小学生の頃からエンジニアを志し、大学時代にはALS(筋萎縮性側索硬化症)患者向けの視線入力ツールを開発。ハッカソンで優秀賞を受賞するなど、好奇心を原動力にさまざまな挑戦を重ねてきた石川ナディームさん。就職活動中に出会ったラクスルの「2倍速プレゼン」に衝撃を受け、2024年に新卒として入社しました。
内定者インターンでの現場実装を経て、現在はラクスルで検索精度改善や全社AIプロジェクトを担当。さらに、データ分析コンペ「atmaCup 第21回大会」で優勝を果たすなど、社内にとどまらず活躍の幅を広げています。
「単なる分析にとどまらず、人や意思決定を動かすのがデータサイエンティスト」と語る石川さん。なぜラクスルを選び、実務やコンペでの経験を通じて、どのようにデータサイエンティストとしての思考を磨いてきたのか。これまでの経験を振り返りながら、その仕事観と成長の背景を紐解きます。
目次
好奇心が駆動した学生時代と、2倍速プレゼンから始まったラクスルとの出会い
── 石川さんは、学生時代からAIや技術開発に取り組まれていますが、そもそもエンジニアを目指したきっかけは何だったのでしょうか?
石川:幼い頃から家にパソコンがあり、友達とオンラインゲームで遊ぶ中で「この裏側の仕組みはどうなっているんだろう?」と興味を持ったのが原点です。振り返ると、小学生の頃には「将来はエンジニアになるんだろうな」と自然と思っていました。
高校生になると、「AIを理解できれば、人間の脳や感情の仕組みまで理解できるのではないか」と興味を持つようになり、大学では深層学習をはじめとしたAIの研究に取り組みました。ただ学ぶだけでは物足りず、「実際に課題解決につながる、動くものをつくりたい」と仲間を集め、ハッカソンにも挑戦するようになりました。
── ハッカソンでは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者さん向けのツールを開発し、「技育展2022」で優秀賞を受賞されています。どのようなプロジェクトだったのでしょうか?
石川:ALSの患者さんが透明な文字盤を使って意思疎通を図っている姿を見て、「市販のWebカメラとAI技術を使えば、高価な専用機器がなくても、もっと手軽に視線入力で会話ができる仕組みをつくれるのではないか」と考え、開発したプロダクトです。
実は、その前年にも同じテーマで別のハッカソンに挑戦したのですが、その時はやり残した部分があり、悔しい思いをしました。そこから精度を上げるために試行錯誤を重ね、二度目のチャレンジで優秀賞をいただくことができました。
📌 学生時代の主な実績
・技育展2022 AI/データ分析部門 優秀賞(ALS患者向け仮想キーボード開発)
・CTC共同研究:情報処理学会 第85回全国大会 学生奨励賞 / 国際会議Euro-Par 2023発表
・SIGNATE データ分析コンペティション 金メダル獲得
── 学んだ技術を、実際の課題解決につなげようという姿勢が、この頃からあったのですね。そこから、ラクスルとはどのように出会ったのでしょうか?
石川:きっかけは、たまたま参加した企業と学生をつなぐ就活マッチングイベントでした。合同プレゼンに登壇された戸辺さん(当時ノバセルCTO)が、「学生のみなさんは動画を倍速で見るのに慣れてますよね。だから今日のプレゼンも2倍速でいきます!」と話し始めて(笑)。ものすごく早口なのに、伝えたいメッセージはクリアに届いてきて、一気に惹き込まれました。
その後の個別対話で、戸辺さんがノバセルの掲げる「マーケティングの民主化」について話してくれました。マーケティングを効率化できれば、企業が売るための工夫でなくプロダクトそのものをより良くすることに、もっと時間を使えるようになる。その考え方に深く共感して、「この人たちと一緒に働きたい」と選考に進むことを決めました。
「精度」だけでは価値にならない ── 内定者インターンで学んだ実務のリアル
──正式入社から、内定者インターンとして開発に携わっていたそうですね。当時はどのようなプロジェクトを担当していたのでしょうか?
