ふくしま探究の種|note
福島県内の高校生に探究活動のきっかけを届ける「ふくしま探究の種」のnoteです。自分のやりたいことを「探究」する福島の先輩の挑戦や、探究をサポートする方々の思いを動画と記事で紹介していきます。 企画:福島県教育委員会(高校教育課)
https://note.com/fukushima_tanq/
こんにちは。宮城県の公立学校の国語科教員として36年間勤務し、定年退職後の2023年にWasshoi Tohoku Group(以下、WTG)にジョインした菅野です。
教員時代は、「指導よりも支援」を方針に生徒の学習や進路選択を支援してきました。WTGでは教員時代の経験を活かしながら、教育関連コンテンツ作成事業などへの対するアドバイスや学校支援、講演活動を行っています。
今回は、そんな私が考える「キャリア観」について書いてみたいと思います。
「18歳意識調査」という調査がある。「18歳の若者が何を考え、何を思っているのか」をテーマに、18歳前後の若者を対象にしたインターネットアンケート調査だ。2024年実施の第62回では「国や社会に対する意識」をテーマに、日本、中国、インド、韓国、アメリカ、イギリスの6か国で調査が行われた。
その中で「なりたい職業」を尋ねる項目があった。「もしあなたが全ての『職種』や『業種』から仕事を選べるとしたら、どれを選びますか。3つまで選択してください。」という問いである。各国の1位は、日本が「芸能・音楽・映画」、中国が「教師・講師・保育士」、アメリカが「デザイン・美術・写真」。私が気になったのは「特になし」と回答した割合が日本で20%を越えている点だ。他の5か国で0.5~3.2%であるのに比べ、突出した割合である。
このような結果となった理由は何だろう。ひとつ考えられるのが、学校教育で「地域や社会を知る」カリキュラムや「自分の将来を考える」活動が決定的に不足していることではないだろうか。高校、特に進学校では「学力向上」に力を入れる。大学入試に直結する「知識」の獲得に教師も生徒も熱心だ。もちろんそこで身に付けた「知識」は将来生きていくうえで役に立つに違いない。しかし、進学校の一部の生徒にとって、その「知識」は大学入試を突破するためのものになっていないだろうか。結果としてそれらの若者の多くは、自分の興味関心や学びたいことがはっきりしないまま大学に入学し、なんとなく4年間を過ごすこととなる。そして、親や教師も模試の偏差値を上昇させた生徒や、大学入試に向け一途に学習に取り組む生徒を高く評価する傾向にある。
一方、自分の将来を生徒に考えさせる機会は高校現場において多くない。その状況を改善するひとつの方策が「総合的な探究の時間」だ。この活動の目標は「横断的・総合的な学習を通して自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していく資質・能力を育成すること」とされている。「探究学習」の推進に課題を抱えている学校は少なくないが、「探究的な学び」と「教科の学び」とが連動し、生徒が社会に目を開きながら自己の生き方を考えられる学びを提供できる学校が増えれば、「就きたい仕事『特になし』」と回答する若者も少なくなるだろう。
理想的なキャリア形成とはどのようなものだろう、私は次のように考える。中学・高校時代に地域や社会に触れ、そこで活躍するたくさんの大人に出会う、その中から自身のロールモデルを見出し「将来は○○さんのように働きたい、活動したい」とあこがれる。そのあこがれから漠然としたキャリアイメージが形成され、高校の学びを経てそれが固まっていく。そしてその目標を実現してくれる進学先・就職先を見つけ、そこを目指して努力する。大学はネームバリューや偏差値で選ぶものではなく、就職先も初任給や休みの日数だけで選ぶものではないはずだ。
私が勤務する(株)オーナーは2021年に仙台で創業した教育関連事業会社で、高校における「総合的な探究の時間」のオンライン教材開発をはじめ、大学や自治体、民間企業と連携した教育コンテンツの開発を行っている。加えて、アントレプレナーシップ教育事業を通して高校の学びの支援も行っている。
昨年度からは福島県教育委員会とともに「ふくしま探究の種」という教材コンテンツの制作にも携わっている。福島の各地で地域の活性化を目指す大人たちの活動を紹介し、各校の「探究的な学び」に役立ててもらう取組だ。身近な先輩たちの仕事や思いを動画や記事にまとめて高校生に紹介することは、地域人材と高校生をつなぎ、高校生が「この人のようになりたい」、「福島でこんな挑戦ができるんだ」と感じ、そこから行動に踏み出すことの後押しとなるだろう。
「ふくしま探究の種」はこちら▼
(株)オーナーでの仕事を通し、高校生一人一人が自身のキャリアをイメージするための支援ができれば嬉しい。これは高校教員として生徒に向き合っていた時のマインドとそう変わりない。これからも高校生が地域や社会と関わる機会を創り、主体的にキャリア形成のできる若者を一人でも増やしたい。これが私の60代の社会貢献だと考えている。