ラクスルが掲げる「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョン。その最前線で、今まさに「第二の創業期」とも呼べる熱い変革が起きている組織、それが「Custom Goods & Apparel(CGA)統括部」です。かつてノベルティ・アパレル事業と呼ばれていたこの組織は、現在、単なるECの枠を超え、3.5兆円という巨大なレガシー産業のあり方を根底から書き換えようとしています。
この挑戦の舵を取るのが、2024年4月にラクスルにジョインした中﨑さん。世界最大級のECプラットフォームAmazonで14年にわたり、おもちゃからグローバル戦略まで多岐にわたるカテゴリーを渡り歩いてきた彼が、なぜ次の舞台にラクスルを選び、現在の事業基盤を再構築し、大きな成長軌道へと導いたのか。その圧倒的な成果により、チームは見事 FY26 Q3 RAKSUL AWARD MVP を受賞。
今、全社から最も熱い視線を集める組織の裏側にある、泥臭くも緻密な「実業へのこだわり」と、中﨑さんが見据える「さらなる事業拡大の景色」に迫ります。
目次
Amazonでの14年を経て、ラクスルという「実業」の地へ
── 中﨑さんは、世界的なECの巨人であるAmazonに14年という長期にわたって在籍されていました。まずはそこに至るまでの歩みと、ご自身の転機について教えてください。
中﨑:私のキャリアの原点は「現場」にあります。最初は外資系スーパーマーケットの日本法人で、店舗勤務からバイヤーを経験しました。その後、国内大手流通企業での経験を経て、おもちゃのバイヤーとしてAmazonにジョインしました。
Amazonでは14年間、さまざまなカテゴリーを任され、とても多くのことを学びました。しかし、キャリアの後半は「グローバルで標準化された戦略を高い精度で日本でも再現し、実行するフェーズ」を経験する中で、より現場に近い場所で主体的に事業判断を行いたいと考えるようになり、次第に「一人の事業家として、もっとオーナーシップを持って、業界そのものを自分の手で作り変えていきたい」という思いが強くなりました。ラクスルに入社する前に、実は一度自分で起業も経験しています。
── 起業されたにも関わらず、再び組織に加わることを選んだのはなぜですか?
中﨑:位置情報系ビジネスの事業M&Aを通じて起業したのですが、会社の代表としてすべての裁量と責任を負い、最終意思決定を担うことが自身の目指すキャリアなのかを自問自答した際、「どこか違う」と違和感を抱いたことが大きな転機となりました。
改めて自分の強みややりたいことを整理したとき、やはり自分の得意なドメインは小売やECであること、そして何より、ユーザーへの価値提供や社会へのポジティブなインパクトに対して、自ら強いオーナーシップを発揮したいのだと気づいたんです。肩書きよりも、実質的な影響力を発揮できる場所でこそ価値があると考えました。
自分の得意領域で、かつオーナーシップを持って世の中にインパクトを与えられる場所。それを追い求めた結果、ラクスルに辿り着きました。ビジョンはもちろんですが、インターネットの力を使いながらも、あくまで「印刷」や「物流」といった手触り感のある実業を動かしていく、その泥臭い面白さに惹かれました。
自身の起業経験を経て、その知見を活かせるフィールドを模索し、2024年の7月にラクスルに入社することを決めました。入社後はまず買収したハンコヤドットコムのPMIや事業立て直しのために1年間出向しました。そこで、アナログな実業をどうシステム化し、新しい価値を生み出すかというラクスル流の手法を徹底的に叩き込まれたことが、今の土台になっています。
原理原則への回帰:大幅な事業成長を支えた「泥臭いインプット」の磨き込み
── 2025年4月にCGA(Custom Goods & Apparel)統括部長に就任されましたが、就任当時のCGA事業はどのような状態だったのでしょうか。
中﨑:市場環境の変化もあり、次のフェーズへ進化するための転換期でした。ノベルティ事業は2019年に、アパレル事業は2021年に始まったのですが、巨大なマーケットにおいて本来の勝ち筋を模索している状態でした。現場には、従来の延長線上ではこれ以上の成長は難しいのではないかという閉塞感も一部では発生していましたが、私にはそうは思えませんでした。
── 「やり尽くした」という空気を、どう変えていったのですか?
