AIで「社内の当たり前」を変える。チャットボット開発未経験から挑む、「現場から変える」DXとは?
「社内の問い合わせをもっとラクにできないか?」
そんな課題感からスタートしたAIチャットボット開発プロジェクト。
このチャットボットは、社内に集中しがちな人事関連の問い合わせや、採用における求職者からの質問に対して、24時間365日自動で回答してくれる仕組みです。 Slack上で自然言語で質問すると、AIが社内データをもとに文脈を理解し、分かりやすく回答してくれます。
今回は、このプロジェクトの中心となって推進している宮さんと坂巻さんに話を伺ってきました!
なぜ今、AIチャットボットを作るのか
― 現在開発しているAIチャットボットの概要を教えてください。
宮さん: 社内における人事関連の問い合わせや採用における求職者からの質問に対して、24時間365日自動で解決するAIチャットボットです 。単なる一問一答のボットではなく、Google Cloudの「Vertex AI Search」と「Dialogflow CX(Gemini)」を連携させた、最新のRAG(検索拡張生成)アーキテクチャを採用しています。ユーザーがSlackから自然な言葉で質問すると、AIがスプレッドシートの社内データを検索し、文脈を理解して分かりやすい文章で回答してくれます。
―どのような課題があって、このチャットボットを作ることになったのでしょうか?
宮さん:きっかけは、「求職者から寄せられた質問を、人事が各部署へ確認する工数を減らしたい」という課題感でした。新入社員からのちょっとした質問も基本的には人事へ集まるため、社内外の窓口としての対応量は相当なものになります。 そこで、いきなり高額なAIツールを導入するのではなく、「今あるツール(スプレッドシートやSlack)を使って、小さく・賢く作れないか?」と考えたのがスタートです。
↑「スプレッドシートのデータを元にSlackで自動応答する、社内ボットの仕組み」
開発プロセスと、AIの「言葉のズレ」を乗り越えるまで
―起案からどのように開発を進めていったのでしょうか?
宮さん: まず自分で調査して構成図を引き、AI(Gemini)を壁打ち相手にしながら進めていきました。ただ、私はAIの出す回答をすべて鵜呑みにしているわけではないので、情報が正しいかどうかは自分自身で見極める必要があります。 そのため、まずはテスト環境で様々なツールを動かし、一つできたらテスト、次にBigQueryと繋いではまたテスト……と、一つひとつの機能が正常に働いているかを地道に確認しながら組み立てていきました。
―開発の中で苦労したポイント、難しいと感じた点はどこですか?
宮さん:AIとの会話が「噛み合わない」「話がずれる」という点ですね 。例えば、質問で「サポート体制」と聞かれても、データ上に「支援」としか書いていないと、AIは何のことか分からず回答できないといったことに苦戦しました 。
ー表現のズレによる噛み合わなせのなさに対し、具体的にどのように改善していったのでしょうか?
宮さん: Google Cloud Japanの動画を見た時に、「カテゴリーの横に関連するキーワードを置いておくと、AIが勝手に関連付けて回答してくれる」という話があったんです。
人間が辞書で調べるとき、いきなり言葉を探すより、まず「インデックス(付箋)」などで、この辺かなとあたりを付けますよね。その後に「見出し語・類語」が出てくると思うんです。例えば「サポート」で調べてたけど類語に「支援」がある!みたいな。そしてどんな使い方をすればいいのかなって調べようかなとなりますよね。この癖も実はAIにもあるみたいなんです。
↑AIが辞書を引く流れに合わせ、スプレッドシートの列配置を最適化したデータ構造の解説図
この構造をメタデータに落とすことによって、質問時にただ「支援」と入れるだけでなく、付随するさまざまな表現のキーワードを集めてセットする設計にしました 。Geminiにも手伝ってもらい、「これらの中で関連するキーワード群を出してほしい」と命令を出して類義語を洗い出しています 。 そこに出てきたものをセットにすることで、「サポート」と聞かれても「あ、支援のことだな」とAIが解釈し、意図を汲み取った正しい回答を返せるようになりました 。
また最近はプロンプトの組み立てに関しても、Geminiと壁打ちをしながら「こういうプロンプトの方がいいか」と聞き、サイクルをぐるぐると回しながら良いプロンプトを見つける対話がうまくいっています 。コードを書くのではなく、プロンプトの組み立てで進められる点も良いですね 。
↑実際のAIチャットボット画面。トライ&エラーを重ねてきた結果、回答精度が大きく向上しています。
ー坂巻さんは入社して約半年程でこのプロジェクトに関わられたと思いますが、ご自身でどのような成長を感じていますか?
