バリーズは創業してから5年のスタートアップ企業です。今回はバリーズのCEOである野々村菜美(ののむら・なみ)氏に、バリーズの今までの事業変遷についてお聞きしました。
アナログな手法で事業基盤を作る
―― これまでの事業変遷について教えてください
創業して1年目は主に「TabiMUSE」(メディア)の広告収入で売り上げを作っていましたが、それよりもまず、事業の核となる「良質な記事を描いてくださるクオリティが高いMUSE (※1) の発掘」に注力しましたね。
探し方はすごくアナログで、とにかくSNSやブログを日々チェックしまくるといったことから始めました…(笑)。
(※1) MUSEとは、TabiMUSEで記事を書く厳選されたライター
―― どのようにアプローチしたのですか?
日頃からブログやInstagramを通して旅コンテンツを発信されていて「この方の旅行のスタイル素敵だな」と思った方お一人お一人に、熱い想いを長々と書いたラブレターのようなメッセージを直接送りました。「情報ではなく、海外旅行そのものの魅力を伝えるメディアを作りたい。そのためにぜひあなたの旅をTabiMUSEを通して発信して欲しい」といった想いを伝え、それに共感していただける方にMUSEとして参加していただきました。
また、私自身メディアの知識がゼロからのスタートだったため、とにかく業界について勉強しました。応援してくださる方にメディアに携わる方を紹介していただき、常に情報交換を行なっていました。
―― なるほど。2年目からはどのような動きがあったのでしょうか?
MUSEが増えてくれて、コンテンツも充実してきた2年目からは、営業活動に力を入れました。会社として売り上げを作るために、この「メディアをどうマネタイズしていくか」「旅行業界の人たちにTabiMUSEをどう認知してもらえるか」というのを必死に考えながら足を動かしていました。 営業の種まき活動をし始めたという感じですね。
そして、3年目になってようやく蒔いていた種が少しずつ実になりはじめ、広告出稿が入り始めました。オフラインでのイベントを始めたのもこの時期ですね。その後の4年目はブランディングを強化し、5年目はTabiMUSEの大規模リニューアルを行い、メディアの新しいマネタイズの可能性について開拓している、といった流れになります。
事業成長のカギは「出会い」と「タイミング」
―― 急成長を遂げたターニングポイントを教えてください
大きく分けて3つありますが、1番最初は初年度に行なったTabiMUSE初めてのキャンペーン企画ですね。
1番最初にクライアントになってくださったのがフィリピン観光局さんでした。
その時に提案した企画は、ECファッションサイトとのコラボ企画です。TabiMUSEのリリースを見たECサイトを運営する社長さんから「旅とファッションで面白いことやりましょう」と声をかけられたのがきっかけになります。
企画内容としては、「旅とファッション」をテーマにした特設ページをTabiMUSE内に作り、フォトコンテストを開催。グランプリに輝いた方を、海外旅行に招待する。といったものでした。
この企画にフィリピン観光局さんが大変興味を持って下さって、タイアップとして初めてTabiMUSEに広告出稿してくださいました。そこからはこの事例を武器に、色々な観光局さんとお話をする機会を作ることができました。
また、この時期から広告代理店さんから「TabiMUSEってどういうメディアなんですか?」といったお問い合わせを多くいただけるようになったんです。
―― そこから色々な企画ができるようになってきたんです
はい。そこから売り上げの単価も徐々に上がりました。そんな追い風の中、日本旅行さんと繋がれたのが本当に大きいターニングポイントだと感じています。
日本旅行さんには「海外SIT推進事業部」という付加価値の高い面白いツアーを制作、販売する部署があるんです。そこと手を組み、バリーズが作ったツアーを日本旅行さんに売り始めました。
実際に最初に形になったツアーは、マカオでのツアーです。
今でこそ、マカオに旅行に行く女子って増えてますよね。しかしマカオは当時、カジノのイメージが強く女子旅のイメージがなかったんです。
そのイメージを払拭するべく、MUSEに実際に現地に行ってもらい、とてもオシャレで可愛い写真をいっぱい撮影してきてもらいました。その素材を使って日本旅行さんでツアーを売ってみると、予想を上回るような良い反応をいただけたんです。
この企画は大きく評価いただいたと同時に、自分たちが手がけるオリジナルツアーを作りたい!という気持ちが湧いてきたのを覚えています。
せっかく作るなら、既存の旅行会社さんにはないようなオリジナリティ溢れるツアーを作ってみたい。そんな想いですぐに着手し始め、去年は3つのツアーを実施することができました。
―― 現在はイベント事業も展開していますよね?
