結婚式の現場には、唯一無二の緊張感があります。ミスが許されない中で、いかに丁寧に、正確に業務を進めるか。一生に一度の機会をつくりあげる覚悟と責任がそこにはあります。
そうした現場の思いをより深く理解するために、TAIANは2026年3月、結婚式業務を再現した全社研修を実施。エンジニアやセールスを含む全メンバーが、一日かけて現場の仕事を体験しました。
この記事では、当日のプログラムを企画・実行したカスタマーサクセスの今川さん、そして参加したエンジニアの中江さん、セールスの吉房さんによる対談をお届けします。研修を通じて得た気づきと、思いの変化を語っていただきました。
PROFILE
今川さん
TAIANでカスタマーサクセスを担当している。「Oiwaii(オイワイー)」の導入支援・活用支援が主な業務。ブライダル業界出身で、豊富なドメイン知識をTAIANのメンバーにも積極的にシェアしている。
中江さん
TAIANでエンジニアをつとめている。マーケティング・集客領域のプロダクト開発で手腕を発揮。また、TAIANの社員1号として、創業よりTAIANのプロダクトだけでなく、カルチャーも支えている。
吉房さん
1年前にTAIANにジョインし、セールスをつとめている。市場開拓チームとして九州・四国・沖縄の式場を担当し、全国津々浦々を飛び回りながらプロダクトの導入を進める。結婚式の参列経験は1回のみで、新鮮な視点を仕事に活かしている。
ブライダル出身者が知る「現場のリアル」を、どうやって社内に伝えるか
左から、吉房さん、今川さん、中江さん
──まずは今川さんにお伺いします。今回の研修は、どのような背景から生まれたのでしょうか。
今川:出発点にあったのは、「式場業務のリアルについて、社内の皆さんにもっと知ってほしい」「チェックや作業をどのような観点で行っているのか理解を深めてほしい」という思いでした。私はもともとブライダル業界出身で、当日の施行に長年携わってきました。その経験をもとにTAIANに入社し、システムの導入・活用支援に関わる中で、社員の式場業務への深い理解に感動する一方、「もっと知ってほしい」と思える部分も出てきたのです。
そのひとつが、「式場スタッフが見る情報は、できるだけ一枚の紙にまとまってたほうがいい」という点でした。「Oiwaii Produce」は現状、複数の紙を出力して業務することを前提としています。たくさんの情報があるので仕方ないのですが、一方で、経験者目線では「一枚に集約されていたらもっと使いやすいのに」と思うところがあって。とはいえ、現場経験のない方にそう説明しても、なかなか実感を伴って伝わりません。なぜ一枚の資料にまとめるのが望ましいのか、その真意を知ってほしい── そんな気持ちで今回の研修を企画しました。いまだに紙の資料が必須とされる世界で、紙がどう使われているのか、みんなで理解を深める時間を作りたかったのです。
──「紙一枚」が重要なテーマだったんですね。当日のプログラムを簡単に教えてください。
今川:実際の式の流れに沿っていくつかの業務をピックアップし、チーム対抗の大会形式で体験していただきました。
たとえば、引出物の検品から袋詰めまでの一連の作業、どんでん(セットチェンジ)、アレルギー対応を含む料理提供、さらに受付セッティングや親族紹介の実演などです。皆さんには制限時間内にノルマに取り組んでもらい、現場経験のあるメンバーが、オペレーションの出来をジャッジしました。
一番のポイントは、配布した説明資料に、あえて披露宴中には使わない挙式前用の書類などを混在させたことです。手元に書類が多いとどれだけ大変かを実感してもらえる設計にしました。
──盛りだくさんの内容ですね。いつ頃から企画をしていたのですか?
今川:「こういう研修をやりたい」と代表の村田さんに相談したのが、去年の年末頃です。当時は30分程度で情報共有する想定だったのですが、磨理子さんの後押しがあり、一日かけて大々的に実施することになりました。たっぷりと時間をかけたことで、言葉だけでは伝わらないリアルを皆さんにお届けできたと思います。
体験して初めてわかった、「紙一枚」に集約されることの意味
──ではここからは、当日参加した中江さんと吉房さんに加わっていただき、お話を伺います。今回の研修を受けるまで、「紙一枚」である必要性をどのように捉えていましたか。
中江:正直、「紙は複数でも問題ないのでは」という感覚がありました。現場から上がってくる声はできるだけ開発に活かしているのですが、なぜ一枚である必要があるのか、具体的なイメージができていなかった部分があります。
吉房:私はセールスとしてお客様と会話する中で、紙が一枚にまとまっていることの重要性は何度も感じてきました。スタッフの方が胸ポケットから小さな紙を何度も取り出して確認している様子を見たこともありますし、「席次表と進行表が裏表一枚に収まらないと、オペレーションに影響する」という声を聞いたこともあります。ただ、紙が複数に分かれていることで、具体的に何がどう不便になるのかまでは、考えが追いついていませんでした。
──今回の研修を経て、解像度は上がりましたか?
