前回はTVISIONが持つデータの面白さや可能性という観点でお話をしましたが、今回はテレビを取り巻く様々な課題、テレビの未来やTVISIONが目指す世界などをご紹介したいと思います。
弊社に応募いただく候補者さんにお会いしていると、ありがたいことに「他社が持っていないユニークなデータの会社」という点では興味を持っていただけることは多くなってきたと感じています。
その一方で、テレビ業界やそのビジネス自体に興味を持っている人というのはまだまだ少ないと感じています。これはおそらく、他業界の人から見るとテレビ業界やテレビ広告ビジネスに関する情報があまり世の中に出回ってないからではないかと思います。
皆さんにテレビビジネスの現状と課題、テレビの未来や目指そうとしている世界をお伝えし、もっとテレビを身近に感じてもらうべく、執行役員ソリューション担当の山田と営業部長の帖佐に思う存分語ってもらいました。
目次 テレビ業界の現在地 テレビ広告における3つの課題 テレビの価値を測るための様々なデータ Advance Spot Salesの取組み 様々な意味を持つ「テレビ」 「テレビ or デジタル」ではなく「テレビ + デジタル」
テレビ業界の現在地 山田: 今回は大手広告会社出身でTVISIONの創業期からジョインしてくれている帖佐(ちょうさ)と一緒に、テレビ業界で今起きていること、起きようとしていること、そして、TVISIONが目指していることを話していきたいと思います。
帖佐: はじめまして! 帖佐です!! まず自己紹介をさせてください。
私は、ベネッセコーポレーションにて進研ゼミ小学講座のマーケティングを担当。その後、アサツーディ・ケイ(ADK)にてテレビ担当を経て、民放5局と大手広告代理店4社が共同で立ち上げたプレゼントキャストへ出向しTVerの立ち上げ、オリンピック等大型スポーツ案件の動画配信サービスの制作・運用に従事。ADK帰任後は動画広告(民放キャッチアップやAbemaTV)の拡販を担当したのち、2017年10月より当社へ参画しました。
山田: 帖佐は大手広告会社で放送局を担当していたこともある、まさにTVISIONが探し求めていた人材でした。入社してくれたときは、よくぞ弊社のようなスタートアップに飛び込んでくれた! と思いました。創業期のTVISIONは業界の人たちからは賛否両論ある立ち位置だったんじゃないかな。
帖佐: 確かに…。でも、最初話を聞いた時は、『視聴質』というオンリーワンのデータそのものが単純に面白いと思ったんですよね。私自身、テレビ業界って、今後は既存の枠組みだけでなく、さまざまな市場と掛け合わさっていくことで、まだまだ伸びしろがあるのではないかと思っていたのもあって、まさにTVISIONが目指すものと重なっていたので入社を決めました。
山田: よく、若者のテレビ離れとか、今はスマホいじっていて誰もテレビ見ていないよとか、テレビに対してネガティブなコメントがなされることがあるんだけど、実際にテレビ業界自体は今どういうポジションにあって、これからどうなっていくんだろう?
