※最初に予防線を張っておきます。この記事は完全に私個人の感想です。弊社の採用方針を代表するものではありません。「採用担当がそんなこと言っていいの?」という苦情は、いったん私にお願いします。
最近、採用面接をしていて、自分が候補者を見るポイントが昔とかなり変わったなと思います。
以前の私は、かなり技術寄りでした。「何の言語を使ってきたんだろう」「どのくらい一人で実装できるんだろう」「設計できるのかな」「この技術についてどこまで知っているんだろう」。要するに、「この人、何ができるんだろう?」をかなり見ていました。
もちろん今でも見ます。ただ、AIを使った開発が当たり前になってから、以前ほどそこ“だけ”を見なくなりました。
最近、私が面接中に考えているのは、もっと身も蓋もないことです。
「この人のこと、好きになれそうかな」
「好き」で採用するな、と怒られそう
分かります。
採用基準のシートに、
- React:★★★★☆
- AWS:★★★☆☆
- 要件定義:★★★★☆
- 好きになれそう:★★★★★
とか書いてあったら、私も嫌です。
もちろん「趣味が合いそう」とか「飲みに行ったら楽しそう」とか「なんとなく顔が好み」みたいな話ではありません。
私がここで言う「好き」は、「この人と一緒に仕事をしていたら、たぶん信頼できるだろうな」に近いです。
そして最近、これが以前よりずっと重要になってきた気がしています。
技術の差、AIが猛烈な勢いで埋めてませんか?
少し前までは、「この実装ができる人」と「この実装ができない人」の間には、かなり大きな差がありました。
でも今は、「分からないので調べます」の「調べます」の中に普通にAIがいます。
コードを書いてもらう。エラーを読んでもらう。設計案を出してもらう。知らないライブラリについて教えてもらう。テストケースを考えてもらう。私自身、普通にやっています。
なので、かなり極端な未来予想をすると、いずれかなりの仕事が、
「ちゃんとした人に任せれば、誰がやってもそこそこ同じものが出てくる」
状態になるんじゃないかと思っています。
もちろん、技術力が不要になるとは思っていません。上手い人とそうでない人の差も残るでしょう。ただ、「コードを書ける」というだけで発生していた希少性は、これからかなり薄くなるはずです。
じゃあ、Aさんに頼んでもBさんに頼んでも、だいたい80〜90点のものが返ってくる世界になったら、誰に頼むのか。
私はたぶん、一番一緒に仕事をしたい人に頼みます。
なんか、恋愛と同じじゃない?
ここまで考えていて、最近ちょっと思うんです。
これ、恋愛と似てないか?
たとえば友人の女性が「あの人、なんか良いかも……♡」となったとして、「具体的にどこが良かったの?」と聞いても、意外と言語化できなかったりします。
「優しかったから?」
「いや、それだけじゃない」
「顔?」
「別にタイプではない」
「年収?」
「知らない」
「じゃあ何?」
「……なんか良かった」
なんだその採用基準。
でも、人間って結構そういうものだと思います。
もちろん恋愛でもスペックは無関係ではありません。清潔感とか、仕事とか、価値観とか、いろいろ見る。でも、全部の条件をExcelに入れて点数順に並べて、一番上の人に告白する人はあまりいません。
最終的には、「なんかこの人好きだな」がかなり大きい。
採用も、AIによって技術的なスペック差が縮んでいくほど、少しずつそこに近づいていくんじゃないかと思っています。
「コミュ力が大事です」で終わらせたくない
ここで「つまりこれからはコミュニケーション能力が重要です!」と言ってしまうと、たぶん2008年くらいの記事にも同じことが書いてあるので、もう少し具体的にします。
最近、自分が面接で見ているのは、たとえばこんなところです。
好きな料理を聞いたら、好きな料理を答えてくれるか
これ、当たり前に聞こえるんですが、意外と大事だと思っています。
「好きな料理は何ですか?」と聞いているのに、
「最近パスタを作ることが多くて、パスタって茹でるときに塩を入れるじゃないですか。それでイタリアでは……」
と話が進んでいって、5分後にまだ好きな料理が分からない。
面接でも似たことがあります。
