ラクスルグループは、印刷や広告に加え、金融領域にも取り組みながら、「End-to-Endで中小企業の経営課題を解決するテクノロジープラットフォーム」の構築を進めています。
複数の事業を展開する中で、各サービスに紐づく購買履歴や行動ログ、入稿データ、法人情報など、さまざまなデータが日々蓄積されています。
しかし、データがあるだけでは事業は前に進みません。
「データは数多く存在します。ただ、大事なのは『何を知れば次の一手が変わるのか』を先に定めること。そこから逆算しなければ、どれだけ分析しても事業の意思決定にはつながらないんです」
そう語るのは、データ戦略部 データアナリティクスグループの塩入さん。ソフトバンク、外資系コンサルで経験を積んだ後、ラクスルに業務委託として参画。現在は正社員としてラクスルグループ全体のシナジー創出を目指す、重要プロジェクトの中心メンバーとして活躍しています。
過去には、事業横断のマーケティング予算最適化プロジェクトで社内表彰された実績も持つ塩入さんに、「データで事業を支える」仕事の面白さと、ラクスルならではの成長環境について聞きました。
目次
データで事業を支えたい ─ ラクスル入社までの道のり
横断的なデータ基盤整備で、グループシナジーを生み出す
グループシナジーの"方法論"を確立する挑戦
データ戦略部の体制と役割
データが意思決定を支える面白さと、成長できる文化
AI時代に求められるデータ人材とは
《編集後記》
データで事業を支えたい ─ ラクスル入社までの道のり
── まず、塩入さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
塩入:新卒でソフトバンクに入社し、調達部門に配属されました。皆さんがお持ちのスマホ機器であるiPhoneやAndroid端末の販売台数予測をもとに調達量を決め、価格交渉や納期管理を行う業務を担当していました。
携帯電話は精密機械なので、発注から入荷まで最短でも3ヶ月ほどかかります。在庫切れによる売上損失を防ぎつつ、過剰在庫も避ける ── そのバランスを取りながら「玉繰り」と呼ばれる在庫管理をしていました。
── 当時からデータに関わる仕事だったんですね。
塩入:そうですね。当時はまだ“データドリブン”という言葉が、今ほど一般的ではありませんでした。現場には、「iPhone売上予測職人」「Android機種別売上予測職人」と呼ばれるベテラン社員の方々がいて、長年の経験や勘をもとに予測を立てていました。
その判断の背景には確かな経験則がありましたが、それを形式知として整理し、チーム全体で再現できる状態にするのは簡単ではありませんでした。予測が外れたときに「どの前提がズレていたのか」「どの判断が影響したのか」を構造として振り返ることが難しかったんです。
ちょうどその頃、世の中では機械学習という言葉が広がり始めていました。「データを活用すれば、もっと構造的に事業の意思決定を支えられるのではないか」という思いが強くなっていったんです。
単にデータを扱うだけでなく、データを起点に事業の意思決定そのものに深く関わってみたい。そう考え、外資系コンサルに転職しました。
転職後は、コーディングや分析の実務に携わりました。アウトプットの質やスピードに対する要求水準は非常に高く、そこで徹底的に鍛えられたと思います。
その後、ベンチャー企業を経て、業務委託という形でラクスルに関わることになります。当時は、自分がこれから何に向き合っていきたいのかを見つめ直している時期でもありました。
── そこから、正社員としてやっていこうと思えたのは、どんな理由があったんですか?
塩入:想像以上に、ラクスルの業務が楽しかったんです。これまでずっと求めていた「データで事業をドリブンする」環境が、ここにはありました。
あらゆるデータを見ながら、インタビューなどで得たお客様の声も踏まえ、緻密な仮説検証を何度も繰り返し、「どうしたらお客様に価値を届けられるか」という問いに、メンバー全員が真摯に向き合っていました。
その過程では、時には厳しいフィードバックを交わすこともあります。でもそれは、より良いアウトプットを目指しているからこそ。率直なフィードバックを受け取れる環境は、本当にありがたいものです。「どうしたらお客様に価値を届けられるのか」という問いに、明確な正解はありません。だからこそ、この環境でなら、議論を重ねながら仲間とともに歩んでいける——そんなイメージが自然と湧きました。その時初めて、「あぁ、ビジネスってこんなに楽しいものなんだ」と思えたんです。
それが、2年前に正社員としてコミットする決断につながり、今に至ります。
横断的なデータ基盤整備で、グループシナジーを生み出す
── さまざまなプロジェクトに携わってきた塩入さんにとって、特に印象的なプロジェクトはありますか?
