very50のメイン事業であるMoG(Mission on the Ground)。国内外の事業家の方の協力のもと、高校生がビジネスや社会問題を学びながら、事業家の方へプロジェクトを提案するプログラムです。MoGの運営にはさまざまな方に携わっていただいますが、今回は、コンテンツ企画、運営で活躍いただいている河村勇希さんにお話を伺いました。
―勇希さんのバックグラウンドからお聞きしてもいいですか?
very50に来た当時から、ワークショップデザイナーとしてフリーランスで仕事をしています。ワークショップデザイナーって何かっていうと、色んな人が交流するイベントや研修などを協働的な学びの場として企画し、実施する仕事です。例えば、これまでやったことのある仕事でいうと、会社のビジョンを即興演技を通じて考える研修や、就活生が人事部という採用側の視点を得るための人事体験ワークショップ、子ども向けの楽器やダンスを使ったワークショップとかですね。
現在代表理事として活動しているコモンビートのミュージカルプログラムも、作品を作り上げるというものを手段に、その中で各々がどう自分らしさを発揮できるかとか、そこで起きるハレーションにどう向き合っていくかを体験する、ある意味1個のワークショップとして捉えて活動しています。
―ワークショップデザインや場づくりに関心を持ったきっかけは何ですか。
高校生の時、コモンビートの活動に参加したのがきっかけでした。高校までずっと野球部だったんですが、めちゃくちゃ厳しいところで。人生の土台になるようなことをたくさん学べた、僕にとってはプラスの経験だったんですが、どうしても勝負の世界で、統率される、支配されるような関係性の中で過ごしていて、元々緩い性格だった僕が、違和感なくミスを強く批判するようなきつい性格になっていってた。そこのプラットフォームに居続けると、自分のアイデンティティや性格が変わっていく。そのことに当時の自分はあんまり気付いていなくて。
気付いてなかったって気付いたのが、ケガで野球をやめた後に誘われたコモンビートの活動に参加した時でした。そこで、今まで出会ってきた野球関連の大人と全く違う、年齢とか所属とか全く関係ないフラットな大人たちに出会って。それまでの成功か失敗かっていう文脈から一転して、自分がワンアクション取ったことを肯定される空気を味わいました。
ただ、そこで出会った大人たちを素敵だなと思った一方で、「この人たち、普段からこんなキラキラして、自分のやりたいように行動して、他の人のチャレンジを肯定できる人たちなのか」っていうのには疑問を持って。仕事の話を聞いてるとみんな愚痴は言っているし。仕事とか普段はこうじゃないってことは、この場がみんなをそうさせてるんだと思った時に、このコミュニティとかプラットフォームっていう場が人に与える影響ってめちゃくちゃ強いなって感じて。それが最初に場づくりに興味を持ったきっかけですね。
―大学時代のアメリカ留学中に、歌やダンスなどのパフォーマンスを通じた教育を行っているヤングアメリカンズで活動されたそうですね。
アメリカ留学中、自分のやりたいことなんだろうって考えた時に、パフォーマンスを通したコミュニティ、プラットフォーム作りをやりたいなと思って。というのもコモンビートで感じたのが、ミュージカル作りっていう、ある程度アート性や身体性があったり、感性を重要視するようなものが題材になっている場所だからこそ、正解不正解みたいな話でもない、"Who am I"、「あなたはどう感じて、あなたはそれをどうアウトプットするの」っていう問いを繰り返すような活動になっていて、だからこそそういうコミュニティになっているんだということでした。
そういう文化とかグランドルールがあるような場を作れるようなアプローチとして、パフォーマンスって興味深いなと思って、少年院とかでショー作りをしているヤングアメリカンズっていうパフォーミングアーツカレッジに編入しました。
―ヤングアメリカンズではどのような活動をしていましたか。
今のコモンビートと近い活動なんですが、一言で言うとショー作り。具体的には、アメリカ内外の少年院や移民コミュニティなど、社会環境、学習環境が整っていない中で生活している子どもたちと一緒に3日間で舞台を作り上げるということをやっていました。そのショー作りの中で自分の感性を大事にして取るアクションってどういうものなのかとか、それぞれの輝きがどういうところにあるのかに気づいてもらうような、一種の学びの場を作っていました。
ーなかなか大変そうですね。
そうですね。ヤングアメリカンズのメンバー40人くらいで行うんですが、ワークショップやるよって集合場所に行くと、200人くらいの参加者がいる予定なのに100人もいないみたいなことがよくありました。みんなどこ行ったんだろうと思って探すと、体育館の裏でタバコ吸ってるとか。
その子たちを連れ戻して、一緒に踊ろうみたいなことをやってたので、理論的に学んで実践していたというよりは、目の前のこの子たちを、どうやってこの場に引き寄せて、その中でそれぞれが輝きを放てる一瞬を作るかというのに体当たりで取り組んでいました。そこでは、話し方とかだけじゃなく、自分の振る舞い、伝える言葉、コンテンツの作り方や空間の作り方まで、全部複合的にやらないと結果が出てこないという環境だったので、ワークショップデザインを身で学んだ感じでしたね。
ーかなり難しいことに取り組まれていたんですね。嫌だなと思うこともあったんじゃないかと思いますが、どうやって乗り越えられていたんですか?
