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和歌山県古座川町で田植えのお手伝い

はじめまして!

2024年3月に入社しました事業開発の井口です。普段は木材コーディネート事業と、森林・木材のデータベース構築に向けた情報収集に取り組んでいます。今回は、森未来で働く木材コーディネーターとはどんな人なのか?ということを、日常生活の話を通じてご紹介したいと思います。

和歌山県古座川町での生活

僕が森林・林業に関わりを持つようになったのは大学の頃。森林科学科へ進んだのが契機です。大学院の頃は、和歌山の山奥にある北海道大学和歌山研究林で、生態学の研究をしていました。研究林は和歌山県古座川町という町の、最奥に位置する平井集落というところにありました。最寄りの商店まで往復60㎞という環境です。

そんな、山奥での生活ですが、決して寂しかったということはありません。むしろ、集落の人がよそ者の僕を、孫のように可愛がってくれたおかげで、都会にいた頃よりも濃い人間関係を築くことができました。今ではすっかり和歌山の虜になって、3か月に1度は和歌山へ帰っています。この5月も、集落の田植えを手伝いに、労働力(高校の友達3人)を引き連れて和歌山に行ってきました!

田植えの様子

平井集落はわずかな平地に数十人が暮らす小さな集落です。もともと平地が少ないので、田んぼは地形に合わせてくねくね曲がっており、棚田状になっています。その形が原因で、田んぼの隅の方は機械を入れられず、手で補植することになります。今回メインでお手伝いした作業は、この隅の方を補植する作業です。

田んぼに素足で入ると、指の間を泥がにゅるにゅる動く感覚が伝わり、病みつきになります。皐月らしからぬ暑い日差しが照り付けていましたが、泥のおかげで足元は涼しく作業ができました。

田んぼの生き物たち

田んぼには沢山の生き物がやってきます。田んぼのように、定期的に人の手が入る空間を利用する生物がどっさりいるからです。こうした環境を里山生態系と呼び、過疎化による手入れ不足から、その存続が危ぶまれています。「生物多様性国家戦略2012-2020」で、生物多様性の危機の一つに、『自然に対する働きかけの縮小による危機』が挙げられているのも同じ理由です。

この里山生態系を代表する生き物がカエル!田んぼに水が張られた瞬間に、どこからともなくやってきて、夜な夜なとんでもなく大きな声で鳴き散らします。本当にびっくりするぐらい大きな声で鳴くので、慣れていないと眠れなくなる人もいるんだとか。

そしてそのカエルを狙ってやってくるのがヘビ。よくいるのはシマヘビやアオダイショウなどですが、この日は、日本のヘビの中で、最強の毒を持つといわれているヤマカガシがやってきました。基本的には大人しい性格で、捕まえても滅多に人を噛むことはありませんが、万が一噛まれたら死に至ることもある怖いヘビです。このヘビが泳いでいる田んぼで稲を植えていました…。

ヤマカガシがカエルを飲み込む様子を横目に田植えを進めていると、研究林の先生がやってきて、面白い話を聞かせてくれました。「蛇に睨まれた蛙」と表現される、ヘビとカエルの膠着状態が起こるメカニズムについての話です。曰く、ヘビはカエルが飛ぶと、その放物線の軌道を目指して先回する性質があるそうです。カエルは飛んでいる間、軌道を変更することができないため、ヘビに軌道を読まれた時点で絶体絶命です。一方、ヘビも捕食姿勢になると、途中で進路を変更することができないため、カエルにとっては逃げやすくなります。

つまり、カエルが先に動けば、必ずヘビに食べられてしまうし、ヘビが先に動けばカエルに逃げられてしまうのです※。その結果、先に動いた方が狩りにおいて負けることになり、どちらも動けなくなる、という状態が発生しているのだといいます!放物線を理解して行動するヘビやカエルの能力も凄いですが、その結果生じる膠着状態に気づいて慣用句として残した先人の観察眼にも唸らされます。

※膠着状態が生じるのはカエルがヘビの一撃をかわせる距離においてであり、かわせない距離では先手行動が優先されるそうです。参考:Nozomi Nishiumi & Akira Mori 2020. A game of patience between predator and prey: waiting for opponent’s action determines successful capture or escape

北海道大学和歌山研究林

田植えを終え、僕が所属していた北海道大学の和歌山研究林の庁舎を見学に行きました。どこか札幌農学校を思わせる庁舎は、1927年のもので、北大の学生が本州の植生や林業を学ぶために開設されました。青い屋根は集落のシンボルにもなっており、山奥の細い道を抜けて、青い屋根が見えた時は「帰ってきたなぁ~」と実感します。

庁舎内には、研究林に分布する樹木の木材標本が所狭しと並べられています。木材コーディネーターとしては、垂涎ものです!!手前の列の右から5番目、バリバリの木は名前が面白いことでおなじみの木ですが、材を見れることはめったにありませんね。

なかでも注目の樹種は、これらの輪切り標本の後ろにある角材標本の一つ。なんとトガサワラの標本があります!トガサワラは紀伊半島南部と四国の魚梁瀬地域のみに分布する希少種で、ぱっと見はモミやツガに似ています。以前は枕木などにも利用されていたそうですが、現在では絶滅危惧Ⅱ種に分類され、風倒木などを除き、材が出回ることは滅多にありません。そんな貴重なトガサワラの四方無地角材の標本があります。

他に類を見ない、つる性木本標本も見どころです。猫が大好きなマタタビなどは、つる性木本ですが、実際にどんな木なのか、他のツル性木本と比較して見ることができる場所は滅多にないのではないでしょうか?ツル性木本が好きな人にとってはたまらない展示です。

漫画みたいな見た目のジャケツイバラの標本は、思わず手に取って肩を叩きたくなる形状をしていますね。日本棍棒協会に寄贈したい樹種の一つです。

ホタルと星空

さて、5月末から6月頭にかけては、夜になると蛍が河原を飛び始めます。ただでさえ清流と謳われる古座川の、最上流部に位置する研究林周辺には、そこかしこにホタルが飛んでいます。

河原から夜空に目線を移すと、都会では見たこともない量の星空が!古座川町周辺は都会の光がほとんど届かない場所で、日本でもトップクラスの星空観察地だそうです。星が多すぎて、逆に星座が分かりませんね。

1回だけでは、和歌山の魅力を語り切れないので、また続きをお話したいと思います!乞うご期待ください!

もし森未来に興味がある方はお気軽にご連絡をお待ちしております。

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