帖佐: この話についてはいろんな立場や考え方がありますが、データで語るのが一番フェアな議論が出来ると思います。
参考
この資料によると、日本では2018年のテレビの広告費は1兆9123億円で前年比約2%減、それに対してインターネット広告費は1兆7589億円で前年比約16%増加しています。増減率はここ数年変わっておらず、来年も同様の傾向で推移していくでしょう。そうすると、今年2019年の広告費は初めてテレビとインターネットが逆転する、ということになると思います。成長するデジタル広告と横ばいのテレビ広告という構図はしばらく維持されるんじゃないでしょうか。
山田: そうだね。こうした流れから、デジタルシフトを進める広告主はメディアの予算配分を見直している。ただ、我々が日々接しているクライアントである広告主の人たちと話していて感じるのは、まだまだテレビには圧倒的なリーチを取る力がある、テレビ広告は必要だと思っているということだね。
帖佐: 以前、P&Gやユニリーバはテレビ広告からデジタル広告に予算をシフトし、ブランドセーフティやアドベリフィケーションの問題が起きました。最近は逆にデジタルの予算を削ってテレビを含むマスメディアに回帰する、という流れも出てきています。
参考
テレビ広告における3つの課題 山田: でも、これだけでテレビの未来は大丈夫とは言えないよね。やっぱりテレビも時代に合わせて変わっていく必要があって、おおまかにテレビには次の三つの課題があると思います。
テレビ視聴に関するデータの整備 多様な取引の実現 広告媒体としてのテレビの価値向上 これは今年2019年の2月に開催されたのJAAAビジネスフォーラムで当時の電波委員長の石川氏が発言したものなんだけど、広告主視点でのテレビの課題が簡潔にまとめられていたので紹介します。
日本アドバタイザーズ協会 電波委員長・石川貴浩氏のスライドより(役職は当時) 出典
まず、データ。これはデジタルに比べてテレビが弱い部分だと思う。デジタルにはいろんな指標があることで、施策を評価し、次のキャンペーンに反映するというPDCAを回すことができる。これからの時代は広告宣伝活動のROIを計算し、説明していくことが求められる。テレビでもこの流れが来ているよね。
帖佐: 二つ目の多様な取引については、まさに私が広告会社で局担(放送局担当の営業)をやっていた時に痛感していたことですね。
誤解を恐れずに言うと、テレビ広告枠の売買ってとても不自由なんです。
例えば、この番組にCMを流したい! と思った時に、番組指名買いをする「タイム」という提供方法がありますが、これはそもそも空いている枠が無いと買えません。また既に競合企業が出稿している場合、競合排除という決まりによって、枠が空いても入ることができません。出稿期間も柔軟とは言えません。レギュラータイム提供の場合、基本的には最低半年間は出稿し続ける必要があります。
広告主視点で考えたとき、デジタル広告のような出稿の柔軟性や機動性があれば、と思うのは当然の意見だと思います。
山田: 3点目はライフスタイルや趣味嗜好が多様化するなかで、マスリーチとしてのテレビの価値が揺らいでいることは間違いない。特に若年層ではこの傾向が顕著だと思う。
OTTサービスの台頭など、グローバル企業が資本力を活かしてコンテンツを制作するなか、日本の放送局も編成やコンテンツ作りに、より一層の工夫が求められるということを意味してるね。
テレビの価値を測るための様々なデータ 山田: TVISIONが提供しているデータは先ほどの課題でいう「1. テレビ視聴に関するデータの整備」にまさに合致していると思うんだけどどう?
帖佐: そうですね。テレビ広告を評価するときに、広告主の不満は世帯視聴率ベースでの売買や評価に偏っており、広告主が求めるよりマーケティング施策に沿ったターゲット設定をしたいというところにあります。TVISIONデータは「誰が」「どのぐらい注視しているか」という意味で、今までのデータにはないテレビ視聴の質を測る評価指標となっていると思います。
実はテレビまわりのデータというのは、近年拡充が進んでおり、これらは大きく分けると「パネルデータ」と「全数データ」の二つの種類があります。
パネルデータとは調査を許諾していただいたご家庭や個人に対して、テレビの視聴行動を捕捉するための機器を設置し、さらに趣味嗜好に関するアンケートを行ったりすることで、より細かい視聴行動を追いかけようというものです。例えば、「車を持っている30代夫婦」がどんなテレビ番組を見ているか? といったことが分かります。パネルデータの弱みは、許諾を頂いて調査をしているのでサンプルの数が少なくなりがちです。
