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経営陣が評価制度を設計・運用する意義「グロースしても成長し続ける組織であるために」

一般的にスタートアップは事業やプロダクトのグロースを優先するあまり、評価制度が明確に定められていなかったり、定められていたとしてもHRが孤軍奮闘していたりするケースが少なくありません。評価制度の設計は後回しにされがちな組織課題のひとつです。

しかし、ユーザーライクは違います。経営陣が旗振り役となり、ミッションやバリューに紐づいた評価制度を設計。定期的なアップデートをはじめ、日々の運用にまで携わっています。これによって「会社全体で目線が合うようになった」と成果を話すのは、代表取締役CEOの武井亮太と取締役CMOの戸口興。

2人に経営陣が評価制度にコミットする意味、そして評価制度によってもたらされた効果を明かします。

メンバーがミッションやバリューを“自分ごと化”するために

代表取締役CEO 武井亮太


ー評価制度を経営陣が主導している狙いは?

武井:ミッションやバリューを掲げても、「絵に描いた餅」になったり「掲げてはいるけど、よくわからない」という話を聞くことがあります。私自身、起業前に別の会社で働いていたときは、ミッションやバリューを深く理解していなかったように思います。

やはり、ミッションドリブンなスタートアップにおいて、「ミッションやバリューが浸透している」ことは大事ですよね。日々の仕事のなかでメンバーが“自分ごと化”していくことは重要なので、1つの手段として評価制度を活用することにしました。


ースタートアップ経営における評価制度の位置付けとは?

武井:まず、会社の存在意義は「ミッション」である『ユーザーさんの、うれしいを創る』を達成すること。そのための行動指針を3つの「バリュー」に落とし込んでいます。ちょっと珍しいのがバリューに紐づく「スキル」です。

スキルを身につけて、バリューを体現して、ミッションを達成していくうえでの“モノサシ”が評価制度です。

ーどのようにスキルを定義していったのか。

武井:スキルを定義したのが、2022年1月頃。それまでミッションやバリューはあったのですが、言葉の抽象度が高く、ポジションやチームによって解釈が異なるという事象が起こってしまっていて。解釈の余地をなくしつつ、かつそれぞれが自分ごととして能力を開発していけるように「スキル」と定義しました。


取締役CMO 戸口興


戸口:大事にしたのは、顧客への価値提供と評価を紐づけることです。解釈の余地があると、本人は頑張っているつもりでも顧客へズレた価値を提供することになってしまうので。スタートアップである以上、顧客への価値提供とそれによるグロースは至上命題ですからね。


ー解釈の余地がなく、かつ“自分ごと化”できて、バリューに紐づくものとなると、言語化に苦労しそうな印象だが……。

戸口:最初は「とりあえずこういうものが必要じゃないか」と出し合った中から、「絶対に譲れないものを設定しよう」というところからスタートしました。

武井:以降も定期的にブラッシュアップしています。2022年1月の刷新時もミッションやバリューもマイナーチェンジしていますからね。僕らはミッションやバリューも、組織のフェーズやタイミングによってどんどんアップデートしていくべきだと考えています。外的要因を受けて変えるというよりも、ある意味主観的にブラッシュアップを検討していますね。半年に1回のペースです。

ー現場の声はどの程度反映されるものなのか。

戸口:タイミングによって異なります。最初はトップダウンでしたが、最近はボトムアップで我々が意思決定する場面も増えてきました。


緻密な制度設計の裏側

ー制度設計において参考にした事例は?

戸口:複数のスタートアップで創業期からHRを担当していた方にアドバイザーとしてサポートしてもらいました。それまでは自己流で積み上げてきていたのですが、さらにひとつ上のフェーズへいくためにフラットに第三者としての意見をもらいながら、つくりました。

社内に発表する際もアドバイザーの方からも発言してもらうことで、メンバーたちも我々経営陣とは異なる納得感を得られたのではないでしょうか。

ー評価制度の詳細について教えてください。特に「発揮成果と保有能力」の部分が印象的なのですが、どういう狙いがあるのでしょうか。


武井:スキルを評価制度として運用していくにあたって個人にフォーカスしたものが「保有能力」です。ただ、当然保有しているだけでは意味がありませんし、スタートアップとしてグロースさせることにもフォーカスしなければいけないので「発揮成果」として設定しました。

戸口:当然ですが10年目のベテランメンバーと3年目のジュニアメンバーではアウトプットが変わってきますからね。経験豊富なメンバーはいかんなくスキルを発揮してもらうために、「保有能力」の割合が減り、「発揮成果」の割合が増えています。ジュニアメンバーは逆ですね。組織の成長とメンバーの成長や機会成長のバランスをグレードで重みづけしています。


ー具体的な評価方法は?

