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社会事業コーディネーターが見つめる、半歩先のミライ。(2)福島の農業発展 3つのキーワード

こんにちは。藤沢烈です。

今回は、福島の農業の現状と、そこに企業がどんな関わりをしてきたのかについて、お話します。

震災から7年目の今でも、福島の被災されて避難をされている方は、まだ6万人近くの方がおられます。それから、原発事故がありましたから、福島の農業、大変ご苦労されて今に至っています。

まず、福島の農業がどんな状況になるかについて、3つの数字を出しながら、皆さんにぜひ知っていただきたいなと思います。

46パーセント、563億円、23パーセント

まず1つ目が、46パーセントという数字。これは「福島で営農再開可能になった面積の割合」です。

福島の南相馬市の小高区という、原発から20キロ県内にあって、しばらく人が入れなかった地域がありました。ここ実はもうJR常磐線が仙台から通っていて、帰還はもちろん寝泊りもできるようになってきているんですけれども、先日も行ってきたんですが、田畑を見るとやはり、そのままになってしまっていて、なかなかこれは戻るのは難しいな、と感じざるを得ませんでした。

それから次の数字が、563億円。これは、お米の実際の年間売り上げです。震災前は790億円でしたから、まだまだ回復しきれていないという数字だと思います。

もともと福島のお米って、全国的にも高く評価されていて、全国の平均よりも高い金額で取引がされていたんです。けれども、今はまだ下がったままの状態になっていて、平均よりも10パーセントくらい安い金額でまだまだ推移してしまっています。

それから、3つ目の数字、23パーセント。これは、アンケートで「福島県産の食材を買うのをためらいます」と答えた消費者の割合です。

ただ一方で、もう1つ注目したいのは、実際にものを売る小売業や、卸売業者さん、いわゆる中間の流通業者に対するアンケートでは、なんと6〜7割の方が「消費者が福島県産品を避けているのではないかと考えている」というデータもあるんですね。なので、消費者の方以上に中間の流通業者の方のほうが、重く受け止めすぎているなんていう面もあったりします。(参考:NHKクローズアップ現代 5月24日OA「安全なのに売れない」~福島“風評被害“はいま~」)

こういった数字を見ながら、福島の農業を、これからどうなっていくべきなのか、ぜひ皆さんに考えてほしく、これまでに企業からどんな支援がこれまで行われてきたのかを、少し共有します。

福島の農業、そして全国の一次産業が、もっと良くなっていく3つのキーワード

私は大手ビールメーカーさんと、これまで6年ほど、東北の一次産業支援をご一緒してきています。担当の方ともずっとお付き合いをしてきましたが、皆さん大体50代くらい。熊本で社長をやられていたとか、子会社の社長をやられていたとか、そういった方がけっこういて、本当にパワフルな方が多かったです。

そういった、ごく最近まではビールを売っていた、みたいな方が福島にやってきて、この福島の農業を変えたいと、もっと良くしたいという思いで、ずっと支援を一緒にやってきたんですね。このビールメーカーさんとの支援を通じて、福島の農業がこれからよくなっていくために3つ、ポイントがあると現場で感じました。

1つ目は、ともに働く、協働

例えば福島県のいわき市でやったこととして、まず農業をやっている農家さん、それから、その農家の食材を扱っているレストラン、フレンチレストランのシェフの方、それから、食品加工会社の経営者といった皆さんに集まってもらって、新しい製品開発を行ったんです。

これ、何がポイントかというと、このいわきでも、農業の量は戻ったけれど、単価が戻らないという現象があったんですね。そういう中から、安いニンジンだったり、トマトだったりを売るだけじゃなくて、これに魅力をつけていって、より高く消費者の方に買っていただきたいと。

そういうことが背景にある中で、なかなか農家さんだとアイデアが思いつかないところを、シェフの方に入っていただいたり、それを加工することが得意な経営者に入っていただいたりしながら、どうやって付加価値をつけていくか、なんてことを議論するために共働、これをやってきたんですね。この共働っていうのが、1つのキーワードだと思っています。

2つ目は、コト消費

カタカナでコト、コトを消費する。普通、消費ってモノですよね。モノではなくて、コト。つまり体験です。福島でやったことは、ただモノを売るだけじゃなくて、そのモノをつくる現場に立ち会ってもらうとか、あるいは、モノをつくっている農家の方に話を聞いて、それで料理をしてもらって食べてもらう、コトを消費するということにこだわってやったところ。単にモノが安く売られるんじゃなくて、高くても買いたいなっていうふうに思う消費者の方が増えたんですよね。このコト消費っていうのが、大事な2つ目のキーワードだと思っています。

それから3つ目のキーワードは、一点突破

福島って本当に広くて、復興では福島県だったりとか、行政がもちろん頑張っているんですけれども、行政っていうのは、広い福島をどうしても「平等に公平に」支援をしないといけないところがあります。

ですが、企業さんの支援は「一点突破」ができるんですよね。まずは魅力的な地域とか、魅力的な生産者を応援しますよ、と。そこで成果が上がってきたものを、ほかの地域にも真似てもらう。

これはビールメーカーさんも実は最初からそう思っていたわけではありません。最初は、実はビールメーカーさんも平等に支援をしようとしていました。最初の1年目、岩手の漁師さんの支援をした時は、漁師さんたちに公平平等に、津波で流された漁具を支援されました。

確かにそれは喜ばれたんですけれども、それがどういう新しい動きになったかというと、なかなかならなくて、行政さんも同じようなことを支援して。ですので、ここから何か自分たち企業としての特色ある支援ができたかなっていうことを、ビールメーカーさんはとても反省をされたんです。

そういった中から、行政にはできない、たしかに公平平等ではないかもしれないけれども「新しい前向きな動きを応援しよう」ということに、2年目から大きく変わりました。それから、一点突破で魅力的な地域の取り組みを応援しようというふうに変わっていったんですよね。

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共働と、コト消費と、一点突破、という3つのキーワードをご紹介しました。これは、福島の農業復興のためだけではなくて、僕は、全国の農業をはじめとした1次産業にとっても、大事なキーワードじゃないかと思っています。

これまで通りのやり方で、なかなか高い値段で売れていなくてっていう、福島で起きていることの近い状態が、全国の農家にも起きているんじゃないかなと思うんですよね。

共働して、コト消費を意識しながら、一点突破で物事を変えていく。東北から企業の新しい動きが起きている、なんていうことも、ぜひ皆さんにも知っていただければと思いました。

以上、藤沢烈でした。

関連記事:福島県とキリン、「ふくしまプライド。」発信へ連携(オルタナS寄稿記事)

*本記事は、9月11日放送「サンデーエッセー」(NHKラジオ第1)出演時内容をもとに構成しています。サンデーエッセーには3ヶ月に1度登場予定。次回は12月OAですので、どうぞお楽しみに!

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