チームラボのメンバーを紹介するインタビューです。チームラボのソリューション事業で、カタリスト として活躍するメンバーに話を伺いました。
ソリューションカタリスト / 水本 賢興
2011年、IAMASを修了。新卒でチームラボのメンバーに。チームラボのソリューション系プロジェクトの企画、ディレクションを大小多く担当。
■ チームラボの「カタリスト 」とは?
エンジニア・デザイナーと協力して、チームラボのクリエイティブを創るプロデューサー。
学生時代に取り組んだことは?
学部生時代はメディアアート学科に在籍していました。サーキットベンディングという、おもちゃの楽器の電子回路をショートさせてノイズを出す手法をコンピューターに転用して、ノートPCをノイズ楽器に改造したり、映像をグリッチさせ友人とライブ活動やインスタレーション展示を行っていました。
その他、友人とサーキットベンディングやArduinoのワークショップを開催したり、VJやDJの活動など学外活動に力を入れていました。
大学院はIAMAS(情報科学芸術大学院大学)に進学し、学部時代の作品のブラッシュアップを行っていました。
就職活動はどのように進めていた?
修士論文や作品制作に集中していた為、就活はほぼできなかったのですが、自分の年の卒業制作展のゲストがチームラボの代表の猪子で、その際に自分の作品を面白がってくれ、インターンに誘ってもらい、3月末にカタリストとして採用されました。
初めて担当した仕事は?
初めて担当したプロジェクトは、東京スカイツリーの壁画(隅田川デジタル絵巻)です。フロントコミュニケーションとディレクション、進行管理を担当していました。猪子や絵師チーム、映像チーム、クライアント、施工会社の意見を調整しながら1年以上かけて制作しました。
展示チームとソリューションチームの境界が曖昧だった為、この他にも、1~2年目では、WEB制作やプロモーションの提案、空間系の提案など様々な案件も担当していました。
その上で、自分の実績からチームラボ環境下で周りから得意そうと思われる仕事が徐々に振られていくようになりました。
印象に残っているプロジェクトは?
無印良品の「フィットするネッククッション」をPRする企画です。ネッククッションのプロモーションを考えて欲しいという要望で、入眠アプリを軸としたPRの提案を行いました。一方的に商品情報だけを渡すプロモーションではなく、商品と関連性のある、無償のツールアプリを提供することで商品の購入へ促すプロモーションの提案に至りました。
プロモーション動画に関しては、映像ディレクターと協力しながら進めていきました。商品を使うシチュエーションを想像でき、SNSやWebでの利用、店頭で流れることからストーリーベースのものでなく切り出し可能な映像にしました。
他にはどのような案件がありましたか?
pepperのデベロッパー向けイベントで「The light orchestra with Pepper」というプロジェクトを手がけました。
来場者の持つスマートフォンのライトとスピーカーをPepperが制御して、オーケストラを行いました。スマートフォンとペッパーが直接通信をしているわけではなく、会場のスピーカーを使って非可聴域の音を出し、それを検知したスマートフォンを光らせていました。座席の位置情報と非可聴域の音で測った距離を照合して位置を特定する仕組みです。
最近だとJR東日本エキナカに設置されるスマホ対応自動販売機とスマートフォンアプリ「acure pass」の案件にも参加しました。
イノベーション自販機を作りたいという、大枠のご要望をいただいて、それを具体的な企画にしていくプロジェクトでした。acure passの特徴は、各自販機の商品在庫をリアルタイムに中央が集中管理できるようになったことです。従来型の自販機では、補充員の方が在庫情報をチェックして、その帳簿がセントラルに集められ、そこで初めてマーケティングができるという仕組みでした。このため、集計には時間がかかり、また、どの時間にどの商品がどれだけ売れたか等の詳細情報を把握することにも限界がありました。acure passではその在庫情報がデジタル管理されているので密度の高い情報をリアルタイムに得ることができ、それに基づいた自販機のマーケティングが可能になりました。
日常の業務で占める割合が大きいのはどのような仕事?