はい。2つ目のターニングポイントであるイベント事業は創業してから3年目に行いました。
最初に行なったイベントは「TabiMUSE NIGHT」です。このイベントは、ニューカレドニア観光局さんに協賛いただき開催しました。
トーク内容は大きく分けて2つ。
1つは、協力して開催してくださったニューカレドニア観光局さんが登壇し、「ニューカレドニアとはどのような場所なのか」から始まり、国にまつわる色々な情報や魅力を伝えていただきました。
そしてもう1つは、「旅をどうライフワークにするか」をテーマにMUSEが一人登壇しトークショーを行う、というもの。
当時は「知名度も低いし多くても30人くらいしか集まらないだろうな…」と考えていました。しかし、蓋を開けてみると一瞬でチケットが売れたんですよ。
集まった人数は80人以上。
その光景を見て、「TabiMUSEに求められているのは、こういうことなのか。」と気づいたんです。
TabiMUSEの読者さんは、ただメディアを見るという「読者」ではなく、「同じ趣味の人と繋がりたい」や、「旅の楽しみ方、人生の楽しみ方を学びたい」といった熱量の高いコミュニティなんですよね。
そこから徐々にイベントを強化していき、去年開催した「TabiMUSE CAMPUS」には160人もの方にお越しいただくこができました!
―― 160人も…かなり大規模なイベントに成長したんですね!
そして最後3つ目のターニングポイントは、三越伊勢丹さんからの資金調達です。
実は元々投資担当の方と、2年前くらいにお会いしたことがありました。その時は情報交換程度だったのですが、事業が軌道に乗り成長してきた2019年7月の段階でこちらからご連絡させて頂きました。
事業の紹介をしたところ、サービス自体をとても気に入ってくださり、資金調達までの道筋を一緒に作ってくださいました。なんと資料まで一緒に作成していただくことに。
私のサービスに対する想いや実現したいことを漏れなく整理し、完璧に伝える所まで一貫して一緒に考え抜いてくださった担当者の方への感謝の気持ちを忘れることはありません。結果的に無事出資していただける運びとなりました。
TabiMUSEの読者は、旅が大好きで、旅を通して人生を本気で変えようとしている熱量の高いコミュニティでもあります。三越伊勢丹さんにはそれ自体に価値を見出していただいているのはもちろん、百貨店との連携も期待していただいています。
会社の弱点をメンバー全員で強みに変える
―― 仲間が増えるに連れてどのようなことが実現出来るようになっていきましたか?
現在メンバーは私を含めて4名です。
ジョインした時期から順番に、COOの木綿、コンテンツディレクターの吉田、広報/PRの平松の3人です。
まずCOOの木綿についてですが、彼女はすごく柔軟性が高く「会社のために今自分がやるべきことは何か」を汲み取って動いてくれています。
例えば営業活動。バリーズの弱点でもある営業力はずっと課題を感じていました。そこに木綿が先陣をきって取り組むことになったんです。
ただし、彼女自身営業の経験はゼロ。
とにかく繋がりのあるクライアントに会いに行き、お困りはないかのヒアリングをする。課題解決できる企画を考え、企画書を作って提案に行く。自分一人で解決できない問題は友人に直接聞きに行って解決するなど工夫し、短期間でナショナルクライアントと今までやったことがないような企画ができるまでになりました。
(彼女の営業活動の裏側についてご興味がある方は、ぜひ一度こちらの記事を読んでみてください!)
