2022年11月18日、東京証券取引所 TOKYO PRO Market上場。「公の器」になる覚悟
目次
はじめに
達成感ではなく、背筋が伸びる感覚だった
理念を「言葉」で終わらせないために
「当たり前」が、当たり前でなかった
鐘の音を聞きながら、誓ったこと
「公の器」の中で仕事をするということ
次回へ
はじめに
上場とは、ゴールなのか。それともスタートなのか。
2022年11月18日。東京証券取引所 TOKYO PRO Market(東証TPM)の上場セレモニー。上場通知書贈呈後の記念写真撮影で、カメラのシャッター音が響く中、私の頭には一つの問いが浮かんでいました。
(写真)上場記念撮影
——この先、本当に変わり続けられるか。
私たちテクノクリエイティブは、2022年11月の東証TPM上場、2025年7月の福岡証券取引所 Fukuoka PRO Market(福証FPM)への重複上場を経て、今、一般市場への指定替え上場という目標に向かって歩みを続けています。
その過程を、全3回に分けてお伝えします。
2022年11月18日、東京証券取引所 TOKYO PRO Market上場。「公の器」になる覚悟(本記事)
2025年7月8日、福岡証券取引所 Fukuoka PRO Market重複上場。九州から放つ「二重の信頼」
その先へ——一般市場への指定替え上場への挑戦と、私たちが創る未来の景色
達成感ではなく、背筋が伸びる感覚だった
熊本を拠点とする私たちが、東証へ。
その事実だけを聞けば、華やかに聞こえるかもしれません。地方の中小企業が、日本を代表する証券取引所に名を連ねる。確かに、そういう話です。
当時、社内外から「すごいことをやるんですね」という言葉を多くいただきました。でも私は、その言葉のたびに少し戸惑っていました。「すごい」という感覚が、自分の中にはなかったからです。
「すごい会社になりたい」という気持ちは、正直ありませんでした。それよりも、ずっとシンプルなことを考えていました。
理念を、言葉だけで終わらせたくない。ただ、それだけでした。
上場が決まっても、浮き足立つ気持ちはありませんでした。あったのは、背筋が伸びるような感覚です。「これだけの場に立つ以上、中身が伴わなければならない」という、静かなプレッシャー。達成感ではなく、覚悟に近いものでした。
それはきっと、上場を「ゴール」として目指していなかったからだと思います。
理念を「言葉」で終わらせないために
私たちには、「知恵と創造力により人に感動を与える企業」という経営理念があります。
しかし、いくら美しい言葉を掲げても、組織の土台が整っていなければ、それはスローガンで終わる。そのことを、経営陣の一員として強く感じていました。
私たちが上場を選んだのは、自らを「厳しい規律」の中に置くことで、理念を仕組みとして根付かせたいと考えたからです。規律を外から取り入れる方法は他にもあります。ただ、社会に対して開示義務を負う「上場企業」という立場は、内部だけでは生まれない緊張感を組織全体に与えます。それが、私たちには必要でした。
振り返れば、当時の私たちに足りなかったものは明らかでした。透明な意思決定の仕組み、属人的な判断を超えた組織としての強度、取引先や社員が「ここは信頼できる」と感じられる根拠。それらを、外部からの規律を借りて整えることが必要だと考えていました。
上場はその手段でした。目的は、あくまで「経営理念を体現できる組織になること」でした。
「当たり前」が、当たり前でなかった
この上場は、決して私たちだけの力で成し遂げられたものではありません。
特に、当社のJ-Adviser(上場維持・適格性を支援する機関)である株式会社日本M&AセンターのTOKYO PRO Market事業部の皆様には、準備の過程で本当に多くのことをご指導いただきました。そこで痛感したのは、自分たちの「普通」が、いかに狭い世界の常識に過ぎなかったかということです。
予算編成、内部統制、情報管理の粒度——どれも「正しいと思っていた」ことが、上場企業の基準では到底通用しないレベルでした。指摘を受けてはじめて「それが問題なのか」と気づいたことが、何度もありました。
一つひとつ指摘を受け止め、社内に持ち帰り、議論し、仕組みを作り直す。また次の課題が出てくる。そのくり返しの中で、少しずつ組織の「型」が生まれていきました。
J-Adviserの皆様と共に歩んだ時間は、「誠実な経営とは何か」を深く問い直す、得難い学びの機会でした。今も心から感謝しています。
鐘の音を聞きながら、誓ったこと
(写真)打鐘
記念写真撮影後の打鐘。祝福の拍手の中で鐘の音を聞きながら、私の心にあったのは達成感ではありませんでした。
「これで終わらせてはいけない。いつか、もっと大きな舞台にふさわしい企業になろう」
あの瞬間、私の中で答えが出ました。上場はゴールではない。スタートだ、と。
力強い誓いというより、自分への静かな戒め。お祝いの言葉をいただくほどに、責任の重さだけが増していました。
その戒めは、今も頭のどこかに残っています。
「公の器」の中で仕事をするということ
東証TPM上場を経て、私たちは着実に、社会的信用と組織としての強さを積み上げてきました。未熟だった組織が少しずつ「型」を持ち始めた。それだけは確かです。
その「型」の中で働くとは、どういうことか。
それは、自分の仕事に根拠を持つことです。
なぜその判断をしたのか。誰のために動いたのか。それを言葉にできる仕事を、ここでは求められます。
それが窮屈だと感じる人もいるかもしれない。ただ、そうではない人にとっては、誠実であることが普通の職場です。
上場とは、そういう組織であり続けるための、終わらない問いです。
次回へ
私たちはさらに、福岡証券取引所 Fukuoka PRO Marketへの重複上場という決断をします。
なぜ、一度上場した会社がもう一度上場するのか。そこには、数字では語れない「地域への想い」と「次の挑戦への覚悟」がありました。
次回は、その決断についてお話しします。