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クレームと嫌がらせの境目はどこにある?カスタマーハラスメント対応方針を策定しました。

こんにちは、トレタ労務担当の関根です。

トレタでは、過日カスタマーハラスメント対応方針(以下「対応方針」とします)を策定しました。本記事では、その経緯、概要、狙いなどについて、紹介します。

カスタマーハラスメントとは?

カスタマーハラスメントとは、その名のとおりcustomer(顧客、取引先)によるharassment(嫌がらせ)をいいます。セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントなどのように嫌がらせの内容による分類とは異なり、当事者間の位置関係によって定義されています。そのため、カスタマーハラスメントには、パワーハラスメントも、セクシュアルハラスメントも、マタニティハラスメントも、その他のハラスメントも含まれます。

カスタマーハラスメントについては、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメントに次いで相談件数が多く、また急増しているとの調査結果(令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査)もあり、対応する労働者の心身の疲弊も深刻化しています。「ハードクレーマー」や「モンスターペアレンツ」などという言葉が聞こえてくるようになったことも、そのことを証明する一例であると感じています。

先進的な企業では早々に対応方針を策定、公表されていますが、厚生労働省においても2020年1月に公表された「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)において「他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為」として言及され、事業主は必要な措置を講じ、従業員の安全配慮義務を履行することが望ましいとされています。その後、関係省庁連携会議での業界団体等へのヒアリングや議論を重ねた上で、2022年2月にはカスタマーハラスメント対策企業マニュアルが公表され、いよいよ具体的な対策を講じることが要求される段階に入ったというのが昨今の状況です。

・「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します|厚生労働省
・「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しました!|厚生労働省
・事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)

セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメントなどへの対策については、社内での懲戒処分はじめ雇用管理上必要な措置を講じなければならないことが、各法令によって定められ、対策が進んでいます。これらのハラスメントとカスタマーハラスメントとの違いは、先述のとおり、当事者の位置関係にありますが、これにより事業主は、社内の当事者への対応だけでなく、社外の当事者への対応も求められることになります。対応方針では、この社外への対応基準やプロセスを定めています。

カスタマーハラスメントの実態調査アンケート

会社としての方針策定にあたり、カスタマーハラスメントの経験について、日々の業務でお客様と接するビジネスサイド部門に所属する従業員に対して2022年4月にアンケートを実施しました。この調査時点では、どのような行為がカスタマーハラスメント足りえるのかということを会社として具体的に定める前であったため、厚労省指針で示されている具体的事例以上のことは説明をしませんでした。ハラスメントの定義である「受け手が身体的または精神的に苦痛を感じるかどうか」という点のみで、それぞれの回答者に判断を委ねています。そのため、今回策定した基準に照らして、カスタマーハラスメントに該当しない事由も含まれている可能性があることはあらかじめお断りしておきます。


結果は上記のとおりでした。経験者の割合こそ少数ではありましたが、「相談しなかった」との回答も一部あるとおり、上司に相談しにくいことがあるということは改めて肝に銘じなければなりません。なぜなら、顧客対応経験を重ねれば重ねるほど「このくらいはよくあることだ」と感じる水準は、意図せず上がってしまうものだからです。トレタのような中途採用比率100%で百戦錬磨の従業員も多い組織であれば尚更そうであるかもしれません。上記の結果に甘んじることなく、相談しやすい環境を整備したり、従業員に正しい対処方法(ビジネスマナー、クレーム対応、レジリエンス、etc.)を学んでもらう機会を用意したり、配置換えをしたり、お客さまに対して是正を求めたりということを会社としていかに進めていくかを考えていく必要性を感じました。

方針策定で伝えたかったこと

会社のルールをつくることは、従業員へメッセージを送ることであると考えています。ルールである以上、法令に即したり、ルールそのものの欠陥を潰したりといった地味な作業も多数発生しますが、それも含めてメッセージなのだということを常に肝に銘じて日々条文と格闘しています。対応方針では、以下に重点を置きました。

1)まずは、「カスタマーハラスメント」という概念を知ってもらう
2)会社がお客様に対して申し入れ等をする条件と手続きを明確にする
3)カスタマーハラスメントであろうとなかろうと、つらいことはつらいと言っていい
4)カスタマーハラスメント解決の鍵は日々のコミュニケーション

1)まずは、「カスタマーハラスメント」という概念を知ってもらう

カスタマーハラスメントという考え方が存在することと、この問題に対して会社は従業員を守るために必要な対策を講じなければならないのだということを従業員に知ってもらわねばなにも始まりません。問題に直面するのは、いつも現場の従業員だからです。問題が発生したときには、1人で抱え込まず、上長や相談窓口に気軽に知らせてほしいですし、相談を受けた上長や相談窓口の担当者が、対応方法に悩んでしまうようなことがないようにするために対応方針があるのだと理解してもらう必要があります。

先のアンケートでは、「突然、カスタマーハラスメントだなんて言われてもよくわかりません」という趣旨のコメントもいただきました。もともとは社内における課題感の把握が目的でしたが、従業員にそのものの言葉を知ってもらうという点においても、実施した意義はあったと感じています。