石川:ノバセルに配属され、社内の業務効率化ツールの開発を担当しました。具体的には、広告業界特有のアナログな作業を半自動化するツールです。
── 学生時代にはハッカソンやコンペを経験されていますが、実際の業務で使われるツールを開発してみて、どのような違いを感じましたか?
石川:一番大きかったのは「つくって終わりではない」ということですね。
例えば、ハッカソンでは、短期間でアイデアを形にして「まず動くものをつくる」ことが一つのゴールになりえます。でも実務では、そこからがスタートです。実際に使うユーザーがいて、その反応を見ながら改善し、継続的に価値を届けていく必要があります。自分がつくったものを実際の現場で使ってもらい、フィードバックを受けながら育てていく経験は、自分にとって新しい学びでした。
── 実際に現場で使われるものだからこその難しさもあったのでしょうか?
石川:なかなか想定通りに精度が上がらない時期がありました。ハッカソンであれば、対象を絞ってプロトタイプとして成立させるアプローチも取れますが、実務ではそうはいきません。実際の業務に組み込む以上、重要なのはシステム単体の精度だけではなく、業務プロセス全体としてどれだけ価値を生み出せるかです。
そこで、精度という一つの指標だけを追うのではなく、業務プロセス全体から設計を考えるようになりました。
例えば、3つの作業を自動化したいとしても、まずは確実に効果が出る2つに絞って実装する。あるいは、精度が90%だったとしても、残り10%の誤りをすぐに検知・修正できるUI/UXを用意する。そうすることで、システム単体ではなく、業務全体として使いやすい仕組みにしていくという考え方です。
── 技術的な精度だけを追及するだけでなく、「現場の課題をどう解決するか」から逆算して考えるようになったのですね。
石川:そうですね。現場で実際に使われ、本当に課題を解決するためには、「何のためにつくるのか 」という目的から考えることが大切だと学びました。
atmaCup 第21回大会優勝にもつながった、「解像度を上げて、やらないことを決める 」思考法
── 内定者インターンを経て正式に入社した後は、どのような業務を経験してきたのでしょうか?
石川:最初はノバセルで、主にクライアントの施策効果の検証を担当していました。MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)やCausalImpactなどを用いた分析に加えて、営業に同行してクライアントの課題をヒアリングし、そこから分析設計や提案を組み立てることも経験しました。
その後、ラクスルへ移り、現在は主に検索UXの改善に携わっています。具体的には、ラクスルのトップページにおける複数サービスを横断した検索や、ノベルティECサイト内の検索などで、ユーザーが目的の商品やページにたどり着きやすくするための改善に取り組んでいます。
── 施策効果の検証からプロダクトの検索UX改善まで、幅広くデータサイエンスを実践されてきたのですね。一方、業務外では、データ分析コンペ「atmaCup 第21回大会」に参加し、優勝されています。どのようなきっかけで挑戦したのでしょうか?
石川:当時はAIエージェントが大きく注目されていた時期で、今後のプロダクト開発でも重要になる技術だと感じていました。表面的に触るだけではなく、短期間で集中的に取り組むことで、より深いレベルまで理解したいと思ったことが参加のきっかけです。
コンペのテーマは「Jailbreak(ジェイルブレイク)」という、LLM(大規模言語モデル)のセキュリティに関するものでした。簡単に言うと、安全対策のバリアが張られたLLMから、いかにして有害な情報を引き出すか/引き出させないかを競い合う内容です。
📌 atmaCup優勝に至ったアプローチ
・解法のアプローチ:LLMへのプロンプトを自動で最適化する仕組みを構築。最初の1週間で方針を定め、その後はLangGraphなどを用いて、LLMが自律的に試行・探求し、解法を見つけ出す自動化環境を構築。
・ラクスルでの学びの実践:短期間で成果を出すため、「解像度を上げて課題を特定し、何をやらないかを決める」という、考え方を活用。
短期間で成果を出すには、まず解くべき課題の解像度を徹底的に上げ、目指すべき指針を定める。その上で、「何をやらないか」を決めることが重要だと考えています。AI時代は「まずつくって試す」という機動性も大切ですが、闇雲に試すのではなく、その前にどこを目指すのか、何に集中するのかを定める。この思考の軸は、ラクスルでの実務を通じて身についたものです。
プライベートで参加したコンペでしたが、振り返ると、日々の業務で培ったものがかなり活きていました。LLM関連のドキュメントを読み込む習慣や、データアナリティクスチームで培った目的から逆算する思考、社内でのAIエージェント活用の浸透など、普段の業務で得た知見が今回のアプローチにもつながっています。
コンペを通じて、普段どのような環境で、どのように思考を重ねているかが、新たな課題に向き合うときの発想力にもつながるのだと改めて実感しました。
データサイエンティストは「総合格闘技」── データと現場をつなぎ、 意思決定を動かす
── 検索UXの改善など、複数の事業部と関わる中で、データサイエンティストとして難しさを感じることや意識していることはありますか?