中﨑:当たり前の原理原則に立ち返ることです。ECの成長サイクルは「品揃え・価格・納期・利便性」という4つのインプットを最大化することに尽きます。このインプットが改善されれば、顧客体験(CX)は必ず向上し、結果としてアウトプット(売上)はついてくる。
この原理原則に則り、課題設定に立ち返った上で注力カテゴリーを定め、競合分析とサプライチェーンの改善を徹底して取り組みました。
── スマートなECのイメージとは裏腹に、非常に泥臭い戦いですね。
中﨑:その通りです。周囲は懐疑的でしたが、こうしたローハンギング・フルーツ(すぐに手が届く成果)から丁寧に取り組んだ結果、ノベルティ事業単体で、大幅な成長カーブを描くことができました。数%しか伸びていなかった頃の周囲の「もうやり尽くした」は、ただの思い込みに過ぎませんでした。細かく分解し、差分を直視すれば、やり尽くしたことなんて基本無く、やりようは無限にあるんです。
── その地道なラインナップの拡充とチームの意識改革の執念が、鮮やかな数字として結実し、チームは見事「FY26 Q3 RAKSUL AWARD MVP」を受賞されました。CEOの永見さんからも「すでに一定の規模まで育っている事業をさらに加速させ、再成長させることは非常に難易度が高い。事業のポテンシャルを信じ抜き、そのサイクルを再構築したチーム全員の勝利」と最大級の賛辞が送られていましたね。
中﨑:そう評価していただけたのは本当に光栄ですし、チーム全員の励みになります。
ただ、昨年4月にこの部署へ移動し、高いストレッチゴールを設定したときは、正直なところ内心『本当にやれるのか』という不安もありました。しかし、この9ヶ月間、チームのみんなと取り組む中で、自分たちのドメインや事業のポテンシャルを誰よりも自分たちが信じ、突き進む大切さを学びました。今、ようやく成長のサイクルが回り始めましたが、ここで満足することなく、さらに高い目標に向かって成長を加速させていきたいです。
FY26 Q3 RAKSUL AWARD MVPを獲得したCGAチームメンバー

FY26 Q3 RAKSUL AWARD セレモニー開催レポート|ラクスル株式会社
アナログをあえて取り込み、デジタルな仕組みへ昇華する
── ところで、事業を成長軌道に戻した中﨑さんが、次の一手として仕掛けたの顧客対応窓口の設置は、一見するとラクスルが標榜する「インターネットによる効率化」に逆行するように見えます。あえて「人が介在するアナログな窓口」を置いた背景には、どのような戦略があったのでしょうか。
中﨑:こちらも同じく原理原則への回帰になります。お客様のニーズに合わせてサービスのあり方を柔軟に対応し、ECの可能性を広げる試みを行っています。そこからわかったこととして、グッズ制作のプロセスというのは本来ものすごく複雑で、標準化が難しいマーケットであるということです。
──「複雑」とは、具体的にどういった点ですか?
中﨑:例えば、商品のサイズや素材、印刷の方式、特殊な二次加工、あるいはデザインの制作やサンプルの作成といった要素です。これらは既存の印刷加工パートナーの方々なら普通に提供できる技術ですが、今のECサイト上で、印刷の専門知識を持っているわけではないお客様が自分自身で選択して完結させるにはあまりに複雑すぎて限界があるんです。
「こんなグッズを作りたい」「特殊な形状にしたい」といったさまざまな要望を、これまでは「ECのメニューにないから」と切り捨ててしまっていましたが、そこには確実な需要があり、人が介在することで売上を大きく伸ばせるチャンスがあることがわかってきました。
── 効率化を急ぐのではなく、あえて「人」が対応することに意味があるのですね。この先にどのような成長未来を見据えていますか?
