかなかいません。そこでエージェントを利用することにしました。現在は数多くのエージェントとお付き合いし、それぞれの強みに合わせて使い分けをして利用しています。」(只石様)
早川様からも、経営人材層獲得にエージェントを利用するメリットを教えていただきました。
「上場審査に耐えられる人材なのか、業界に精通しているのかといった点を客観的な視点を入れてみるために利用することはメリットになるかと思います。加えて、それらの目利きができるエージェントを選ぶことも大事です。」(早川様)
4. 経営層人材から「選ばれる」企業に不可欠なポイントは?
まず全ての採用活用において不可欠なポイントについて、只石様が挙げてくださったのは【魅力づけ】です。
「全ての採用活動においてコーポレート広報は非常に重要だと考えています。経営層人材の獲得手段の中心に置くエージェント活用では、エージェントが我々以上に熱量をもって紹介してくれないと良い人に来てもらえません。だからこそ紹介したくなる会社でなければいけないと考えています。半期に一度のキックオフに参加してもらうなど、エージェントとのコミュニケーションは積極的に行っています。」(只石様)
そのうえで、経営層人材から見てどういう点が魅力づけになるのかについて話を展開しました。
まず、陥りがちなNG例として2点挙がりました。
「上場準備中というステータスは選ばれる条件に入っているとは思いません。弊社はN-1だから来てという言い方はしません。」(只石様)
「資金調達額や時価総額の大きさなどをアピールする企業もありますが、候補者が見ているのは業績や成長率などもっとリアルな数字だと思います。」(早川様)
では、実際のアピールポイントはどの点になるのでしょうか。まず只石様にお伺いしました。
「1番は『成長率』を打ち出しています。『この成長をさせるためにあなたの力が必要です』が伝わることで、相手も『この会社で自分も成長ができるのではないか』と期待をしてくれると信じています。特に弊社は、成長したいという野望を持った人に来てもらいたいので、成長率を前面に出すことによって弊社の価値観に共感できるかのスクリーニングにもなると考えています。」(只石様)
早川様からは、経営層人材が企業を選ぶうえで見ているポイントについて4つ回答をいただきました。
①魅力があることは大前提
成長率という点ももちろんありますし、事業の社会的意義に関心を示す候補者の方も多い。社会性の高い企業は人気が高い。
②コンプライアンス意識が高いかどうか
万が一不祥事が起こったとなると自身の名前まで傷がついてしまい、今後他の役員になれなくなるリスクを抱えるため、気にする方が多い。
③上場の可能性
上場しないと嫌だということではなく、任期4年の間にIPOが中止になり、常勤監査役を退任してほしいといわれるケースが多々ある。そのリスクをみている。
④社長・CFOとの相性
接点の多い社長やCFOのスタイルやガバナンス意識などに違和感があると敬遠されがち。
まとめ
今回のウェビナーでは、社外取締役&常勤監査役の探し方を豊富な事例とともに具体的にお話をお伺いすることができました。
Warisでは、今後もスタートアップ企業の成長を支援するための様々なウェビナーを開催していく予定です。お気軽にご参加ください。