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The Entrepreneur #4 独立研究者・パブリックスピーカー 山口周氏 ~あなたの中のアートとサイエンスをリバランスする方法~(後編)

セプテーニグループはミッションとして「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」を掲げています。いま社会で活躍する様々なアントレプレナーをお招きし、セプテーニグループに所属するひとりひとりがそれぞれの「アントレプレナーシップ」について、考えてもらう場をつくりたいと企画された”The Entrepreneur”シリーズ。

今回は、第四回目のアントレプレナー 山口周さんによるセミナーの後編をお届けします。

▼前編はこちら

The Entrepreneur #4 独立研究者・パブリックスピーカー 山口周氏~あなたの中のアートとサイエンスをリバランスする方法~(前編) | NEWS・EVENTS
セプテーニグループはミッションとして「ひとりひとりのアントレプレナーシップで世界を元気に」を掲げています。いま社会で活躍する様々なアントレプレナーをお招きし、セプテーニグループに所属するひとりひとりがそれぞれの「アントレプレナーシップ」について、考えてもらう場をつくりたいと企画された"The Entrepreneur"シリーズ。 ...
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「正解で勝負」したために敗北した携帯産業

ビジネスの領域においても、アーティスティックなものを創り出す能力が求められていることの例として、日本の携帯電話産業について振り返ってみましょう。

日本の携帯電話産業は一時期大変盛り上がりました。1990年代後半から2000年代前半にかけて、大変優れた機種がたくさんでてきていて、世界的にも注目されていました。ただ、最終的には産業として消滅し、いま携帯電話をつくっている会社は1社しかありません。
衰退のきっかけはご存知の通り、AppleのiPhoneがでてきたことです。

ではなぜ今ではこんなに弱い産業になってしまったのかというと、「正解で勝負した」からなんですね。当時の携帯端末はほとんど見分けがつかないほど、デザインも機能も似ていてます。どうしてここまで似通ったかというと、これが「正解」だからなんです。
さきほど、サイエンスには再現性がある、という話をしましたよね。つまり別の人がやっても同じこと・同じ答えになります。ということはサイエンスに頼ると差別化が絶対できないということなんです。

みんなが同じような機能・デザイン・価格で競争した結果、競争が何にシフトするかというと、新しさとコストだけになってしまうんですね。最新型を買う人が多くなると、結局企業は新商品を出すサイクルを増やすことになるので、当時の携帯メーカーは何をやっていたかというと、春夏モデルと秋冬モデルといって、年に2回新機種を出します。しかも一回1商品ではなく5商品も6商品も出していました。

そのために、毎回顧客調査をして、アンケートの結果を統計分析にかけて因子分析や重回帰分析をして、求められている機能に優先順位をつけて、開発目標を立てて、それを作るということを必死になってやっていたので、未来の携帯電話ってどんなものだとか、たとえば30年後の携帯のビジョンはどんなものだとか、そんな悠長なことをやっている暇が無かったんですね。
みんな目の前の仕事をこなすのに必死です。

その結果、「今の携帯は格好悪いと思います、自分たちとしてはこういうものが格好いいと思うんですがどうですか」と提案してきたAppleのiPhoneという商品に、たった数年の間に市場シェアの半分をとられてしまいました。

Appleは消費者調査をほとんどやらない会社で、あくまでどういうものをつくるかは彼らの感性、アートを非常に重視しています。
顧客調査に頼って非常にサイエンス重視でやってきた会社が、非常にアート的なつくりをする会社に惨敗を喫して、さらにそのようなアートを重視している会社が、いまだに時価総額で世界最大の会社になっているという状態をどう考えますかという話です。

マーケティングによる「阻害」

当時の携帯電話産業や今の家電産業を見ていて思ったのは、マルクスの「阻害」という概念です。
マルクスは、人間が良かれと思って作ったルールとかプロセスとか仕組みとかシステムに、人間が振り回されてシステムの奴隷になることを「阻害」という概念で表現しました。僕が当時の携帯会社や今の会社を見ていて思うのは、人間がマーケティングによって阻害されている、マーケティングプロセスの奴隷になっているということです。

もちろんマーケティングそのものは絶対に知っておいたほうがいいし、テクニックとして覚えておくことは有効なんですが、問題は主従関係なんです。人間が、主体的な意図をもってこの商品やソリューションを世の中に提供したい浸透させたい、とある種の情熱をもって自分のツールとしてマーケティングを使うのはもちろん有効なんですが、当時の日本の携帯電話会社で起こっていたことは、どういうものを作るべきか、ということをマーケティングが決めていて、人間が奴隷になっている、という構図なんですね。

