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正解なき300人の壁。急成長の裏に隠れた、Sales Marker事業本部の泥臭くウェットな組織改革
先日公開されたビジネス映像メディア『PIVOT』への出演をはじめ、Sales Markerの顔として洗練された戦略と成果を語る藤井さん。その姿は、多くの視聴者に「クールで知的なリーダー」「完成された組織の長」という印象を与えたかもしれません。しかし、カメラの回っていないところでの彼は、誰よりも人間臭く、そして誰よりも泥臭い課題に直面しながら、組織の歪みや痛みに正面から向き合っています。
かつてキーエンスで2期連続最優秀賞を受賞し、現在は全社300名規模に急拡大したSales Markerにおいて、主力事業を統括する「Sales Marker事業本部長」を務める藤井さん。彼が今、会社全体として直面している「300人の壁」とは何か。そして、いつかは自分で事業をやりたいという野心を抱きながらも、なぜ今この場所で、この仲間と挑戦し続けることに熱狂しているのか。きらびやかな成功譚の裏側にある、リアルな葛藤と組織づくりの最前線について、余すことなく語っていただきました。
藤井 恭 / Sales Marker事業本部長
新卒で株式会社キーエンスに入社。CE(コンサルティングエンジニア)を経て営業職へ転向し、在籍4年のうち2期連続で最優秀賞を受賞するなどトップセールスとして活躍。その後、AIプラットフォームを展開するIdein株式会社へ転じ、事業開発や組織構築に従事。キーエンス時代の同期であるCOO・荻原の誘いを受け、創業期のSales Marker(当時CrossBorder)に参画。営業・マーケティング組織の立ち上げ、「グロース本部」の設立を経て、現在は主力事業であるSales Marker事業本部のトップとして、セールス、プロダクト開発、採用など事業全般を統括している。
華やかなキャリアの裏にある原点と、役割の進化
ーーまずは、藤井さんのこれまでの歩みについて改めて教えてください。キーエンスでの華々しい実績から、なぜスタートアップの創業期という道を選ばれたのでしょうか?
新卒で入社したキーエンスでは、最初はCE(コンサルティングエンジニア)としてキャリアをスタートさせました。その後、「まずは現場で営業経験を通じて学ぶべし」という社風や上長からの後押しもあり、営業職へ転向することになったんです。運にも恵まれ、2期連続で最優秀賞をいただくことができましたが、実は当時、次のステップとして海外行きを考えていたんです。しかし、ちょうどコロナ禍と重なってしまい、先行きが全く見えなくなってしまって。目標が足止めされた中で、このままズルズルと今の環境に居続けるよりは、心機一転、全く新しいフィールドで挑戦をしたほうがいい。
そう考えて、AIプラットフォームビジネスを展開するIdein株式会社へ転職し、事業開発や組織づくりの経験を積みました。
ーーあえて安定を捨てて、挑戦の道を選ばれたのですね。そこから、どのような経緯でSales Markerへ参画することになったのでしょうか?
Sales Markerへの参画は、キーエンス時代の同期だったCOOの荻原に誘われたのがきっかけです。彼とは内定者時代からの仲で、私が前職を辞めるタイミングで久々に話をしたら、いきなり画面共有が始まって延々と事業説明をされたんですよ(笑)。私はこれを「OGIWAY(オギウェイ)」と呼んでいるんですが、彼の強引かつ情熱的な勧誘と、Sales Markerが掲げるビジョンに惹かれ、最終的には「このメンバーとなら、失敗しても後悔しない」と思えたことが入社の決め手になりました。
ーー創業期から様々な役割を経験されてきたと思いますが、現在の「Sales Marker事業本部長」というポジションは、以前の「グロース本部」時代とは何が違うのでしょうか?