石川:データサイエンティストって、実は「総合格闘技」みたいな職種なんですよね(笑)。
単にPCに向かってデータを分析するだけでなく、事業部の方々とコミュニケーションを重ね、向かうべき方向を揃えながら伴走していく必要があります。
例えば、事業部から「ここを改善してほしい」という要望を受けたときも、そのまま「やります」と引き受けるのではなく、一度データに立ち返って解像度を上げ、本当に解くべき課題は何なのかを見極める。そうした姿勢が欠かせないと思っています。
── ロジックやデータだけでなく、現場との対話も重要になってくるのですね。
石川:まさにそうです。データドリブンなアプローチはもちろん不可欠ですが、一方で、数値には表れにくい定性的な情報や、現場だからこそ持っている知見もあります。その両方を持ち寄って協業することが、成果につながると感じています。
最近では、ノベルティ事業部の方々と関わる中でも検索改善に取り組む中でも、それを実感しました。率直に意見を交わしながら密に連携することで、データだけでは捉えきれない現場の知見と、データから見える事実を掛け合わせることができました。それが成果につながった大きな要因の一つだと思っています。
── 分析結果を示して終わるのではなく、その先の意思決定やアクションにつなげるところまでが、データサイエンティストの役割だと。
石川:はい。数値を分析して結果を示すだけであれば、AIが担える領域はこれからさらに広がっていくと思います。
だからこそ、分析結果の背景にあるストーリーを描き、そこから人や意思決定を動かすところまでやり切る。そして、その先にいるユーザーの体験をより良くしていく。そこまで含めてデータサイエンティストの仕事であり、一番のやりがいだと感じています。
── 最後に、石川さんが今後ラクスルで取り組んでいきたいことや、中長期的に目指していることを教えてください。
石川:中長期的には、「自分がつくった仕組みによって、誰かが救われている状態」をつくりたいですね。
学生時代に取り組んだALS患者さん向けツールもそうでしたが、テクノロジーを使って仕組みを変えることで、ユーザーの体験が良くなったり、誰かの困りごとが解決されたりする。自分が手がけたプロダクトや仕組みによって、誰かの日常や社会が少しでも良くなっていれば、エンジニア・データサイエンティストとして、これ以上うれしいことはないかなと思っています。
《編集後記》
「数値を分析して結果を示すだけであれば、AIが担える領域はこれからさらに広がっていく」。石川さんの言葉は、AI時代におけるデータサイエンティストの役割を考える上で、印象的なものでした。
学生時代からハッカソンやコンペに挑み、技術への好奇心を形にしてきた石川さん。ラクスルでの実務を通じて磨いてきたのは、単に分析やモデルの精度を追求するだけではなく、課題の解像度を上げ、目的から逆算して「何をやるか、何をやらないか」を判断する力でした。
データだけでは捉えきれない現場の知見に耳を傾け、事業部とともに本当に解くべき課題を見極める。そして、分析結果を意思決定やアクションにつなげ、その先にいるユーザーの体験をより良くしていく。石川さんの歩みからは、AIによってできることが広がる今だからこそ、データサイエンティストに求められる役割もまた広がっていることが伝わってきました。
⚙️技術やデータを手段に、事業やユーザーの本質的な課題に向き合いたい。そんな方にとって、ラクスルにはさまざまな挑戦の機会があります。テクノロジーで仕組みをより良くしていきたい方のご応募をお待ちしています!