この主従関係を逆転させない限り、強いブランドの商品ってもう作れないだろうと思います。

ただでさえこの現象が起こっている中で、輪をかけて助長しているのが人口知能です。
ニュースで見た方もいるのかと思いますが、2011年にアメリカのクイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」で、アメリカのクイズ王として3億人のトップにいる二人にIBMの人口知能が挑戦するという企画で、最終的には人口知能が優勝したんですね。これからわかるとおり、 人工知能の誕生により、現在「正解のコモディティ化」(正解の価値が下がっている)が起こっているのです。

経営学や統計の知識をもっている人が少ない、計算機を持っている人が少ないという時代では、正解を出す能力が高ければ高いほどそれは競合企業に対してアドバンテージになったわけです。
ところが、経営学や統計のリテラシーを持っている人が増え、また、計算能力もみんなが持つようになったとなると、かつては競争優位につながった正解を出す能力というのは誰もが持つようになる。そうすると、正解の原理として誰もが同じ答えを出すということになるので、むしろ正解を出そうとすること自体が答えを縛ることになっているのです。

「正解のコモディティ化」によって、今世界で起こっていること

実はこういった状況になったのは、つい最近のことなんですよ。

『アポロ13』という映画を観たことありますか?あれは、1970年に発射されたアポロ13号の実話に基づく作品なんですが、アポロ13号は飛び立って三日目くらいに、月に行く手前で大事故を起こすんですよね。それで月面着陸どころじゃなくなって、必死になって帰ってくるんですが、あの映画の中で帰還するために軌道の計算をやり直すというシーンがあります。
その時、宇宙船の中で、鉛筆と消しゴムと紙をつかってひっ算しているんですよ。しかも、この計算を間違えると宇宙で迷子になってしまうので、絶対に間違えられないので、「地上でも検算してくれ」と言って、地上でもNASAのエンジニアが計算するんですが、その人たちも鉛筆と消しゴムと紙をつかってひっ算しているんです。
みなさん電卓使えばいいじゃないかと思いませんか。

でも当時は、皆さんが持っているような電卓はなかったんです。当時の電卓は自動販売機2個分くらいの大きさでしたので当然宇宙船には詰め込めません。つまり、1970年代ですら、計算能力はそれくらい希少で貴重な能力だったということです。だから正解を出せるということが希少だったので、「正解を生み出せる能力=優秀さ」だったということです。

だからこそ学校の制度は、正解を出す人を育てるようにできてるし、正解を早く正確に出せることが優秀さだし、そういう人をたくさん採るのが人事の役割だったんですけれども、50年経って、遍くいきわたったんですよね。

その究極の姿がこの人工知能です。そして今どういうことがおこっているかというと、人工知能の価格が猛烈な勢いで下がっているんです。

そうすると、人工知能(=正解を出すという能力)は、ほぼ全ての会社に導入できることになります。ご存じのとおり、チェス、将棋、囲碁の世界チャンピオンは人工知能になってしましました。
ですから、クイズとパズルというまさに正解を出すことが求められる競技に関して、人間よりも人工知能の方が圧倒的に強いということです。

先程の話題にもどりますと、「優秀さ」とは何かと考えると、典型的なのは偏差値の高い大学に行っているということだと思うのですがそれはつまり、受験で高い点数をとれるということですよね。
でも、受験の問題ってそもそもクイズとパズルなんですよね。そのクイズとパズルが一番得意なのは人工知能で、しかも、数十万円のお金を払えば誰でも買えるようなものになるんです。

一週間で40時間しか働かない人間と、168時間働く人工知能

じゃあここでコストを比較してみましょう。

人間で優秀な人材(偏差値の高い大学の学生)を採用し、雇用すると、新入社員一人あたり、だいたい年間400~500万円くらいかかります。稼働時間でいうと、1日8時間、週二日休みだとすると、一週間で40時間ですよね。
一方、人工知能の場合、コンセント突っ込んでおけば1日24時間1年365日のべつ幕無しに働きます。一週間でいうと、24時間×7日間なので、168時間。人間の4倍稼働するわけですよ。じゃあコストはどうかというと、例えば100万円で人工知能を購入し、5年で償却すると考えると、1年で20万円なので、人間の1/20です。

