株式会社ストリートスマートの中核事業のひとつであるEducation事業部。
前編は、ICT援員である平川 泰輔さんと佐藤 佳苗さんに、ICT支援員とは何か、そして学校でのICTの活用状況などを伺いました。
後編では、ストリートスマートが考えるICT総合支援員の在り方や、支援員の必要性、またICTは学校に本当に必要なのか?など、切り込んだお話を伺っております。ぜひ後編もご覧ください。
(左:平川 泰輔さん / 右:佐藤 佳苗さん)
プロフィール:
平川 泰輔さん / Web Marketing グループ 兼 ICT支援員
佐藤 佳苗さん / Education事業部 講師
ICTは学校や子供たちの学びに本当に必要なのか?
ー先生方の中には、ICTそのものが必要ないというご意見もあるかと思うのですが、前職で小学校教員を務め、現在はICTのプロという立場から見て、学校現場で「ICT」は必要だと思いますか?
佐藤:100%必要だと思います。先生の中に、ICTに対して懐疑的なご意見があるのは事実です。ただ、子供たちのことを考えると先生方も絶対に使えるようになるべきだと私は思います。
ーそれはどうしてでしょうか?
佐藤:教員から転職し、ICTを仕事でフル活用するようになり、シンプルに「便利だな」と日々実感しています。学校では、職員会議のために何十ページも資料を印刷してホッチキスで綴じ込みをしたり、処理する情報量が多く書類の整理が大変であったり、直接子供たちに関わらない校務の時間が多いのです。それをICTの活用で省力化できると感じています。そうして省力化できた分は、本来割くべき子供たちの時間へ還元できます。
ーでは「子供たちの学び」という面でICTは必要だと思いますか?
佐藤:これも100%必要だと思います。
国語の先生から「パソコンだと漢字を正しく書けなくなってしまう」というお言葉を頂いたのですが、今までの授業を全てICTに置き換える必要はないと思っています。ただ、ICTを使うからこそできる“新しい学び”の可能性がたくさんあるので、そこに目を向けてもらえたら嬉しいですね。
近年「知識を詰め込むスタイルで教育を行うのではなく、アクティブ・ラーニング(※1)を実施するべきだ」と言われていますが、教える内容が減ったわけではないので、これまでと同じやり方だと、従来のスタイルのままになってしまいます。
そこにICTを取り入れることで、より効果的に教えることができ、新しい領域に着手でき、ICTの充実した機能は、主体的・対話的で深い学びを実現する有効な手段となり得ます。ICTがあることで、学び方を変えられるのです。
▲共同編集を活用して2人1組で話し合いながらビンゴを作成する授業
平川:これまで一斉かつ画一的に教える方法が主流でしたが、ICTを用いれば、子供たちの習熟度に合わせ、個別最適化した学習が可能になります。例えば計算ドリルだと、よく間違えるところを自動で頻出させて苦手を克服するようなことが、ICTを使うことでできますよね。教材ひとつとってもこのように個別最適化できるので、誰も取り除かず、個性は伸ばす教育が可能になると考えています。
ーICT機器に対して子供たちの反応はいかがですか?
佐藤:子供たちは純粋に喜んで使っていて、学習の意欲向上に繋がっていると実感しています。これから子供たちが過ごす社会である「Society 5.0(※2)」には欠かせないスキルなので、子供たちのことを考えたときにも、今からICTを活用することは必須です。
※1)アクティブ・ラーニング
従来の「受動的な授業や学習法」ではなく「積極的・能動的な授業や学習法」の総称
※2)Society 5.0
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く新たな社会として、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会
ICT支援員とは、先生に寄り添う強い味方である
ーICT活用を推進する上で、ICT支援員は学校現場に必要だと思いますか?
佐藤:日本全体でICT活用の底上げを図る点で、絶対に居た方がいいと思います。教員目線でも居てほしいですね。
ーそれはなぜですか?
佐藤:授業や部活、行事などで日々忙しい先生方にとって、ICTに関して自学する時間がとれないのが現状です。忙しい中でも新しいことを取り入れていくには、先生を支援する人が必要です。
教員目線でいうと、半強制的にICTを取り入れなきゃと感じている先生もいると思います。この“やらなきゃ”を、“楽しみ”に変えていくのも私たちの存在意義だと考えています。
▲先生方への研修の様子
ーICTに対して不安を持たれている先生はいらっしゃいますか?