戸口:目標設定のタイミングで、上長とメンバーがコミュニケーションの上で1〜5点のように点数定義をして、ある程度定量化します。ただ、運用は難しいですね。目標設定によってそれぞれの視点や視野が見えるので、非常に興味深いですが、似たような目標でもベテランとジュニアの3点は重みが違いますし、アウトプットのレベルも異なってくるので。

ー1年以上運用して、手応えは?

戸口:メンバーとの目線は合いやすくなった感覚はあります。プロジェクトへのアサインメントの際の検討材料にもなりますね。

また、会社全体で意識は上がった気がします。発揮成果はクオーターで、保有能力は半年で振り返るのですが、自分が設定したバリューに紐づくために必要な能力開発の期間があることは前向きに捉えてもらえている手応えはあります。

結局、評価制度は運用が肝なんですよね。どれだけ素晴らしい設計でも運用のレベルが追いつかなければ意味がない。運用のレベルが上がれば、評価制度のレベルも上げていけるはずなので。たとえば、メンバーの目標設定や評価のズレがなくなっていけば、もう一段階レベルを上げたくなりますからね。



武井:運用しやすくするために、「D10」というオンボーディングの体系的な研修があったり、直属の上司とは異なるマネージャーと「1on1」する機会があったり、さらに私は3ヶ月に1回合宿の場で、会社の方向性を伝えています。クオーターに1度アップデートの機会があることも目線を合わせるきっかけになっていたら嬉しいですね。


グロースしても成長に向き合い続けるように

ーここまで緻密に評価制度を設計する意味は?

戸口:プロダクトがグロースした先ですね。市場の影響を受けてとんでもないレベルのハイパーグロースをすることがあったとします。しかし、永遠にハイパーグロースを続けることはあり得ません。すると、グロースが止まった途端に組織が崩壊することは“スタートアップあるある”のひとつでして。壊れる前に組織を強化しておくために、評価制度に手を加えました。このあたりは武井の意識が非常に高いんですよ。

ー原体験になったことはあるのか。

武井:実は過去に組織崩壊を経験したことがあります。初期も初期なのでミッションも絵空事のような内容だったり、採用基準にも結びついていなかったりで、一貫性がなかったことが要因だと思っています。二度と繰り返したくない気持ちは強いので、事業戦略と組織戦略の両輪に力を入れています。



ー評価制度を運用する中で、二人に変化は?

戸口:繰り返しになりますが、アサインメントを検討する際の材料にはなっていると思います。僕自身というよりもマネージャーレイヤーの話ですが「メンバーのケイパビリティと意欲のバランスを踏まえてアサインメントを考える」ことは実はすごく難しくて。まだ手探り感はあるものの、少しずつ出来始めているのは嬉しいです。

武井:個人の成長に、より目を向けるようになりましたよね。スタートアップは成果主義な要素もあるので、発揮成果にばかり目が行きがちでしたが、評価制度を導入したことで保有能力にも意識が向くようになった。教育や育成に直結する話ですから、意味合いとしては大きいです。


ーこれからも評価制度にはコミットしていくことを考えているのか。

武井:そうですね。基本的にはコミットしていきます。実務の部分はHRに任せているのですが、組織図的には私の直下になるので、これからも大きくは変わらないでしょう。

ただ、大事なのは「経営陣が評価制度を主導すること」ではなく「社内で共通の評価や言語化をしていくこと」なので、これから組織が大きくなってマンパワー的にコミットメントできなくなっても、定期的なアップデートを含めて自走していく評価制度にしていきたいですね。

戸口:世の中に完璧な評価制度はありませんからね。今は完璧だとしても、半年〜1年後には状況が変わっているので。そのためにアップデートし続けられる評価制度にしていきたいですね。


(おわり)

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