「このプロジェクトでは何を担当していましたか?」と聞いたのに、プロジェクトの歴史、顧客の業界事情、チーム編成、開発手法の話まで聞いたところで、まだ本人が何をしていたのか分からない。
話が下手というより、「相手が今何を知りたいのか」を捉えられるかを見ています。
仕事でも結局、ここがズレると話がものすごく長くなります。
知らないときに、知らない顔ができるか
知らない技術があること自体は、今はそこまで怖くありません。AIに聞けば入口くらいはすぐ分かります。
それより怖いのは、知らないのに知っている顔をして進んでしまう人です。
Googleマップを見ずに「こっちです」と言い切って、30分歩いたあと全員を知らない公園に連れてくるタイプです。
技術でも同じで、「分からないので確認します」と言える人の方が圧倒的に安心できます。
変なプライドで迷子にならない。これは結構大事です。
「AIがそう言ってました」を免罪符にしないか
AIが書いたコードで不具合が出たとします。
そこで、「AIがこう出したので……」と言われても、
知らんがな。
と思います。
AIが書こうが、自分が採用してコミットしたなら自分の仕事です。
これはたぶん、AI時代にかなり重要になる感覚です。
AIが賢くなればなるほど、「作る能力」よりも「これで出して大丈夫、と判断した責任」の比重が大きくなる。
なので私は、何か問題が起きたときに「自分は関係ありません」のポジションを取りに行かない人をかなり信用します。
そして結局、「好きになれそうか」
話を戻します。
一緒に働いていれば、当然いろいろあります。仕様変更もあります。バグも出ます。納期も迫ります。「聞いてた話と違うんですけど」という日も来ます。
そんなときに、「まあ、この人となら何とかするか」と思える相手なのか。私は最近、結局ここをかなり見ています。
返信がちゃんと返ってくる。話が通じる。分からないことを分からないと言える。問題が起きたときに逃げない。頼まれたことをただこなすだけではなく、少し考えてくれる。
それに加えて、私は悔しいときに一緒に悔しがれて、うれしいときに一緒に喜べるかという感覚もかなり大事にしています。
障害が起きたときに「自分の担当じゃないので」で距離を取るのではなく、「うわ、これは悔しいですね」と同じ温度で向き合える。逆に、リリースがうまくいったり、お客さんに喜んでもらえたりしたときに、「よかったですね」と一緒に喜べる。
一個一個は別に派手な能力ではありません。でも、こういうものが積み重なると「あ、この人いいな」になります。たぶん私は、スキルそのもの以上に、仕事に対する感情の温度が近い人と働きたいんだと思います。
恋愛の「なんか好き」と同じで、完全に分解して点数化するのは難しい。でも、確実に存在する感覚です。
これ、エンジニアだけの話じゃない気がする
ここまで考えて、もう一つ思いました。
たぶんこれ、エンジニアだけの話ではありません。
文章を書く。資料を作る。調査する。データを整理する。アイデアを出す。いろいろな仕事にAIが入って、これまで「その人しかできなかったこと」が、少しずつ誰でもできるようになっています。
すると、「何ができる人なのか」だけでは差がつきにくくなる。
その先で効いてくるのは、「この人に頼みたいか」なのかもしれません。
同じ80点の成果物が返ってくるなら、私は気持ちよく一緒に仕事ができる人に頼みたい。
AI時代の生存戦略、「好かれる」説
ここまで書いておいてなんですが、10年後の仕事がどうなっているかなんて私にも分かりません。
ただ、自分自身については最近、一つ意識するようになりました。
技術を磨くのと同じくらい、「またこの人と仕事したい」と思われる人間でいたい。
技術はAIに助けてもらえます。知らないことも聞けます。文章もコードも直してくれます。
でも、
「あいつに任せればちゃんとやる」
「困ったときに相談しやすい」
「話していて変に疲れない」
「なんだかんだ一緒に仕事すると楽しい」
みたいなものは、今のところ自分で積み上げるしかありません。
AIがものすごく普及して、いろんな人が同じような成果物を出せるようになった先で、最後に差になるのは意外と、
「あの人、なんかいいよね」
なのかもしれません。