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社長になるための「行動力」~エスプール初の新卒社長~

エスプールロジスティクスの社長、小林正憲。そのキャリアは自身の行動力によって選択、形成されてきた。そんな小林にも苦難があったと言う。果たして彼はどのようにして壁を乗り越えてきたのか。そして今後はどのような場所を目指していくのか——。自分の足で一歩一歩道を切り拓いた小林が今、自らの軌跡を振り返る。

エスプール初の新卒社長は、物流現場でキャリアスタート

               エスプール初の新卒社長、小林

エスプールロジスティクスは、ロジスティクス分野において「コンサルティング×パフォーマンス」を発揮し、企業の成長段階に合わせて、最善のロジスティクスを設計、運用、改善をするアウトソーシング企業である。

エスプールロジスティクスが物流専門のアウトソーシング事業を展開し始めたのは2008年12月。小林が入社したとき、エスプールは人材派遣事業一本の会社であった。当時は、派遣先のクライアントのひとつとして物流現場があった程度だ。

今回の主人公エスプールロジスティクスの社長、小林正憲は2004年4月、エスプールに新卒で入社したプロパー社員である。

大学3年時、就職氷河期と呼ばれる時代に、小林は就職活動を始めた。

興味を持ったのは「人材」業界。もともと教育系の大学出身の小林は「人」「教育」「成長」に関われる仕事に就きたいとの考えがあった。

就職活動を進めるなか、エスプールのトップセミナーに参加した小林は、代表浦上のある言葉に感銘を受けた。

浦上 「 VOS、つまりビジョナリーアウトソーシング。単にスタッフを派遣し、時給をもらうのではく、成果が出すことを目的とする。現場に入り込み、現場を回し、クライアントの利益に貢献して、その分インセンティブをもらう。それがエスプールの人材派遣だ」

浦上の目の前に座っていた小林は、その男らしい考え方と迫力に魅了され、すぐに採用試験に申し込んだ。採用面接は順調に進み、小林は無事、内定をもらう。

小林はエスプールに入社してすぐ、「今後拡大が見込める物流現場にFD社員として入りたい」と、当時の事業責任者に直接連絡を入れる。FD社員とは「Field Developer/現場パートナー社員」のことで、スタッフを派遣するだけでなく、自身も現場に入り込み、リーダーとして現場の運営、改善を行うポジションだ。

小林 「自分が直接現場を回せる、悪いところがあれば改善できるって、単純に成果を出しやすいんです。新卒ほやほやの 22歳が、いきなり責任者に直訴するなんて、今考えると無茶苦茶だと思いますが、入り込まないと現場のこともスタッフの気持ちもわからないじゃないですか。
結果として、こうして社長をやらせてもらえるまで成長できたのだから、自分の選択は間違っていなかったと思っています。ちなみに直訴したメールは、初心を忘れないために、今でも大事に取っておいてあるんですよ」

小林の希望はかない、物流現場のFD社員として、エスプールのキャリアがスタートした。

社長になるまでの道のり。チャンスは自らもぎ取り、とにかく成果を出し続け

            自ら志願し物流現場に入り、改善に取り組む

小林は、配属された現場でもその行動力をすぐに発揮した。現場責任者のモチベーションが低いことをよく思っていなかった小林は、「自分がやります」と直談判し、入社3ヶ月にして、責任者のポジションについた。

寝る間を惜しみ、現場のオペレーション・改善を死に物狂いで行なった結果、現場は順調に業績を上げ、従業員数は20人から100人と5倍規模にまで増加した。

ここで成果を挙げた小林の手腕は上層部にも認められ、新規オープンした越谷支店の責任者に抜てきされる。

越谷支店は人材派遣の支店。そこでは一度現場から離れ、とにかく新規のクライアントを獲得する「営業」がミッションであった。

飛び込み営業で回りに回った小林。自身の経験、実績をアピールポイントに、物流企業中心に攻め、多くのクライアントを獲得した。当初、売上900万円/月の支店は1年間で売上3,500万円/月まで拡大した。

新卒3年目には名古屋のエリア長、その後はエスプールに物流専門営業部が組織され、課長に。その後はどこに配属されても、とにかく成果を出し続けた。

そして、年間5億円規模の大型案件を受注したころ、その成果が評価され、最年少で執行役員に就任。このころ、弱冠28歳。

営業で成果を出すために重要なことは、「相手(クライアント)の行動を促すこと」だと小林は言う。

小林 「『弊社のサービスは魅力的なのでご検討ください』では、クライアントは動きません。現場を理想に近づけるために、どのくらい人を集めて、どのようなスケジュールで、どのような費用感でやれるのか具体的な数字に落としこみ、それが自分たちなら実現できることを伝える。

大切なのは上辺の営業トークではなく、本気でできることを伝え、そして行動を促すこと。クライアントを含め、まず動き出さなければ何も始まらないし変わらないと、小林は語ります。

また『人ありきで仕事を決めない』ということも大事です。実力者や経験者が現場に入ることは理想ですが、スピード感を考えたとき、必ずしもそれが正解ではないことがあります。『できる人を配置する』のではなく、魅力的で理論的に回せる仕事を生み出し、そこにモチベーションの高い人材をマッチングしていく。これが自分なりの成功の秘訣ですね」