一方で、全数データとはスマートTV(インターネット結線されたテレビ)から得られる視聴ログなどを指します。テレビでどのチャンネルをみているかというデータが、圧倒的な規模のサンプル数で確保できるのが特徴です。
パネルと全数、それぞれに強み弱みがあり、例えば、スマートTVだと全国で約200万台規模のデータが取れます。対して、パネルデータは数百~数千程度のサンプル数なので、量という意味では全数データに分があります。ただ、スマートTVはあくまでテレビ機器に紐づく情報なので、その世帯がどんな家族構成で、個人それぞれがどんな趣味趣向を持つのか、さらに誰がテレビを見ているのかまでは分かりません。こういった細かいことを知りたいと思った時、パネルデータは有効です。
山田: どちらか一方が良い、悪いではなく、両方を組み合わせて使うのが重要だということだね。我々のデータを使ってくれているクライアントのなかにも、TVISONデータに加えて、他の様々なデータと組み合わせて使っている人たちもいる。TVISIONデータ x 他社データを組み合わせることで、より多角的な視点からより良い意思決定ができるようになると思う。
こういったデータの充実により、よりデータドリブンな意思決定が可能になってくると、次に問題になってくるのは、「データによって良いテレビ広告枠が分かったとして、その枠が実際に買えるのか?」という次の問題になるよね。
Advance Spot Salesの取組み 帖佐: まさに2番目の課題「多様な取引の実現」についての議論ですね。先ほど申し上げた通り、テレビの広告枠の売買は柔軟性が高いとは言えない部分もありますが、最近面白い取組みが始まっています。
テレビの広告枠に売買方法には番組を指名して買う「タイム」と、ゾーンで買う「スポット」という買い方があります。タイムは空き枠があれば番組指定ができますが、最低半年間の提供になります。一方、スポットは機動的に出稿できますが、「逆L」や「ヨの字」といったタイムテーブルのなかでのゾーンで提供するといった方式になり、ある番組を狙って出稿するということができません。
参考 : スポットCMの基本出稿セールスパターン
日本テレビが始めた「Advance Spot Sales (ASS)」は一本単位でスポットCM枠を指名買いできるという画期的な仕組みで、日付やポジションまで細かく指定ができます。従来の販売方式だと、価格も不透明だったのですが、ASSではどの枠がいくらで売られているかもすべて公開されています。広告主は自社の購買データや、TVISIONが提供する第三者データを活用しながら、自分たちのビジネスKPIに最も寄与する効果的な枠を選び出稿することができます。
参考 : 日本テレビ Advance Spot Salesについて
山田: 実は、私たちTVISIONの視聴質データもASSのWebサイトで提供させて頂いています。女性の労働参加や少子高齢化が進む中で、世帯視聴率だけでは広告主のニーズからはずれていってしまう。例えば、あるCM枠はある広告主にとっては非常に価値が高いけども、別の広告主からはそこまででもないかもしれない。価値があると思う広告主は、その枠に高い価格を払ってもよいと思うかもしれない。そのとき「これだけの価値があるからこの価格を払う」という意思決定をサポートするのはデータです。TVISIONデータはそういったデータのひとつになればいいなと思います。
帖佐: この流れの先にあるのはReal Time Bidding(RTB)の世界ですよね! デジタル広告のように一番高い値段を提示した人が枠に出稿するという形になれば、テレビ広告がもっと透明に便利になっていくと思います。
様々な意味を持つ「テレビ」 山田: YouTubeやNetflix, Huluといった動画メディア、OTTサービスが競争するなかで、テレビも影響を確実に受けるよね。よく若者はテレビを見ないということが言われるけど、彼らの時間はこういった新しいサービスに奪われている部分もあると思う。3つめの課題「広告媒体としてのテレビの価値向上」はこういった危機感が背景にあるよね。
帖佐: TVISIONのサービスは今、地上波やBSなど放送としてのテレビにフォーカスしています。テレビの力の源泉はマスへのリーチだということがよく言われるんですけど、今現在はともかくとして、将来テレビの力が新たなメディアとの競争の中で相対的に低下していったときに、TVISIONはどのようにビジネスを展開していくのでしょうか?