2)会社がお客様に対して申し入れ等をする条件と手続きを明確にする

1で述べたように、実際に被害(または加害)が疑われる事象に直面したときに、本件がカスタマーハラスメントに該当するか否かの会社としての判断基準、該当する場合には会社としてどのようなプロセスで対応していくのかを明確にするようにしました。

3)カスタマーハラスメントであろうとなかろうと、つらいことはつらいと言っていい

対応方針とは別の話になりますが、従業員の抱える悩みや問題を早期に把握できるようにしたいと常々感じています。そのため、対応方針策定と同じタイミングで公益通報窓口を整備した際に、社内に点在していたなんでも相談窓口、ハラスメント相談窓口、公益通報窓口を一本化し、アクセスしやすくしました。
繰り返しとなりますが、相談がなければなにも始まりません。会社として相談をしやすさを制度や体制として整えつつ、対応方針においても事案のカスタマーハラスメントへの該当するしないを問わず、会社は従業員の健全な就業環境の確保のために必要な措置を講じなければならないと明記しています。

4)カスタマーハラスメント解決の鍵は日々のコミュニケーション

カスタマーハラスメント対応の難しいところは、当事者の一方が会社の管理範囲外にあることです。そのため、会社のルールを相手方にも適用して、直接事実確認をしたり、罰したりすることはできません。詰まるところ、誠実で地道なコミュニケーション以外の解決策がないということです。従って、なによりも重要なのは日々お客様と良好な関係性を築き、円滑なコミュニケーションを図っていくことということになります。

カスタマーハラスメントの判断基準

会社が、カスタマーハラスメントを判断する基準については、以下の通り設定しました。

(1)会社が次の責務を果たしていること
 (a)会社が提供するサービスや対応に瑕疵または過失のないこと
 (b)顧客等に対して会社が行うべき説明責任が必要かつ十分に果たされていると客観的に認められること
(2)顧客等の行為が従業員等の就業環境を害していること
(3)顧客等の要求内容または行為の内容が妥当性を欠いていること
(4)顧客等の要求内容を実現するための手段または態様が社会通念上不相当であること
(5)顧客等の要求内容または行為が違法であること

まず、(1)ですが、会社が果たすべき責務を果たしていなければ、カスタマーハラスメントとして認めることは難しくなります。当たり前ではありますが、これは大前提になります。その意味で、「対応方針は、不条理に毅然と対応するためのものであって、厳しい対応から解放されるためのものではない」と社内では説明させていただきました。
その上で、(2)〜(5)については、以下の具体例を示しています。

(1)顧客等から暴行、脅迫、金品の要求、中傷、名誉毀損、侮辱、威圧的な言動、暴言を受けたとき
(2)顧客等から執拗な個の侵害、性的または差別的な言動を受けたとき
(3)顧客等から従業員等個人に対する会社の処罰等に関する要求を受けたとき
(4)顧客等から不当な苦情、必要の範囲を逸脱した苦情を繰り返し受けたとき
(5)顧客等から長時間の拘束(通常要されるよりも長時間概ね1時間超)を受けたとき
(6)顧客等から土下座の要求、辞職の要求など著しく不当な要求を受けたとき
(7)顧客等から優越的立場を利用した暴言、特別扱いの要求などを繰り返し受けたとき
(8)顧客等から契約や約款の範囲を逸脱した過剰な要求を繰り返し受けたとき
(9)その他、顧客等から正当な理由なく、または社会通念上相当の範囲を逸脱する行為によって従業員等の就業環境が害されたとき

ご覧いただくとわかるとおり、想定される内容には各種ハラスメント内容が含まれています。
対応方針では、上記事実を確認するために、上記に関する情報を録音・録画・記録等の方法により作成し、提出することを求めています。加えて、上長や同僚等へのヒアリング等を合わせて実施し、事実確認を進めることとしています。
※上記は、弊社従業員がカスタマーハラスメントの被害者であることを想定した記載となっていますが、対応方針では逆の立場(加害者)となってはならないことも同様に明記しています。この場合は、弊社内で発生したハラスメントと同様に処罰されます。

顧客対応はいつだってむずかしい

以上、弊社の対応方針について紹介しました。私自身、労務の仕事をする前は、お客様に直接対応する仕事を長くしていましたので、感情をそのままぶつけられたり、長時間の対応を余儀なくされたりして対応に腐心するという経験は少なからずありました。お客様から向けられるエネルギーは、お客様の真剣さと等価です。顧客対応には難しい局面が数多くありますが、それら一つひとつに真摯に取り組んでいけるように、会社がすべきサポートを適切に行い、もし対応の過程で行き過ぎた行為が発生したならば毅然と対応できるようにしていきたいと考えています。対応方針はつくられたばかりですので、今後の状況に応じてどんどん改定していきたいと思いますし、そのためにも相談しやすい環境であることを従業員に広く認識してもらう活動をがしがしと進めていきたいと考えています。

おわりに

トレタでは、新しい仲間を募集しています。気になった方は、是非お気軽に採用担当までお問い合わせください。

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