佐藤:はい、いらっしゃいます。ICTの活用についていけるか不安で、早期退職を考えている先生がいると耳にしたことがあり、すごくショックでした。国から確定事項として通達され、どうしたらいいかわからず八方塞がりになっている先生も多いかと思います。精神面でもサポートし、心の拠り所にもなれるのがICT支援員だと思っています。
平川:ICTの専門家という存在は、先生方への安心に繋がっていると実感しています。また、中立的に学校現場と教育委員会を見ることができるため、橋渡しを担っているとも思います。
▲支援員時の必須グッズ(佐藤さん)
校内を動き回るためポケットをつけた Chromebook や、先生にお会いできないときに活躍する付箋など
「自走する支援員」それがストリートスマートの考える在り方
ーストリートスマートが考えるICT総合支援員の在り方とは何でしょうか?
平川:これは明確にあります。
一言で表現するなら「自走するICT支援員」です。
ー「自走」ですか?
平川:やらされ仕事や単なる御用聞きではなく、今携わっている学校や自治体の課題を分析し、解決する手立てを考え、それを実行する主体的なスタンスという意味です。もちろん、ご要望に応えるのは大切です。ただ、言われたことをそのまま返す対処療法ではなく、根本治療ができる必要があります。
学校に常駐させていただく中で、視野を広く持ち、改善できることを勝手に見つけ提案し、状況を改善していく、そんなPDCAを回せることが必要です。
ー現場では当たり前になっていることに対し、第三者の視点で改善提案を行うことに価値があるということですね。
平川:他にも先生からご要望があった場合、それを一歩踏み込んでヒアリングし、先生だけの目線ではなく、子供たちの目線も含めて想像してみるんです。そうすると、単なるご要望にお応えするだけでなく、プラスαの部分に気付くことができます。
こういった部分は、弊社がこれまでビジネスの分野や研修分野で培ってきたナレッジを大きく活かせる部分です。ICTのプロとして、細かいことにまで気付きご提案することは、子供たちへよりよい学びを提供することになると思います。
▲支援員時の必須グッズ(平川さん)
研修時のポインターや、学校のどの機材にも対応できるよう拡張ケーブルなど
「皆が皆の力になる」全国に支援するからこそ、横のつながりで底上げしたい
ー今後のビジョンを教えてください。
平川:今私たちに求められていることは、とにかく先生方や子供たちがICTを活用し新しい学びを進めるサポートをすることです。ですが、今後活用が当たり前になったときに必要になるのは横のつながりだと思っています。
ー横のつながりとは具体的にどういうことでしょうか?
平川:現状では「こういうことをした、こういうことができる」という事例は共有されても、じゃあ実際どうやってやるのか?どのくらいの準備時間が必要なのか?などの「細かい情報」までは共有されていないことが多いんです。そういう部分に対し、もっと活用の幅を広げたり深めたりできるサポートをしていけたらと考えています。
Google Workspace for Education は、共有や共同が簡単にできるので、いい意味で先生が全部自分でやらなくても済むんです。例えばある学校で作成した学習ツールを、全国の先生が活用できるように共有できたら、ゼロからつくる時間が削減できますよね。情報自体は場所の制限がないので、たとえ離島だとしても1人1台という環境があれば、同じ授業が再現できます。
▲支援先の自然豊かな長野県中川村
ー都道府県や学校の枠を超えた繋がりが実現できたら素晴らしいですね。
「皆が皆の力になる」そういう環境を、全国で支援するICT総合支援員が潤滑油となり構築していきたいです。
ICT総合支援員として、いま、想うこと
佐藤:支援を通し常々感じるのは、不安に思われている先生が多いことです。ICTについていけないことに気を病んで欲しくないですし、これからも困っている先生方を少しでも支えられたらと強く思っています。
平川:このままではダメだと焦っている先生が沢山いらっしゃいます。自信がない、知識がない、時間がない、と。焦り不安に思うのは、子供たちを想っているからこそなので素晴らしいことです。そんな先生方や学校様に対し、今後もしっかりサポートしていき、ICTを通してもっと先生方の業務が楽になり、人生が豊かになるようなICT活用法を伝えていきたいです。
いかがでしたでしょうか。前編・後編と2回にわたりお伝えしてきた事業部インタビュー。後編では、終始おふたりのお話から「先生のために、子供たちのために」というお気持ちと、使命感が伝わってきました。
ICTのプロとして「自走する支援員」ありながら、先生に寄り添ったサポートもしていくICT総合支援員。日本全国の本質的なICT教育を推進するために非常に重要な役割を担っていることが分かりました。
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