会社の状況に応じて、求められている行動に対応するのはもちろん、それにプラスして自分の経験を活かした工夫を施せる彼女にはいつもエネルギーをもらっています。
それまでは、とにかく私一人が営業活動も運用もメディア運営もクリエイティブも全てやって…といった状況でした。しかし、彼女がジョインしたことによって会社としての営業力が強化されただけに留まらず、私が会社の中長期的な戦略作りに集中できる時間を取ることが出来るようになったんです。
そして木綿がジョインして4ヶ月後の11月に吉田と平松がジョインしてくれました。
吉田は元々、WEBの制作会社のディレクターをやっていたのですが、デザインも弄れると聞いたので入社する前にデザインに関する課題を出しました。
その際の制作物がとにかくセンスが良くて。私自身、色々なデザイナーさんに出会ってきましたが、一発目からこれだけのクオリティを出してくれるのは過去に例がありませんでした。
そして、スキルはもちろん私の直感的にも彼女と一緒に「TabiMUSEの世界観を作って行きたい」と思ったんです。
ジョイン後は、まだまだ着手できてなかったTabiMUSEのブランディングを強化してもらいました。メディア、SNS、バリーズとして発信する全ての世界観作りを全面的に彼女にお願いすることに。
―― なるほど。クオリティチェックは行わないのですか?
最初は成果物に対して私が一個一個クオリティチェックをしていましたが、すぐに確認工程は無くなり、彼女一人でバリーズの世界観を作り出せるようになっています。
次に平松に関してですが、正直言ってあのプロ意識の高さには目を見張る時があります。
広報/PRというポジションの価値を発揮するためには妥協はしません。入社してすぐに彼女が行なったのはCEOである私が「どのような人間なのか」をキャッチアップすることからでした。
そうすることで彼女は、私が居なくても社外の人に対して「野々村はこういう人間です」や、「うちの会社はこういうことがやりたくて、こういうミッションを持っています」を正確に伝えられるようにしていました。
そのおかげもあり、彼女がジョインしてから会社の知名度は格段に上がってきている実感はあります。具体的にいうと、toC認知度は一定獲得しているが、toBの認知度がまだまだ低いというバリーズの課題がありました。それに対して彼女はバリーズが関わってきた過去全ての会社との繋がりを洗い出し、アポを取り会いに行き交渉し、短期間で2本の連載を決めました。
「ハワイは夢の島じゃない」バリーズが実現したい世界に向けて
―― 最後にバリーズの今後の事業構想ついて教えてください
今後は、TabiMUSEのメディアとそのツアーの融合ができたら、と考えています。
現状TabiMUSEのメディアは記事を掲載しているだけになっていますが、あの記事の中から実際に行けるツアーに繋ぐ導線を作りたいんです。
そのためにはメディアからの導線設計が重要になってくるのですが、それについて色々検証していくうちに、ある事実に気づきました。それは、私たちが思っている以上にTabiMUSEを見ている人の多くは海外旅行初心者の方だということ。
私やMUSEの皆さんは「長期休暇は海外旅行へ」が習慣的に染み付いているのですが、おそらくそれは日本の人口ほんの少数だと思うんですよ。
毎年ハワイに行く人もいるけど、「一生に一回行けるかどうか」という感覚の方も当然います。
そういう方がTabiMUSEを見た時の「いつかこういうところに行ってみたいなぁ」という気持ちを大切にしていきたいんです。そして、実際に旅に出るきっかけを作っていきたいと思っています。
ですのでまずは、海外旅行初心者の方でも安心してMUSEのような素敵な旅に行けるようなツアーを作ろうと動いています。そのための不安要素を補填できるようなサービスや、お一人でも同じ趣味を持った人と出会えて一緒に旅できるような企画も考えています。
中長期的には、女性の旅を丸っと担えるような存在になっていきたいですね。
最後に、未来の仲間に向けてメッセージをお願いします!
日々、新型コロナウイルスの状況が刻々と変化する中で旅を諦めた人も多いと思います。
悲しいのは、「旅を発信すること」さえ窮屈な雰囲気になっていること。当社としては、できるだけ多くの方に「次回の旅に対してポジティブな気持ちを持ってもらいたい」という想いで、今我々にできることが何なのかを、日々チーム全員で考えています。
バリーズでは、この状況が収束し旅需要が復活した先に、より魅力的な旅体験を提供していくためのコアメンバーを募集しています。ぜひ一度会社についてお話しさせてください。
ご応募お待ちしております!