塩入:今も取り組んでいるふたつのプロジェクトですね。ひとつは、社内表彰もされた「横軸マーケティング予算最適化プロジェクト」。もうひとつが、現在進行中の「DtoR(ダンボールワン to ラクスル)プロジェクト」です。
── まず、表彰されたプロジェクトについて詳しく教えてください。
塩入:ここ数年で、ラクスルグループの成長戦略は大きく変わりました。「End-to-Endで中小企業の経営課題を解決するテクノロジープラットフォーム」を目指し、M&Aによってグループ会社が増え、新規事業も拡大しています。
以前は各事業部がそれぞれの事業成長を軸に取り組んできましたが、今はよりグループ全体でシナジーを生み出すことが求められるようになりました。
そこで見えてきたのが、データの分断という課題です。例えば「CPA(※1件の成果獲得にかかる広告費用)」ひとつを取っても、事業部ごとに算出の定義が異なっていました。商材特性やビジネスモデルが違う以上、成果測定の定義も事業ごとに異なるのはごく自然なことです。ただ、この状態のままでは「どの事業にどれだけの広告予算を配分すれば、ラクスルグループとして利益を最大化できるのか」といった問いに、グループ横断で答えを出すことが難しい状況でした。
── それをどのように解決したのでしょうか?
塩入:まず、戦略ごとにあるべきCPAの算出ロジックを整理し、全社で共通して使う「公式値」を定義しました。そのロジックを各事業に適用し、横並びで確認できるダッシュボードを整備したんです。
そのうえで、毎月、投資責任者や事業責任者が「どの予算をどれくらい使い、どれだけEBITDAにプールできるのか」を判断する。もし余剰が出れば、次の投資機会に回す。そうした意思決定サイクルを、データドリブンに回せる状態を作りました。
結果として、新規獲得のトレンドが大幅に改善し、投資効率も向上しました。広告運用の現場、データ基盤チーム、各事業部など、まさに全社横断で取り組んだプロジェクトです。
グループシナジーの"方法論"を確立する挑戦
── もうひとつの「DtoRプロジェクト」についても教えてください。
塩入:このプロジェクトは、梱包資材EC「ダンボールワン」をご利用いただいているお客様に、印刷EC「ラクスル」のサービスもあわせて使っていただくことを目指す取り組みです。
実はその前身として、「RtoDプロジェクト」というものがありました。これは、DtoRとは逆で、ラクスルのお客様にダンボールワンの商品をご提案するアプローチです。一定の検証を重ねたものの、当初期待していたほどの成果にはつながりませんでした。理由を深掘りしてみると、ラクスルのお客様の利用目的は非常に多様で、ダンボールワンの主力商品である段ボールや梱包材を必要とするお客様は、実はそれほど多くなかったんです。
── では、DtoRは逆に需要があるということですか?
塩入:そうなんです。段ボールや梱包材を購入されているお客様は、BtoBのEC事業者である可能性が高い。
ECって、商品を発送する際にチラシや説明書、サンクスカードといった印刷物を同梱することが多いですよね。つまり、印刷ニーズが潜在的にかなり高いはずなんです。だからDtoRであれば、クロスセルによる上乗せ効果が生み出せるんじゃないかと考えました。
これは、DtoR単体の話ではなく、全社戦略ともつながっています。ラクスルグループは「中小企業をはじめとする顧客の開業から成長・拡大、さらなる発展までに直面する経営課題を解決できる存在」を目指しています。そのためにはグループ内で継続的にシナジーを生み出せる、横展開可能な方法論を確立する必要があります。DtoRは、その実験の最前線という位置づけなんです。
── かなり責任重大なプロジェクトですね。
塩入:そうですね。まだ確立されたやり方がある領域ではないので、試行錯誤しながら進めている感覚です。
データ分析だけでなく、顧客インタビューも行いますし、定性と定量を行き来しながら、仮説検証のスクラップビルドを繰り返し、さらにBizDevのような動きも求められます。毎日わからないことも多く大変ではありますが、その分、とてもやりがいを感じています。
データ戦略部の体制と役割
── 改めて、現在のチーム体制について教えてください。
塩入:現時点では業務委託含めて18名のチームです。採用も積極的に進めていて、組織としてもかなり力を入れている領域です。
── チーム内の役割分担はどうなっていますか?