そして2013年2月には、物流部門が子会社化し、株式会社エスプールロジスティクスが設立。小林は、事業責任者、副社長を経て、2017年12月に株式会社エスプールロジスティクスの社長に就任することになる。

社長になってからの苦難。新しいチャレンジがことごとく……

                新規事業として開設した品川センター

小林 「正直に言うと、副社長から社長になったきっかけは浦上社長に直接交渉をしたことですね。周りからは『成果を出してからではないか』との声もありましたが、社長をやりたい気持ちは変わらず強かった。自分の会社としてビジネスをしていくことに非常に興味があったんです」

とにかく、いい状態でも悪い状態でも、経験者でも未経験者でも、自らが「責任」を持ち、事業を展開していくのが社長だと思う――こうした思いや芯の強さが認められ、小林は社長に就任。

年間売上50億円、営業利益10億円という大きな目標を掲げ小林をトップに就くエスプールロジスティクスがスタートした。

それからは越境ECをテーマとした海外物流支援事業や、IOTを導入したスマート物流事業を開始したり、また品川にエスプールロジスティクス初の1棟貸し切りの物流センターを設立したりと、小林は次々と新しいチャレンジをする。

こうして準備が整い、さぁこれからと意気込んでいたが……

――時間が経過するばかりで、数字が上がってこない。

新規事業はクライアントをあまり獲得できず、利益につながらない。本業の物流センターでも業績が伸びてこない。大きな投資をしたこともあり、赤字が半年以上続いたエスプールロジスティクスは窮地に立たされた。

小林 「画期的な新しいことを事業の柱にし、ガンガン前に進めていく予定でした。しかし、ふと後ろを振り返ったとき、同じ気持ちのメンバーはほとんどいなかったんです。
当たり前のようにあった『報告・連絡・相談』はなくなり、最終判断は全て自分でしなければならなくなって。
社長なんだから自分で決めろと言われていたから自分が思うようにやってきましたが、結局、ひとりでは何も出来ないことを痛感しました」

現状のまま、事業を推し進めていくことは難しく、エスプールロジスティクスは立て直しに入らざるを得なかった。

立て直しには、グループ代表の浦上が介入。「まず第一に当たり前のことをやろう」と提言した。そこで、物流センターシステムの1本化や新規事業の停止など、コストの可視化などを行い、半年をかけて“交通整理”を行った。

その結果、エスプールロジスティクスは黒字へと戻り、再びスタートラインにたった。

心機一転。社長としての今後と若手社員に思うこと

          「自ら行動する」「言葉で伝える」ことで周りを動かす

再スタートをきった今、小林は社長として、今後の展望をこう語る。

小林 「社長になって、たくさんの困難に直面しました。そのなかでも、孤独を感じたこと、メンバーが同じ方向を向いていないことは自分にとって大きな出来事でした。昔から無茶をし、何でもできると思ってやってきたが、ひとりでは何もできないと心底感じたんです」

そんなとき、浦上のマネジメントの凄さを改めて実感したという。やると決めたことを言い続けて、とことんやる気持ち。それも1人ではなく、周りを巻き込んで実行する力強さ……。

小林 「その姿を目の当たりにし、自分だけが突っ走るのでなく、皆が同じ意識・知識を持った強い組織をつくりたいと思いました。そのために、自分の根本にあった『教育』『人を育てること』に本気で向き合っていきたいです」

では、どのようにして「人を育てる」のか。

小林 「まずは仕事の楽しさ、魅力を知ってもらうことが大事。そして、自発的にその仕事がしたいと訴えてきたときに、任せてあげる。そうすることでその人は最大限のパフォーマンスを発揮でき、それが成長へとつながると思っています。
また、常に誰かに与えてもらうものではなく、自分自身で手に入れる、つくり上げることも学んでいってほしいですね。
そのためにも私は夢を語り続け仕事の楽しさを伝えていかなければならないし、仕事への欲求が溢れ出る仕組みやそれに適した仕事を生み出していかなければならないと思っています」

物流業界に携わっていくというのは変わらないのか?

小林 「物流は好きです。古い言葉で『物流コストの低減は第三の利潤』というのがありますが、私は利益を拡大するために、物流の視点を持つ企業は強いと考えています。物流を基軸に巨大企業へと成長したアマゾンなんかもそうですよね。だから、自分もこの業界に携わっていきたいと思うんです」

物流業界も随分様変わりしている。ソフトバンクが物流に参入したように、これからもっともっとIOT、自動化、装置産業化が進んでいく。

小林 「現時点では、磐石な経営体制の再構築が取り組むべきことですが、やっぱり新しいことにはチャレンジしていきたいです。最先端が 5年後には最先端ではない、変化の激しい世のなかで、変化をいち早く感じ、対応し、思考してデザインできる人でありたいですね」

最後に、小林はエスプールの若手社員に伝えたいことをこう語った。

小林 「私は自分のやりたいを『行動』に起こすことで、チャンスを掴んできました。配属のとき、初めての現場、社長になるとき……全ての過程においてそうしてきたんです。タイミングもありますが、『行動する』、『言葉で伝えること』をしないと自分の思いは実現できないし、周りも動きません。自分の経験から言えることはやっぱりそれにつきますね」
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