クライアントの課題に対して、アプリやサービスの企画・開発や、プロモーション施策でお応えしていく企画・提案の仕事が割合として大きいです。最近ではチームのリーダーとして、メンバーが心地よく仕事できる環境を整備し、仕事の質を向上させていく部分にもコミットしています。
その主な取り組みはリソース管理で、定期的にメンバーとタイムスケジュールを話し合っています。空いている時間に新しい案件をお願いしたり、逆に忙しすぎる人がいれば仕事をセーブしたりといった具合です。他にもアルバイトのメンバーがいるので、彼らにどのような仕事を振るべきか考えています。
ソリューションカタリストというポジションは、どのような人に向いていますか?
ソリューションというのはクライアントが漠然と感じる課題に解決策を提示するだけではなく、開発やUI/UXのデザインなども含めた複合的な表現活動です。クライアントによって課題はバラバラですが、この枠組みは変わらないと思います。さらに広く言えばアートでも近い枠組みが使用されていると個人的には思っていて、扱う題材は違いますが、社会の経済活動のエネルギーを元に、新しい表現や価値を世に打ち出せる表現活動だと思っています。そのような観点で言うと、ソリューションを表現活動と捉えて、最初から最後までやり通せる人がいいですね。
アウトプットまで責任を持って企画の舵取りをすることがミッションなので、実際に自分の手を動かして何かを作りたいと考えている方は向いていると思います。
チームラボはそうしたクリエイティブに、思考実験や考察にとどまらず、仕事として取り組めるのが一つの魅力です。
システム面の知識に関しては勉強で補えますから、チームラボに入った時点では細かいところまでは、わからなくてもいいと思います。どちらかと言えばモチベーションが重要で、大人になっても仕事としてクリエイティブを作っていきたいと考えている方に来て欲しいと思います。
クリエイティブというとアーティスト色が強いですが、地に足のついたアイデアを出せる人、という観点から見たときにどうですか?
アーティストには自分の作品が、どのような文脈において意味を持つのかを把握し、言語化する能力が要求されます。そのため真摯にアート作品を制作してきた人たちは、自分の作品を理解し、分析して、伝える力、つまりロジックの基礎がしっかりできていると思います。あくまで個人的な視点では、アートというのは社会に対して何かを表現することで世の中や人類に対し広い意味での恩恵をもたらすことがひとつの意義だと思いますが、ソリューションもサービスという表現で同じ目的を達成できると考えていて、その点で共通項が多いと思います。
そのため、自分で制作した作品を発表や展示したことのある人はカタリストに向いていると思います。つまり自分の制作物に責任を持った経験があることです。自分の作品を世の中に出して他者の評価にさらしたり、その結果、恥ずかしい思いをしたことがあるなど、挫折を経験したことがあって、社会と向き合ったことがあるとより良いかもしれません。自分の表現を不特定多数の前に出して、その反応から、何らかの自信なり劣等感なり、自分なりの実感を抱いた経験がある人は、向いていると思います。
チームにはどんな人が多いですか、どんな人と働きたいですか?
美大出身の方が多いと思われがちですが、そんなことはありません。バックグラウンドは多様で化学や建築を学んできた人もいます。彼らに共通しているのは論理的に物事を考える能力と、社会に対して何かを表現したいという情熱ですね。
チームラボに様々なバックグラウンドの人がいるのは非常に良いことだと思います。ですが極論を言えば、学んできた学問の種類自体はあまり重要じゃないと思います。真面目に取り組んでいる限り、役に立たない学問はありませんから。化学にしても、アートにしても、哲学にしても、結局のところはそれぞれの分野から一つの真理を探求するための学問なので、それに真面目に取り組んできた人たちが良いと思います。
専門性の中身はそこまで重要ではなくて、何かを真面目に追求したことのある人だけが共有する、ものの考え方や取り組み方こそが大事だと思います。物事を深く考えられる人が作るサービスは圧倒的に使いやすいと思いますし、世の中に与えるインパクトも大きい気がしています。
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