塩入:大きく3つの職種があります。
まずデータエンジニア。いわば「守り」の要として、各所からデータを収集し、分析・活用がスムーズに回るよう基盤を整備する役割を担っています。ラクスルIDを軸にデータを統合していくうえで、欠かせない存在です。
次にデータサイエンティスト。こちらは「攻め」の役割で、統計や機械学習を駆使して、より深い課題に踏み込んでいきます。検索・レコメンド機能の改善や、あらゆる仮説検証における実験設計・統計的評価などが主な担当領域です。
そしてデータアナリスト。私はこの役割に含まれます。ビジネス部門のカウンターパートとして、「どの事業課題を、どのデータで解くのか」という問いの設計段階から関わるのが特徴です。
── それぞれの役割がある中で、データ戦略部としては、現在どんなミッションを担っているのでしょうか?
塩入:今後3年間の方針として、「ラクスルIDを中心としたデータエコシステムの構築」を掲げています。顧客の属性や行動ログ、法人情報、入稿データなど、さまざまなデータを法人単位で統合し、CRMを強化していく。そうすることで、クロスセル率や継続率を高め、法人単位のWallet Shareを引き上げていくことを目標にしています。
── その構想を実現するために、具体的にはどんな取り組みを進めているんですか?
塩入:AIや機械学習を活用して、「何をすればお客様により良い購買体験を提供できるのか」を継続的に探り、それをサービスに反映していく取り組みを進めています。体験が向上すればリピートが増え、データがさらに蓄積される。そのデータをもとに、またAIや機械学習を回していく──このサイクルを回し続けることが基本的な考え方です。ラクスルにしか持てない一次データが積み上がるほど、このサイクルはさらに加速していく。そこに、私たちの強みがあると思っています。
データが意思決定を支える面白さと、成長できる文化
── ラクスルでデータアナリストとして働く面白さは、どんなところにありますか?
塩入:一番は、データが意思決定につながっていく実感があることです。前職までは、分析して示唆を出しても、それが意思決定やアクションにまでつながらないことも少なくありませんでした。
振り返ると、原因は組織側だけではなかったと思っています。アナリスト側が事実の羅列にとどまり、「だから何をすべきか」というアクションまで踏み込めていないと、受け取る側も動きようがない。当時の自分にも、そういう部分があったと思います。
一方で、意思決定がデータではなく経験則や社内の力学で動く組織では、どれだけ精度の高い分析をしても採用されにくい構造的な問題もあります。アナリストが意思決定の場に同席できず、レポートを「提出して終わり」にしてしまうと、アクションまでつながらないんですよね。
その点、ラクスルにはデータを意思決定の起点にする文化が本当に根付いています。分析結果がアクションに反映され、その成果がまたデータとして返ってくる。このサイクルが自然に回っている組織は、実はそう多くないと思うんです。
それに、「失敗を失敗で終わらせない」文化があります。結果が想定通りでなかったとしても、それをひとつの学びとして次に活かしていく。「じゃあ次はこの山を登ろう」と前向きに切り替えられる環境は、純粋に面白いですね。
── そのような中で、ご自身の成長実感はありますか?
塩入:かなりあります。以前はできなかったことが、明らかにできるようになってきましたし、「どの課題を解くべきか?」という論点設計の精度も上がってきた実感があります。
その成長を支えている要因として大きいのは、フィードバック文化が根付いていることです。「フィードバックをいただけますか?」と声をかけて、嫌な顔をされたことは一度もありません。何度もレビューを重ねながらアウトプットを磨いていくことで、自分の改善点の解像度が上がり、事業へのコミットの仕方も変わってきました。日々、自分がアップデートされている感覚があります。
── この先、どんなチャレンジをしていきたいですか?
塩入:これまでは比較的小さなスコープでしかインパクトを出せていなかったので、これからはもっと大きなスケールで、データを使って価値を生み出せる人材になりたいと思っています。
今取り組んでいるDtoRプロジェクトは、まさにその挑戦の真っ只中にあります。地図のない海原で、自分で海図を描きながら舵を取っているような感覚です。そういう未知の領域でも、データを舵として、事業を力強く前に進められるプロフェッショナルになっていきたいです。
AI時代に求められるデータ人材とは
── AI時代において、データアナリストに求められることは何だと思いますか?