そうなった場合、経営者は常に生産性を上げることを考えているので、人工知能でできる仕事は、人間に任せなくなります。そして、すでにそういう傾向は、起高給取りの業界から順に起こっています。

大手弁護士事務所では、人工知能を導入し、従来弁護士が二週間かけて処理していた契約チェックを、1時間以内で処理しているそうです。超人的なスピードですよね。
なぜこういうことが弁護士の業界で起こっているかと言うと、非常に簡単で、弁護士の給与が高いからなんです。コストが高い仕事程、人工知能に切り替えたときのインセンティブが経営者としてはあります。

このような傾向がもっと前から起こっているのが金融業界です。ある大手投資銀行では、2000年代初頭は、東京オフィスだけでトレーダーが400~500人いましたが、今おそらく5人以下だと思います。
大手投資銀行では、トレーダーとして成功して年間数億円のフィーを受け取っている人がざらにいるわけですよね。数百人いて一人当たり平均費用が1億円だとすると、300億ですよね。

2000年代初頭では、人工知能はまだ非常に高価だったんですけれども、300億払うくらいだったら、例え人工知能が10億円したとしても、10台導入する理由が大いにあるわけですよね。
ですので、給与の高い職種から順々に人工知能に置き換わっているというのが今の状況です。

「意味がある」ものを生み出す

では、人間の仕事とは一体何か、ということなのですが、­­一つは「意味をつくる」ということです。
世の中の価値は、基本的に全て「役に立つか」と「意味があるか」で整理できると考えています。マーケティングの用語でも、「ファンクショナルベネフィット」と「エモーショナルベネフィット」という概念がありますよね。

▼「役に立つ」×「意味がある」

分かりやすい例として自動車業界でご説明すると、「役に立つが意味がない」もの(①)の代表例が日本のワゴン自動車です。7~8人乗りで、荷物も大量に乗せることができ、燃費も良い。「移動」を目的にした場合、快適で非常に役に立ちますよね。ただ、これがあることで自己実現を感じたり、人生の醍醐味を感じたりする人は少ないと思います。つまり、「役に立つが意味(価値)があるものではない」と言えます。

次に、700~1,000万円程度する海外ブランドの自動車です(②)。
5人乗りで快適に移動ができるので、前述のワゴン車と同じくらい役に立ちますが、同じ役に立つ度合いであれば、ここまでの価格である必要がないのです。それにも関わらず、2~3倍の価格を支払う理由は「意味的価値」です。このような700~1,000万円程度もする高級車が新興国で飛ぶように売れていることを考えると、「意味的価値」の方が伸びしろが大きいと言えますよね。

その究極的なものが高級スポーツカー(③)です。
2人程度しか乗れず、荷物も積めない、そんな役に立たない乗り物が、一番価格が高く、グローバルマーケットでも「ハイパーカー」と言われ一番の成長分野になっているんです。

つまり、先ほど利便性が過剰になっているという話をしましたが、人生を生きるに値する「意味」を与えてくれる希少性に、みんな莫大なお金を支払うということですね。

先ほどの人工知能と人間の戦いの話で言うと、役に立つものをさらに役に立つようにするには人工知能は有効ですが、一方で、人工知能の唯一の弱点は「意味を理解しない」ことなので「意味をつくる」ことはできないのです。
さらに、「役に立つが意味がない」もの(①)は、一番競争が厳しくなります。役に立つものは世の中に1社あれば良いので、2位以下の会社は生き残れないですよね。例えば、コンビニエンスストアでは、文房具の棚は基本的に1カテゴリー1商品しか置いてないですが、そんな中で1カテゴリーに200種類程度の商品が置かれているものがあります。それはタバコです。なぜかと言うと、タバコは「役に立たないが意味がある」ものなので、200種類もの商品が並列できるんです。

つまり、現代の企業は、グローバル競争の中で1社しか生き残れないマーケットで頑張るのか、「意味がある」マーケットの方に移行して独自のブルーオーシャンを築くのかの選択を迫られている状況なのではないでしょうか。

自動車や家電業界でも「意味がある」マーケットを目指す動きはあるものの、どうしても「役に立つ」ことを追い求めてしまい、同質化の罠に陥っているのだと思います。

私が考える広告代理店やブランドコンサルタントの役割は、クライアントを「意味がある」マーケットに向かわせてあげることだと思っています。なぜなら、役に立つものをさらに役に立つようにしても、顧客が支払う価値は変わらないので、お金を生み出すことにはつながらないのです。一方で、自己実現的な便益や「意味がある」ものを作ることができれば、そこに莫大な価値が生まれます。


