私は高校から東明館に入学した4期生になります。2018年から東明館に国語の教師として赴任しました。大学では教育心理学を学び、国語と社会の教員免許を取得しました。私が心理学を学ぼうと思ったのは「人の気持ちに寄り添える人」になりたいと思ったからです。
中学時代、私が所属していた部活が予選を勝ち抜き、全国大会に出場することになりました。部活のメンバーは7人、大会に出場できるのは6人でしたが、この時期に私は腰を痛めてしまい大会に出場できませんでした。
私はマネージャー的な役割として6人を支える立場に回りましたが、大切な仲間を支えたいという想いがある一方、大会に出場できなかったという初めての挫折感と消化できない複雑な想い、当時の私は葛藤に苦しんでいました。 そんな思いを隠して、笑顔を見せながら学校生活を送っていました。
ある日、国語の先生から「今の辛さを文章にして、作文コンテストに出してみたらどう?きみは文章も上手に書けるし」と声がかかりました。 その言葉を聞いた瞬間、今まで抱えていた気持ちが弾けるかのように「先生、私はそこまで大人じゃありません」と大泣きしてしまいました。文章に書けるほど冷静でもなく、自分の気持ちを隠すのに精一杯の毎日でした。
私は辛い気持ちを悟られないよう、何事もなかったかのように学校で過ごしていました。先生はそういう表面的な部分でしか私の気持ちを汲んでくれていなかったんだとショックでした。その時の私は、信頼する先生に本当の私の気持ちに寄り添ってほしかったんだと思います。
この出来事があってから、私は「人の気持ち」に興味を持つようになりました。大学進学する際、興味のある学科で学びたいと教育心理学を専攻しました。すぐに教育現場に入らなかったのは、社会人として様々な経験を積んで、最終的に教育現場で貢献できる人でありたいと思ったからです。
卒業後は百貨店に総合職で入社し、接客からバイヤー等様々な業務を経験しました。その後もいくつかの仕事をして、経験を積んでいきました。
40歳になり、今後の人生を考えた時、「誰かに寄り添えることができるなら、後輩たちに寄り添ってあげたい」という気持ちが生まれました。それが結果的に、東明館への恩返しにも繋がると感じたからです。
生徒が失敗しても、最終的には私が守る
私が生徒たちと接するときに心がけているのは「とにかく話を聴く」です。例えば生徒同士の揉め事があったときも、まずは当事者全員の話を聴きます。誰かの立場になって肩入れしないことは徹底しています。「私の話をきちんと聴いてくれる」という安心感を持ってもらえるようにしています。
私が目指す教師像は「生徒たちの母親的役割」です。私の兄も教師ですが、生徒を引っ張っていくタイプです。兄を見ていると「私には教師は難しいかな」という気持ちにもなりましたが、後ろから温かく生徒たちを見守る役割があってもいいなと思えるようになりました。
「どんなことに挑戦しても、失敗しても大丈夫。全ては経験。最終的には私が守る」というスタンスで、今後も生徒たちの学校生活を見守っていきます。
こういう考え方を持つ今の自分があるのも、中学生の頃の経験があるからこそだと感謝しています。
後輩たちに伝えたい「友人作り」の大切さ
東明館での生活を通じて、生徒たちには大切にできる友人に出会ってほしいと思っています。
高校時代の友人はいまでも繋がりがあって、社会人になってもみんなの挑戦を応援し合える仲間なんです。その中には漫画「キングダム」の作者・原泰久くんもいて、彼が漫画家として成功したときもみんなで喜びを分かち合いました。私が東明館の教師になると知ったときは、みんな驚いていました。まさか母校の教師になるとは思わなかったようで(笑)。それでも温かく見守ってくれています。
東明館で過ごす3年間ないし6年間は、かけがえのない時間です。東明館の教師として、先輩として、生徒たち全員が最高の学校生活を送れるよう努めていきます。
私が在学していたときの東明館と、今の東明館ではだいぶ雰囲気が変わりました。当時は勉強にまっしぐらという空気もあって、当時はある意味正しかったのだと思います。私自身は、東明館にとっては今がいい意味での転換期だと思っています。神野校長が掲げる「一斉指導からの脱却」は、私が考える「寄り添う」と共鳴する部分があります。
2022年度の東明館は「対話で変わり続ける学校」を目標に掲げています。神野校長は教職員や学校全体の改革に向けて「対話」をしています。私は神野校長とは違った視座で、生徒たちとの「対話」をさらに重視していきたいです。神野校長が着任してから、東明館はかなりのスピード感で様々な取り組みを進めています。「対話」だけでなく、生徒主体で校則を見直そうと発足した「ルールメイキングプロジェクト」も、そのひとつです。
私自身は「民間企業ならあり得ること」として捉えています。あまりのスピード感に戸惑いを見せる先生もいますが、生徒たちの明るい未来をつくるという思いはどの教職員も同じです。目の前にいる生徒たちのために、私たちが最大限できることに挑戦し続け、生徒と共に変化し続けていきたいと思います。
挑戦の過程で生徒ひとりひとりの安心と笑顔を生み出していけるよう、生徒たちに寄り添っていきます。