中江:はい。なぜ「一枚」と言われていたのか、はっきりと腹落ちしました。私はTAIANの中でもかなり在籍歴が長い人間なのですが、現場のことをまだまだ知らなかったと反省しています。たとえば、引出物の検品について、私はずっと「商品が揃っているか」だけを確認する作業だと思っていたんです。しかし実際には、のしの名前や表記、外字(一般的なパソコンで表示できない文字)の扱いなど、非常に細かく複雑な確認が必要です。
情報が別々の紙に分かれていると、スタッフはその都度紙をめくって判断しなければなりません。限られた時間の中でその作業を繰り返すのは想像以上の負担です。私も研修で「これが一枚にまとまっていたら、どれだけ判断しやすいか」と何度も感じました。
吉房:本当にそうですよね。10枚ほどの紙資料をめくっていると、指の水分は取られるし、どこに何の情報があるのかも分からなくなる。強いフラストレーションを感じながら作業していました。
──やってみたからこそ、不便を実感できたのですね。他に発見したことはありますか。
中江:「Oiwaii(オイワイー)」の機能についても、新たな気づきがありました。「商品リスト管理」という機能があるのですが、私はただ、持ち込み商品の管理機能くらいにしか認識していなかったんです。しかし実際は、ウェルカムスペースに置かれる大切な品々をスタッフが正しく並べるために使う重要なリストでした。言葉だけでなく画像でも内容がわかるようになっている、その意味を初めてよく理解できました。
吉房:文字だけのリストだと、いざウェルカムスペースに並べようとしたときに、どの品をどこに置くべきかがわからない――ということが起きるんですよね。たとえば似たぬいぐるみがいくつも用意されていて、言葉だけだとどれを指しているのかわからなかったり。私も今までは「写真付き機能が便利」くらいの理解だったのですが、実際にどれだけ便利なのか、認識が深まりました。これまでは、セールスとして「目玉機能」という捉え方はしてなかったのですが、今は自信を持ってお客様にご案内できるようになっています。
中江:その「商品リスト管理」を開発しているエンジニアも、今回の研修で発見があったそうです。文字と画像を並べると画像が小さく粗くなることを懸念していたそうですが、多少粗くなっても視覚情報を優先すべきだとわかった、と話していました。
──それぞれの立場から、重要な気づきがあったのですね。
中江:ほかにも、細かい点ですが「これだけ準備していても、他の結婚式の引出物と混ざってしまうことがある」という事実を知れたのも良かったです。急な数量変更や追加対応があった際、別の式のものとまとめて運ぶことでコストを抑えるケースがあるんですよね。それで、混ざってしまう。背景や理由を知ると、現場でどんなイレギュラー対応が発生するのか、イメージが浮かび上がってきました。
吉房:私はプログラムの中で、今川さんが現場目線のコメントを随所に差し込んでいたのが印象的でした。「引出物の発注や検品は木曜と金曜に集中する」といった情報は、それまで知らなかったので。実は過去に出張先で、金曜の夜に式場の方を食事にお誘いして断られたことが何度かあったんです。当時は理由を深く理解できていなかったのですが、今回「金曜日は現場が総出で動いている」と知り、ようやく腑に落ちました。現場業務を知ることの大切さを、あらためて感じた出来事でした。
現場を知ることで深まった、ブライダル業界へのリスペクト
──研修を経て、業務の手応えに何か変化はありましたか?
吉房:セールスでは、さっそく変化が現れています。研修後に実施した北九州の式場との商談では、研修で体験したことを踏まえてOiwaiiの機能をご説明し、成約につなげることができました。親族紹介をExcelで作成されていたため、その大変さに寄り添えたことが大きかったと思います。また、四国のホテルの会場責任者の方と食事をした際も、この研修の話をしました。「現場を知るスタンスがOiwaiiという商品にも表れている」と高い評価をいただいています。
研修のおかげで、式場の方々と話す際に「ここが大変ですよね」と実感をもって伝えられるようになり、以前よりも話を聞いていただきやすくなったと感じています。
──素晴らしいですね。エンジニア業務においても変化はありましたか?
中江:はい。式場業務をシステムで支えることの重要性を実感し、開発への向き合い方が変わりつつあります。
結婚式は、ミスの許されない構造の上に成り立っています。アレルギー対応を誤れば命に関わり、名前の表記を間違えれば信頼を損なう。装飾ひとつでも置き方が変われば意味が変わり、一つひとつの判断がその日の品質を左右します。しかも、何かあったときの責任はすべて式場側に返ってきます。そのリスクの大きさを考えると、人の手だけに頼るには限界がある。だからこそ、システムで支える必要があるとあらためて感じています。
いいプロダクトは、現場を知ることからはじまる
──今川さん、こうした感想を受けて企画者としての思いはいかがですか?
今川:この研修には、正直かなりのプレッシャーを感じていたんです。全員の時間をいただく以上、それに見合う価値を出さなければならない。丸一日会場を借り、食事も用意し、それなりに費用もかけたので、やるからには絶対に無駄にできないという思いで臨みました。
結果として、お二人以外からも、「お客様からの質問により深く応えられるようになった」「ブライダル現場の細かい部分にまで意識が向くようになった」などの反響をいただいています。いろいろな方の背中を、ほんの少しでも押すことができたのではないかとほっとしています。
──最後に、今後の展望を教えてください。
吉房:私は入社してまだ1年ほどで現場経験が乏しいこともあり、式場の方々から「現場を知らないシステム会社の人」として距離をとられてしまうこともあるんです。でも今回、結婚式の裏側や見えない業務を実際に体験したことで、距離が大きく縮まったと感じています。私たちTAIANと式場は、同じゴールを目指す事業パートナーです。これからもセールスとして、深い業務理解のもと現場に寄り添い、信頼される存在でありたいです。
中江:私も、現場に寄り添った開発をしていこうと、あらためて心に誓いました。納期などの制約もありますが、その中でも式場の皆さまやカップルにとって何が本当に重要なのか、何を譲ってはいけないのかを見極め続けたいです。
今川:メンバーが増えてきたタイミングで、このような研修ができたのは、組織として大きいことだったと思います。お二人とも、貴重な時間を割いてくれてありがとうございました。現場を知らずして、いいプロダクトはつくれない。この実感を忘れずに、今後もTAIANならではのサービスを提供していきましょう。
文:安岡晴香
編集・写真:出川光(ノンブル社)
デザイン:Ayaka Momose(TAIAN)