▼「役に立つ」×「意味がある」 カテゴリー例

カテゴリー別で考えてみると、例えば「意味がある」カテゴリーのワインやアートが、世界で1社しかない状況は想像できないですよね。ワインは各産地でそれぞれが象徴的な意味を持っていて、それが存在していること自体に、人は生きるに値する豊かさを感じているのです。

つまり、物質的な価値には満足している現代において、意味的な価値をいかに提供できるかが企業の大きな分かれ道になるのです。

こういう話をすると、よく「ニッチだ」と言われるので、具体的な数字でイメージしてもらいましょう。
1.2億人の日本市場で、「役に立つ」メジャー市場で50%のシェアを獲得できれば6,000万人、一方でニッチ市場は5%と仮定して600万人と考えると、確かに10倍の差によりスケールメリットが発生するので、ニッチ市場では競争力がないです。しかし、現在は市場の垣根がどんどんなくなり、グローバルマーケット化しています。先進国で約12億人の市場と考えると、ニッチ市場で5%のシェア獲得で6,000万人なので、日本のメジャー市場で50%のシェアを獲得した場合の6,000万人と同じ人数になり、スケールメリットは消失しますよね。

加えて、「意味がある」マーケットでは商品価格が10~1,000倍になることもあるので、高単価かつ広範囲に売ることができ、「役に立つ」商品よりもはるかに強いブランが作れる可能性があります。

昔は、このようなグローバルマーケットに出るためには莫大なマーケティングコストを投下する必要がありましたが、今はソーシャルメディアの口コミ等での広がりが可能となっていて、意味的価値を生み出せた時点で、お客さん自身がメディアになり宣伝してくれるという現象が起きるのです。

昭和~平成のビジネスの戦い方とは違い、令和以降は尖った意味的価値を作ることができれば、限界費用ゼロで広がっていくので、戦い方は大きく変わってきますよね。

▼昭和~平成と令和以降の違い

人材育成分野での変化

これにより、人材育成の分野でも考え方が変わってきています。

2008年のダニエル・ピンクの指摘でもありますが、これからの市場で価値を生む学位は、一般的に有名なビジネススクールではなく、芸術学の修士号だろうと考えられています。実際に、ある企業では経営幹部候補を育てるためにロンドンの美術系の大学で学ばせるという事例も増えています。

これらの理由は非常にシンプルで、分析的に正解を出す能力自体の価値が下がってきている結果、ビジネススクールの卒業生が必ずしも高い報酬で雇われなくなったからです。
かつてはロジカルシンキングで正解を出してきたグローバル大手の金融機関やコンサルティングファームが、次々とデザイン会社を買収する動きが出てきているのも象徴的ですよね。

イノベーションを生み出すスピリッツ

ここで、ケインズの「雇用・利子・貨幣についての一般理論」の中で述べている「アニマル・スピリット」をお伝えしたいと思います。

ここで言う「アニマル・スピリッツ」とは、多くの新規事業やイノベーションは、アーティストが作品を作らずにいられないという突き動かす感覚と同じように事業に携わることで、実現しているということです。これまで、一般的なビジネススクールでは数量化された利得や確率を教えていて、それを学んできた人が会社に入ることで、再現性の罠に陥りみんなと同じ答えに至ってしまうというのが今の世界です。

では、こういった世界でどうやって顧客に対し、意味的価値の提供を考えていくかが重要となるのですが、そのカギとなるのがリベラルアーツです。つまり、これまで重要視されてきた数学・科学・工学・エンジニアリングなどのスキルは差別化に貢献しないということです。

ビジネスにおいても、いくら技術が優れていても「世の中にどう貢献したいか」が明確でない企業は生き残れないですよね。ビジネスは、何か問題があって解決策が生まれるからそこに価値が生まれる、という構造ですが、現代は問題がないのに解決策が過剰にある状態だと考えています。

では、問題はどこから生まれるのでしょうか?