塩入:今、チームでもAIを前提に生産性を高めていこうとしています。
「単純に人数を増やすより、AIを徹底的に活用して少人数でも同じ成果を出す」。そのくらいの発想で、本気でフルコミットしています。
世の中には、「AIがあるならデータ職はいらないのではないか」という議論もありますよね。でも、私はそうは考えていません。
AIは、与えられた問いに対して精度の高い答えを出すことはできますが、「そもそもその問いが正しいのか」を判断することはできない。ビジネスの文脈を読み取り、山積みの課題の中から「どの問いを解くことが価値につながるのか」を見極める力は、人間にしか持てないものだと思っています。
それに、AIが出した分析結果を鵜呑みにせず「本当にそうなのか」と批判的に検証し、意思決定者に自分の言葉で説明できるアカウンタビリティも、これからより重要になってくると思います。
逆に言えば、コードを書く、可視化する、モデルを回す──そうしたプロセスの一部は、AIに代替されていく部分がこれから増えていくのかもしれません。だからこそ技術的な実装はAIに任せながら、人間は問いの設計と判断に集中する。AI時代に求められるのは、ツールを使いこなす力以上に「本質的な問いに向き合える力」だと思っています。そこを大事にしたデータアナリストでありたいです。
── そうした環境の中で、どんな人がチームで活躍できると思いますか?
塩入:まずは、事業へのコミットが強い人ですね。
与えられたタスクをこなして終わりではなく、「この課題をどう解くべきか」という問いから考え、最後まで責任を持ってやり切れる人は強いと思います。
もうひとつは、データ職種として今まさに“モヤモヤ”を抱えている人にも来てほしいです。
データ分析をしても事業への貢献につながらなかったり、ひとりで業務を背負い込んでしまい十分なレビューや議論の機会が得られなかったり。そういう環境で課題意識を感じている方にとって、ラクスルはすごくフィットすると思います。
── チームとして大切にしている価値観や行動規範はありますか?
塩入:データを扱う仕事って、数字を見て終わりではなくて、「それによって何が変わったのか」が必ず問われるんですよね。
だからこそチームの中でも、「自分はどの意思決定にどう貢献できたのか」「事業にどんなインパクトを出せたのか」をシビアに振り返る文化があります。そこに向き合えないと、データで価値を生み出し続けるのは難しいと思っています。
── それは厳しいですね。
塩入:厳しいですね(笑)。でも、だからこそ面白いんです。
売上目標を追う営業や事業責任者と同じように、データチームも事業成果に対して責任を持つ。そこは徹底しています。実際、各メンバーが「どのプロジェクトにどれだけリソースを投下するのか」や、「OKRとしてどれくらい売上に貢献するのか」が明確に定義されています。
── 最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
塩入:データ職種として、「事業に貢献したい」「本質的な問いに向き合いたい」と考えている方にとって、ラクスルは挑戦しがいのある環境だと思います。
ラクスルには、データも課題も豊富にあります。ただ分析して終わりではなく、「どうすれば事業の意思決定に直結するのか」から考え、アクションにつなげていく。そうしたスタンスで仕事に向き合える方と、一緒に働きたいです。
失敗も学びとして次に活かせる文化があり、真剣な議論を通じてチームで成長していける。そして、データを通じて事業が前に進んでいく手応えがある。
もし少しでもワクワクするものがあれば、ぜひ一度カジュアルに話を聞いてみてほしいです。
《編集後記》
「データで事業を支える」── 言葉としてはよく耳にしますが、それが実際に組織の中でどのように機能しているのかまで語られることは、意外と多くありません。
インタビューを通じて見えてきたのは、ラクスルにおいてデータが「分析結果」として存在するだけでなく、意思決定や施策の設計に組み込まれた形で活用されているということでした。塩入さんの話から印象的だったのは、個人のスキルだけでなく、チームとしてそのサイクルを回すための仕組みがつくられている点です。レビューやフィードバックの文化、事業へのコミットメント、そして定量と定性を往復しながら仮説検証を進めていくプロセス。そうした積み重ねによって、データが実際に事業を前に進める力になっているのだと感じました。
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