コロナで苦しむ羊肉業界を救うためには、お店でなくて家庭での羊肉消費を増やさなければならない。羊肉業界の新たな取り組みは日本の家庭料理に羊肉の要素を加え、コロナの今とアフターコロナをつなげるものです。6店舗のジンギスカン屋共同での通販事業に乗り出したお話を、関澤社長と石川店長に伺いました。
羊の灯を絶やしてはいけない
-今新たに進めている通販事業について教えてください
前回の記事で石川がお話したように、羊SUNRISE単体としての通販事業はもう始まっています。家で羊SUNRISEのお肉や料理を気軽に食べてもらうために、調理方法を紹介するyoutubeも配信を行なっています。
【LET'S HOME LAMB!羊肉を家庭で楽しんでもらうために、通販事業始めました】
https://www.wantedly.com/companies/sheepsunrise/post_articles/233154
【YouTubeから羊肉の魅力の発信、始めました】
https://www.wantedly.com/companies/sheepsunrise/post_articles/233147
その上で、羊SUNRISEだけというよりは日本の羊肉業界の救済と発展のために、ジンギスカン屋が共同で商品開発をした料理を通販する構想を進めています。
-構想が生まれたきっかけはなんでしょうか
まず、大前提として羊がテーブルミートとして全く普及していないことへのもどかしさがありました。羊SUNRISEにご来店されるお客様は羊に対して柔軟な感覚を持っている人が多いんですが、それでも「ジンギスカンは外で食べるもの」という感覚が強いんです。
ましてや日本全国で見たときに羊肉を家庭料理として出すお宅なんてほとんどない。羊SUNRISEは日本人の羊の消費量を上げることをミッションにしています。しかし、今のところお店に来てくれたりお店の通販を利用してくれるお客様は、麻布十番周辺や都内の方がほとんどです。お店単体で日本の羊の消費量を上げることに限界があると感じていました。
そう考えていたところに、輸入業者さんが大変なことになっているという話が来た。海外産の羊肉を保管する倉庫がもういっぱいだというのです。コロナ前に発注した羊肉は今でも港に届き続けています。
販売するあてがないので輸入業者さんとしては大赤字ですし、これがずっと続けば倒産もあり得る。ただでさえ市場が小さい日本の羊業界が、完全に終わってしまう可能性が現実のものとして迫ってきました。
今を乗り切るためだけでなく持続可能な取り組みかどうか
-輸入業者さんの羊の在庫を消費することが大きな目的としてあったのですね
はい、そうです。ただ、どう考えても羊SUNRISE単体としてどうにかできる話ではなかった。永続的に消費し続けるモデルを作る必要があったので、それには業界として取り組む必要があります。すなわち、テーブルミートとして羊肉を自宅で食べてもらう普及活動でなければならないのです。
今回倉庫がいっぱいになったのも、飲食店でしか羊肉が消費されていないことが原因とも言えますので。鳥や豚、牛と同じように日本人に家庭で食べて欲しいんです。
郷土料理+羊肉=新しいソウルフード
-何店舗かで共同で通販事業を行うということですか
はい。今参加してくれているのはウチ含めて6店舗です。ZOOM会議で商品開発を行なってきました。2、3のアイデアはもう商品化が見えています。
-通販する羊肉料理のコンセプトを教えてください
2つあって「味付けジンギスカン」と「郷土料理との融合」です。特に郷土料理の商品開発会議は苦労しました。
なかなか目新しい料理が出てこなくて、ZOOM会議のたびに全体のモチベーションが下がっていくのがわかる。日本には羊料理のお手本がないので当たり前なんですが、ゼロから生み出すことの難しさを痛感しました。打開するきっかけになったのが、とにかく普通じゃないことをやってみようということで「羊肉で納豆や大葉を包んだ料理」を試作したことです。
耳で聞くと「えっ?」て思うかもしれないんですが、実際に食べたらこれが美味しくて。会議に参加しているみんなにも試作品を冷凍して送るんですが、インパクトがすごかったみたいです。「ここまで思い切っていいんだ」と。ここから自由度が高いアイデアがみんなから出てくるようになりました。
なんで納豆かというと、僕と石川が茨城出身だから。茨城といえば納豆です。
日本全国には祖母くらいの世代までで途切れてしまっている個性的な郷土料理が眠っています。それを発掘して羊料理と紐づけることで、新しいソウルフードとして生まれ変わらせることができるのではないかと。
羊の普及を進めるために自主的に集まったコミュニティ
-通販を進めるコミュニティはどのような構造ですか
基本的にはフラットな組織です。僕があまり前面に立たないように気をつけています。自分のアイデアに追随する形にはしたくなかったので、ZOOMでは僕はあまり発言しません。参加者それぞれが主体性を持って取り組んでいって欲しいんです。
強制参加のコミュニティではないので抜けるのも自由。羊肉業界からオブザーバー的な立場の人に調整役として会議に参加してもらったり、バランスを取ることを大切にしています。
-参加店舗はどのような基準で選んだのでしょう
基本的には僕から声をかけました。品質や味のクオリティを重視している「羊に対して本気で取り組んでいるお店」かどうかを重視しました。
羊が食卓に普及することがゴール
-今後はどのように共同の通販事業を進めていきますか
通販サイトの立ち上げをしなければなりませんね。これまで羊肉や羊関連の製品の通販、情報がまとまったwebサイトはなかったので、この機会にポータルサイト的なものを立ち上げることも視野に入れています。ただ販売するだけでなくて、羊の普及につながるようなものでなければなりません。
製造に関しては幸い工場を使える目処が立っています。新しく美味しい羊肉料理をたくさん開発して、輸入業者さんの羊肉を使った料理をご家庭で食べてもらえたらなと。こういう時期だからこそ積極策を取って、未来を変える可能性を追求していきたいです。
-今新しいことを始めるにはリスクもあるのでは
こういった状況の中で、飲食店がただ待っているだけでも状況は好転しません。立ち止まっていることの方がリスクが大きい。今どの部分に困っていて、どうやったら事態を打開できるのかは常に考えなければいけないと思っています。今始める取り組みが一過性のものではなくて、今後も継続していけるかどうかも重要ですね。