その話に対しては2つあって、1つはメンバーみんなでやるということ。一人だったら多分無理で、同じような立場で、子どもたちの輝く瞬間を作るということに思いを持ったメンバーがいたので、それで頑張れたっていうのが1つ。
もう1つは、教育に対してのスタンス。個人的には結構時間軸を意識していて。そもそも、教育ってその一瞬とか3日間で響くものではなくて、もっと遠い時間軸、1年、3年、5年後、10年後に、どっかで多分回収されるものだというふうに思っていて。それを思った1つのきっかけが、一緒に世界を回ってたメンバーの話なんですが、記事があるのでぜひ読んでください。教育ってその一瞬、その場では全く効果が出ないかもしれないけど、5年後変わるだろうみたいな、そんなテンションでずっとやってました。それは今のvery50の活動におけるスタンスにも通じていると思います。
ーありがとうございます。ワークショップデザイナーとして、very50での活動にとてもやりがいを感じていただいていると伺いました。どんな点で特にやりがいを感じられていますか?
デザインする側の視点から言うと、ワークショップの依頼で、ほどよく余白のある依頼が少ない、と思っていて。例えば、僕だったら、その場のこうありたいっていうゴールさえもらえれば、あとはデザインできる。コンテンツや自分の振る舞い、空間に対して、こうデザインすればゴールを達成できる、というものがある。もちろん、デザインするにあたって、色んな制約があると思うんですが、それを課されることは逆に面白いところで、この条件下でできることって何だろうみたいなことを考えながらデザインしていくことに面白さを感じるんです。その上で、ワークショップ当日に、場の空気感に合わせながらゴールに向けて最適なものを作っていくっていうのが理想だし、価値があると思っています。
一方でよくあるのは、極端なもので、例えば、全部決められているもの。コンテンツはこれ、資料はこれ、タイムラインはこれって固めた上で渡されるみたいな。反対に、何もない、っていうものもある。僕もよく関わるんですけど、色んな人たちが集まるコミュニティカフェとか、そういう場はあえて何もしないのが重要だよねというコンセプトで、準備もなく、その場で沸き起こる空気感に合わせて色々やっていく。ルール制約はないけど、アウトプットの目標もないので、コミットできた感覚が得づらい。講師業的な話と、コミュニティマネージャー的な話、両極端はあるんですけど、まさにその間の、色々な制約と大まかなゴールがある空間で、そのゴールについて自分はどう考えるかを咀嚼して、目の前の対象、その場の空気感に合わせて変えていきながらチャレンジするっていう場所がない。それに挑める場所がvery50だと思っています。
なぜvery50がそういう場所になっているかというと、しっかりとした教育的哲学があるからだと思っていて。例えば、僕が担当したvery50のプログラムで、事前に実施内容を準備して学校に行ったんですが、内容云々以前に、教室の雰囲気がすごく悪いということがあって。学ぶ意欲もないし、そもそもちゃんと話を聞ける状態じゃない。じゃあ、その時どうしたかっていうと、事前に持ってきたものをただやるのではなく、コンテンツを全部入れ替えました。まずは話を聞いてもらえる状態にしようということで、1on1の時間をいっぱい組んだりとかできる工夫は全部やって。最終的にはちゃんと話を聞いてもらえるようになったし、プログラムとしても成立させることができました。
ちゃんとしっかり準備するけど、目の前の状況に合わせてコンテンツ変更を含め柔軟に変えながら、最大限手を尽くすっていうのは、結局、自分たちが、最後この子たちにどうなってて欲しい、何を届けたいみたいな教育的哲学があるからこそだと思っています。だからこそ、事前準備をある意味“ちゃんと”捨てられる、変えられるんだと思うと、改めてあんまりそういう場ってないし、僕みたいな人間にとっては、とてもやりがいのある、楽しい場所だと思っています。
ーありがとうございます。ちなみにvery50で今後やりたいと思われてることって、あったりされますか?
あります。2つあって、1つはヤングアメリカンズみたいに、スタッフなしでプログラムを運営すること。ヤングアメリカンズでは、オーディションを通過した大学生の年代の人たち約100人がメンバーとして活動しているんですが、very50のMoGと違って、プログラム実施の場所にスタッフがほとんどいないんですよ。一応、40人につき1人見守り役のスタッフが同行するんですが、その日のプログラムの流れも、どこに泊まる、誰がどこに行くとかの現地の工程も全部、大学生がやってるんです。それぐらいの高いポテンシャルを持っているのが大学生だと思っているので、そういうところまで目指せないかなと。
もう1つは新規事業の話なんですけど、教育事業においてプラットフォームや場を作りたいという時に、ビジネスだけがアプローチじゃなくてもいいんじゃないっていうふうに思っていて。日本にいる、ロジカル、論理、サイエンス偏重社会であまり上手く生きられていない子たちや、少年院や孤児院のような色んな環境下の子どもたちに対して、これまで自分がやってきたようなパフォーマンスを通したプログラムを、very50のカルチャーの中でやっていくとどうなるのか、っていうのは挑戦したいなって思ってます。
ーぜひ実現してほしいです。ありがとうございました。