それは、ありたい姿から現状の引き算です。ただ、今の世の中は社会も顧客もなかなか問題を作れない。そのため、「ありたい姿」を描き、提案することが今後の価値の源泉になると考えています。
その「ありたい姿」を描くという学問がリベラルアーツです。

ありたい姿が描けると良い問題が見つかり、良い問題が見つかると良い解決策ができる、ということが分かりやすく起きた事例として、ある家具会社の例をご紹介します。

障害者の方向けに、通常の家具に取り付けるアタッチメントを3Dプリンターで誰でもダウンロード可能にし、その結果、売上もブランド価値も向上しました。
これは、この企業が「誰もが美しい家具に囲まれて暮らする権利がある」というありたい姿を掲げているからこそ、障害者の方にもどう美しい家具を提供できるかという問題が生まれた結果だと思っています。
それも、ビジョン(ありたい姿)を本気で掲げているので、阻害要因を必ず払拭するという強い意志が、その解決策を生んだのです。

顧客のビジネス成長をサポートする立場である皆さまにお伝えしたいのは、サイエンスを捨てろというわけではないですが、どこかでアートを回復しない限り、自社のビジネスも、顧客のビジネス成長のためにも本当の意味で強いビジネスを生むのは難しいということです。

最後に

大事なのは「わがままになる」ということです。
言葉として悪いことに捉えられがちですが、「私のまま」ということなので、例えば専門家が言っている世の中の規範ではなく、「自分が良いと思えば良い」という価値観で良いんです。わがままを押し通せば、必ず共感する人は出てきますから。

今の世の中、みんな自分の楽しさ、嬉しさ、苦しさなど感情を封印する傾向にありますが、封印するとごみと同じでその感情は腐っていき閉じてしまいます。それを一度解放してあげると、自分の感情が素直に出てくるようになるので、その感情に自分の仕事を揃えてあげると価値の強い仕事ができるようになるはずです。自分のわがままを自分自身で受け入れて可愛がってあげると、自分の感性が活かせるようになると思いますね。

質疑応答

――質問
今後、デジタル広告業界はどうなっていくとお考えでしょうか?

――山口さん
今後、在宅勤務が進み東京の昼間人口が大幅に減少するとOOH広告への接触オーディエンスも減少し、仮想空間へのシフトが起きるので、ある意味ではプラスの状況だと思います。ただ、重要なのは意味のある情報を作ることです。
広告代理店の価値の源泉は、ある情報を誰かに渡すことで、情報が渡る前よりも社会がより良い状態になることですよね。それが価値となりお金を生み、ビジネスとして成り立つ構図なので、世の中に本当に意味のある情報が作られているかがすごく重要ですし、クライアントが社会に価値のあるメッセージを伝えられるよう支援することが重要だと思いますね。

――質問
サイエンス型の人が感性を磨いたり、リベラルアーツを日頃から学び続けるためには何が効果的でしょうか?

――山口さん
色々なトレーニングはありますが、やはり「良いものに触れる」ということに尽きると思います。
おいしいものを食べ、素敵な場所に行き、素敵な文学や映画、音楽を聴くということですね。何が素敵かは、明確に「長く残っているもの」だと思います。
数十年かけて残っているということは、人の心を掴むものがあるで、そういうもにたくさん触れている人は「何が人の心を掴むのか」の判断能力が優れています。一方で、一瞬で消えるものばかりに触れている人は、一瞬で消えるものが良いものだという判断基準になってしまいますよね。
だから、流行りものばかり見ている人は、自分の中の情報インプットのポートフォリオを変えたほうが良いのかなと思いますね。

編集後記

変化が激しく数年先も予測困難なこの時代において、サイエンスとアートの新しいバランスという観点から、これまでの「正解」に囚われない視点や感性の重要性をお話いただきました。
今こそ、企業が価値を生み出すためには明確な「ビジョン(ありたい姿)」がより重要となること、自らの感性を磨き続けその価値観を大切にすることを学びました。

私たち一人一人が、変化する時代の中で「希少なものを生み出せる」という本当の意味での優秀さを磨き、それが、デジタルマーケティング支援を行うセプテーニの役割として、顧客ビジネスに「意味」を生み出し、大きな価値を創造することに繋がるということを再認識できました。


セミナー後のアンケートでも、「自身のビジネスシーンにも活かせる思考だと感じた」「実例ベースで提案すると施策がコモディティ化する、という自分が今抱えてる課題と重なった」などのコメントが寄せられました。参加者にとって、日頃抱えている考えを改めて咀嚼して整理し直し、すぐにでも自らの思想やスタンスに反映できることを学べた有意義な時間になったのではと感じました。

山口さん、ありがとうございました!


文・江里 美咲  大沼 千鶴

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