山田: テレビというものが指しているのはいろんな意味合いがあって、
放送としてのテレビ コンテンツプロバイダーとしてのテレビ局 デバイスとしてのテレビ の3つがあるんじゃないかと思う。
テレビの力が低下しているという文脈で言うと、放送として、もしくはコンテンツプロバイダーとしてのテレビじゃないかなと。ネット同時配信みたいな話で、そもそも放送と通信の違いって何? みたいな論点もあるだろうし、Netflixのような豊富な資金力でコンテンツを作るような企業が出てきたときにコンテンツプロバイダーとしてのテレビ局の優位性ってあるんだろうかという議論もある。
帖佐: 最後のデバイスとしてのテレビは、例えば、NetflixやAmazon Primeビデオをリビングルームのテレビで視聴するようなケースですね。実はこういったOTT系サービスをテレビデバイスで視聴するという流れがあります。
下の図はNetflixのアカウント作成から6ヶ月後の視聴がどのデバイスで行われているかを表しています。この図を見ると、アカウント作成は全体のうち70%がパソコンやスマートフォン経由で行われますが、その6ヶ月後のNetflixの視聴時間を見ると、70%がテレビを通じて視聴されている、という興味深い結果になっています。
出典:
山田: TVISIONとしてはこの「デバイスとしてのテレビの価値」に注目している。というのも、リビングルームの中にある、あれだけ大きなスクリーンってたぶんテレビ以外ないんだよね。そこで見られるコンテンツって例えばスポーツだったり、ファミリーで視聴するタイプの映画だったり、「複数人で視聴される= 共視聴」が起きやすいコンテンツじゃないかな。もし、そういったデバイスとしてのテレビの価値みたいなものを可視化することができれば、これが未来のTVISIONのビジネスかもしれない。
帖佐: OTTサービスはまだ地上波テレビと比較すると、全体の視聴時間の中で占める割合はまだまだ小さいですが、将来こういった視聴行動がメインになってきたときに、我々もそこをターゲットにする、ということですね。
山田: その通り。技術的には、我々は音声マッチング技術を使ってコンテンツ特定をしているので、音声正解データさえあれば、何のコンテンツを見ているか特定することができる。こういったことも近い将来やっていきたいね。
帖佐: 他にも何か考えている新しいビジネスの展開はあるんですか ?
山田: まだ詳細は議論中だけど、リビングルームのなかで起こっていることをより詳細に捉えられないか、ということを考えているよ。例えば、テレビでスポーツ番組を見ながらビールを飲んでいる視聴者がいたとして、どのブランドのビールを飲んでいるのかを機械学習技術を使って特定する、といったイメージだね。コンテンツや広告と視聴行動の間の関係をより詳細に把握することができれば、コンテンツ作りや広告出稿のための強力な材料となるよね。将来の話になるとは思うけど、こういったことも弊社のソリューションとして提供していければなと思っています。
「テレビ or デジタル」ではなく「テレビ + デジタル」 帖佐: これからもデジタル広告市場は拡大し続けていくでしょうが、デジタルがテレビを完全に置き換えることにはならないんじゃないかと思っています。というのも、デジタルの良いところはより細分化されたターゲットを狙って広告を出稿できることですが、これは同時にリーチが小さくなるということを意味します。無数に細分化されたデジタルメディアが現れては消えるなかで、「マスへのリーチ」を目的とした場合、テレビは引き続き有効な選択肢の一つであり続けるでしょう。もちろん「若年層というマス」を考えたときに、この層へのリーチを取るためにテレビがベストか? というのは今後、テレビにとって考えるべき課題でしょう。
山田: Twitterの同時ツイート数世界1位は日本のあるテレビ番組を視聴していてつぶやいた言葉なんだよね。これは日本のテレビがいかに多くの人にリーチしているかを端的に表していると思う。他にも、いわゆるアプリ系のベンチャー企業が大型の資金調達をした後にテレビCMを打つパターンが増えているよね。彼らはすでにデジタル広告でできることはやりきっていることが多くて、それでも認知を取りたい、デジタルでリーチできない層にリーチしたいと思ってテレビをやっている。
テレビとデジタルでは出稿の目的も違ったりするし、得意なところも違う。テレビかデジタルかという話ではなく、テレビとデジタル両方を使って効果を最大化しましょう、というスタンスが今の広告宣伝に関わる人たちの一般的な考え方だね。
TVISIONはこういった「テレビ + デジタル」での広告出稿戦略や効果測定が当たり前になっていく時代に、より皆さんに使っていただきインパクトを感じてもらえるデータ、ソリューションを提供していきたいと思っています。
今日議論してきたように、今まさにビジネスモデルや業界が変わろうとしているタイミングです。こういった大きな変化を一緒にドライブしてくれる人材を弊社は積極的に採用中です。 帖佐:今日はかなり真面目な話が多かったですが、カジュアルな面談もたくさんしておりますので、ぜひTVISIONに気軽に遊びに来てください!
<社員対談 第一弾> データーサイエンティスト目線で語らせていただいたTVISIONについても、ぜひ、お目通しいただけましたら幸いです
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