中﨑:人が対応することのアナログさを大事にしつつ、私たちの狙いは単に「御用聞き」になることではありません。ラクスルのBizDevとしての真髄は、この先にあります。
ノベルティは通常「プロモーションツール」ですが、アーティストのグッズなどは「お金を払って買うもの」ですよね。この「物販・特注グッズ」まで領域を広げると、市場規模は3.5兆円もの巨大なマーケットが広がっているんです。
現状、この巨大な市場はまだEC化されておらず、専門の営業担当がアナログな対応で受注を獲っています。僕たちはこの「アナログな領域」を法人窓口から攻め、一つひとつ標準化してECを強くしていく。そうすることで、この巨大産業のあり方を根底から書き換え、継続的な成長を実現できると確信しています。
3.5兆円という巨大マーケットへの挑戦
── CGA事業をV字回復させた中﨑さんですが、この事業の今後についてはどのように考えていますか?
中﨑:先ほどの市場規模踏まえて、まず事業規模を数倍に拡大することを目指しています。
ノベルティ単体での1.4兆円、アパレルまで含めた3.5兆円というマーケットの巨大さを考えれば、決して不可能な目標ではありません。私たちは今、ようやくその巨大な市場を “仕組み” で攻略するスタートラインに立ったところなんです。
── 起業を含めたこれまでの中﨑さん個人の経験と、今のラクスルでの挑戦は、ご自身の中でどのように結びついているのでしょうか。
中﨑:私は決して、理屈だけで動く “ロジロジ” したタイプではありません。ただ、関わるすべての人がWin-Winになれるようなビジネス感覚は、これまでのさまざまな経験の中で、後天的に身についてきたものだと思っています。
それに加えて、起業時代から続く「あるべき姿」を追求し、自分のスタンスを明確に示す姿勢も大切にしています。この後天的な「ビジネス感覚」と、自分自身の「個のスタンス」がうまく組み合わさっているからこそ、今のCGAでの事業の立て直しにも確かな手応えを感じているんです。まったく異なる性質の経験それぞれに、その時々で全力でコミットしてきたからこそ、今の自分があるのだと感じています。
── まさに、中﨑さんのこれまでの歩みが今、大きなエネルギーになっているのですね。最後に、未来の仲間にメッセージをお願いします。
中﨑:私自身、これまでのキャリアでさまざまな経験を積んできましたが、今この瞬間が一番エキサイティングです。成長の余白は、至るところに無限にあります。「もうやり尽くした」という思い込みではなく、「やりようは他にもっとある」と思い見方や考え方を変えることで、新しい価値を生み出すことがあると思います。
毎年の数倍成長を愚直に、しかし戦略的に積み重ねて、この巨大マーケットにおけるトッププレイヤーとしての景色を一緒に見に行ける ― そんな野心と、実業への誠実さを兼ね備えた方と一緒に挑戦したいですね。私たちにとっては、今がまさにスタート地点。ここから、世界を一緒に面白くしていきましょう。
【編集後記】 現場を愛する事業家の背中
CGA統括部は、社内でもまだその全貌が知られていないかもしれません。しかし、そこにはラクスルが創業期に持っていた熱量と、成熟した組織の知見が融合した、今もっともエキサイティングな「第二の創業期」の景色が広がっています。
実は、これまで社内イベントで使うノベルティについても、自社サイトにないからと諦めて他社で手配をしたことがありました。しかし最近では、CGAチームに相談すると「できますよ!」と力強い回答をいただけるようになり、対話を通じて形にしていくプロセスをとても心強く感じています。インタビューで語られていた、アナログな要望を拾い上げ、“仕組み” へと昇華させていく挑戦が、まさに私たちの身近なところでも始まっているのです。実際の社内でのノベルティ制作の様子は、また別の機会にレポートできればと思っています。
🧗 あなたも中﨑さんと共に、この壮大な景色を「仕組み」で作り上げる主役として、CGAの門を叩いてみませんか?