大きく違いがあります。そもそも「グロース本部」というのは、営業やマーケティングといった部署の垣根を越えて、現場のボトルネックを最速で解消するために立ち上げた組織でした。いわば、組織の隙間を埋めて動き回る「遊撃隊」のような存在です。
しかし、会社全体の人数が増え、組織としてのフェーズが変わる中で、役割分担をより明確にする必要が出てきました。創業初期メンバーの一人であり、これまでSales Markerのセールス組織を率いていた梅村が、「Recruit Marker(リクルートマーカー)」という新たな野原(新規事業)を開拓しに行くことになり、誰かがメイン事業である「Sales Marker」という巨大な船を、しっかりと整備された航路で進めていく必要があったんです。
ーーそこで白羽の矢が立ったのが藤井さんだったわけですね。
はい。現在はSales Marker事業本部として、メイン事業のセールスはもちろん、プロダクト開発へのフィードバック、そして採用までを担当しています。これまでの「気合いと勢いでグイグイ進む」創業フェーズから、300名規模の組織として「勝ち続ける仕組み」を作るフェーズへの移行期です。その中で、事業全体の成長に対して最終責任を持つ経営視座が、より強く求められるようになったと感じています。
「100人の壁」は感じなかったが、「300人の壁」は痛みを伴った
ーーメディア出演などを拝見していると、非常にスマートで順風満帆な組織運営をされている印象を受けます。
そう見えるとしたら、それはあくまで表面的な結果ですね(笑)。Sales Markerはメディアに出ると、どうしても「スタイリッシュ」「ドライ」といった印象を持たれてしまうことが多いんです。面接に来てくださる方からも「もっとクールな組織だと思っていました」と驚かれることがよくあります。でも実態は、本当に泥臭いことの連続です。よくスタートアップで言われる「100人の壁」というのは、我々はあまり感じる間もなくスピード突破してしまったんですが、会社全体の人数が300人に近づいたあたりで、明確な「壁」に直面しました。
ーー具体的に、どのような「壁」を感じたのですか?
経営と現場の距離、あるいはメンバー間での情報の非対称性が顕著になり始めました。例えば、経営陣が発した言葉が、現場には全く違うニュアンスで伝わってしまったり、「あの会議にいなかったから背景を知らない」といった前提情報のズレが頻発するようになったんです。 一つの出来事に対しても、解釈や受け止め方がバラバラになってしまい、組織としての一体感が薄れかけていた時期がありました。それぞれが目の前の仕事に必死になるあまり、隣の人が何をしているか分からない。そんな組織全体の「痛み」を、肌で感じるようになりました。
ーーその状況を、藤井さんはどのように乗り越えようとされたのでしょうか?
とにかく「対話」と「熱量の共有」に立ち返りました。スマートな解決策なんてなくて、やることは極めてアナログです。
私が事業本部を持つことになった際、最初にやったのは事業部全員でのオフサイトミーティングでした。インサイドセールス、フィールドセールスといったポジションに関係なく、全員でAirbnbのサウナ付きの宿を一棟借りして合宿を行ったんです。
そこで、「今、何に困っているのか」「本当はどうしたいのか」という本音を、全員で吐き出し合いました。事業成長や数字の話以前に、「Sales Markerという事業をどうしていきたいんだ?」「我々は何のためにここにいるんだ?」という原点に立ち返り、目線を合わす作業に徹底的に時間を割いたんです。
ーーアナログでウェットなコミュニケーションを重視されたんですね。
はい。日常の業務においても、あえて「ウェットさ」を大切にしています。例えば、毎朝15分だけ朝礼を行っているんですが、その冒頭は必ずメンバーの1~2分の小話から始めるんです(笑)。毎日誰かが笑いを取って、笑顔で一日をスタートさせる。
一見無駄に見えるかもしれませんが、こうした「人間関係の土台」があるからこそ、厳しい局面でも背中を預け合えるし、受注した時には全員で心から称賛し合えるんです。現在は、組織の状態もかなり改善され、全員が同じ方向を向いて、良い意味で「楽しめている」状態に戻ってきていると感じています。
インテントセールスの「その先」へ。AI時代だからこそ「人間」に向き合う
ーープロダクトとしての「Sales Marker」も進化を続けていると伺いました。現在はどのような点に注力されているのですか?