坂巻さん:今まではAIに対して「自分が質問して答えを教えてもらう」という使い方しかしていませんでした 。ですが今回は、「自分がAIに情報を与えて、そこから答えを出させる」という仕組みを作っています 。この会社に入って初めてそういった裏側の仕組みづくりに携われていることに、自身大きな成長を感じています 。
社員の「時間」を創り、求職者の「不安」をなくすために
― この開発はお二人の通常業務ではなく、「社内プロジェクト」としての位置付けかと思います。メイン業務とは異なるこのプロジェクトですが、お二人はこの開発を通じて、社内や社外へ「どのような貢献をしていきたい」とお考えですか?
宮さん: 「一番の目的は、皆さんの業務時間を少しでも増やすお手伝いをすることです。質問に回答する担当者の負担を減らすだけでなく、わざわざ誰かに質問したり、社内サイトを調べたりするちょっとした手間をこのボットで省いて、よりご自身の業務に集中できる環境をつくれたら嬉しいなと思っています。」また社外に向けては、採用面での貢献を考えています。求職者の方々にとって、残業や福利厚生のことなどは直接聞きづらい部分もあると思うんですね。そういった不安や懸念をこのボットで事前に解消できれば、実際の面接の場では、お互いにより深いお話ができるようになると期待しています。
坂巻さん: 入社間もない社員はまだ社内ルールを把握しきれていないことも多いと思うので、知りたい正解に行き着くまでの手間や時間を、少しでも楽にしてあげられたらと思っています。 また私自身、入社して8ヶ月なのですが、転職活動中は年収や残業の実態について、エージェントに探りを入れたり自分で検索したりと、すごく時間をかけていました。実情が見えづらいと応募自体をためらってしまうこともあるので、選考前や選考中の不安材料をこのボットで減らし、選考を受けてくださる方が少しでも増えたら嬉しいですね。
AIの波を乗りこなす「トライ&エラー」を楽しもう
― 入社間もない坂巻さんが感じる、今回の開発の舞台でもある「社内プロジェクト」という取り組みの魅力は、どんなところにあると感じますか?
坂巻さん: 私は普段、アナリティクスエンジニアとしてクライアント先に常駐し、担当者の方と共にDXを推進しています。通常業務を通してクライアントのニーズに応えるための専門知識がどんどん磨かれていきますが、社内プロジェクトではそれとは異なる新たな知見(今回のようなAIツールの活用など)が得られる点が魅力です。 そして何より、普段の業務では接点のない社内メンバーと交流できるメリットは計り知れません。部署を超えた横のつながりができることで会社への帰属意識も高まりますし、何でも相談できる仲間が増えることは非常に心強いと感じています。
― UTでのAI活用の実態やこのプロジェクトを踏まえ、これから一緒に働く人に伝えたいことはありますか?
宮さん: 既存の枠組みにとらわれず、ひたすら「トライアンドエラー」を楽しめる人と働きたいですね 。私自身、この取り組みは未経験で、最初は右も左も全く分からない状態でしたが、自分で調べて知見を蓄え、形にしていく知的好奇心があれば大きな裁量を持って挑戦できます 。よく弊社の社長も口にするのですが、「やったもん勝ち」なところも大きいですし、自分で課題を見つけてサイクルを回せる熱意のある方とぜひ一緒に働きたいです 。AIに仕事を奪われると恐れるのではなく、AIを「ツールとして使いこなす」働き方を楽しめる環境があります 。
坂巻さん: 周りに知的好奇心がある人が多く、自分もそれに引っ張られて良い影響をもらいながら頑張れる環境です 。みんな知識をシェアして「一緒にやってみよう」という空気があるので、あんまり気負わずに来てみてほしいですね 。少しでも新しいことをやってみたい、この業界に興味があるという方は、ぜひ一度話を聞きに来てください 。