これまでSales Markerは、インテントセールスを通じて「いかにアポイントを獲得するか」を大命題としてきました。しかし、今回の大幅アップデートにより、その先の「成約」により近づけるためのプロダクトへと大きく進化しました。単なる検索履歴だけでなく、日々のメールや電話、商談の録画データといった、顧客との直接的なコミュニケーションから拾える「生のインテント」を、受注を勝ち取るための武器として活用できるようになっています。
ーー具体的に、顧客企業にはどのような変化が生まれているのでしょうか?
例えば、ある企業様では「これまで約2割の営業メンバーしか達成できなかった目標を、8割ほどのメンバーが達成できるようになった」という事例が出ています。
背景にあるのは、データの活用法の違いです。多くの企業で商談録画などのデータは「見返さないと使えないもの」として眠っていますが、我々はこれをフル活用し、①失注の防止、②受注率の向上、③営業メンバーの育成に直結させました。
こうして「なぜ失注したのか」「なぜ成約したのか」というブラックボックスが解明され、組織全体の営業力が底上げされた結果、「営業メンバーが覚醒した」という嬉しいお声をいただくまでになったのです。
※藤井出演のPIVOT解説動画はこちら
ーーAI活用が進む中で、これからの「営業」の役割はどう変わっていくとお考えですか?
AIが進化しても、最終的な「意思決定」は人間が行うため、営業の重要性は当面は必要とされ続けると考えています。私が実現したいのは、営業が「人間にしかできないこと」に集中できる世界。現状、1日の大半はリスト作成などの「作業」に奪われているケースも実際に発生している世の中ですが、もしテクノロジーがそれを全て肩代わりできれば、空いた時間をすべてお客様への提案に充てられます。
我々が掲げている「AIオーケストレーション」の本質もそこにあります。技術で人間を楽にし、人間らしく働く時間を創出する。そうやって営業そのものを、もっと楽しい仕事に変えていきたいですね。
伝説になる組織の「境界線」は、今ここにある
ーー藤井さんご自身のキャリア観についてもお聞かせください。かつては「起業したい」という想いを持たれていたそうですが、現在はどうお考えですか?
正直に言うと、起業したいという気持ち自体は今でもありますよ(笑)。組織が大きくなればなるほど、しがらみも増えるし、全部自分の思い通りにできたらどんなに楽だろうと思う瞬間はあります。 でも、それ以上に今のSales Markerには、「ここでやる面白さ」があるんです。 全社で300名規模になり、これだけの優秀なメンバーが集まり、業界を変えるような大きな社会的インパクトを出せるチャンスなんて、人生でそう何度も巡ってくるものではありません。この環境にいられることは相当にラッキーなことなので、活かさない手はないと思っています。
ーー今のフェーズだからこそ味わえる経験がある、と。
はい。経営陣から大きな裁量を任され、誰も挑戦を邪魔しない。むしろ「もっとやれ」と背中を押してくれる。そんな環境で、この巨大な船を動かす経験ができるのなら、まずはここでやり切ることが、自分のキャリアにとっても最大の財産になると考えています。 社内には私と同じように「いつかデカいことをやりたい」という野望を持ったメンバーがたくさんいます。そうした「勝ち気」なメンバーと切磋琢磨しながら、お互いに刺激し合える環境は、他には代えがたい魅力ですね。
ーー最後に、Sales Markerへの参画を検討している方々へメッセージをお願いします。
今、Sales Markerは上場を見据えた、まさに「最後のカオス」とも言えるフェーズにあります。未完成で、熱気と混沌が入り混じった時期に入社し、組織や事業そのものを自分たちの手で創っていく経験ができるのは、今しかありません。
ーー今入社することに、特別な意味があるということでしょうか。
そう思っています。整う前の今だからこそ、「あの頃のSales Markerを知っている世代」として、一緒に泥にまみれながら後に伝説になる組織を創り上げる仲間を求めています。 今のSales Marker事業本部は、大きな目標と責任を持つと同時に、"この環境を共に楽しむ"組織になっているかなと自負しています。メディアに出ているようなスマートな話だけでなく、ここでは話せないようなもっと泥臭い「リアル」な話を、面接の場では包み隠さずお話ししますので、ぜひ一度遊びに来てください。